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🛡️ MS&ADインシュアランスグループ(8725)を数字で見る|損害保険グループを有価証券報告書で確認

公開日:2026年10月5日 / 読了時間:約15分 / カテゴリ:数字で見る企業(第7回・日本株)

「数字で見る、話題の企業」シリーズ第7回は、三井住友海上火災保険・あいおいニッセイ同和損害保険などを傘下に持つ保険持株会社、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社(証券コード8725、以下「MS&AD」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が金融庁の開示システム(EDINET)に提出した有価証券報告書(第18期・2025年4月〜2026年3月)を中心に、①事業の中身 ②産業のつながり ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。

📌 30秒でわかるこの記事
  • MS&ADは、国内の損害保険3社・生命保険2社と海外事業を束ねる保険持株会社です。第18期(2025年4月〜2026年3月)の保険収益は6兆4,360億円(前期比+8.2%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は5,106億円(同+70.1%)でした。この期から会計の物差しを国際基準(IFRS)に切り替えています
  • セグメント別の保険収益では海外事業が最も大きく(2兆5,076億円)、会社は増益の理由として「国内損害保険事業における自然災害による発生保険金の減少」なども挙げています。保険会社の利益は、災害の多い少ないと、運用資産の値動きに左右される面があります
  • 「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
💡 なぜMS&ADか(選定根拠):本シリーズは日本株を中心にする方針(直近3本のうち海外株が1本以上あれば日本株)で、直近3本(NVIDIA・FOOD&LIFE COMPANIES・Applied Materials)に海外株が含まれるため、今回は日本株の番です。当サイトが機械的に集計する候補データ(edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-02時点で20銘柄)のうち、MS&ADは2026年9月24日(値下がりランキングと出来高急増ランキング)と9月29日(値下がりランキング)の2日に登場しています。ランキングに最後に登場した日から中3営業日以上あいていること(「熱が残っているうちは書かない」ルール。同データの cooled: true)と、有価証券報告書の本文が取得できていることを満たす候補の中から、時価総額の大きい順に選びました(時価総額の金額は本文に書きません)。本レーンでの既刊記事・個別の解説記事の既刊はなく(ls guide-*.html と guides.html を社名・証券コードで確認)、直近14日のニュース記事(guide-news-*.html・NEWS_LEDGER.md)との重複もありません。ランキングに登場した理由(なぜ値下がりしたか)は、一次情報で確かめられないため書きません。
数字の出どころと確認日(2026-10-05):決算の数字はすべて有価証券報告書 第18期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月30日提出)から引いています。直近の四半期(2026年4〜6月期)の決算短信は、決算短信の掲載先であるTDnet(東京証券取引所の適時開示サイト)の保管期間(約1か月)を過ぎていて当サイトから取得できなかったため、この記事では使っていません(二次情報で補うこともしていません)。2026年9月以降のTDnetの開示は取得でき、自己株式の取得状況(2026年10月2日開示)などはそちらから引いています。億円の数字は、有報の文中の表記(億円未満切り捨て)に合わせ、当サイトが百万円から計算したものには「約」を付けています。

1️⃣ MS&ADはどんな会社か

MS&ADは、自らは保険を売らず、グループ会社の経営を管理する保険持株会社です。子会社236社・関連会社36社(2026年3月31日現在)で、次の4つの事業を営んでいると開示しています(出典:有価証券報告書 第18期「事業の内容」、2026-10-05確認)。

💡 用語メモ:IFRS(国際財務報告基準)は、世界の多くの国で使われている会計のルールです。MS&ADはこの第18期から日本の会計基準(日本基準)をやめてIFRSに切り替えました。IFRSの保険会計では、売上にあたる数字を「保険収益」と呼びます。日本基準の時代によく使われた「正味収入保険料」(受け取った保険料から、ほかの保険会社に引き受けてもらった分の保険料を差し引いたもの)とは計算のしかたが違うため、過去の記事や資料の数字とはそのまま比べられません。

