【保存版】円の為替介入の歴史──1985年プラザ合意から2026年の日米協調まで、40年の記録
📋 結論3行サマリー
- 日本の為替介入は「円売り(ドル買い)」が圧倒的に多く、「円買い(ドル売り)」は歴史的に稀である。2003年1月〜2004年3月だけで約35兆円の円売りが行われ、これは1991年4月以降の介入累計の4割超を占めるとされる(出典:日本経済新聞「95年の為替介入は日米協調 03〜04年は単独で35兆円」2010-09、東洋経済「2003〜04年の空前規模の為替介入」)。
- 「協調介入」は例外中の例外である。円買い局面での日米協調は1998年6月と2026年7月の2回しか確認できず、その間は28年あいた(出典:日本経済新聞「協調介入とは 円買い局面での実施は28年ぶり」2026-08、公益財団法人 国際通貨研究所「28年ぶりの日米円買い協調介入の背景と影響」2026-08-12)。
- 規模の大きさと相場の転換は、歴史的に結びついていない。1998年6月の日米協調円買いは2,312億円で、その後も円安は進み8月に147円台に達した。一方2011年10月31日の単日8兆722億円という過去最大の円売り介入のあとも、円高基調はすぐには終わらなかった(出典:マネクリ(マネックス証券)「1998年の日米協調介入を振り返る」、日刊工業新聞ほか)。
2026年7月31日、日米が28年ぶりに協調して円買い介入を実施した。これをきっかけに「為替介入とは何か」「過去にどれだけ行われてきたのか」を知りたいという声が増えている。本記事は、日本の通貨当局による為替介入を、確認できる範囲でさかのぼって年表として整理したものである。
📊 まず──どこまでさかのぼれるのか
介入の歴史を整理するうえで、最初に押さえておくべき制約がある。財務省が実額を公表しているのは1991年4月以降である。
財務省は「外国為替平衡操作の実施状況」として、月次ベースの総額と、四半期ごとの日次ベース(実施日・金額・通貨ペア)を公表している。このデータで確認できるのは1991年4月以降であり、それ以前の介入については実額の公式データが公表されていない(出典:財務省「外国為替平衡操作の実施状況」、政府統計の総合窓口 e-Stat)。
・1991年4月以降=財務省の公表データが存在する期間。金額は公表値または報道による。
・1991年3月以前(プラザ合意など)=公式な実額データが無いため、報道・研究機関のレポートに基づく記述にとどめる。
表中の水準・金額はいずれも報道および各社レポートに基づく参考値であり、公式確定値とは異なる場合があります。
🕰️ 年表──40年の記録
1985年9月22日:プラザ合意(G5協調・ドル売り)
米ニューヨークのプラザホテルに日・米・英・独・仏(G5)の財務相・中央銀行総裁が集まり、ドル高是正のための協調行動に合意したと発表された。内容は「参加各国の通貨をドルに対して一律10〜12%幅で切り上げ、その手段として各国が外国為替市場で協調介入を行う」というものだったとされる(出典:野村證券「証券用語解説集:プラザ合意」、トウシル(楽天証券)「【1985年9月22日】プラザ合意、急激な円高へ」)。
合意前のドル円は250円前後で推移していたが、G5当局が一斉にドル売り・自国通貨買いに動くとドルは急落。発表から1日で1ドル=235円前後から20円ほど円高に動き、翌1986年7月には150円台まで進んだと報じられている(出典:マネクリ(マネックス証券)「40周年の『プラザ合意』を振り返る」、トウシル 同上)。
※これは「円買い」ではなく「ドル売り」の協調である点に注意。日本にとっては結果として円高が進んだ。
1991年4月〜:財務省データの開始
ここから実額が公表されている。1990年代前半は円高が進行した時期で、円高を抑えるための円売り(ドル買い)介入が断続的に行われた。
1995年4月19日:79円75銭──当時の史上最高値と日米協調
東京外国為替市場で1ドル=79円75銭を記録した。1973年の変動相場制移行後の最高値(円の最高値)である。背景には日本の対米貿易黒字があったとされる(出典:トウシル(楽天証券)「【1995年4月19日】東京外国為替市場で1ドル79.75円を記録」)。
この後、G7が「ドルの秩序ある反転が望ましい」との声明を出し、日米協調介入が実施された。当時としては記録的な規模の介入が行われ、円は急速に下落し、同年9月には100円台まで戻したとされる(出典:トウシル 同上、日本経済新聞「95年の為替介入は日米協調 03〜04年は単独で35兆円」2010-09)。
1998年6月17日:日米協調の「円買い」──28年前の1回
2026年7月の協調介入が「28年ぶり」と言われる、その基準になった回である。
