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💊 中外製薬(4519)を数字で見る|ロシュグループの製薬会社を有価証券報告書で確認

公開日:2026年10月6日 / 読了時間:約15分 / カテゴリ:数字で見る企業(第8回・日本株)

「数字で見る、話題の企業」シリーズ第8回は、医療用医薬品の製薬会社、中外製薬株式会社(証券コード4519、以下「中外製薬」)を取り上げます。スイスの製薬大手ロシュのグループに属し、日本でロシュの薬を売る役目と、自社で生み出した薬をロシュを通じて世界へ届ける役目を、あわせて持つ会社です。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が金融庁の開示システム(EDINET)に提出した有価証券報告書(第115期・2025年1月〜12月)を中心に、①事業の中身 ②産業のつながり ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。

📌 30秒でわかるこの記事
  • 中外製薬は、医薬品事業だけを営む製薬会社です。第115期(2025年1月〜12月)の売上収益は1兆2,579億円(前期比+7.5%)、当期利益は4,340億円(同+12.1%)でした(どちらも国際会計基準〈IFRS〉の数字)
  • 売上収益の57.6%は、親会社と同じロシュ・グループのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ・リミテッド(以下「ロシュ」)向けです。自社で生み出した薬を、日本以外の多くの国ではロシュが売る、という仕組みが数字に表れています。会社自身も、ロシュとの提携の内容が変わることをリスクとして挙げています
  • 「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
💡 なぜ中外製薬か(選定根拠):本シリーズは日本株を中心にする方針(直近3本のうち海外株が1本以上あれば日本株)で、今回は日本株の番です。当サイトが機械的に集計する候補データ(edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-05時点で20銘柄)のうち、中外製薬は2026年9月28日(値下がりランキングと出来高急増ランキング)、9月29日と9月30日(いずれも出来高急増ランキング)の3日に登場しています。ランキングに最後に登場した日から中3営業日以上あいていること(「熱が残っているうちは書かない」ルール。同データの cooled: true)と、有価証券報告書の本文が取得できていることを満たす候補の中から、時価総額の大きい順に選びました(時価総額の金額は本文に書きません)。本レーンでの既刊記事・この会社が主役の解説記事の既刊はなく(ls guide-*.html と guides.html を社名・証券コードで確認)、直近14日のニュース記事(guide-news-*.html・NEWS_LEDGER.md)との重複もありません。ランキングに登場した理由(なぜ値下がりしたか・なぜ出来高が増えたか)は、一次情報で確かめられないため書きません。
数字の出どころと確認日(2026-10-06):決算の数字はすべて有価証券報告書 第115期(2025年1月1日〜2025年12月31日、2026年3月25日提出)から引いています。直近の四半期(2026年1〜6月期)の決算短信は、決算短信の掲載先であるTDnet(東京証券取引所の適時開示サイト)で当サイトが確かめた時点(2026-10-06)では2026年8月28日より前の開示が見られず、取得できなかったため、この記事では使っていません(二次情報で補うこともしていません)。同じ理由で、会社が2026年1月29日に公表した2026年12月期の業績予想の数字も、この記事には書いていません。2026年8月28日以降のTDnetの開示は取得でき、2026年9月28日の開発方針の開示はそちらから引いています。億円の数字は、有報の文中の表(億円)に合わせ、当サイトが百万円から計算したものには「約」を付けています。

1️⃣ 中外製薬はどんな会社か

中外製薬は、病院や診療所で使われる医療用医薬品をつくり、売る会社です。会社は事業を「医薬品事業」の1つだけ(単一セグメント)としており、当社・子会社15社・親会社の子会社2社でグループを構成しています(2025年12月31日現在。出典:有価証券報告書 第115期「事業の内容」、2026-10-06確認)。有報の説明をまとめると、仕事の分担は次のとおりです。

