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⚠️ 本記事は投資にまつわる相場格言・考え方を整理した「情報提供」であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。投資には元本割れリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。

🎢 「行き過ぎもまた相場」|オーバーシュートと逆張りの危うさ

公開日:2026 年 7 月 23 日 / 読了時間:約 9 分 / カテゴリ:投資格言から学ぶ(第20回)

「投資格言から学ぼう」シリーズ第20回は、「行き過ぎもまた相場」です。

この格言が伝えるのは、株価や為替レートが企業の実体・経済の実態から大きく乖離して上がり続けたり、下がり続けたりすること——いわゆる「オーバーシュート(行き過ぎ)」は、異常ではなく「相場の常態」だという教えです。

そして、もう一つの裏の教訓があります。「行き過ぎたから今度は戻るはず」と逆張りをしてもうまくいかないことがある、ということ。行き過ぎはさらに行き過ぎ続けることがあり、「適正価格に戻るはず」という読みは、タイミングを間違えると大きな損失につながりやすいのです。

📌 この記事の結論(3 行サマリ)

1️⃣ 格言の意味と由来——「オーバーシュート」とは何か

「行き過ぎもまた相場」は、日本証券業協会の公式相場格言集にも収録されている格言です(由来の特定人物・初出文献は確認されておらず、諸説あり)。江戸時代の大坂・堂島米会所(1730年に徳川幕府が公認した、世界初の先物取引市場とされる)での取引から生まれた格言群の流れを汲むと考えられますが、詳細は不明です。

格言が指す「行き過ぎ」とは、現代ではオーバーシュート(overshoot)と呼ばれる現象——株価・為替・商品価格などが、企業の業績・経済の実態から見た「妥当とも思える水準」を大きく突き抜けて動いていく状態のことです。

💡 「行き過ぎ」の二面性:この格言には2つのメッセージが込められています。①「行き過ぎは相場のうち=異常ではない」という受容の教えと、②「行き過ぎには反動(戻り)を覚悟せよ」という警戒の教えです。一方だけで読むと誤解が生じます。

日本証券業協会の解説では、「どの指標を見ても、どう試算してもこれ以上株価が高くなるはずはないといってみたところで、現実に株価はこの予想を上回ってしまう——スピードを出して走ってきた自動車が急ブレーキをかけてもすぐには止まれないようなものだ」と説明されています。相場の勢いがついているものは、行きつくところまで行かなければ収まらない——これが「行き過ぎもまた相場」の核心です。

2️⃣ なぜ「行き過ぎ」は起きるのか(需給と心理の2軸)

なぜ価格は「妥当な水準」で止まらず、さらに動いてしまうのでしょうか。大きく分けると需給の力心理の力の2軸から説明できます。

需給面:勢いは自己強化する

上昇相場では、価格が上がるほど「乗り遅れたくない」という参加者が増え、さらに買いが入ります。これが価格を「妥当な水準」を超えてさらに押し上げます。また、空売り(下落に賭けるポジション)をしていた投資家が損失に耐えられなくなり、買い戻しを余儀なくされるショートスクイーズ「買いは家まで、売りは命まで」でも解説)も、上昇を加速させます。下落でも同様に、パニック売りが売りを呼ぶ構造が生まれます。

心理面:FOMO・群集心理・損失回避

こうした力が複合的に働くため、価格は「妥当な水準」をあっさり通り越してしまいます。格言はこれを「行き過ぎもまた相場(の自然な姿)」と受け止めることを教えているのです。

3️⃣ 歴史が教える「行き過ぎ」の事例

「行き過ぎ」は特定の時代の特殊現象ではなく、歴史を通じて繰り返されてきました。代表的な事例を見てみましょう。

ドットコムバブル(1995〜2002年、米国)

インターネット関連企業への熱狂が市場を席巻したこの局面では、NASDAQ総合指数が1995年の約750ポイントから、2000年3月10日のピーク時には5,048ポイントまで約6.7倍に上昇しました。収益がほぼゼロの企業でも高い時価総額を維持する状況は、多くの投資家に「行き過ぎでは?」という印象を与えていましたが、上昇はさらに続きました。ピーク後は2002年10月には約1,140ポイントまで約78%下落。失われた時価総額は5兆ドルを超えると言われています。さらに、2000年3月のピーク水準を再び超えたのは2015年3月——実に15年後のことでした。

ミーム株・GameStop(2021年1月、米国)

ソーシャルメディアを通じた個人投資家の組織的な買いとショートスクイーズが重なり、ゲーム小売チェーンの株価が2021年1月4日の17.25ドルから、1月27日には347.51ドルへと約20倍に上昇しました(一時の日中高値は483ドル)。「行き過ぎだ」と判断して早期に空売りに入った投資家の多くは、大きな損失を被りました。行き過ぎはさらに行き過ぎ続けたのです。

チューリップバブル(1636〜1637年、オランダ)