当時、日本では証券会社や銀行の経営破綻が相次ぎ金融危機の様相が広がる中、円安が止まらなくなっていた。アジア通貨安を招く円安・ドル高の進行を避ける狙いから、日米の通貨当局がドル売り・円買いの協調介入に踏み切った。このときの日本の介入額は2,312億円だったとされる(出典:マネクリ(マネックス証券)「1998年の日米協調介入を振り返る」「1998年の日米協調円安阻止介入の考察」)。
1998年6月17日の協調介入のあとも円安は進み、8月11日には147円66銭までドル高・円安が進行した。流れが変わったのは8月17日以降のロシア危機で、市場の混乱から円キャリートレードの巻き戻しが起き、そこで円高方向へ反転したとされる(出典:マネクリ 同上)。相場の転換をもたらしたのは介入そのものではなく、その後に起きた別の出来事だった、という読み方ができる。
1999年〜2000年:円高局面での断続的な円売り
1999年から2000年にかけては円高が進んだ局面で、円売り(ドル買い)介入が断続的に実施された。1999年には年初から複数回の介入が行われ、夏から秋にかけても繰り返し実施されたとされる(出典:一橋大学経済研究所 伊藤隆敏「日本の通貨当局による為替介入の分析」2002-03、財務省 公表データ)。
※この時期は実施回数が多く、報道・研究によって集計の切り方が異なります。個別の日付・金額は財務省の公表データをご確認ください。
2003年1月〜2004年3月:約35兆円──史上空前の円売り(溝口・テイラー介入)
日本の為替介入史で最大規模の局面である。イラク情勢などを背景に投機筋が大幅な円高を見込み、1ドル117円前後で安定していた円相場が105円台に迫るまで上昇、100円を切るとの観測も出ていた。これに対抗して1日1兆円規模の円売り介入が継続的に実施されたとされる(出典:東洋経済「2003〜04年の空前規模の為替介入」、日本経済新聞 2010-09)。
期間中の介入額は約35兆円にのぼり、これは1991年4月以降の介入累計額の4割超を占めるとされる。当時の実質的な責任者だった溝口善兵衛財務官は「ミスター・ドル」と呼ばれ、米財務省のテイラー次官の名とあわせて「溝口・テイラー介入」と呼ばれる(出典:東洋経済 同上、投資用語集「テイラー・溝口介入」)。この介入により日本の外貨準備高は大幅に増加した。
2010年9月15日:6年半ぶりの単独円売り
欧米景気の不透明感などを背景に円相場が約15年ぶりの高値となる1ドル=82円台まで上昇したことを受け、政府・日銀は2004年3月以来6年半ぶりとなる円売り・ドル買い介入に踏み切った。これは日本の単独介入で、欧米の支持は得られていなかったとされる。介入を受けて円相場は84円台まで下落した(出典:日本経済新聞「政府・日銀が円売り介入 6年半ぶり、単独で」2010-09-15、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「日本の為替介入~6年半ぶりの実施と介入の仕組み~」2010-09-16)。
2011年:震災・史上最高値・単日8兆円
2011年は日本の介入史で最も濃い1年だった。
- 3月18日:G7協調介入(円売り)。東日本大震災後の混乱に乗じて円が急騰し、17日早朝に1ドル=76円25銭をつけた。これを受けてG7が緊急電話会議で協調介入に合意。日銀とFRBは円売り・ドル買い、ECBは円売り・ユーロ買い、英中銀は円売り・ポンド買いで動いた。相場は81円台まで戻した。G7による協調介入は2000年9月以来、約10年半ぶりだった(出典:日本経済新聞「日米欧が円売り協調介入 G7合意受け」2011-03、Bloomberg「G7が協調介入実施で合意-大震災後の円急騰で緊急電話会議」2011-03-18)。
- 8月4日:単独で4兆5,129億円。米国債格下げ懸念で再び円高が進み、当時としては最大規模の単独介入が実施された(出典:第一生命経済研究所「8月4日の為替介入は効いたのか」2011-08、日刊工業新聞)。
- 10月31日:単日8兆722億円。ドル円が75円32銭という史上最高値(円の最高値)をつけた直後に実施された。これは現在も「単日の介入額として過去最大」の記録である(出典:日刊工業新聞ほか)。
2022年:24年ぶりの円買い介入(3回)
ここから局面が変わる。長く円売りばかりだった日本が、1998年以来24年ぶりに「円買い」に転じた。
| 実施日 | 実施時の水準 | 規模 | 直後の動き |
|---|---|---|---|
| 2022年9月22日 | 145円台 | 約2.8兆円 | 一時140円台(約5円) |
| 2022年10月21日 | 151.90円台 | 約5.6兆円 | 一時144円台(約7円) |
| 2022年10月24日 | 149円台 | 約7,300億円 | 一時145円台(約4円) |
出典:フジトミ証券「2022年と2024年に実施された為替介入のデータをおさらい」、ニッセイ基礎研究所「為替介入の軌跡を振り返る~2022年以降のまとめと今後の行方」、財務省 公表データ
2024年:円買い介入(4回)
