🧪 AIシグナル研究日誌 #84
上昇配置ロングが降格確定
——前向きN=582・CI下限2回連続ゼロ割れ
① 検証対象:「価格がMA25・MA75の上にある状態(上昇MA配置)でのロングシグナル」
② IS(N=480):勝率36.5%(175/480)、E(R)=−0.151、RCI全域マイナス——過去データで有効性なし
③ FWD(本記事の独立検証 N=582):勝率47.4%(276/582)、E(R)=+0.105、ナイーブRCI[+0.010,+0.200]/降格判定に用いるトラッカー(標準18銘柄 N=570)のクラスター補正後RCI[−0.037,+0.248]→CI下限マイナス
④ 降格ルール発動:CI_lo < 0 が2回連続 → 🟡蓄積中へ降格確定
⑤ 逆説:「MAの上=ロング有利」は過去データでは不成立。下降配置×ロング(N=1340)のほうがRCI全域プラス
§1 今回の研究課題と降格ルールの確認
「価格が移動平均線の上にある = 上昇トレンドが続いているから買いが有利」——これは多くの教科書的解説で語られる直感だ。 本研究日誌では、この直感が我々のシステムシグナルデータで実際に成立するかを定量的に検証する。
フィルタ定義:エントリー価格がMA25・MA75の両方より上(ma_pos = above_both)かつ方向がロング(direction = long)のシグナル。
登録日は 2026-07-20。それより前を IS(学習期間)、以降を FWD(前向き検証期間)として分離する。
降格ルール:昇格後(✅状態)に、前向き平均R の 95%CI下限(CI_lo)がマイナスになる判定が2回連続した場合、🟡蓄積中へ降格する。 本日(2026-08-30)は2回目の確認となり、降格ルールが発動した。
トラッカー(標準18銘柄)FWD N=570 / CI_lo(クラスター補正)= −0.037 < 0
→ 昇格後2回連続でCI_lo < 0 → 降格ルール発動 → 🟡蓄積中へ移行
再昇格条件:CI_lo > 0 が2回連続
§2 IS期間(〜2026-07-19):N=480で大幅マイナス
登録前の全閉鎖シグナル(上昇配置×ロング)は N=480件。IS期間は拡張ユニバース導入前のため、全銘柄ベースと標準18銘柄ベースが一致する。 結果は勝率 36.5%(175/480)、E(R)=−0.151、RCI [−0.251, −0.050]。
RCIが全域マイナスという結果は顕著だ。「MAの上でロングを打つシグナル」はシステム全体で見ると、IS期間において一貫して損失を出していた。 なぜ登録時にホールドアウト合格(pct=45.3%、RCI_lo=+0.028)が出たかというと、ホールドアウト計算は全銘柄(拡張ユニバース含む)・全時間足を対象としており、 本記事の標準18銘柄・閉鎖済みシグナルのみの計算とは母集団が異なる。
図1:IS・FWD期間の勝率比較。IS=36.5%は50%を大きく下回る。FWD=47.4%はやや改善するが、クラスター補正で依然ゼロ跨ぎ。比較として下降配置×ロング(45.7%)を表示。
IS期間のグループ別内訳
| グループ | k/n | 勝率 | E(R) | RCI |
|---|---|---|---|---|
| metal(金・銀) | 6/27 | 22.2% | −0.422 | [−0.855, −0.110] |
| other_fx(ドルクロス) | 44/134 | 32.8% | −0.233 | [−0.421, −0.049] |
| btc | 10/36 | 27.8% | −0.381 | [−0.699, −0.007] |
| jpy_fx(円クロス) | 45/125 | 36.0% | −0.143 | [−0.300, +0.015] |
| index(指数) | 61/145 | 42.1% | −0.043 | [−0.177, +0.092] |
| oil(原油) | 9/13 | 69.2% | +0.846 | [+0.044, +1.648] |
IS期間では metal・other_fx・btc の3グループが RCI 全域マイナスで引っ張っている。 原油(oil)は IS 期間で好成績だが N=13 と少数なため、信頼性は限定的だ。
§3 FWD期間(2026-07-20〜):N=582で表面上プラス、補正後(トラッカーN=570)で降格
前向き検証期間の N=582 では、勝率が 47.4%(276/582)、E(R)=+0.105 に改善した。 ナイーブな RCI(時系列クラスタリングを無視した単純計算)は [+0.010, +0.200] で、CI下限がわずかにプラスだ。 しかし、シグナルの自己相関(同一銘柄での連続発火)を考慮したクラスター補正後は CI下限がマイナスに転じた。