💡 用語メモ:IFRS(国際財務報告基準)は、世界の多くの国で使われている会計のルールです。中外製薬はIFRSで決算を作っています。あわせて会社は、IFRSの数字から会社が「非経常事項」(毎年は起きない特別な損益)と考える項目を除いた「Core(コア)実績」も開示しています。会社によれば、Core実績は社内の業績管理や配当などを決める際の指標として使っているものです。この記事ではIFRSの数字とCoreの数字を分けて書きます(売上収益はどちらも同じ1兆2,579億円ですが、利益は違います)。

売上収益の内訳は次のとおりです(出典:同有報「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の Core実績の表と製商品売上高の内訳)。製商品売上高は薬そのものを売った売上、その他の売上収益は、会社の説明では一時金収入やヘムライブラ(血友病の薬)に関する収入などを含むものです。

中外製薬 第115期(2025年1月〜12月)の売上収益の内訳 売上収益の内訳(第115期・単位:億円・構成比は売上収益1兆2,579億円に対する割合) 海外製商品売上高(主にロシュ向けの輸出) 6,054(約48.1%) 国内製商品売上高:オンコロジー領域(がん) 2,465(約19.6%) 国内製商品売上高:スペシャリティ領域(がん以外) 2,258(約18.0%) その他の売上収益(ヘムライブラに関する収入・一時金など) 1,801(約14.3%) 濃い青=海外向け/中くらいの青=国内の薬の売上/薄い青=薬の売上以外の収入
▲ 有価証券報告書 第115期「経営者による分析」の売上収益と製商品売上高の内訳(億円、2026-10-06確認)をもとに作成。構成比は当サイトが計算したもの(4つの合計は表示単位の端数のため1兆2,578億円になる)。※概念を示すイメージ図です。

国内では、がんの領域(会社の呼び方で「オンコロジー領域」)が2,465億円(前期比△0.5%)、がん以外の領域(同「スペシャリティ領域」)が2,258億円(同+5.8%)でした。海外製商品売上高は6,054億円(同+12.8%)で、会社は「ロシュ向けのヘムライブラ及びアクテムラ輸出が増加したため」と説明しています。製商品売上高のうち海外の割合は約56.2%です(当サイト計算)。

💡 用語メモ:後発品(ジェネリック医薬品)は、特許が切れたあとに別の会社が出す、同じ有効成分の薬です。バイオシミラー(バイオ後続品)は、抗体(体内で特定の標的に結びつくたんぱく質)などのバイオ医薬品で同じ役割をする後続品です。薬価は、国が決める医療用医薬品の公定価格で、日本では原則として毎年見直されます(薬価改定)。会社は国内の売上について、「後発品浸透や薬価改定等の影響を受けたものの」新製品と主力品が伸びた、と説明しています。

2️⃣ どのつながりの中にいるか

次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、中外製薬が「薬が生まれて患者さんに届くまで」の工程のどこに立っているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。

医薬品が生まれて患者さんに届くまでの工程。創薬の種から創薬研究、臨床開発、承認審査、製造、医薬品卸、医療機関・薬局、患者さんへと流れ、海外向けはロシュへの輸出と導出に分かれる 医薬品の工程のつながり(薬と情報が流れる方向) 創薬の種 (大学・研究機関・ バイオベンチャー) 創薬研究 (薬の候補をつくる) 中外製薬=ここに立つ 臨床開発(治験) (人で効き目と安全性を確認) 中外製薬=ここに立つ 承認審査 (国の規制当局が 販売を認めるか判断) 製造 (原薬・製剤。一部は委託) 中外製薬=ここに立つ 医薬品卸(特約店) (全国の医療機関へ届ける) 医療機関・薬局 (国が決める薬価で使う) 患者さん 海外向け:ロシュへの輸出と導出(日本以外の多くの国では、ロシュが販売する) 第115期の売上収益のうち、ロシュ向けは57.6%(有価証券報告書「販売の状況」) ※矢印は「薬と情報が流れる方向」を示す事実の関係です。 業績や株価が連動する方向を示すものではありません。
▲ 医薬品の工程の中での中外製薬の位置(概念図)。会社の「事業の内容」「経営者による分析」「事業等のリスク」の開示をもとに作成(2026-10-06確認)。※概念を示すイメージ図です。

