MarketWatch AI
日本人投資家のためのマーケット情報サイト
📚 解説記事
⚠️ 本記事は東京証券取引所などの制度・手続きを一般的に解説する「情報提供」であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。制度は変更されることがあるため、実際の取引前に必ずご自身で一次情報をご確認ください。

🗳 株主総会と議決権行使とは|あなたの一票の権利は「いつ」決まるのか

公開日:2026 年 9 月 10 日 / 読了時間:約 9 分 / カテゴリ:東証のしくみ(第9回)

「株主総会に出席したことがない」という個人投資家は多いはずです。それでも、証券会社の口座に株式を保有していれば、多くの場合は書面やインターネットで議案に賛成・反対の意思表示ができます。ただし、誰がその権利を持つかは、総会の当日ではなく、もっと前の「ある1日」の時点で決まっています。

この「東証のしくみ」シリーズは、日本の株式市場の制度・手続きだけを扱い、個別銘柄の評価や売買判断には踏み込みません。第9回のテーマは株主総会と議決権行使です。制度の仕組みは、会社法および関連法令の条文を一次情報として実際に確認したうえで解説します(確認日は本文中に記載)。

📌 この記事の結論(30秒まとめ)

1️⃣ 一票の権利は「いつ」決まるのか(基準日)

株主総会で議決権を行使できるかどうかは、総会当日の保有状況ではなく、会社があらかじめ定めた「基準日」時点の株主名簿の記載で決まります。根拠となる会社法124条は次のように定めています。

💡 一次情報(会社法第124条第1項):「株式会社は、一定の日(以下この章において「基準日」という。)を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主(……)をその権利を行使することができる者と定めることができる。」

基準日をいつにするかは、会社が定款で自由に定められます。多くの会社では決算期の末日(例えば3月末決算の会社なら3月31日)を基準日と定め、その日の株主名簿に載っている株主を、続く定時株主総会で議決権を行使できる者としています。基準日を定めた場合、会社にはその基準日を事前に公告する義務もあります。ただし、日付の選び方が完全に無制約というわけではなく、基準日株主が行使できる権利は「基準日から三箇月以内に行使するもの」に限られると定められているため(会社法124条2項)、基準日と株主総会の日を無制限に離すことはできません。

💡 一次情報(会社法第124条第3項):「株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を公告しなければならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない。」

つまり、「総会に出たいから」といって総会の直前に株を買っても、その総会での議決権は原則として得られません。基準日後に株式を取得した人に議決権を認めるかどうかは会社側が決められる余地はありますが(同条4項)、既存の基準日株主の権利を害することはできません。次章では、基準日が公告されてから、実際に議決権を行使し、決議結果が開示されるまでの流れを具体的に見ていきます。

2️⃣ 具体例:招集通知から決議結果の開示までの流れ

基準日が過ぎると、会社は株主総会の招集手続きに入ります。まず招集通知の発送義務についての条文を確認します。

💡 一次情報(会社法第299条第1項):「株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間……前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。」

ここで、東証などに上場している会社(法律上は「振替株式」を発行する会社)に固有の義務があります。社債、株式等の振替に関する法律159条の2は、振替株式を発行する会社に対し、招集通知の詳細情報をインターネット上で提供する「電子提供措置」をとる旨を定款に定めることを義務づけています

💡 一次情報(社債、株式等の振替に関する法律第159条の2第1項):「振替株式を発行する会社は、電子提供措置(会社法第三百二十五条の二に規定する電子提供措置をいう。)をとる旨を定款で定めなければならない。」

電子提供措置をいつからいつまで続けるかも会社法で決まっています。

💡 一次情報(会社法第325条の3第1項、要旨):電子提供措置は、「株主総会の日の三週間前の日又は……通知を発した日のいずれか早い日」(電子提供措置開始日)から、「株主総会の日後三箇月を経過する日」(電子提供措置期間の終了)まで、継続してとらなければならない。

この制度は2022年9月1日に施行されたもので、上場会社の招集通知は、要点をまとめた書面を株主に送りつつ、株主総会参考書類や事業報告といった詳細情報は会社のウェブサイトなどで提供する運用に移行しています。もっとも、この仕組みに切り替わっても、紙の書類を今までどおり受け取りたい株主の権利は失われません

💡 一次情報(会社法第325条の5第1項):「電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の株主……は、株式会社に対し、……電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができる。」