📐 ユニバースと補正値について:本記事の独立検証(N=582)はシステムが発火した全銘柄を対象としています。 前向きトラッカーは標準18銘柄のみを追跡対象としており、同一フィルタで N=570 を計上しています(差分12件は拡張銘柄)。 降格判定の根拠となるクラスター補正後 RCI [−0.037, +0.248] は、トラッカーの N=570 ベースで算出された値です。 本記事の N=582 ベースについては、ナイーブ RCI の下限が +0.010 と僅少であるため同様の補正でゼロを割り込むと見込まれますが、 N=582 ベースの補正値そのものは本記事では算出していません。降格判定はトラッカー(N=570)の補正値に基づきます。
本記事独立検証 N=582 / k=276 / 勝率 47.4% / ナイーブ RCI: [+0.010, +0.200](補正前)
トラッカー(標準18銘柄 N=570)クラスター補正 RCI: [−0.037, +0.248](CI_lo < 0)
→ 降格ルールの発動根拠はトラッカー(N=570)の補正後 CI_lo < 0。本記事の N=582 はナイーブ下限が +0.010 と僅少で、方向性は整合
クラスター補正とは何か:同一銘柄(例: USDJPY)が数時間おきにシグナルを発火すると、これらは独立した観測ではなくなる。 単純なRCI計算はこの依存性を無視してCI幅を過小評価するため、銘柄グループ内の自己相関を考慮した補正を適用している。 この補正により、N=570 という十分に大きなサンプルでも CI 幅が広がり、下限がマイナスとなった。
図2:FWD期間グループ別勝率。metal・indexが50%を超え全体を引き上げている。other_fxが41%と低迷し全体の足を引いている。
§4 グループ別の明暗
FWD期間グループ別詳細
| グループ | k/n | 勝率 | E(R) | RCI(ナイーブ) | 方向性 |
|---|---|---|---|---|---|
| metal(金・銀) | 44/83 | 53.0% | +0.235 | [−0.017, +0.487] | ゼロ跨ぎ |
| index(指数) | 67/131 | 51.1% | +0.200 | [−0.009, +0.392] | ゼロ跨ぎ |
| jpy_fx(円クロス) | 67/139 | 48.2% | +0.123 | [−0.071, +0.317] | ゼロ跨ぎ |
| other_fx(ドルクロス) | 57/138 | 41.3% | −0.038 | [−0.230, +0.155] | ゼロ跨ぎ |
| btc | 20/46 | 43.5% | +0.025 | [−0.317, +0.367] | ゼロ跨ぎ |
| oil(原油) | 15/33 | 45.5% | +0.040 | [−0.316, +0.395] | ゼロ跨ぎ |
FWD期間では全グループの RCI がゼロ跨ぎとなっている。個別グループでの確定的なエッジは確認できない。 metal・index の勝率が 50% 超で全体を支えているが、N が各 80〜130 件と中規模のため、グループ単独での昇格条件(CI_lo > 0 かつ N ≥ 80)は満たせていない。 other_fx(41.3%)が最も低く、FWD全体の CI_lo をマイナスに引っ張る主要因だ。
IS→FWD の変化に注目:IS で最も悲惨だった metal(IS: 22.2%)が FWD では 53.0% に転換している。 これは 2026-07 以降の金・銀相場の強いトレンドを反映している可能性がある。 一方、other_fx は IS(32.8%)から FWD(41.3%)に改善したが、依然として平均を大きく下回る。
§5 月次推移:8月の改善は遅すぎた
| 月 | k/n | 勝率 | E(R) | RCI |
|---|---|---|---|---|
| 2026-07 | 57/136 | 41.9% | −0.023 | [−0.217, +0.170] |
| 2026-08 | 213/434 | 49.1% | +0.144 | [+0.034, +0.253] |
8月単月(N=434)は E(R)=+0.144・ナイーブ RCI[+0.034, +0.253] と全域プラスの結果が観測された。 ただしこの値はクラスター補正や期間の多重比較を適用していないナイーブ CI であり、単月の結果として慎重に扱う必要がある。 累積の FWD 判定(トラッカー N=570・クラスター補正後 CI_lo = −0.037)では降格ルールが発動している。
💡 8月の単月エッジは蓄積中シグナル:8月の改善が偶然ではなく構造的なものであれば、再蓄積を経て再昇格の可能性がある。 「降格 = 完全否定」ではなく「蓄積し直して2回連続 CI_lo > 0 を確認するまで保留」が正しい解釈だ。
§6 比較分析:向き・配置の組み合わせ
| フィルタ | k/n | 勝率 | E(R) | RCI |
|---|---|---|---|---|
| 上昇配置×ロング(IS) | 175/480 | 36.5% | −0.151 | [−0.251, −0.050] |
| 上昇配置×ロング(FWD) | 276/582 | 47.4% | +0.105 | [−0.037, +0.248](トラッカーN=570の補正後) |
| 上昇配置×ロング(全期間) | 451/1062 | 42.5% | −0.011 | ゼロ跨ぎ |
