🍎 Apple(AAPL)を数字で見る|iPhone22%増収の四半期決算とEU・DOJ訴訟という材料
「数字で見る、話題の企業」シリーズ第1回は、米国のApple Inc.(NASDAQ: AAPL)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を自分で見積もれる状態」を作ることであり、上がるか下がるかの結論は書きません。会社自身がSEC(米証券取引委員会)に提出した一次情報——四半期報告書(Form 10-Q)と年次報告書(Form 10-K)——から、①事業の中身 ②歴史 ③直近決算の数字 ④会社自身が認めているリスク ⑤上がる材料・下がる材料を対で並べ、最後に⑥次に何を見ればよいかを整理します。
- 2026年4-6月期決算(SEC提出Form 10-Q)で売上高$1,094.17億(前年同期比+16.4%)・iPhoneが+22%と牽引
- 会社自身が開示するリスク要因(Form 10-K)は関税・競争環境・EU/DOJの規制訴訟など5点を紹介
- 「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
earnings-calendar.json)で直近2〜14日以内に決算発表があった米国企業のうちNVIDIA(8/26発表)とWalmart(8/20発表)が候補になりましたが、NVIDIAは8/27公開の決算速報記事で、Walmartも8/17・8/20前後の当サイトのデイリーニュース記事で、いずれも直近で主役として扱われたばかりのため今回は見送り、直近15〜60日の当サイト記事で主役だった海外企業からAppleを選定しました(2026年8月2日公開の速報記事でApple 2026年度第3四半期決算を既報)。候補の中で時価総額が最大でした(2026-09-01確認)。なお日本株側は、いったん8/26〜8/28にランキング2回以上登場という条件を満たすアドバンテスト(6857)を候補にしましたが、有価証券報告書の一次情報に本セッションの環境から到達できなかったため見送り、詳細は台帳に記録しています。1️⃣ Appleはどんな会社か——セグメント別の売上構成
Appleはスマートフォン(iPhone)、パソコン(Mac)、タブレット(iPad)、ウェアラブル機器(Apple Watch・AirPods等)とその関連サービスを設計・製造・販売する企業です(出典:Form 10-K「Item 1. Business - Company Background」、2025年10月31日提出、2026-09-01確認)。製品ラインはiPhone・Mac・iPad・Wearables, Home and Accessoriesの4区分と、広告・AppleCare・クラウドサービス・デジタルコンテンツ・決済・サブスクリプション等をまとめたServices区分の計5区分で構成されます。
2026年度第3四半期(2026年4-6月期、暦年ベース)の売上高1,094.17億ドルの内訳は次のとおりです(出典:Form 10-Q、2026年7月31日提出、2026-09-01確認)。
2️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事
各行に出典を付した事実の年表です。原因の断定や物語化は避け、確認できる出来事のみを並べています。
| 年 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1976年 | スティーブ・ジョブズ、スティーブ・ウォズニアックらがApple Computerを設立。「Apple I」を発売 | 米議会図書館「This Month in Business History」(2026-09-01確認) |
| 1980年 | 12月に新規株式公開(IPO)。1株22ドルで460万株を売り出し | CNN「Apple Fast Facts」(2026-09-01確認) |
| 1984年 | 1月にMacintoshを発表 | CNN「Apple Fast Facts」(2026-09-01確認) |
| 2001年 | iPod(携帯音楽プレーヤー)の販売を開始 | CNN「Apple Fast Facts」(2026-09-01確認) |
| 2007年 | iPhoneを発表 | CNN「Apple Fast Facts」(2026-09-01確認) |
| 2011年 | 8月にティム・クック氏がCEOに就任(10月にスティーブ・ジョブズ氏死去) | CNN「Apple Fast Facts」(2026-09-01確認) |
| 2020年 | 独自設計の「Apple Silicon」(Mシリーズ)へMacのプロセッサ移行を開始 | Wikipedia「Apple silicon」(2026-09-01確認) |
| 2024年 | 2月に空間コンピュータ「Apple Vision Pro」を発売 | Wikipedia「Apple Vision Pro」(2026-09-01確認) |
| 2024年 | 3月にEUがDMA(デジタル市場法)に基づく正式な非遵守調査を開始。3月にDOJ(米司法省)がスマートフォン市場での独占的地位を巡り反トラスト法違反で提訴 | Form 10-K「Item 3. Legal Proceedings」(2025-10-31提出、2026-09-01確認) |
| 2025年 | 4月にEU欧州委員会がDMA第5条(4)違反に対し5億ユーロの制裁金を科す決定。Appleは同決定を不服として控訴 | Form 10-K「Item 3. Legal Proceedings」(2025-10-31提出、2026-09-01確認) |
| 2026年 | 7月30日(米国東部時間・引け後)、2026年度第3四半期(4-6月期)決算を発表。売上高は前年同期比+16.4%の増収 | Form 8-K(2026-07-30提出)・Form 10-Q(2026-07-31提出)、当サイト2026-08-02記事 |
3️⃣ 直近決算の数字(2026年4-6月期・Form 10-Q)
2026年7月30日(米国東部時間・引け後)発表・7月31日SEC提出のForm 10-Q(2026年度第3四半期、期間は2026年4月から6月)の要点です。数値はすべて同資料に基づき、確認日は2026-09-01です。
| 指標 | 2026年4-6月期 | 2025年4-6月期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | $1,094.17億 | $940.36億 | +16.4% |