この「書面交付請求」は基準日までに行えば、その総会の書面が届きます(同条2項)。なお、書面交付請求をしてから1年が経過すると、会社は書面の交付を終了する旨を通知し、1か月以上の異議申立て期間を設けたうえで打ち切ることができると定められています(同条4項・5項)。「今までどおり紙で来ていたはずなのに来なくなった」というケースの背景には、この制度が関わっている可能性があります。

招集通知が届いたら、株主は書面・電磁的方法(ネット投票)・代理人のいずれかで議決権を行使できます。その期限は会社が招集通知で指定しますが、無制限に早い時刻を設定できるわけではありません。

💡 一次情報(会社法施行規則第63条第3号、要旨):書面・電磁的方法による議決権行使の期限とする「特定の時」は、「株主総会の日時以前の時であって、……通知を発した日から二週間を経過した日以後の時」に限られる。

行使期限までに議決権を行使すれば、あとは総会当日の決議を待つだけです。決議の可決要件は会社法309条が定めており、決議後には上場会社に開示義務が生じます(詳しくは4章・5章で扱います)。

上記はすべて会社法・関連法令の一次情報にもとづく一般的な制度の説明であり、架空の設定ではありません。ただし、招集通知の発送日や行使期限の具体的な日時は会社ごとに異なるため、必ず各社が送付・掲載する招集通知の記載でご確認ください。

3️⃣ 図解:基準日から結果開示までのタイムライン

基準日から招集通知・議決権行使・株主総会での決議・決議結果の開示までの流れを示す概念図(仮の例のタイムライン) 基準日 → 招集通知 → 議決権行使 → 決議 → 結果開示 の流れ(仮の例) ① 基準日 — 議決権を持つ株主が決まる日 基準日時点の株主名簿記載者だけが対象(会社法124条) ※基準日は会社が定款で自由に定められる ② 招集通知の発送/電子提供措置の開始 招集通知は総会の2週間前までに発送(会社法299条) 上場会社はウェブ掲載が原則、開始日は総会3週間前か発送日の早い方(325条の3) 紙で欲しい株主は「書面交付請求」ができる(325条の5) ③ 議決権行使の期限(書面・電子) 会社が招集通知で指定する時刻まで行使できる(会社法施行規則63条3号) 出席のほか書面(311条)・電子(312条)・代理人(310条)で行使可 ④ 株主総会当日/決議 普通決議=出席議決権の過半数で可決(会社法309条1項) 特別決議(定款変更・合併等)=出席議決権の2/3以上(同条2項) ⑤ 決議結果の開示(臨時報告書) 各議案の賛成・反対・棄権の議決権数と結果を開示する義務がある (企業内容等の開示に関する内閣府令19条2項9号の2)
▲ 基準日から決議結果の開示までの5段階を示した仮のタイムライン。各段階の期限や義務の根拠となる条文をあわせて示している。実際の日程は会社ごとの招集通知に記載される具体的な日付にもとづくため、本図はあくまで制度の流れを示す仮の例。※ 概念を示すイメージ図です。

4️⃣ 個人投資家にどこで効いてくるか

① 「総会前に買えば議決権がもらえる」わけではない

個人投資家が最も誤解しやすいのがこの点です。ある銘柄について直近の株主総会に一票を投じたいと考えても、基準日を過ぎてから取得した株式には、原則としてその総会の議決権がありません。基準日は会社の定款・公告で確認できるため、議決権の行使を目的に株式を取得するのであれば、まず対象銘柄の基準日を確認する必要があります。なお、配当を受け取るための権利確定のタイミングと、基準日・受渡(決済)の関係については、別記事「決済サイクルと権利確定日」もあわせてご参照ください。

② 招集通知が「簡素な書面+ウェブ掲載」になっている場合がある

2022年9月の電子提供措置の制度開始以降、上場会社から届く招集通知は、要点だけをまとめた書面で、詳細な参考書類は会社のウェブサイトで確認する形に変わってきています。「以前より郵送物が薄くなった」「一部の書類が同封されなくなった」と感じた場合、電子提供措置への移行が理由であることがあります。紙の全文を確認したい場合は、基準日までに会社へ「書面交付請求」をすれば交付を受けられますが、請求から1年が経過すると打ち切りの通知が来ることがある点も覚えておく必要があります。