| 下降配置×ロング(全期間) | 613/1340 | 45.7% | +0.066 | [+0.004, +0.128] |
| 上昇配置×ショート(全期間) | 147/350 | 42.0% | −0.021 | [−0.142, +0.099] |
最も注目すべき比較は「下降配置×ロング(below_both×long)」だ。 N=1340 という大きなサンプルで RCI が全域プラス([+0.004, +0.128])となっている。 これは「価格がMAの下にある = 下降MA配置」のときにロングを打つほうが、全体平均として優れている可能性を示唆する。
直感に逆らう結果に見えるが、解釈の一つとして:
• 上昇配置でのロング:すでに上昇した後での追いかけエントリー → 反落リスクが高い
• 下降配置でのロング:MAを下から突き抜けるブレイクアップ or 逆張りエントリー → MA抵抗をすでに下に控えているため、そこがサポートになりやすい
§7 データからの観察:トレンドフォローの盲点
「移動平均線の上にいるから買い有利」という直感は、個人投資家の間で広く信じられている。 しかし本データが示すのは正反対だ。IS N=480 では勝率 36.5%・RCI 全域マイナスという明確なネガティブ結果が出た。
考えられる構造的理由:
- 過剰追随のリスク:価格がMA25・MA75の両方より上にあるとき、それは多くの参加者がすでに「上昇トレンドを確認」している状態を意味する。この段階でのロングは「ニュースが出てから買う」に近く、逆張りの売り圧力を受けやすい。
- システムシグナルの特性:本システムのシグナルはRSI売られすぎ・BBタッチ・高値ブレイク等を含むが、それらが上昇MA配置のときに発火する場合、すでに「買われすぎ」状態で発火しているケースが多い可能性がある。
- グループの非対称性:IS期間の金属・FXは RCI 全域マイナスだが、FWD では金属・指数が改善。2026年後半の相場環境(金高騰・指数堅調)が一時的にこの配置を好転させた可能性がある。
なお、「下降配置×ロング」が RCI 全域プラス([+0.004, +0.128])という結果は、別途独立した検証に値する。 これは「MA の下にある状態でのロング = 反転狙い」が、追いかけエントリーより有効である可能性を示す。次号以降での掘り下げ候補だ。
§8 結論と今後の方針
「上昇MA配置(>MA25&75)×ロング」仮説は、前向きトラッカー(N=570、標準18銘柄)のクラスター補正後 RCI が [−0.037, +0.248](CI_lo < 0)を2回連続で記録し、本日をもって降格確定(🟡蓄積中へ移行)となった。本記事の独立検証(N=582=標準18銘柄570件+拡張銘柄12件)でも勝率 47.4%・E(R)=+0.105 と水準は一致しており、ナイーブ RCI の下限も +0.010 と僅少にとどまる(N=582 ベースのクラスター補正値は本記事では算出していない)。
本検証で確認できたこと(統計的参考情報として):
- 「MAの上にいるから買い有利」という単純なフィルタは過去データで支持されなかった
- 8月単月の改善(RCI全域プラス)は注目すべき変化だが、累積では降格水準
- 「下降配置×ロング」が過去データで RCI 全域プラスを示しており、独立した検証の候補(次号以降)
- グループ別では other_fx(ドルクロス系FX)の該当サンプルの勝率が 41.3% と最も低かった(FWD N=138)
次号以降の候補:
- 下降配置(below_both)×ロングの詳細検証(全域プラスの構造を解明)
- 上昇配置×ロング×金属グループの単独登録(8月改善が持続するか)
- MA配置 × トレンド方向一致フィルタの交差分析
📡 前向きトラッカー定点観測
| 仮説 | 種別 | 宣言基準 | 前向き現在値(平均R) | 状態 |
|---|---|---|---|---|
| trend=上昇×reversalL | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.10 CI[-0.07~+0.27](122/259・勝率47%) | ✅昇格 |
| group=all | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.03 CI[-0.03~+0.09](1232/2784・勝率44%) | 🟡蓄積中 |
| blocked=False | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.04 CI[-0.03~+0.11](978/2193・勝率45%) | 🟡蓄積中 |
| blocked=False×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.06 CI[-0.03~+0.15](777/1709・勝率46%) | 🟡蓄積中 |
| group=index | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R -0.03 CI[-0.13~+0.07](317/764・勝率42%) | 🟡蓄積中 |