中外製薬が「創薬研究」「臨床開発」「製造」の箱に立っている根拠は、会社自身の開示にあります。第115期の研究開発費(Core)は1,801億円で、売上収益の約14.3%にあたります(当サイト計算)。会社は2025年に「合計6プロジェクトが承認され」、5つのプロジェクトが承認申請に移ったと説明しています。製造では、宇都宮工場のバイオ原薬の製造棟などへの投資を挙げています(出典:有価証券報告書 第115期「経営者による分析」、2026-10-06確認)。

💡 用語メモ:パイプラインは、開発中の薬の候補の一覧のことです。臨床試験(治験)は人で効き目と安全性を確かめる試験で、少人数で安全性を見る第Ⅰ相、効き目と量を探る第Ⅱ相、多くの患者さんで確かめる第Ⅲ相の順に進みます。導出(ライセンスアウト)は、自社が持つ薬の候補を開発・販売する権利を他社に渡し、その見返りに一時金やロイヤルティ(売上に応じた使用料)などを受け取ることです。逆に、他社から権利を受け取ることを導入といいます。

工程の前後とのつながりも、数字や文章で開示されています。

このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報のリスクで挙げています。たとえばロシュとの提携について「これまでの戦略的提携における合意内容が変更となった場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。」としています。また、国内外での薬剤費引き下げ政策や、米国の医薬品関税・医薬品最恵国価格(米国の薬の値段を、ほかの主要国の値段に合わせて下げようとする政策)などの政策変更を挙げています(出典:有価証券報告書「事業等のリスク」、2026-10-06確認)。

産業のつながりがあることと、株価が連動することは別です。同じ工程にいる会社でも、業績も株価も会社ごとに大きく異なります。ここでお伝えしているのは産業構造の事実であって、値動きの予想ではありません。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。

3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事

各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。有価証券報告書の「沿革」などに無い事実(主な製品の発売や受賞)は、Wikipedia(二次情報)から年表に限って使っています。

年月出来事出典
1925年3月上野十蔵が中外新薬商会を創業し、医薬品の輸入販売を始める有価証券報告書 第115期「沿革」(2026-10-06確認)
1943年3月株式会社に組織を変え、商号を中外製薬株式会社に変更有価証券報告書 第115期「沿革」(2026-10-06確認)
1956年3月株式を東京証券取引所に上場有価証券報告書 第115期「沿革」(2026-10-06確認)
1971年2月血液分析器と試薬を発売し、臨床検査薬・機器の分野へ進出有価証券報告書 第115期「沿革」(2026-10-06確認)
1989年12月米国のジェン・プローブ・インコーポレーテッドを買収(2002年9月にスピンオフ〈株主に株式を分けて切り離すこと〉)有価証券報告書 第115期「沿革」(2026-10-06確認)
2002年10月エフ・ホフマン・ラ・ロシュ・リミテッドとの戦略的アライアンスに基づき、中外製薬と日本ロシュが合併。ロシュ・ホールディング・リミテッドが親会社となる有価証券報告書 第115期「沿革」(2026-10-06確認)
2004年12月一般用医薬品(薬局などで買える市販薬)の事業を、ライオンに譲渡有価証券報告書 第115期「沿革」(2026-10-06確認)
2005年6月キャッスルマン病の治療薬として「アクテムラ」を発売(大阪大学との共同開発)Wikipedia「中外製薬」沿革(2026-10-06確認)
2018年5月血友病の薬「ヘムライブラ」を発売Wikipedia「中外製薬」沿革(2026-10-06確認)
2021年2030年に向けた成長戦略「TOP I 2030」を策定し、展開を始める(2024年7月に戦略を精緻化)有価証券報告書 第115期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-06確認)
2022年10月中外ライフサイエンスパーク横浜を建設(2023年3月に富士御殿場研究所と鎌倉研究所を閉鎖)有価証券報告書 第115期「沿革」(2026-10-06確認)
2023年7月スタートアップへの投資を行う中外ベンチャー・ファンド・エルエルシーを米国に設立有価証券報告書 第115期「沿革」(2026-10-06確認)
2025年11月〜12月レナリスファーマ株式会社を取得し、12月に吸収合併有価証券報告書 第115期「事業の内容」(2026-10-06確認)
2026年3月有価証券報告書 第115期(2025年1月〜12月)を提出EDINET 有価証券報告書(2026-03-25提出、2026-10-06確認)
2026年9月ヘムライブラを生み出した中外製薬の研究者3名が、米国の医学賞であるラスカー賞(臨床医学研究賞)を受賞Wikipedia「中外製薬」(2026-10-06確認)
2026年9月28日ロシュが開発していた薬の候補 emugrobart(開発コード GYM329)について、肥満症を対象とした臨床開発の中止と、ロシュからのライセンス返還の予定、脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する開発再開に向けた準備の開始を開示適時開示「GYM329 (emugrobart) の肥満症開発中止、ライセンス返還およびSMA開発再開に関するお知らせ」(2026-09-28開示、2026-10-06確認)