③ 一人の一票が実際に何に効くか

会社法309条により、取締役の選任など通常の議案(普通決議)は、出席した株主の議決権の過半数で可決されます。一方、定款変更や合併など会社の基礎を変える議案(特別決議)は、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。なお条文上は、いずれの決議についても「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席すること」という定足数の定めがあり、普通決議については定款で別段の定めを置くことができ、特別決議については定款で3分の1以上の割合まで引き下げることができます(会社法309条1項・2項)。実際の定足数の扱いは会社ごとの定款によって異なります。個人株主1人が持つ議決権数は、大株主に比べれば小さいものですが、僅差の議案では出席する株主の構成そのものが結果を左右します。書面・電子での行使であっても、この「出席した株主の議決権数」に算入される仕組みになっている点(会社法311条2項・312条3項)が、行使する意味につながっています。

④ 決議結果は誰でも後から確認できる

上場会社は株主総会での決議後、各議案について賛成・反対・棄権の議決権数と、可決されたかどうかの結果を「臨時報告書」(会社に重要な出来事があったときに提出が義務づけられる、金融商品取引法上の開示書類の一つ)として開示する義務があります(企業内容等の開示に関する内閣府令19条2項9号の2)。総会に出席しなかった株主でも、この開示を通じて、自分の投じた一票を含む全体の賛否がどのように分かれたかを、後から確認できます。

5️⃣ 自分で一次情報を確かめる手順

このシリーズの立場として、制度の仕組みは必ず一次情報で確認します。株主総会・議決権行使については、以下の手順で確かめられます。

  1. e-Gov法令検索で「会社法」を検索し、124条(基準日)・296条・298条・299条(招集通知)・308条(議決権の数)・309条(決議要件)・310条〜313条(代理行使・書面/電磁的方法による行使・不統一行使)・325条の2〜325条の5(電子提供措置・書面交付請求)を条文番号で開く。
  2. e-Gov法令検索で「会社法施行規則」を検索し、63条(招集決定事項・議決権行使期限の定め方)を確認する。
  3. e-Gov法令検索で「社債、株式等の振替に関する法律」を検索し、159条の2(上場会社に対する電子提供措置の義務づけ)を確認する。
  4. e-Gov法令検索で「企業内容等の開示に関する内閣府令」を検索し、19条2項9号の2(株主総会決議結果の臨時報告書への記載事項)を確認する。
  5. 個別の会社について実際の基準日・招集通知・議決権行使の期限を知りたい場合は、その会社が発行する招集通知そのもの(TDnetでの適時開示または各社IRページに掲載)を確認する(本シリーズ第1回「適時開示(TDnet)」を参照)。
本記事で引用した条文は要旨・抜粋を含みます。実際の議決権行使にあたっては、必ず対象銘柄の招集通知に記載された基準日・行使期限・行使方法をご自身で確認してください。

6️⃣ よくある誤解

誤解一次情報にもとづく整理
総会の直前に株を買えば、その総会で議決権を行使できる誤り。議決権を持つのは会社が定めた「基準日」時点の株主名簿記載者だけ(会社法124条)。基準日後の取得分には原則として議決権がない
上場会社は必ず紙の招集通知一式を送ってくる誤り。上場会社は電子提供措置が義務(社債株式等振替法159条の2)で、詳細情報はウェブ掲載が原則。紙で全部欲しい場合は「書面交付請求」が必要(会社法325条の5)
書面やネットで議決権を行使しても「出席」扱いにはならない誤り。書面・電磁的方法で行使した議決権数は、出席した株主の議決権数に算入される(会社法311条2項・312条3項)
株主総会の決議結果(賛成・反対の数)は非公開である誤り。上場会社は決議後に臨時報告書で議案ごとの賛成・反対・棄権の議決権数と結果を開示する義務がある(企業内容等の開示に関する内閣府令19条2項9号の2)

7️⃣ まとめ

東証のしくみシリーズ第9回「株主総会と議決権行使」を整理します。

本記事の制度の説明は、2026年9月10日時点でe-Gov法令検索の会社法・会社法施行規則・社債、株式等の振替に関する法律・企業内容等の開示に関する内閣府令の該当条文を実際に確認したうえで記載しています。制度は変更されることがあるため、実際に議決権を行使する際は、その時点の一次情報と、対象銘柄が発行する招集通知の記載を必ずご自身で確認してください。

📚 関連シリーズで株主の権利をさらに深く
議決権行使のタイミングは、配当や優待の権利確定日を決める「決済サイクル」の考え方とも深く関わります。あわせて理解すると、いつまでに株式を保有していれば何の権利を得られるかがより立体的につかめます。
解説記事一覧を見る →

🔗 関連記事

⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事は東京証券取引所などの制度・手続きに関する一般的な情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。制度の内容は変更されることがあるため、実際の取引にあたっては必ずご自身で最新の一次情報をご確認ください。投資には元本割れのリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。