セグメント(事業の区分)ごとの保険収益は次のとおりです(出典:同有報「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」)。

MS&AD 第18期(2025年4月〜2026年3月)のセグメント別保険収益 セグメント別 保険収益(第18期・単位:億円・セグメント間取引の相殺前) 海外事業 25,076(6社合計の約39.9%) 三井住友海上(国内損保) 19,347(約30.8%) あいおいニッセイ同和損保(国内損保) 14,451(約23.0%) 三井住友海上あいおい生命(国内生保) 2,562(約4.1%) 三井住友海上プライマリー生命(国内生保) 1,067(約1.7%) 三井ダイレクト損保(国内損保) 402(約0.6%) 濃い青=損害保険・海外 薄い青=国内の生命保険
▲ 有価証券報告書 第18期「経営者による分析」の各セグメントの保険収益(2026-10-05確認)をもとに作成。構成比は6つのセグメントの合計(約6兆2,905億円)に対する割合で、当サイトが計算したもの。セグメント間の取引を相殺する前の金額のため、合計は連結の保険収益(6兆4,360億円)と一致しない。※概念を示すイメージ図です。

利益の面では、会社が経営の目標に使っている「修正利益」(会計上の当期利益から、市場の値動きの影響や特殊な要因などを除いて会社が独自に計算する利益。政策株式の売却損益も除いた数字)の2025年度の実績を、事業別に次のように開示しています:国内損害保険事業1,776億円、国内生命保険事業501億円、海外事業2,961億円、金融サービス/デジタル・リスク関連サービス事業15億円、合計5,255億円(出典:同有報「目標とする経営指標等の分析等」)。合計に占める海外事業の割合は約56%です(当サイト計算)。

2️⃣ どのつながりの中にいるか

次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、MS&ADが「損害保険」という仕組みのどの工程に立っているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。

損害保険の工程のつながり。契約者から販売の窓口、元受の保険会社、再保険会社へとリスクと保険料が流れ、元受の保険会社から運用先と保険金の支払い先へお金が流れる 損害保険の工程のつながり(リスクと保険料の流れ) 契約者 (家計・企業) 販売の窓口 (保険代理店・ 銀行の窓口・ネット) 元受(もとうけ)の保険会社 (引受け・査定・保険金の支払い) MS&ADグループ =ここに立つ 再保険会社 (元受が抱えたリスクの 一部を引き受ける) 預かった保険料の運用先 (国内外の債券・株式などの市場) 事故・災害のあとの復旧の担い手 (修理工場・建設業者・医療機関など) ※矢印は「リスク・保険料・保険金が流れる方向」を示す事実の関係です。 業績や株価が連動する方向を示すものではありません。
▲ 損害保険の工程の中でのMS&ADグループの位置(概念図)。会社の事業の内容・経営者による分析・事業等のリスクの開示をもとに作成(2026-10-05確認)。※概念を示すイメージ図です。

MS&ADが「元受の保険会社」の箱に立っている根拠は、会社自身の開示にあります。元受とは、契約者と直接(または代理店を通じて)保険契約を結び、保険金を支払う側のことです。第18期の保険収益のうち、国内の損害保険2社(三井住友海上・あいおいニッセイ同和損保)の合計は3兆3,798億円で、6つのセグメントの合計の約53.7%にあたります(当サイト計算。出典:有価証券報告書「経営者による分析」、2026-10-05確認)。

工程の前後とのつながりも、数字で開示されています。

このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報のリスクで挙げています。たとえば「大規模自然災害の発生等に伴う出再保険料(再保険に払う保険料)の高騰や再保険会社の引受キャパシティの減少」、「運転支援・自動運転技術の進展による自動車事故の減少等による収益構造への影響」、そして損害保険会社各社が政策株式の売却を進めるなかで「顧客企業等の当社グループに期待する提供価値が変化する可能性」です(出典:有価証券報告書「事業等のリスク」、2026-10-05確認)。