※TDnet(適時開示)のPDFは保管期間(約1か月〜1か月半)を過ぎるとリンクが切れます。その場合は会社のIRサイトの適時開示一覧でご確認ください。

4️⃣ 直近の決算の数字(有価証券報告書 第115期)

有価証券報告書 第115期(2025年1月1日〜2025年12月31日、2026年3月25日提出)の連結の数字です。中外製薬は12月決算で、2026年の途中の四半期の数字(決算短信)は、上の注意書きのとおり当サイトでは取得できていません。確認日は2026-10-06です。

指標(連結)第115期(2025/1〜12)第114期(前期・2024/1〜12)増減率
売上収益(IFRS・Coreとも同じ)1兆2,579億円1兆1,706億円+7.5%
営業利益(IFRS)5,988億円5,420億円+10.5%
当期利益(IFRS)4,340億円3,873億円+12.1%
Core営業利益6,232億円5,561億円+12.1%
Core当期利益4,510億円3,971億円+13.6%
Core EPS(1株当たり利益・希薄化後)274.02円241.31円+13.6%
基本的1株当たり利益(IFRS)263.73円235.39円—
親会社所有者帰属持分利益率(ROE・IFRS)22.1%22.0%—

出典:有価証券報告書 第115期「経営者による分析」の連結損益の表・「主要な経営指標等の推移」(2026-03-25提出)。億円は有報の表の記載。増減率は有報の記載。確認日:2026-10-06。

💡 用語メモ:ROE(自己資本利益率)=株主のお金(親会社の所有者に帰属する持分)に対して、1年でどれだけ利益を出したかの割合です。EPS=1株当たりの利益です。基本的/希薄化後=実際に発行されている株数で割ったものが基本的、ストックオプションなどで将来増えうる株も含めて割ったものが希薄化後です。Core と IFRS の差:IFRSの営業利益5,988億円とCore営業利益6,232億円の差(244億円、当サイト計算)について、会社はIFRSの数字に、無形資産の償却費14億円・減損損失17億円・事業再構築費用133億円・「経営判断による自社開発一括中止費用等」164億円などが含まれ、事業所の閉鎖に伴う固定資産売却益を含む事業所再編費用84億円(収益)も含まれる、と説明しています。

会社の説明では、売上収益は国内の新製品・主力品の伸びとロシュ向け輸出の増加で伸び、製商品の原価率(売上に対する製造原価の割合)は「為替影響及び製品別売上構成比の変化等により」32.6%と前期より1.3ポイント改善しました。Core当期利益は「9期連続の増益」と書いています(出典:同有報「経営者による分析」)。