| tf=4h×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.09 CI[-0.03~+0.21](349/745・勝率47%) | 🟡蓄積中 |
| tier=neutral | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.04 CI[-0.06~+0.14](319/717・勝率44%) | 🟡蓄積中 |
| group=other_fx×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.02 CI[-0.11~+0.15](274/628・勝率44%) | 🟡蓄積中 |
| 指数×ロング(全足ライブ) | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.02 CI[-0.14~+0.18](273/624・勝率44%) | 🟡蓄積中 |
| ステート 上昇配置(>MA25&75)×ロング | edge | 前向きN≥30かつ平均RのCI下限>0🏁 | 平均R +0.10 CI[-0.04~+0.25](270/570・勝率47%) | 🟡蓄積中 |
| blocked=False×dir=short | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -0.02 CI[-0.15~+0.11](213/508・勝率42%) | 🟡蓄積中 |
| group=metal | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.07 CI[-0.09~+0.23](168/366・勝率46%) | 🟡蓄積中 |
| group=metal×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.11 CI[-0.11~+0.34](128/268・勝率48%) | 🟡蓄積中 |
| trend=中立・もみあい×reversalL | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.11 CI[-0.04~+0.26](123/258・勝率48%) | 🟡蓄積中 |
| 売られすぎ逆張り買い(rsi_oversold_bounce・全足) | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.21 CI[-0.01~+0.43](130/251・勝率52%) | 🟡蓄積中 |
| ロング×上昇トレンド×MA両線の上 | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.07 CI[-0.17~+0.30](97/212・勝率46%) | 🟡蓄積中 |
| 注目度ゼロ(news=0) | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R -0.14 CI[-0.36~+0.09](77/208・勝率37%) | 🟡蓄積中 |
| blocked=True×dir=short | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R -0.15 CI[-0.35~+0.04](75/207・勝率36%) | 🟡蓄積中 |
| trend=下降×dir=short | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.09 CI[-0.11~+0.30](96/205・勝率47%) | 🟡蓄積中 |
| group=index×reversalL | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R -0.06 CI[-0.28~+0.16](82/204・勝率40%) | 🟡蓄積中 |
| dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.07 CI[-0.02~+0.15](956/2093・勝率46%) | ⛔反証 |
| trend=下降 | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.11 CI[+0.02~+0.20](350/736・勝率48%) | ⛔反証 |
| reversalL(逆張り買い) | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.14 CI[+0.02~+0.26](345/706・勝率49%) | ⛔反証 |
| trend=下降×reversalL | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.26 CI[+0.05~+0.47](116/215・勝率54%) | ⛔反証 |