産業のつながりがあることと、株価が連動することは別です。同じ工程にいる会社でも、業績も株価も会社ごとに大きく異なります。ここでお伝えしているのは産業構造の事実であって、値動きの予想ではありません。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。

3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事

各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。有価証券報告書の「沿革」などに無い事実(持株会社ができる前の歴史や、行政処分)は、Wikipedia(二次情報)から年表に限って使っています。

年月出来事出典
1893年大阪保険株式会社が設立される(三井住友海上火災保険の沿革の最初に記載されている会社)Wikipedia「三井住友海上火災保険」沿革(2026-10-05確認)
1918年10月三井海上火災保険の前身である大正海上火災保険株式会社が設立される(三井住友海上火災保険の設立日として記載されている)Wikipedia「三井住友海上火災保険」(2026-10-05確認)
2001年10月三井海上火災保険が住友海上火災保険を合併し、三井住友海上火災保険株式会社に商号を変更Wikipedia「三井住友海上火災保険」沿革(2026-10-05確認)
2008年4月三井住友海上火災保険が単独株式移転により持株会社(当社)を設立。東京・大阪・名古屋の各証券取引所の市場第一部に上場有価証券報告書 第18期「沿革」(2026-06-30提出、2026-10-05確認)
2010年4月株式交換により、あいおい損害保険とニッセイ同和損害保険が主要な連結子会社となる(同年10月に両社が合併し、現在のあいおいニッセイ同和損害保険に)。商号を三井住友海上グループホールディングスからMS&ADインシュアランスグループホールディングスに変更有価証券報告書 第18期「沿革」(2026-10-05確認)
2016年2月英国のAmlin plcが主要な連結子会社となる(海外事業の組織再編に伴い、2020年10月に株式のすべてを売却)有価証券報告書 第18期「沿革」(2026-10-05確認)
2022年4月市場区分の見直しにより、東京証券取引所プライム市場・名古屋証券取引所プレミア市場に移行有価証券報告書 第18期「沿革」(2026-10-05確認)
2023年12月金融庁が、三井住友海上・あいおいニッセイ同和損保を含む大手損害保険4社に業務改善命令を出す(企業向けの共同保険で、事前に保険料を調整していたとされた件)Wikipedia「MS&ADインシュアランスグループホールディングス」不祥事等(2026-10-05確認)
2024年10月公正取引委員会が、三井住友海上・あいおいニッセイ同和損保を含む大手損害保険4社に、排除措置命令と課徴金納付命令を出す(企業向けの保険の契約で、保険料を事前に調整していたとされた件)公正取引委員会 報道発表「損害保険会社らに対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について」(2024-10-31、2026-10-05確認)
2025年3月金融庁が、大手損害保険4社に業務改善命令を出す(複数の保険会社の商品を扱う代理店に出向していた社員による、他社の顧客情報の持ち出しの件)Wikipedia「MS&ADインシュアランスグループホールディングス」不祥事等(2026-10-05確認)
2025年6月監査等委員会設置会社に移行有価証券報告書 第18期「沿革」(2026-10-05確認)
2025年4月〜2026年3月(第18期中)IFRS会計基準の適用を開始。三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保が2027年4月1日を効力発生日として合併することで最終合意し、合併契約を締結。米国のW.R.Berkley Corporationへの出資、豪州のChallenger Limitedの株式売却を行う有価証券報告書 第18期「経営者による分析」(2026-10-05確認)
2026年5月取締役会で自己株式の取得を決議(上限9,500万株・1,900億円、取得期間は2026年5月21日〜11月18日)適時開示「自己株式の取得状況に関するお知らせ」(2026-10-02開示、2026-10-05確認)
2026年6月有価証券報告書 第18期(2025年4月〜2026年3月)を提出EDINET 有価証券報告書(2026-06-30提出、2026-10-05確認)

