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⚠️ 本記事は投資にまつわる相場格言・考え方を整理した「情報提供」であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。投資には元本割れリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。

🌡 「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れるときに貪欲であれ」|感情の温度計として使う

公開日:2026 年 8 月 15 日 / 読了時間:約 9 分 / カテゴリ:投資格言から学ぶ(第35回)

「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れるときに貪欲であれ」——この言葉を一度は耳にしたことがある方は多いでしょう。ウォーレン・バフェットが1986年のバークシャー・ハサウェイ株主書簡(1987年公開)で記した言葉で、現代の投資家に最も引用されるフレーズのひとつです。

しかし「知っている」と「使いこなせる」はまったく別物です。この格言を「市場が怖いときは買え」という逆張りの号令として受け取ると、タイミングを誤るリスクがあります。この記事では、格言の正確な出典と文脈、背景にある心理メカニズム、そして「感情の温度計」として自己点検に使うという正しい読み方を、具体的な数字の仮例とあわせて整理します。

📌 この記事の結論(3 行サマリ)

1️⃣ 格言の意味と由来——1986年バークシャー書簡の文脈

この格言はウォーレン・バフェット(1930年生まれ、米国の著名な投資家)が1986年のバークシャー・ハサウェイ株主年次書簡(1987年公開)に記したとされています(帰属は広く認識されているが、厳密な一次資料の確認は読者自身でも可能)。

原文は次のとおりです。

"We simply attempt to be fearful when others are greedy and to be greedy only when others are fearful."
(私たちは、他の人々が貪欲であるときには恐れ、他の人々が恐れているときにだけ貪欲であろうとしているだけです。)
— ウォーレン・バフェット、1986年バークシャー・ハサウェイ株主書簡(諸説あり)

注目すべきは「simply attempt(ただ試みているだけだ)」という謙虚な言葉遣いです。「こうすれば利益を得られる」と言い切っているのではなく、そのように努力しているというスタンスで語られています。この文脈が、格言の本来の温度感を示しています。

書簡では、この言葉の前段に「恐怖と強欲という2つの超伝染性の病気が投資コミュニティで永遠に起こり続ける。そのタイミングは予測不可能だ」とも書かれており、相場のタイミングを予測する格言ではなく、自分自身の感情状態を意識するための言葉であることが読み取れます。

2️⃣ 2008年「Buy American. I am.」——格言を行動で示した実例

この格言が世界的に再注目されたのは、2008年10月16日にバフェットがニューヨーク・タイムズに寄稿したオピニオン記事「Buy American. I am.(米国株を買え。私は買っている。)」がきっかけです。

当時、米国株式市場はリーマン・ショック(2008年9月)を受けておよそ30%の急落を記録しており、メディアは連日「金融崩壊」「大恐慌以来最悪」と報じていました。世間に極端な恐怖が充満していた時期に、バフェットは「私は自分の個人口座で米国株を買い始めている」と公言したのです。

💡 「Buy American」寄稿の文脈:バフェットはこの記事の中で「株式は将来的に現金を大幅に上回るリターンを出す可能性が高い」と書きつつ、「良いニュースが戻ってきてから買えば、恩恵はずっと小さい」とも述べています。同時に「今の自分が見えていないことも多い」という限界も認めており、断言ではなく自らの信念と対処方針の共有として書かれています。

この実例が示すのは、格言の「恐れているときに貪欲であれ」が単なる格言ではなく行動を伴うものであること、そして同時に、その行動が誰にでも容易にできるわけではなく、分析・信念・リスク許容度に基づく個別の判断だということです。

2008年10月時点では市場はさらに下落を続け(S&P 500は翌3月に底を打った)。「恐怖のときに買う」が正しい方向性であったとしても、底ではなかった。これが「即座に買え」ではなく「自分の感情を点検する」への解釈を重視する理由のひとつです。

3️⃣ 具体例:恐怖・強欲・中立のAさん・Bさん・Cさん(仮の数字)

格言の効果を体感するために、同じ相場を3人が経験した場合を考え方を説明するための仮の例として整理します。

以下の数値は「考え方を説明するための仮の例」であり、特定銘柄や特定手法の実際の成績を示すものではありません。
  Aさん(群集と同調) Bさん(格言を意識) Cさん(中立・積立継続)
市場が急落(仮:-35%)のとき 「もっと下がる」と全売却・現金化 「自分も恐怖に動かされていないか」を点検→持ち続ける 積立を機械的に継続
市場が急騰(仮:+50%回復後)のとき 「まだ上がる」と高値圏で全力投入 「自分が強欲になっていないか」を点検→リバランス 積立を機械的に継続
仮の3年後の結果イメージ 安値で売り・高値で買い→大幅な取り損ね 感情点検により大きなミスを避ける傾向 市場平均に近いリターンを得る傾向