中外製薬の売上収益と当期利益(IFRS)の推移。第111期から第115期 売上収益と当期利益の推移(IFRS・単位:億円・億円未満切り捨て) 売上収益 当期利益(親会社の所有者に帰属) 9,997 3,029 第111期 2021年 12,597 3,744 第112期 2022年 11,113 3,254 第113期 2023年 11,706 3,873 第114期 2024年 12,579 4,340 第115期 2025年 中外製薬は12月決算。第111期=2021年1月〜12月、第115期=2025年1月〜12月。
▲ 有価証券報告書 第115期「主要な経営指標等の推移」の数値(円)を億円に換算して作成(億円未満切り捨て、2026-10-06確認)。売上収益と当期利益は同じ縦の目盛り。※概念を示すイメージ図です。

5期の売上収益では、第112期(2022年)の約1兆2,597億円がいちばん大きく、第113期(2023年)は約1兆1,113億円でした。会社は第115期について、Core売上収益が「4年連続で1兆円を超えました」と書いています(出典:同有報「経営者による分析」「主要な経営指標等の推移」)。この記事で読んだ範囲には、年ごとの増減の理由の説明はないため、理由は書きません。

お金の流れでは、本業で生んだお金から設備投資や税金などを差し引いたフリー・キャッシュ・フロー(会社の内部管理の指標)が2,733億円(前期比△29.3%)、配当金の支払いが2,994億円でした。有価証券や有利子負債(借入金など)を含めて計算したネット現金(会社の内部管理の指標)は9,797億円(前期末から166億円減)で、総資産に対する親会社の所有者の持分の割合は82.1%です(出典:同有報「経営者による分析」「主要な経営指標等の推移」)。

配当について、1株当たり配当額は第114期98円・第115期272円(うち中間配当125円)でした(提出会社の数字)。会社は配当の方針を「Core EPS対比平均して45%の配当性向を目処に」と書いており、第115期のCore配当性向(Core EPSに対する配当の割合)は99.3%(前期40.6%)でした(出典:同有報「経営者による分析」「主要な経営指標等の推移」)。この期の配当性向が目処を大きく上回った理由は、この記事で読んだ範囲の有報の記載からは確かめられなかったため書きません。原文の「配当政策」の項でご確認ください。

💡 会社が公表している業績予想について:会社は2026年9月28日の開示で、2026年1月29日に2026年12月期の連結業績予想を公表したと書いています。ただし、その数字が載っている決算短信は、当サイトが確かめた時点でTDnetの保管期間を過ぎていて取得できなかったため、予想の数字はこの記事に書いていません。会社のIRサイトでご確認ください。なお、ここで扱う数字はすべて会社の開示の紹介で、当サイトによる業績予測ではありません。

5️⃣ 会社自身が挙げているリスク

以下は有価証券報告書(第115期)の「事業等のリスク」の「主要なリスク」から、会社自身が挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社は戦略リスクとオペレーショナルリスク(事業の運営を妨げるリスク)に分けて多くの項目を挙げており、ここではそのうち5つを紹介します。原文はEDINET掲載の有価証券報告書でご確認ください。

出典:有価証券報告書 第115期「事業等のリスク」3.主要なリスク(2026-03-25提出、2026-10-06確認)。原文にはこのほか、環境規制の厳格化、経済安全保障・地政学リスク、人財、デジタル化の遅れ、ITセキュリティと情報管理、大規模災害、人権、サプライチェーン(原材料の調達から製造までの供給網)、地球環境問題が挙げられています。

