💸 投資詐欺から身を守る⑭「借りてでも払って」——副業・投資名目で借金をさせる手口の構造と、止まるための確認手順
「副業で月30万円稼げます。まずは無料で話を聞いてみませんか?」——SNSや動画広告でこうした文句を見かけたことがある人は多いでしょう。問題は、その先のやりとりで業者が「サポート費用は消費者金融で借りればすぐ返せる」と言い出す瞬間です。
国民生活センターが2026年5月20日に公表した注意喚起によれば、副業サポートや投資の名目で複数の消費者金融・カードローンから次々と借り入れをさせられるトラブルの相談件数は、2021年度の1,796件から2024年度には5,212件へと約2.9倍(約3倍)に急増しています(5,212÷1,796≈2.90)。なお直近の2025年度は4,088件で、ピークからは減少したものの高い水準が続いています。平均契約購入金額も2021年度の約145万円から2025年度には約257万円へと増加しており(257÷145≈1.77)、1件あたりの規模も大きくなっています。
この手口の最大の特徴は、手持ちがない人からも多額のお金を引き出せる点にあります。詐欺グループは「サポート費用を払えばすぐに稼げる」と説明し、消費者金融への申込みまで細かく指示します。しかし儲けは生まれず、残るのは借金と返済義務だけです。本記事では、この手口の4段階の構造を分解し、「借りてでも」という言葉が出た瞬間に止まるための確認手順を整理します。
① 副業・投資名目で借金をさせる手口の相談件数は2021年度1,796件→2024年度5,212件(約3倍)に急増し、直近の2025年度も4,088件と高水準。平均契約購入金額も2025年度には約257万円へ増加(国民生活センター2026年5月20日公表、2026年9月17日確認)。20歳代以下の若年層からの相談が特に多い。
② 手口は「無料接触→有料サポートの提示→複数の消費者金融で借り入れ指示→支払い後に音信不通」の4段階でほぼ共通。「すぐに返せる」は、借金をさせるためのセリフ。
③ 「借りてでも払って」と言われた時点でその場で中断する。返済義務は借りた本人が負う。申込書に虚偽の記載を指示されたら、それ自体が違法行為への加担の合図。
1️⃣ 数字で見る現在地——相談件数は3年で約3倍
国民生活センターは2026年5月20日、「副業サポートや投資の名目で借金させる業者に注意!——複数の貸金業者から次々と借り入れさせる手口が目立ちます——」と題した注意喚起を公表しました(2026年9月17日確認)。以下の表は同公表に基づく相談動向です。
| 年度 | 相談件数 | 平均契約購入金額 |
|---|---|---|
| 2021年度 | 1,796件 | 約145万円 |
| 2024年度 | 5,212件(ピーク) | — |
| 2025年度 | 4,088件(高止まり) | 約257万円 |
出典:国民生活センター「副業サポートや投資の名目で借金させる業者に注意!」2026年5月20日公表(2026年9月17日確認)。件数・金額は同公表 図1(PIO-NET登録分・2026年3月31日まで)の記載による。平均契約購入金額は金額不明の相談を除く算術平均で1万円以下を四捨五入した値(脚注4のとおり借り入れ以外の支出を含む)。
2025年度は2024年度のピークからやや減少しましたが、2021年度と比較するとまだ2倍以上の水準が続いており、被害は構造的に続いていることが見て取れます。特に20歳代以下の若年層からの相談が多く、国民生活センターも特段の注意を呼びかけています。
同公表で紹介されている具体的な相談事例を3件(要約)示します。
| 事例の概要 | 借入額(概算) |
|---|---|
| ネット広告からアフィリエイトサポートを申し込み、その日のうちに複数の消費者金融から借り入れさせられた | 450万円 |
| AI競馬予想ソフトの購入名目で借り入れを指示された | 100万円 |
| FX投資の契約費用として、消費者金融3社からの借り入れを指示された | 約150万円 |
出典:同上。事例は公表資料の要約。金額は消費者からの相談内容に基づく。
いずれも「稼いですぐ返せる」と言われたうえで、業者の誘導に従って当日中に借り入れをしています。副業で稼ぐことはなく、業者とは連絡が取れなくなりました。
2️⃣ 手口の4段階分解
国民生活センターへの相談事例を横断すると、手口はほぼ4段階のパターンに集約されます。「詐欺だと気づかなかった」のではなく、各段階が自然な流れに見えるように設計されていることが特徴です。
※概念を示すイメージ図です。
3️⃣ なぜ騙されてしまうのか——心理の仕組み
「そんな話を信じるはずがない」と思う人が多いですが、手口は心理的な働きを巧みに利用しています。知っておくことで、同じ状況に置かれたときの気づきになります。