Bさんが格言から得たのは「自分の感情が今どこにあるかを自問する習慣」です。「恐怖を感じているなら、それは群集の感情と同調しているサインかもしれない」という内向きの点検を行うことで、最も大きな行動ミス(安値で全売り・高値で全力投入)を避ける可能性が高まる、という構造です。

✅ Bさんの格言の使い方:「今すぐ何を買え・売れ」という行動指示ではなく、「今の自分は恐怖に動かされていないか、強欲に流されていないか」という感情の現在地確認に使っています。これが「感情の温度計」という表現の意味です。

4️⃣ 図解:感情の温度計——恐怖ゾーンと強欲ゾーン

「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れるときに貪欲であれ」の感情温度計概念図。恐怖ゾーン・中立・強欲ゾーンと格言が示す行動の方向を示す。 感情の温度計——自分の現在地を点検する道具 😨 極度の恐怖 😐 中立・様子見 🤑 強欲・過熱 群集が売り急ぐ 「もっと下がる」が多数派 割安感が出やすい 感情の偏りが小さい 価格の方向性不明確 格言の出番が少ない 群集が買い急ぐ 「まだ上がる」が多数派 割高感が出やすい 格言:「貪欲であれ」 (自分が恐怖で動いて いないか点検する) 格言:「恐れよ」 (自分が強欲で動いて いないか点検する) (判断はケースバイケース) ※ 概念を示すイメージ図です。実際の市場は複雑であり、感情ゾーンで機械的な売買判断はできません。
▲ 「感情の温度計」としてのイメージ。恐怖ゾーンでは「自分も群集の恐怖に動かされていないか」を点検し、強欲ゾーンでは「自分も強欲に流されていないか」を点検する——この内向きの自己確認が格言の機能。温度計の位置で機械的に売買するわけではない。※概念を示すイメージ図です。

5️⃣ 裏にある心理——なぜ人は群集と同じ向きに振れるのか

「他人が恐れているときに貪欲であれ」——言葉では簡単ですが、実際に市場が暴落しているときにこれを実践できる人はごくわずかです。なぜでしょうか。

① ハーディング(群集行動)

人は周囲の行動から情報を読み取る傾向があります(社会的証明:Social Proof)。「みんなが売っている」という事実が「自分も売るべき合理的理由があるはずだ」という判断につながりやすいのです。経済学では情報カスケード(Informational Cascade)と呼ばれるこの現象は、個々の判断が正しくても集団として誤った方向に収束するケースがあることを示しています。

② 損失回避バイアス

心理学者ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)とエイモス・トベルスキー(Amos Tversky)の研究(プロスペクト理論、1979年、Econometrica誌掲載)によれば、損失の痛みは同額の利益の喜びの約2倍の強さと感じられる傾向があるとされています。市場が急落しているとき、「これ以上損を増やしたくない」という感情が、冷静な判断を上回りやすい構造があります。

③ 確証バイアス

恐怖に包まれているときは、「まだ下がる」というシナリオを支持するニュースが目に入りやすくなります。「もう底打ちでは」という逆の情報は無意識に軽く見る傾向があります。確証バイアス(自分の既存の感情・信念に合う情報を優先する傾向)が、群集心理をさらに強化します。

💡 「自分も群集の一人かもしれない」という気づき:この格言の価値は、上記3つのバイアスが働いているときに「待てよ、今の自分の感情は群集と同じ向きに動いていないか」と立ち止まらせる点にあります。逆張り行動を命令するのではなく、感情のオートパイロットにブレーキをかけるための問いかけとして機能します。

6️⃣ 恐怖強欲指数(CNN Fear & Greed Index)との接続

CNN Fear & Greed Index(恐怖強欲指数)は、米CNNが公開している市場センチメント指数で、0〜100のスコアで市場全体の感情状態を示します。0〜24を「極度の恐怖(Extreme Fear)」、75〜100を「極度の強欲(Extreme Greed)」と分類し、株価モメンタム・VIX・プットコール比率・ジャンク債需要など7つの指標を組み合わせて算出しています。

Nationwide Financial の分析(2019年以降のデータに基づく試算、参考情報)によれば、Extreme Fear(25以下)の後3ヶ月間のS&P 500の平均リターンは+8.6%というデータもあります。ただしこれは第三者による過去の特定期間の集計を参考として紹介するものであり、当サイトが独自に検証・再計算した数値ではありません。集計期間や算出方法によって結果は変わり得るもので、将来の同様の結果を示唆・保証するものでもありません。

恐怖強欲指数は「今の市場センチメントがどのあたりにあるか」を把握するための参考ツールです。スコアが低い=即買いのシグナルではなく、自分の感情が市場の多数派と同じ向きに動いていないか確認するための外部参照点として活用するのが、格言の趣旨に沿った使い方です。