| 売上総利益 | $547.70億 | $437.18億 | +25.3% |
| 営業利益 | $356.95億 | $282.02億 | +26.6% |
| 純利益 | $297.89億 | $234.34億 | +27.1% |
| 希薄化後EPS | $2.02 | $1.57 | +28.7% |
地域別(reportable segment=Form 10-Qの報告セグメント区分)の売上高は、Americas $457.81億、Europe $293.95億、Greater China $188.16億、Japan $65.54億、Rest of Asia Pacific $88.71億でした(出典:Form 10-Q「Note 10 – Segment Information」)。
キャッシュフロー計算書(財務活動区分)では、9カ月累計で自己株式取得$620.94億・配当支払$117.78億を計上(出典:Form 10-Q「Condensed Consolidated Statements of Cash Flows」)。別注記の「Note 7 – Shareholders' Equity」では、9カ月間で215百万株を$618億で取得したと記載されています(金額差はキャッシュフロー計算書とNote 7の集計範囲の違いによるもので、いずれも同じForm 10-Qの数値です)。四半期末時点の1株あたり四半期配当は0.27ドルで、会社は「取締役会の決議を条件に年次で増配する意向」を示しています(出典:Form 10-Q「Liquidity and Capital Resources」)。
4️⃣ 会社自身が挙げているリスク(Form 10-K「Risk Factors」より)
以下はForm 10-K(2025年9月27日期・2025年10月31日提出)の「Item 1A. Risk Factors」および「Item 3. Legal Proceedings」で会社自身が開示しているリスク要因の要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も重視する情報です。原文はSEC EDGAR掲載のForm 10-K原文でご確認いただけます。
- ①関税・国際貿易規制リスク:売上の過半数が米国外、製造委託先の多くも中国本土・インド・日本・韓国・台湾・ベトナム等の米国外に所在。2025年以降の米関税措置とそれに対する各国の報復関税により、コスト増や事業運営の変更を迫られる可能性があるとしています。
- ②競争環境リスク:会社は「スマートフォン・パソコン・タブレット・ウェアラブル機器の世界市場でシェアは少数派(minority market share)」と自認しており、価格競争の激しい市場で新製品投入を続ける必要があるとしています。
- ③サードパーティ開発者への依存リスク:Appleの製品需要はAndroid等の競合プラットフォームに対する第三者ソフトウェア開発者の支持に一部依存しており、開発者の支持が競合に向かった場合はアプリの充実度が損なわれうるとしています。
- ④情報セキュリティ・システム障害リスク:自社および取引先のグローバルなITシステムが自然災害・サイバー攻撃・ランサムウェア等による障害にさらされており、対策を講じても完全な防御は提供できないとしています。
- ⑤訴訟・規制対応リスク:EU欧州委員会のDMA(デジタル市場法)関連調査(2024年3月開始)では2025年4月に5億ユーロの制裁金を科され、Appleは控訴中。別件(Article 6(4)調査=第三者アプリ開発者・アプリマーケットプレイス向けの契約条件がDMAに適合するかを問う調査)では違反認定の場合、全世界売上高の最大10%の制裁金が科されうるとしています。また米DOJ等によるスマートフォン市場での独占禁止法訴訟も係属中です。
出典:Form 10-K「Item 1A. Risk Factors」「Item 3. Legal Proceedings」(2025-10-31提出、2026-09-01確認)。上記はリスク要因の一部を要約したもので、原文にはこの他にも多数の項目が記載されています。
5️⃣ 上がる材料/下がる材料
ここがこの記事の主役です。会社の開示・公的統計で確認できる事実だけを左右に対で並べます。重み付けはしません。「以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で」という位置づけです。
※ 各材料の件数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来予測は行っていません。
6️⃣ これから何を見れば分かるか
次のApple決算(2026年度第4四半期・通期、2026年7-9月期)は2026年10月29日ごろと見込まれています(当サイトearnings-calendar.jsonに基づく見込みで、2026-09-01時点で会社の正式発表日ではない点にご注意ください)。この記事で挙げた材料がその後どう推移したかは、次の開示で次のように確認できます。
- iPhone・Servicesの増収率が続くか→次回10-Q(または10-K)の「Products and Services Performance」表
- iPadの減収が続くか、反転するか→同上
- 関税措置の影響が数値に表れ始めるか→決算発表資料の「Macroeconomic Conditions」に関する説明、粗利率の推移
- EU DMA Article 6(4)調査の結論・制裁金の有無→次回10-K・10-Qの「Legal Proceedings」、EU欧州委員会の公式発表
- 自己株買い・配当のペースが維持されるか→次回10-Qの「Shareholders' Equity」「Liquidity and Capital Resources」
いずれもSEC EDGARのApple提出書類一覧(10-K)および同(10-Q)から無料で確認できます。
7️⃣ まとめ
結論は出しません。この記事で確認した公開情報を踏まえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①iPhone・Servicesの増収率が2026年4-6月期の水準(それぞれ+22%・+12%)を維持できるか、②関税を含むマクロ環境の悪化が粗利率(2026年4-6月期は50.1%)に表れ始めるか、③EU DMA Article 6(4)調査の結論と制裁金の有無。どう評価するかは、読者ご自身の投資判断に委ねられます。
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