| 実施日 | 実施時の水準 | 規模 |
|---|---|---|
| 2024年4月29日 | 160.17円前後 | 約5.9兆円 |
| 2024年5月1日 | 157.99円前後 | 約3.8兆円 |
| 2024年7月11日 | 161.76円前後 | 7月11日・12日の2日間で計約5.5兆円 |
| 2024年7月12日 | 159.45円前後 |
出典:フジトミ証券 同上、ニッセイ基礎研究所 同上、日本経済新聞「円買いの為替介入、6〜7月は5.5兆円」2024-07-31
ニッセイ基礎研究所の整理によれば、2022年以降の円買い介入は3局面・合計7日・24.5兆円規模とされる。
2026年7月31日:28年ぶりの日米協調・円買い
2026年7月下旬、円相場は1ドル=164円前後まで下落し、1986年以来およそ40年ぶりの円安水準となったと報じられた。これを受けて7月30〜31日にかけて、日本の財務省と米財務省が協調して円買い介入を実施した。実際の介入は162円台で報じられており、円は162円台後半から158円台後半まで急騰したとされる(出典:日本経済新聞「政府・日銀の為替介入の速報とニュース」トピックページ)。なお164円前後は7月下旬につけた安値であり、介入が実施された水準とは区別して読む必要がある。円買い局面での日米協調は1998年6月以来28年ぶりとされる(出典:国際通貨研究所「28年ぶりの日米円買い協調介入の背景と影響」2026-08-12、日本経済新聞「協調介入とは 円買い局面での実施は28年ぶり」2026-08、CNBC「U.S., Japan confirm coordinated yen intervention, signal readiness for more」2026-08-03、Al Jazeera 2026-08-03)。
8月3日に片山財務相が談話を出して実施を確認し、米国側もベセント財務長官が声明で確認、「さらなる協調介入への参加をためらわない」という趣旨を表明したと報じられている(出典:野村総合研究所 木内登英「円安阻止の日米協調介入について片山財務相が談話」2026-08-03、CNBC 同上)。
財務省の公表によると、2026年7月30日から8月26日までの介入額は15.4兆円(約980億ドル)と報じられている(出典:CNBC「A 'weaponized' yen: How the U.S.-Japan intervention may reshape global currency markets」2026-08-07)。2022年以降の円買い介入が3局面・7日で24.5兆円だったことと比べると、1カ月弱でそれに迫る規模が投じられた計算になる。
📋 主要な介入の一覧
| 時期 | 方向 | 形態 | 水準・規模の目安 |
|---|---|---|---|
| 1985年9月 | ドル売り | G5協調 | 250円前後 → 1年弱で150円台へ(プラザ合意) |
| 1995年 | 円売り | 日米協調 | 4/19に79円75銭 → 9月に100円台へ |
| 1998年6月17日 | 円買い | 日米協調 | 2,312億円。その後8月に147円66銭まで円安進行 |
| 1999〜2000年 | 円売り | 単独 | 円高局面で断続的に実施 |
| 2003年1月〜2004年3月 | 円売り | 単独 | 約35兆円(1991年4月以降の累計の4割超) |
| 2010年9月15日 | 円売り | 単独 | 82円台 → 84円台。6年半ぶり |
| 2011年3月18日 | 円売り | G7協調 | 76円25銭 → 81円台。G7協調は10年半ぶり |
| 2011年8月4日 | 円売り | 単独 | 4兆5,129億円 |
| 2011年10月31日 | 円売り | 単独 | 8兆722億円(単日で過去最大)。75円32銭の直後 |
| 2022年9〜10月 | 円買い | 単独 | 3回・計約9.2兆円。145〜152円台 |
| 2024年4〜7月 | 円買い | 単独 | 4回。158〜162円前後 |
| 2026年7月31日〜 | 円買い | 日米協調 | 162円台で実施(7月下旬の安値は164円前後)。7/30〜8/26で15.4兆円 |
※水準・金額はいずれも報道および各社レポートに基づく参考値です。公式な確定値は財務省「外国為替平衡操作の実施状況」をご確認ください。1991年3月以前は公式な実額データがありません。
🔍 この年表から読み取れること
① 円買い介入は、歴史的にきわめて少ない
上の一覧を見ると、大半が「円売り(ドル買い)」であることが分かる。日本は長く円高に悩まされてきた国であり、介入もそちら向きが基本だった。円買い介入が行われたのは1998年、2022年、2024年、2026年の4局面に限られる。
② 円買いと円売りでは、続けられる長さが違う
これは仕組み上の非対称性である。