歴史的バブルの代名詞として知られるこの事例では、希少な球根品種「センペル・アウグストゥス(Semper Augustus)」の価格が1637年1月のピーク時に約10,000ギルダーとも記録されています(当時の熟練職人の年収の数十倍相当とも。ただし当時の記録は断片的であり、規模は諸説あり)。その後価格は急落し、90%以上の下落と言われます。これほど極端な行き過ぎが起きたことは、当時の人々にも「あり得ない」と感じられたはずですが、それでも起きました。

上記の歴史的数値は、複数の情報源から確認したものです。特にチューリップバブルの数値は史料が断片的で諸説あります。これらは「考え方を説明するための参考事例」として参照してください。

4️⃣ 図解:行き過ぎと早すぎる逆張りの落とし穴

行き過ぎ相場において、早すぎる逆張りが損失につながりやすいことを示す概念図。価格が「妥当と思える水準」を超えてさらに上昇を続ける一方、早期に逆張りした場合は損失が拡大しやすい様子を表す。 「行き過ぎもまた相場」——早すぎる逆張りの落とし穴(概念図) 時間 → 価格 参考:妥当と思える水準 行き過ぎ(上昇) ピーク 早期逆張り 「高すぎる、戻るはず」 さらに上昇…損失拡大 反転確認後 に参加 開始
▲ 価格が「妥当と思える水準」を大きく超えて行き過ぎても、すぐには反転しないことがある。早すぎる逆張り(黄点)はその後の上昇で損失が膨らみやすく、反転が確認できてから参加する(緑点)ほうが、行き過ぎとのより落ち着いた付き合い方の一例となりやすい。※ 概念を示すイメージ図です。

5️⃣ 「市場は予想より長く行き過ぎ続ける」——逆張りの罠

行き過ぎ相場で「そろそろ戻るはず」と感じた投資家が直面するのが、「行き過ぎはさらに続く」という現実です。この点を端的に表した言葉があります。

「市場は、あなたが支払い能力を保てる時間よりも長く、不合理でいることができる」
この言葉は広くケインズの言葉として流通していますが、Quote Investigatorの調査では、ケインズ(1883〜1946年)が実際に発言・執筆したという記録は確認されておらず、最も古い記録は金融アナリストのA. ゲイリー・シリング(A. Gary Shilling)の発言(1983年のセミナー記録)とされています(諸説あり)。ケインズ自身は『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936年)で投資家心理の非合理性を論じていますが、上記の文言の収録は確認されていません。
帰属の正確性はともかく、「行き過ぎは予想より長く続く」という教訓の本質は、現代の市場でも多くの投資家が体験していることです。

行動経済学の視点では、De Bondt & Thaler(デ・ボンドト&セイラー、1985年)が『The Journal of Finance』に発表した論文「Does the Stock Market Overreact?(市場は過剰反応しているか)」が有名です。この研究では、過去3〜5年間で極端に上昇した銘柄群(Winner)と極端に下落した銘柄群(Loser)のその後を追跡し、過去の「負け組」が3〜5年後には「勝ち組」を大幅に上回る傾向(平均累積超過リターン約24.6%)があることを示しました。

しかしここで重要なのは、この「逆転効果」は3〜5年という長期のスパンで観察されたものだということです。短期の逆張りが機能するわけではなく、「行き過ぎた相場はいつかは戻る」という大局的な傾向があるとしても、「今すぐ戻る」保証にはならないという点が肝心です。

逆張りの落とし穴:「行き過ぎている」と判断して早期に逆方向のポジションを取ると、行き過ぎがさらに続く期間中は損失が膨らみ続けます。資金や精神力が尽きて手じまいを余儀なくされ、その直後に相場が反転するという展開は、投資家の間でよく語られる苦い経験です。

6️⃣ 数字の例:逆張りの3パターン比較

具体的なイメージをつかむため、架空の株式(以下はすべて考え方を説明するための仮の例です)で3つのパターンを比べてみましょう。

以下の数値は、考え方を説明するための仮の例です。特定銘柄の成績や特定の手法による利益を示すものではありません。

仮定:架空の銘柄「株式A」。業績から見た参考水準を1,000円とします。しかし市場の熱狂でそれを大きく超えて上昇していく局面を考えます。

投資家 行動の考え方 エントリー価格(仮) その後の展開(仮) 結果(仮)
Aさん(早期逆張り) 1,500円になった段階で「行き過ぎ」と判断し空売り 1,500円で売り 株価は2,500円まで上昇後に急落 -1,000円/株の含み損(損切りすれば確定損)で手じまいを強いられる可能性
Bさん(さらに遅い逆張り) 2,000円まで上がってから「さすがに戻るはず」と空売り 2,000円で売り さらに2,500円まで上昇 -500円/株の含み損。ただし最終的には下落が来るため、待ち続けた場合に利益が出るかはタイミング次第
Cさん(反転確認後) ピーク2,500円から反落が始まり、下落トレンドを確認してから空売り 2,200円(反落確認後)で売り 株価は1,200円まで下落 +1,000円/株の利益(仮)。頭(最高値)は取れないが、下落の「胴体」を比較的取りやすくなった