※TDnet(適時開示)のPDFは保管期間(約1か月)を過ぎるとリンクが切れます。その場合は会社のIRサイトの適時開示一覧でご確認ください。

4️⃣ 直近の決算の数字(有価証券報告書 第18期)

有価証券報告書 第18期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月30日提出)の連結の数字です。前期(第17期)もIFRSに組み替えた数字で比べています。確認日は2026-10-05です。

指標(IFRS・連結)第18期(2025/4〜2026/3)第17期(前期・2024/4〜2025/3)増減率
保険収益6兆4,360億円5兆9,495億円+8.2%
保険サービス損益5,254億円3,284億円+60.0%
金融損益2,610億円2,342億円+11.5%
税引前利益7,035億円4,585億円+53.4%
親会社の所有者に帰属する当期利益5,106億円3,001億円+70.1%
基本的1株当たり当期利益342.98円193.36円—
親会社所有者帰属持分利益率(ROE)8.65%5.33%—

出典:有価証券報告書 第18期「経営者による分析」の連結主要指標・「主要な経営指標等の推移」(2026-06-30提出)。億円は百万円の表から億円未満を切り捨て。増減率は有報の記載。確認日:2026-10-05。

💡 用語メモ:保険サービス損益=保険収益から、保険金の支払いや事業費などの「保険サービス費用」と再保険の損益を差し引いたもの。いわば「保険を引き受ける本業」のもうけです。金融損益=資産運用のもうけ(投資損益)から、保険の負債にかかる利息のような費用(保険金融損益)を差し引いたものです。日本基準の時代には、保険の本業の収支を見る指標としてコンバインド・レシオ(支払った保険金と経費の合計が、保険料の何%にあたるか。低いほど本業の収支に余裕がある)がよく使われました。ROE(自己資本利益率)=株主のお金(親会社の所有者に帰属する持分)に対して、1年でどれだけ利益を出したかの割合です。

会社の説明では、保険収益は国内の自動車保険・火災保険の増収と、海外(米州・欧州)の増収で伸び、保険サービス損益は「保険料が増収したことや自然災害ロスが減少したことなど」により増えた、としています(出典:同有報「経営者による分析」)。

セグメントごとの当期利益(親会社の所有者に帰属する当期利益)

セグメント第18期前期からの増減
海外事業2,344億円+570億円(+32.2%)
三井住友海上1,829億円+743億円(+68.5%)
三井住友海上プライマリー生命1,273億円+763億円(+149.7%)
あいおいニッセイ同和損保1,189億円+513億円(+75.9%)
三井ダイレクト損保△22億円△7億円
三井住友海上あいおい生命△602億円△825億円(前期は222億円)

出典:同有報「経営者による分析」の各社の主要指標(セグメント間の内部取引相殺前)。確認日:2026-10-05。三井住友海上あいおい生命について、会社は「債券売却損の計上などにより」金融損益が減少したと説明しています。

日本基準とIFRSで、利益の数字が大きく違う理由

有報の「主要な経営指標等の推移」には、日本基準の数字も5期分載っています。日本基準での第18期の「親会社株主に帰属する当期純利益」は7,873億円で、IFRSの5,106億円とは約2,767億円の差があります(当サイト計算)。会社は差の主な理由の一つとして、政策保有株式(取引関係の維持などを目的に、取引先の株式を持ち合うこと)などの扱いを挙げています。日本基準では株式を売った利益は当期の利益に入りますが、IFRSで「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する」と指定した株式は、売っても当期の利益には入らず、純資産の中で振り替えられます。この影響で、IFRSの投資損益は日本基準に比べて5,459億円少なくなっています(出典:同有報「経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報」)。なお、日本基準で作った第18期の要約連結財務諸表は監査を受けていない、と会社は注記しています。