- 円売り(ドル買い)=円を用意して売る。円は自国通貨なので、理屈のうえでは制約が小さい。2003〜04年に35兆円を投じられたのはこのため。
- 円買い(ドル売り)=手持ちの外貨(外貨準備)を売って円を買う。外貨準備という有限の原資に制約される。
つまり「円買い介入は無限には続けられない」という点が、円売り介入との決定的な違いである。2026年の局面で「残弾」が話題になるのはこのためである。なお2026年は米財務省が担保付きでドル資金を供給する枠組みを用意し、米国債の大量売却を避けたと報じられている(出典:日本経済新聞「日米協調の為替介入、避けたかった米国債売却の悪夢」2026-08)。
③ 「協調」は例外である
一覧のうち協調介入は、1985年(G5)、1995年(日米)、1998年(日米)、2011年(G7)、2026年(日米)にとどまる。協調が成立するには相手国の同意が要るため、頻繁には起きない。2010年9月の介入が単独で行われ欧米の支持を得られなかったことは、その難しさを示している。
④ 規模の大きさと、相場の転換は直結していない
これが年表から最も読み取りやすい教訓である。
- 1998年6月:協調介入だったが2,312億円と小規模で、その後も円安は進み8月に147円台へ。転換のきっかけは8月のロシア危機だった。
- 2011年10月:単日8兆722億円という過去最大規模でも、円高基調はすぐには終わらなかった。
- 1995年:介入に加えてG7声明という枠組みがあり、その後大きく戻した。
介入だけで流れが変わった例は見つけにくく、他の材料と重なったときに大きく動いている、という整理ができる。ニッセイ基礎研究所も、規模と持続性は結びついていなかったと指摘している。
⑤ 実施される「水準」は、そのつど切り上がっている
円買い介入に限って実施時の水準を並べると、145円台(2022年9月)→ 151円台(2022年10月)→ 160円前後(2024年4月)→ 162円前後(2024年7月)→ 162円台(2026年7月)となる。おおむね切り上がってきたが、一本調子ではない。2022年10月は151円台のあと149円台でも実施されており、2024年も160円台のあと158円前後で実施されている。
さらに2026年9月18日には、158円台でレートチェック(介入の前段階とされる当局の照会)が実施されたと報じられた。これについては「当局の警戒ラインが以前より円安側にシフトした可能性」と「以前と同じ水準で警戒している可能性」の双方の解釈が出ている(出典:Nikkei Asia「BOJ conducts rate check, lifting yen to upper-156 range against dollar」2026-09-19、日本経済新聞「日銀レートチェック再び、連休前に円安けん制」2026-09-19)。レートチェックが行われても介入に至らずに終わるケースも過去にはあったとされる。
📚 用語メモ
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 外国為替平衡操作 | 為替介入の正式名称。財務大臣の権限で決定し、日本銀行が財務大臣の代理人として実務を行う(出典:日本銀行「日本銀行における外国為替市場介入事務の概要」) |
| 単独介入 | 一国の通貨当局だけで行う介入 |
| 協調介入 | 複数国の通貨当局が示し合わせて同じ方向に行う介入 |
| 覆面介入 | 実施の事実を当局が公表しないまま行う介入。事後の公表データで判明する |
| レートチェック | 当局が金融機関に相場水準を問い合わせる行為。介入そのものではないが、市場への牽制と受け止められる |
| 公表スケジュール | 月次の総額は翌月末、日次の詳細は四半期ごとに公表される(出典:財務省) |
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本記事は情報提供を目的として作成されており、金融商品取引法に基づく投資助言・投資勧誘・特定金融商品の売買推奨を行うものではありません。掲載されている情報は2026年9月20日時点の公開報道・調査資料・公表統計をもとにした参考解説であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。過去の為替介入の水準・金額は報道および各社レポートに基づく参考値であり、公式な確定値は財務省「外国為替平衡操作の実施状況」をご確認ください。1991年3月以前については公式な実額データが公表されていません。将来の為替・金利・資産価格の方向性、および為替介入の実施・非実施についていかなる予測・保証も行いません。過去の事例は将来の結果を示唆するものではありません。実際の投資判断および運用はご自身の責任と判断において行ってください。必要に応じて専門家(証券会社・ファイナンシャルプランナー等)へのご相談をお勧めします。