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⚠️ 本記事は東証(東京証券取引所)の市場区分に関する制度・手続きを一次情報に基づいて整理した「情報提供」であり、特定銘柄・特定の市場区分を評価するものでも、投資助言でもありません。投資には元本割れリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。

🏛 東証の市場区分(プライム・スタンダード・グロース)とは|「格」ではなく条件の違い

公開日:2026 年 9 月 6 日 / 読了時間:約 9 分 / カテゴリ:東証のしくみ(第5回)

「東証プライム上場」という表現は、しばしば「格の高い会社」を指す褒め言葉のように使われます。しかし東証の一次情報を確認すると、プライム・スタンダード・グロースの3市場は優劣の序列ではなく、求められる条件(コンセプト)が異なる別々の市場として設計されています。「東証のしくみ」シリーズ第5回では、なぜ3つに分かれているのか、それぞれ何を求められているのか、そして基準を満たせなくなったら何が起きるのかを、JPX(日本取引所グループ)の一次情報を実際に確認しながら整理します。

📌 この記事の結論(30秒まとめ)

1️⃣ なぜ3つの市場区分に分かれているのか(制度の目的)

2022年4月3日以前の東証には、市場第一部・市場第二部・マザーズ・JASDAQ(スタンダード/グロース)という4つの市場区分がありました。JPXが公表している「市場区分見直しの概要」によれば、この旧区分には2つの構造的な課題があったとされています。

この課題を踏まえ、東証は市場区分の見直しを進め、2022年4月4日に「プライム市場・スタンダード市場・グロース市場」の3区分体制へ一斉移行しました。ポイントは、各市場区分への新規上場基準と、上場を維持するための基準(上場維持基準)を原則として共通化したことです。つまり「上場した後に基準が緩む」構造をなくし、上場を続ける限り、その市場区分の新規上場水準を維持し続けることが求められる設計に変わりました。

💡 制度の目的を一言でいうと:3市場は「ランク分け」のためではなく、投資家が「この会社はどんな性格の市場に属しているか」を一目で判断できるようにするための制度です。次の章で、各市場が想定する企業像(コンセプト)を確認します。

2️⃣ 3市場のコンセプトの違い

JPXは各市場区分のコンセプトを次のように定義しています(原文をそのまま引用)。

市場区分コンセプト(JPX原文)
プライム市場多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場
スタンダード市場公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場
グロース市場高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場

3つを並べて読むと分かるとおり、違いは「流動性の規模」と「求められるガバナンス水準」、そして「開示に何を重視するか」です。プライムは機関投資家層を意識した規模とガバナンス、グロースは事業実績よりも成長計画とその進捗開示を重視——というように、それぞれ想定する投資家層と企業の成長ステージが異なります。各市場区分は独立しており、ある区分の上場会社が別の区分へ移る場合は、変更先の新規上場基準と同等の基準に基づく審査を改めて受ける必要があるとJPXは明記しています。

3️⃣ 数字で見る上場維持基準(3市場比較)

コンセプトの違いは、具体的には数値基準の違いとして現れます。以下はJPXが公表している「上場維持基準」(有価証券上場規程第501条に基づく、上場を続けるために適合し続ける必要がある基準)の主要項目です。いずれも2022年4月4日時点の基準として東証が公表している数値です。

以下はJPXが公表している制度上の基準値をそのまま掲載したものです(数値そのものは仮定ではなく実際の基準)。基準は将来見直される可能性があるため、最新値は本記事末尾の一次情報リンクで随時ご確認ください。
項目プライム市場スタンダード市場グロース市場
株主数800人以上400人以上150人以上
流通株式数2万単位以上2,000単位以上1,000単位以上
流通株式時価総額100億円以上10億円以上5億円以上
流通株式比率35%以上25%以上25%以上
売買代金/売買高1日平均売買代金0.2億円以上月平均売買高10単位以上月平均売買高10単位以上
時価総額基準なし基準なし40億円以上(上場10年経過後から適用。
2030年3月1日より100億円以上・上場5年経過後からに見直し予定)
純資産の額正であること正であること正であること

「流通株式」とは、大株主や役員などが安定的に保有し市場に出回りにくい株式を除いた、実際に売買されうる株式のことです(詳しくは時価総額と浮動株で解説しています)。表を見ると、プライムはスタンダード・グロースに比べて流通株式時価総額が一桁多い水準を求められていることが分かります。これは「プライムは機関投資家の投資対象になりうる規模」というコンセプトを、そのまま数値基準に落とし込んだものだと理解できます。