Aさんは「行き過ぎを早めに察知した」という意味では正しいかもしれませんが、「行き過ぎはさらに続く」という相場の現実に直面しました。Cさんは最高値での売りには間に合わなかったものの、反転の確認という一手を待つことで、より落ち着いたエントリーができたという一例です。

もちろん、Cさんの手法でも「反転と思ったがさらに下落が続く」「損切りが難しい」など別の課題があります。大切なのは「早すぎる逆張りは"行き過ぎが続く"という現実に晒されやすい」という構造を理解することです。

7️⃣ 現代の実践——行き過ぎ相場とどう付き合うか

「行き過ぎもまた相場」という教えを実際の行動に落とし込む際の、基本的な考え方を3点紹介します。

① 「行き過ぎ」を認識しても、すぐに逆張りしない

「高い」「低い」と感じるだけでは、逆張りの根拠にはなりません。「行き過ぎ」を認識した段階では、トレンドの方向に従うか、様子見するという選択肢も検討に値します。「相場は相場に聞け」の考え方——価格とトレンドを主観より優先するというアプローチとも連動します。

② 逆張りを試みるなら「反転の証拠」を待つ

行き過ぎ相場への逆張りを検討するなら、価格の動向・出来高・テクニカル指標(RSI〈Relative Strength Index:直近の値動きの強弱を0〜100の数値で示す指標〉の過熱感、移動平均〈一定期間の価格を平均して結んだ折れ線〉との乖離率など)で反転のサインを確認してからエントリーする考え方があります。落ちてくるナイフを掴まない——「落ちてくるナイフはつかむな」の精神と同じです。下落局面の行き過ぎへの逆張り買いでも、底打ち確認の重要性は変わりません。

③ トレンドに乗っているときは「反動の覚悟」を持つ

行き過ぎ相場の恩恵を受けてポジションを持っている側も、この格言から学べることがあります。「上昇が大きければ、その後の下げも大きい可能性がある」「山高ければ谷深し」との連動)。利益が乗っているうちに部分的な利確を検討したり、損切りラインを引き上げる(トレーリング)などで、急反転に備える考え方が一例として挙げられます。詳しくは利益確定の心理と技術も参照ください。

✅ 3つに共通する発想:「行き過ぎ」という認識と「相場への行動」の間には、一拍置くことが有効なことが多いです。行き過ぎを感じた直後ではなく、相場自身が変化のサインを示した後に行動する——この一手が、早すぎる逆張りの損失を避けやすくすることにつながりやすいと考えられます。

8️⃣ よくある誤解——この格言の3つの読み間違い

誤解①「行き過ぎたらすぐに戻る」

格言の「行き過ぎには反動を覚悟」という教えを「行き過ぎたらすぐに戻る」と短絡的に読むと危険です。ドットコムバブルが示すように、行き過ぎがピークに達するまでに数年かかることもあり、逆張りの早入りは長期間の損失を招く可能性があります。「いつかは戻る」と「今すぐ戻る」は全く別の話です。

誤解②「この格言は逆張りを推奨している」

格言は「行き過ぎを否定せず受け入れよ」と教えています。逆張りを奨励しているのではなく、行き過ぎという現象を「異常ではなく相場の一部」として理解せよというメッセージです。相場の勢いに乗ることも、慎重に待つことも、この格言の正しい活かし方の一つです。

誤解③「適正価格という変わらない基準がある」

「行き過ぎ」という言葉は、「行き過ぎていない水準(適正価格)」が存在することを前提にしているように聞こえます。しかし現実には、何が「適正価格」かは投資家によって異なり、また時代によっても変わります。「PER30倍は高すぎる」という判断が正しいかどうかは、金利環境・成長期待・市場全体の評価基準によって変わります。「適正価格」を固定して考えすぎると、早期逆張りの罠に陥りやすくなります。

💡 関連格言との関係:
「山高ければ谷深し」——上昇が大きければ反落も大きい傾向。行き過ぎの「反動」を警告する姉妹格言。
「落ちてくるナイフはつかむな」——下落の行き過ぎ局面での早期逆張り買いを戒める。
「もうはまだなり、まだはもうなり」——「もう行き過ぎた」「まだ行き過ぎていない」という心理の揺れを戒める格言。天底の読み間違いという共通テーマ。
「頭と尻尾はくれてやれ」——行き過ぎの頂点(頭)と大底(尻尾)は最初から諦め、胴体だけ取ろうという実践的アドバイス。

9️⃣ まとめ

第20回「行き過ぎもまた相場」をまとめます。

「行き過ぎもまた相場」——この格言は、相場の非合理を異常として否定するのではなく、「それもまた相場の姿」として受け入れたうえで、どう行動するかを問いかけます。次回も先人の知恵を一つずつ現代の投資に翻訳していきます。

📚 関連シリーズで「相場の読み方」をさらに深く
行き過ぎ相場への対処は、市場の心理・トレンドの把握・利確・損切りの技術と深く結びついています。各テーマの解説記事でさらに詳しく学べます。
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