MS&ADの当期利益の推移。日本基準の第14期から第18期と、IFRSの第17期・第18期 親会社に帰属する当期利益の推移(単位:億円) 日本基準(親会社株主に帰属する当期純利益) 2,627 2,110 3,692 6,916 7,873 第14期 第15期 第16期 第17期 第18期 21/4-22/3 22/4-23/3 23/4-24/3 24/4-25/3 25/4-26/3 IFRS (親会社の所有者に帰属する当期利益) 3,001 5,106 第17期 第18期 組み替え 25/4-26/3 同じ期でも、日本基準とIFRSでは利益の数字が違う(政策保有株式の売却益の扱いなど)。
▲ 有価証券報告書 第18期「主要な経営指標等の推移」と「経営者による分析」の数値(百万円)を億円に換算して作成(億円未満切り捨て、2026-10-05確認)。日本基準の第18期は監査を受けていない参考の数字と注記されている。左右は同じ縦の目盛り。※概念を示すイメージ図です。
💡 会社が公表している目標:会社は2026年度(2026年4月〜2027年3月)について、修正利益(政策株式の売却損益を除く)5,320億円・修正ROE 13.0%を「予想(目標)」として示しています(2025年度実績は5,255億円・15.3%)。会社は、2026年度は「自然災害による発生保険金を平年並みの水準で織り込んだ上で」の数字だと説明しています。また「グループの2030年度目指す姿」として、修正利益(同)8,000億円、修正ROE 11%以上、ESR 180%以上を掲げています(出典:2026年度の数字は有価証券報告書「目標とする経営指標等の分析等」、2030年度の数字は同「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、2026-10-05確認)。なお「経営方針」の表には、2026年度目標として修正利益5,300億円・修正ROE(政策株式の売却損益を除く)10%という別の数字も載っています。この記事では「目標とする経営指標等の分析等」の予想(目標)の数字を使っています。これらは会社自身が公表している目標で、当サイトによる業績予測ではありません。
ESR=「時価で見た純資産」を「200年に一度の確率で起きる損失の見込み額(統合リスク量)」で割った比率で、資本にどれだけ余裕があるかを示す、会社の独自の指標です。

株主への還元について、1株当たり配当額は第17期145円・第18期160円です(提出会社の数字。発行済株式総数が第16期末の5億3,607万株から第17期末の16億839万株へと約3倍になっており、第16期以前の配当額とはそのまま比べられません)。発行済株式総数は第17期末16億839万株から第18期末14億9,255万株に、約1億1,584万株減っています(当サイト計算。出典:同有報「主要な経営指標等の推移」)。

5️⃣ 会社自身が挙げているリスク

以下は有価証券報告書(第18期)の「事業等のリスク」で、会社自身が「グループ重要リスク」として挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社は全部で10項目を挙げており、ここではそのうち5つを紹介します。原文はEDINET掲載の有価証券報告書でご確認ください。

出典:有価証券報告書 第18期「事業等のリスク」(2)①グループ重要リスク(2026-06-30提出、2026-10-05確認)。原文にはこのほか、サイバー攻撃、システム障害、感染症の大流行、人財を取り巻く環境の変化、国内外での対立激化や安全保障の危機が挙げられています。