4️⃣ 基準を満たせなくなったら何が起きるか(図解)

上場維持基準は「一度満たせば終わり」ではなく、継続的に適合し続けることが求められる基準です。では、業績悪化などで基準を満たせなくなった場合、いきなり上場廃止になるのでしょうか。JPXが公表している手順は次のとおりです。

なお、市場区分の見直し当初は緩和された基準(経過措置)を適用する期間が設けられていましたが、JPXの公表によれば2025年3月1日以後に到来する基準日からは、本来の(緩和されていない)上場維持基準が適用されています。ただし、2023年3月31日時点で2026年3月1日以後最初に到来する基準日を超える期限の適合計画を開示していた会社については、その計画期限における適合状況を確認するまで監理銘柄指定が継続する、という例外的な取り扱いも公表されています。

上場維持基準を満たせなくなった場合の手順:改善期間→監理・整理銘柄→上場廃止という流れの概念図 基準を満たせなくなったときの手順(概念図) 通常の上場 上場維持基準に 適合している状態 改善期間 原則1年間 (売買高基準は6か月) 基準未達が発生 監理銘柄・整理銘柄 原則6か月間 改善期間内に 未改善の場合 上場廃止 改善期間内に基準へ再適合すれば 通常の上場に戻る(上場廃止に至らない)
▲ JPXが公表する上場維持基準未達時の手順を単純化した概念図。実際の期間・要件・例外(経過措置に伴う特例など)は個別のケースで異なる。※ 概念を示すイメージ図です。

5️⃣ 個人投資家にどこで効いてくるか

この制度は、次のような場面で個人投資家の実務に直接関わってきます。

6️⃣ 自分で一次情報を確かめる手順

制度は今後も見直される可能性があるため(実際、グロース市場の時価総額基準は2030年3月1日に見直しが予定されています)、最新の基準・個別銘柄の状況は必ず一次情報で確認してください。

  1. JPX公式サイト(jpx.co.jp)にアクセスし、「株式・ETF・REIT等」→「上場制度(内国株)」の階層をたどる。
  2. 市場区分見直しの概要https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/market-structure/01.html(各市場のコンセプト・移行の経緯を確認できる)。
  3. 上場維持基準の概要(プライム/スタンダード/グロース)https://www.jpx.co.jp/equities/listing/continue/outline/01.html ほか、各市場区分ごとのページで最新の数値基準を確認できる。
  4. 上場維持基準に関する経過措置の終了https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/04.html(改善期間該当銘柄・監理銘柄整理銘柄の一覧ページへのリンクも掲載されている)。
  5. 保有銘柄・気になる銘柄が改善期間や監理・整理銘柄に該当していないかは、上記ページから「改善期間該当銘柄」「監理・整理銘柄一覧」を個別に確認する。
💡 確認日:本記事の制度説明・数値は、2026年9月6日にJPX公式サイト(jpx.co.jp)上記各ページを実際に取得して確認した内容に基づいています。制度は変更される可能性があるため、最新の基準は必ず上記リンク先でご自身でご確認ください。

7️⃣ よくある誤解

よくある誤解制度上の実際
プライムが一番「格が高い」市場であるJPXの説明は「コンセプトの違い」であり、優劣の序列とは説明されていない。プライムは機関投資家向けの規模・ガバナンスを求める市場という位置づけ。
スタンダードへの区分変更は必ず「格下げ」である基準未達による移行のケースもあれば、経営判断として自主的にスタンダードを選ぶ上場会社もある。背景は個別に確認が必要で、一律に評価できるものではない。
基準を1回でも下回ったら即座に上場廃止になる原則1年間(売買高基準は6か月間)の改善期間がまず設けられ、その後も監理・整理銘柄という段階を経る。手順を踏んだ上での廃止であり、即時ではない。
グロース市場は「危ない市場」という意味であるJPXのコンセプトは「事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向け」という説明であり、高い成長可能性の実現に向けた開示を重視する市場として位置づけられている。個別銘柄のリスク評価とは別の話。

8️⃣ まとめ

第5回「東証の市場区分」を整理します。

次回も、東証のしくみを一つずつ一次情報で確かめながら整理していきます。

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