① 権威と社会的証明——「みんなやっている」の圧力
業者は「当社のメンバーは◯◯人」「このサポートで月収が上がった人の声」「他の受講生も最初はこうやって始めた」という形で、すでに多数が参加しているように見せます。人は「多くの人がやっていること」を「安全・正解」と判断しやすい性質があります。さらに担当者が親切に接することで、信頼関係が築かれていくように感じられます。
② コミットメントと一貫性——「ここまで来たし」のサンクコスト
無料セミナーに参加し、資料を読み、担当者と長時間話し合った時点で、人は「ここまでやってきたのだから」という一貫性の圧力を感じます。「今さら断るのも失礼」「時間を使ったから」という心理が、「少し無理してでも続けようか」という判断につながります。これを心理学ではサンクコスト効果やコミットメントと一貫性の原理と呼びます。詐欺の設計は、この心理を意図的に強化するように組み立てられています。
③ 希少性と緊急性——「今だけ」「枠が残り少ない」
「この機会は今だけ」「受け入れできる枠があと少し」「明日には締め切り」という言葉が加わると、人は冷静に考える時間を失います。急かされる場面こそ、立ち止まる合図です。正当なサービスであれば、検討の時間を確保できるのが通常です。
④ 「借金」の感覚的な遠さ
自分の手持ち現金で払うときには感じる「痛み」が、借り入れの場合は目の前のキャッシュとして実感しにくい面があります。特に消費者金融の審査が通った直後は、「お金が手に入った」という感覚が先に立ち、「これをすべて返す必要がある」という現実が後回しになりやすいとされています。業者はこのギャップを利用しています。
4️⃣ 「申込書に虚偽を書くよう指示された」が示すもの
国民生活センターへの相談には、業者から借り入れの申込書に実際の年収よりも高い金額を記載するよう指示されたという事例が含まれています。これは、単なる詐欺被害の話ではありません。
なぜ業者はこうした指示をするのか。理由は貸金業法の総量規制にあります。
総量規制とは、貸金業者(消費者金融やカードローン等)からの借入残高の合計が年収の3分の1を超える場合、新規の貸し付けが原則禁止されるルールです(貸金業法第13条の2等)。これは多重債務を防ぐための制度です。
業者がこの規制を超えて借り入れをさせようとするとき、「年収を高く書いて」と指示します。これに従った場合、借りた本人も虚偽申告に加担した可能性が生じます。申込書に虚偽の記載をするよう言われた瞬間は、「ここで止まる」の明確なサインです。
5️⃣ 総量規制と返済責任——借りたお金の行方
「業者に言われて借りただけ」であっても、返済義務は借りた本人(消費者)が負います。これは国民生活センターが公表で明確に述べている点です。
以下は、考え方を説明するための仮の例です(実際の金利・条件は各貸金業者により異なります)。
消費者金融A社・B社・C社から合計300万円を借り入れたとします(考え方を説明するための仮の例)。仮に年率15%の借入れだとすると、月返済額は1社あたり数万円規模になります。副業や投資で収入が発生しない場合、毎月の手取りから複数社への返済を続ける必要があります。「すぐ返せる」が実現しなかった場合の影響は、借入れ時点で十分に検討する必要があります。
業者への支払い後に業者と連絡が取れなくなっても、消費者金融への返済は続きます。振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)は、国内の金融機関口座への振込被害の一部を対象としていますが、すでに業者に渡ったお金の全額回収が保証される制度ではありません。被害に遭った場合は、早期に相談窓口へ連絡することが重要です。
複数の貸金業者への申込みが短期間に集中する意味
業者が「A社でダメならB社、B社でダメならC社でも申し込んで」と言うのには理由があります。各貸金業者は信用情報機関(CIC・JICC等)を通じて申込み情報を共有しています。短期間に複数社に申し込むと、貸金業者側で「申込みが集中している」と判断し、審査が厳しくなることがあります。
業者がそれを知っていても「次の会社で申し込んで」と言い続けるのは、業者にとって重要なのは消費者の信用状況ではなく、お金を受け取ることだけだからです。
6️⃣ 止まるための確認手順——「判定」でなく「手順」
「これは詐欺かどうか」を自分で判定しようとすることには限界があります。相手はプロです。判定するのではなく、以下の確認手順を持っておくことが実務的な防御になります。
- 「借りてでも払って」「消費者金融で借りればいい」と言われた
→ その場で「検討します」と伝え、その場での返事はしない。借り入れをしてまで支払う必要があるのかを、持ち帰って一人で考える時間を取る。相手が借り入れを前提に話を進めてくる場合は、立ち止まる合図として扱う。 - 申込書に実際の年収より高い金額を書くよう指示された