また、AAII(米国個人投資家協会)の投資家センチメント調査では、弱気比率が極度に高い局面(70.3%、2009年3月5日——後に株式市場の底値局面となった時期)が記録されています。逆に強気比率が過去最高(75.0%)を記録したのは2000年1月6日——ドットコムバブルの天井に近い時期でした(AAII公表データ)。これらは、群集の感情が極端に傾いた時期が転換点と近かった事例として参照されることがあります。ただし、これらは後知恵で確認できる事例であり、リアルタイムの予測能力を示すものではありません。

🩺 市場の恐怖強欲指数をリアルタイムで確認
当サイトの「市場健康度」ページでは、恐怖強欲指数(CNN Fear & Greed)やバフェット指数などのセンチメント指標を毎日更新して掲載しています。格言を使った「感情の点検」の外部参照として活用できます。
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7️⃣ 現代の実践——感情の温度計として使う3つのステップ

この格言を「感情の温度計」として機能させるために、実践的な3ステップを整理します。

ステップ①:今の自分の感情を言語化する

「なんとなく買いたくない」「とりあえず売ってしまいたい」という衝動を感じたとき、まず「今自分は恐怖を感じているか、それとも強欲になっているか」を言葉にする習慣を持ちます。感情に気づくだけで、オートパイロットの行動を止める効果が期待できます(認知行動療法における「メタ認知」——自分の感情・思考パターンを一歩引いて客観的に観察する能力——という概念に通じる考え方です)。

ステップ②:外部の温度計を参照する

自分の感情だけでは判断が難しい場合、恐怖強欲指数やVIX(恐怖指数:S&P 500のオプション市場から算出される将来の変動率の予測値)、AAII投資家センチメントなどの客観的な指標を参照します。「市場全体がどの感情ゾーンにいるか」を外部から確認することで、自分の感情との差分が見えやすくなります。

ステップ③:感情ではなく事前のルールで行動する

「恐怖のときに貪欲であれ」を実践するには、事前に定めたルール(分割投資のタイミング・リバランスの基準など)に従うのが現実的な方法のひとつです。感情が高ぶっているときにゼロから判断しようとすると、群集と同じ方向に動きやすい。一方、「下落○%でこの比率だけ追加積立する」と事前に決めておけば、感情ではなくルールが行動を決めます。

✅ 3ステップの共通原則:「恐怖のとき買え」という逆張り行動の命令ではなく、①感情に気づく → ②外部の温度計で客観視 → ③ルールに従う、というプロセスを経ることで、感情の振り回されを構造的に減らすことを目指します。

8️⃣ よくある誤解——「恐怖=即買い」ではない

この格言でよくある誤読は、「市場が恐怖に包まれているときは今すぐ全力で買うべきだ」という解釈です。これにはいくつかの問題があります。

格言を「恐怖=即買い」の号令と読んで全力投入し、さらなる下落に耐えられず損切りしてしまうのは、格言を活用しているのではなく格言の表面だけをなぞった危険な使い方です。格言の趣旨は「自分の感情を点検する」であり、「感情を逆方向に全力で実行する」ではありません。

9️⃣ 姉妹格言との比較——#6・#13・この格言の使い分け

このシリーズには、群集心理に関連する格言が複数登場します。違いを整理すると、各格言がそれぞれ異なる「何を見るか」を示していることが分かります。

格言 何を見るか 主な機能
人の行く裏に道あり花の山(#6) 市場・他者の行動 みんなが行く道は混みすぎ→少数派の道を探す(行動の方向を指示)
強気相場は悲観の中に生まれる(#13) 市場サイクルの位置 悲観が最大のときが次の上昇の種まき期(市場のフェーズを読む)
他人が貪欲なときに恐れ…(#35) 自分自身の感情 「今の自分は群集と同じ感情に動かされていないか」の内向き点検(感情の温度計)

3格言に共通するのは「群集心理への意識」ですが、#6は「どこへ行くか」、#13は「今どのフェーズか」、#35は「自分の感情がどこにあるか」という、それぞれ異なる問いに答えるものです。3つを組み合わせると、「市場のフェーズ(#13)を確認し、自分の感情(#35)を点検し、行動の方向(#6)を選ぶ」という重層的な使い方に近づきます。

🔟 まとめ

第35回「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れるときに貪欲であれ」を整理します。

「他人が恐れているときに冷静でいられるか」——それは意志力よりも、事前に決めたルールと、感情を客観視する習慣によって支えられるものと考えられます。格言はその習慣を身につけるためのきっかけとして、繰り返し参照する価値がありそうです。

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今の市場センチメントが恐怖ゾーンにあるのか、強欲ゾーンにあるのかを確認することで、「感情の温度計」を実際に使うことができます。バフェット指数・VIX・恐怖強欲指数を毎日更新中。
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