6️⃣ 上がる材料/下がる材料

ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。

📈 上がる可能性がある材料
第18期の親会社の所有者に帰属する当期利益は5,106億円(前期比+70.1%)、保険の本業のもうけを示す保険サービス損益は5,254億円(同+60.0%)だった。出典:有価証券報告書 第18期「経営者による分析」/確認日2026-10-05/効くと:この水準が続くかどうかを、次の決算で比べる基準になる
海外事業の保険収益は2兆5,076億円(前期比+17.5%)、当期利益は2,344億円(同+32.2%)。会社は米国での引受けの拡大や、米国の保険会社W.R.Berkley Corporationへの出資などを理由に挙げ、あわせて「自然災害の発生が少なかったこと」や豪州のChallenger Limitedの株式売却の影響もあったと説明している。出典:有価証券報告書 第18期「経営者による分析」/確認日2026-10-05/効くと:海外の伸び方が、グループ全体の利益の大きさを左右する材料になる
2026年5月20日の取締役会で、上限9,500万株(自己株式を除く発行済株式の6.5%)・1,900億円の自己株式の取得を決議。2026年9月30日までの累計で3,159万8,700株・約1,486億円を取得した。出典:適時開示「自己株式の取得状況に関するお知らせ」(2026-10-02)/確認日2026-10-05/効くと:市場に出回る株数が減り、1株当たりの利益などの計算の分母が変わる
1株当たり配当額は第17期145円から第18期160円になった(提出会社の数字)。出典:有価証券報告書 第18期「主要な経営指標等の推移」/確認日2026-10-05/効くと:今後の配当の方針や金額を、会社の開示で見比べる基準になる
会社は2026年度の修正利益(政策株式の売却損益を除く)を5,320億円と、2025年度実績の5,255億円を上回る「予想(目標)」として公表している(当サイトの予測ではない)。出典:有価証券報告書 第18期「目標とする経営指標等の分析等」/確認日2026-10-05/効くと:今後の決算で、この目標に対する進み具合を確かめる基準になる
📉 下がる可能性がある材料
会社は第18期の増益の理由として、国内損保2社では「自然災害による発生保険金が減少したこと」、海外事業では「自然災害ロスが減少したこと」などを挙げている。一方で2026年度の目標は自然災害を「平年並みの水準で織り込んだ」と説明し、大規模自然災害を重要リスクの1番目に置いている。出典:有価証券報告書 第18期「経営者による分析」「目標とする経営指標等の分析等」「事業等のリスク」/確認日2026-10-05/効くと:災害が多い年には、支払う保険金が増えて保険サービス損益が変わりうる
三井住友海上あいおい生命は、債券売却損の計上などで金融損益が△1,669億円となり、当期利益は△602億円(前期は222億円)だった。出典:有価証券報告書 第18期「経営者による分析」/確認日2026-10-05/効くと:金利の動きや運用の判断が、生命保険の利益を大きく動かしうる
投資有価証券は20兆1,328億円で総資産の約68.0%を占め、会社は「金融マーケットの大幅な変動」と「信用リスクの大幅な増加」を重要リスクとして挙げている。出典:有価証券報告書 第18期「経営者による分析」の財政状態・「事業等のリスク」/確認日2026-10-05/効くと:株式・債券・為替の値動きが、金融損益や資本の余力に響きうる
企業向け保険での保険料の調整行為や、保険会社間の情報漏えいの反省を踏まえ、業務改善計画の実行とビジネスモデルの変革を進めていると会社は説明している。保険業界では、これを受けて改正された保険業法が2026年6月から施行されている。出典:有価証券報告書 第18期「経営者による分析」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」/確認日2026-10-05/効くと:競争のルールの変化が、企業向け保険の取引や営業のしかたに影響しうる
三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保は2027年4月1日に合併する予定。会社は組織改編(事業会社の合併を含む)に伴う業務の混乱や、目指す姿を実現できないことによる社会的信用の低下を、重要リスクの想定シナリオに明示している。出典:有価証券報告書 第18期「経営者による分析」「事業等のリスク」/確認日2026-10-05/効くと:合併の準備や統合の進み具合が、費用や業務に影響しうる

以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。

※ 材料の数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来の予測は行っていません。

7️⃣ これから何を見れば分かるか

次の決算発表日は、当サイトの決算予定データ(earnings-calendar.json)に載っておらず、会社の公式な日程も確認できていないため、ここには書きません。会社のIRサイトの決算発表予定でご確認ください。この記事で挙げた材料がその後どうなったかは、次の開示で確かめられます。

有価証券報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説にまとめています。

8️⃣ まとめ

結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①保険サービス損益と、会社が説明する自然災害の影響(第18期は自然災害による発生保険金の減少が増益の理由の一つでした)、②2026年度の修正利益の目標5,320億円に対する進み具合、③2026年10月末までに開示される予定のソルベンシー・マージン比率(新しい時価ベースの制度での初めての数字)。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。

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