→ 指示には従わない。虚偽記載の申込みをした場合の責任は借りた本人が負う可能性がある。その場で取引を中断し、188(消費者ホットライン)に相談する。 - 「今日中に決めないといけない」「枠がなくなる」と急かされた
→ 決断を急かすことは、冷静な判断をさせないための手法。急かされたらその場では決めない。翌日以降に改めて検討し、家族や第三者に話す時間を取る。 - スマートフォンの画面を見せて(または遠隔操作アプリを入れて)申込み操作を一緒にやるよう言われた
→ 金融機関や正規のサービスが、第三者と画面を共有しながら手続きを行わせることはない。遠隔操作アプリのインストールを求められたら、インストールしない。既に入れてしまった場合は通信を切り、アンインストール後に各口座の取引履歴を確認する。 - 業者の名前や連絡先をネットで検索したとき、不審な情報が出てくる(または情報が全くない)
→ 投資の勧誘や助言を業として行う場合、金融庁への登録が必要(金融商品取引法)。金融庁ウェブサイトの「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で業者名を確認する。
金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」(fsa.go.jp)から業者名・登録番号を検索できます。登録のない業者が投資の勧誘・助言を業として行うことは、法律上認められていません。
7️⃣ 相談窓口・被害後の初動
「もしかして被害に遭ったかも」「業者に言われて借金をしてしまった」という場合は、早期の相談が重要です。時間が経つほど対応が難しくなる可能性があります。
警察への相談・情報提供。24時間対応(都道府県警察による)。
最寄りの消費生活センター等につながります。借金・副業トラブルの相談はここから。特定商取引法に基づくクーリング・オフ等の手続きについても案内があります。
平日 10:00〜17:00。投資名目のトラブル全般。無登録業者への対応についても相談可。
平日 10:00〜16:00(留守番電話対応あり)。投資名目の不審な勧誘情報の提供先。
多重債務になってしまった場合
複数の貸金業者からの借り入れが残り、返済が難しい状況になった場合は、消費者ホットライン(188)または法テラス(0570-078374)に相談することをご検討ください。任意整理・個人再生・自己破産など、法律的な手続きの選択肢について、弁護士・司法書士から案内を受けられる可能性があります。
被害後の初動チェック
- 借り入れた各金融機関の口座・ネットバンキングのログイン履歴・取引履歴を確認する
- 遠隔操作アプリを入れた場合は、通信を切り→アンインストール→全端末のパスワードを変更する
- 業者との連絡記録(チャット・メール・入金明細)を保存しておく(相談時の証拠になる)
- 188または弁護士会に相談し、クーリングオフや返金請求の可能性を確認する
8️⃣ まとめ
副業・投資名目で消費者金融から借金をさせる手口は、国民生活センターの相談件数が2021年度から2024年度にかけて約3倍に増加しており、特に若年層が多く被害に遭っています。
この手口が巧みなのは、「自分で借りる→自分で払う」という形をとるため、業者は「私たちは何もしていない」という立場をとりやすいことにあります。しかし、借り入れを指示した業者は消費者の信用情報と生活を傷つける行為に関与していると言え、国民生活センターも関係団体(日本貸金業協会)に対し、より慎重な貸付審査や利用者への周知などの取組を推進するよう要望しています。
自分を守るうえで最も実務的なのは、「借りてでも払って」という言葉が出た時点でその取引を止めることです。相手の説明の巧みさ・誠実そうな態度・「みんなやっている」という言葉は、この判断を変える理由にはなりません。迷ったときは、188(消費者ホットライン)に電話してください。
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⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事は投資詐欺の手口と対策に関する一般的な情報を提供するものであり、特定銘柄・金融商品の売買推奨や投資助言ではありません。記載の統計値は国民生活センター等の公表情報に基づきますが(2026年9月17日時点で確認)、今後修正・更新される可能性があります。個別の被害・借入トラブルに関する判断は、消費生活センター・弁護士等の専門窓口にご相談ください。投資には元本割れのリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。