6️⃣ 上がる材料/下がる材料

ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。

📈 上がる可能性がある材料
第115期のCore当期利益は4,510億円(前期比+13.6%)で、会社は「9期連続の増益」と書いている。IFRSの当期利益は4,340億円(同+12.1%)。出典:有価証券報告書 第115期「経営者による分析」/確認日2026-10-06/効くと:この水準が続くかどうかを、次の決算で比べる基準になる
海外製商品売上高は6,054億円(前期比+12.8%)。会社は、ロシュ向けのヘムライブラとアクテムラの輸出が伸びたと説明している。出典:有価証券報告書 第115期「経営者による分析」/確認日2026-10-06/効くと:ロシュを通じた世界での販売の伸び方が、売上収益の大きさを左右する材料になる
国内では、新製品のフェスゴ・ピアスカイ、主力品のバビースモ・エンスプリング・ヘムライブラが伸び、後発品や薬価改定の影響を受けながらも国内製商品売上高は4,724億円(前期比+2.5%)だった。出典:有価証券報告書 第115期「経営者による分析」/確認日2026-10-06/効くと:新しい薬が、特許切れや薬価の引き下げによる減少をどこまで埋めるかを見る材料になる
会社は2025年に、合計6つのプロジェクトが承認され、新薬・適応拡大(すでにある薬を別の病気にも使えるようにすること)を含めて5つのプロジェクトが承認申請に移ったと説明している。出典:有価証券報告書 第115期「経営者による分析」/確認日2026-10-06/効くと:申請中の薬の承認の結果が、今後の製品の数に関わる
ネット現金は9,797億円、総資産に対する親会社の所有者の持分の割合は82.1%。会社は運転資金・設備投資・研究開発を自己資金でまかなってきたと説明している。出典:有価証券報告書 第115期「経営者による分析」「主要な経営指標等の推移」/確認日2026-10-06/効くと:研究開発や設備投資、配当にあてる資金の余力を見る材料になる
📉 下がる可能性がある材料
売上収益の57.6%(約7,240億円)がロシュ向け。会社は、ロシュとの提携の合意内容が変わった場合に「業績に重大な影響を与える可能性があります」と書いている。出典:有価証券報告書 第115期「販売の状況」「事業等のリスク」/確認日2026-10-06/効くと:1つの取引先の方針や販売の状況が、売上収益の半分以上に関わる
国内のオンコロジー領域(がん)の売上高は2,465億円(前期比△0.5%)。会社は、後発品の浸透と薬価改定の影響で主力品「アバスチン」の売上が減ったと説明している。出典:有価証券報告書 第115期「経営者による分析」/確認日2026-10-06/効くと:特許の切れた薬は、後発品や薬価の引き下げで売上が減りうる
会社は、日本で中間年の改定も含めて毎年薬価改定が行われていること、米国の医薬品関税や医薬品最恵国価格などの政策変更を、リスクとして挙げている。出典:有価証券報告書 第115期「事業等のリスク」/確認日2026-10-06/効くと:国の薬価や海外の政策の変更が、国内外の薬の値段や供給のしかたに響きうる
2026年9月28日、ロシュが開発していた emugrobart(GYM329)について、肥満症を対象とした第Ⅱ相試験の中間解析の結果などから「予め設定した臨床的に意味のある体重減少の達成が困難であると判断されました。」として、肥満症での開発中止を開示した(会社は、2026年12月期の業績予想への影響はないとしている)。出典:適時開示(TDnet、2026-09-28)/確認日2026-10-06/効くと:開発中の薬の候補の結果しだいで、パイプラインの中身が変わる
会社は2025年に、早い段階の臨床開発にある自社品のうち5つのプロジェクトの自社開発の一括中止を決め、IFRSの営業利益には「経営判断による自社開発一括中止費用等」164億円が含まれている。出典:有価証券報告書 第115期「経営者による分析」/確認日2026-10-06/効くと:開発の中止が、費用として利益に表れることがある

以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。

※ 材料の数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来の予測は行っていません。

7️⃣ これから何を見れば分かるか

次の決算発表日は、当サイトの決算予定データ(earnings-calendar.json)に載っておらず、会社の公式な日程も確認できていないため、ここには書きません。会社のIRサイトの決算発表予定でご確認ください。この記事で挙げた材料がその後どうなったかは、次の開示で確かめられます。

有価証券報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説にまとめています。

8️⃣ まとめ

結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①ロシュ向けの売上(第115期は売上収益の57.6%)の金額と割合、②国内製商品売上高と、会社が説明する後発品・薬価改定の影響、③開発中の薬の候補の承認・申請・中止の開示。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。

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