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🔬 数字で見る、話題の企業
⚠️ 本記事は公開情報(有価証券報告書・適時開示等の一次情報)に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示や将来の業績・株価の予測は行っていません。投資には元本割れリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。

🔬 第一三共(4568)を数字で見る|がん領域に力を入れる医薬品メーカーを有価証券報告書と適時開示で確認

公開日:2026年10月26日 / 読了時間:約40分 / カテゴリ:数字で見る企業(第28回・日本株)

「数字で見る、話題の企業」シリーズ第28回は、有価証券報告書の「事業の内容」に「医薬品等の製造販売を主な事業内容としております」と書かれている、第一三共株式会社(証券コード4568、以下「第一三共」)を取り上げます。同じ書類は「当社グループは、報告セグメントが単一であるため、セグメント情報の記載を省略しております」とも書いています。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。①事業の中身 ②事業が使われるつながりの中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。初めて出てくる言葉は、その場で説明します。

この記事が根拠にしている書類は2つで、数字の出どころを分けて書きます。①有価証券報告書(上場会社が決算期ごとに金融庁へ出す、事業や決算をくわしく書いた報告書。以下「有報」。第21期・2025年4月1日〜2026年3月31日。2026年6月19日提出)。②証券取引所の適時開示(上場会社が、株価に影響しうる情報を証券取引所を通じてすぐに公表する仕組み)のうち、2026年9月28日に公表された1件です。この記事は2026年3月期の有価証券報告書と適時開示を根拠とし、直近四半期は扱っていません。決算短信(上場会社が決算の内容を証券取引所に早く知らせる書類)は、使っていません(理由は下の「数字の出どころと確認日」に書きました)。会計基準はIFRS(国際財務報告基準)で、売上は「売上収益」、本業の利益は「営業利益」と呼び、「経常利益」という項目はありません。会社の将来の目標や計画の数字は有報に載っていますが、この記事は会社の業績予想や中期目標の数字は扱いません(有報の後発事象に書かれた会社の見込みだけは、会社の言葉として出どころを示して引用します)。

📌 30秒でわかるこの記事
  • 2026年3月期(有報・連結・IFRS)の売上収益(売上のこと)は2兆1,230億円(前期比+12.6%)、営業利益は2,291億円(同−31.0%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,599億円(同−12.1%)でした。営業利益が減った理由として、会社は「製造委託先への損失補償等を一過性の費用に計上した」ことを挙げています(一過性の費用は1,530億円で、前期は31億円)。会社が独自に示す「コア営業利益」(一過性の収益・費用を除いた指標)は3,600億円(同+15.1%)です
  • 売上収益の構成(連結に対する割合・当サイト計算)は、米国35.3%、日本27.3%、欧州23.4%、その他の地域13.9%。がんの薬エンハーツの売上収益は8,195億円(前期比+25.8%)で、売上収益の38.6%にあたります。有報は、がん領域の売上収益を9,540億円(売上収益の44.9%・当サイト計算)と書いています。製品名は売上の説明のための事実として挙げており、効き目や安全性について述べるものではありません
  • 2026年9月28日の適時開示では、会社に対して提起されていた損害賠償等の請求訴訟について、東京地方裁判所が請求を全て棄却する判決を出したあと、相手方が控訴したことが公表されました(請求金額は2,033億円余・会社は連結業績への影響を「精査中」と書いています)。「上がる材料」「下がる材料」を各6件ずつ、出典付きで対に並べます。上がる・下がるの結論は書きません
💡 なぜ第一三共か(選定根拠):本シリーズは日本株を中心にする方針で、直近3本(IHI・ファーストリテイリング・セブン&アイ)はすべて日本株でした。当サイトが機械的に集計する候補データ(edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-23時点)は、第一三共の登場を2026年10月14日・10月20日の2回と数えています(どのランキングに載ったかは、この記事では確かめていません)。最後に登場した日(10月20日)から中3営業日以上あいていること(同データの cooled: true)、有報の本文が取得できていることを確かめたうえで、候補の中の1社として選びました。ランキングに登場した理由(なぜ値上がりや出来高の増加があったか)は、一次情報で確かめられないため書きません。

当サイトの解説記事に、この会社の名前が出る記事が2本あります(2026年8月26日公開のニュース記事に1箇所、2026年9月12日公開の別の会社の記事に1箇所)。どちらも主役ではなく、この記事はそれらの内容を引用・参照していません。
数字の出どころと確認日(2026-10-26):①2026年3月期の数字と、会社のリスク・歴史・方針の記述は、有価証券報告書 第21期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月19日提出)(同じ書類のPDF:EDINET公式のダウンロード)から引いています。②2026年9月28日の訴訟の控訴の件は、適時開示(2026年9月28日・損害賠償等請求訴訟における控訴提起のお知らせ)から引いています(相手方の名前は、この記事では一般名に置き換えています)。会計基準はIFRSです。

TDnet(東京証券取引所の適時開示サイト)は、当サイトが一覧を閲覧できた2026年9月17日〜10月26日(平日28日分・74ページ・5,548件)を、証券コード「45680」と社名「第一三共」の両方で全ページ検索しました。第一三共自身の開示は上の1件のみで、配当・自己株式・提携や開発の進捗・業績修正などの開示は見つかりませんでした(2026年9月16日以前は一覧が閲覧できず、確認できていません)。第2四半期(2026年4〜9月)の決算短信は、10月26日時点のTDnetに見つからず、第1四半期(2026年4〜6月)の決算短信は、閲覧できる範囲より前に公表されたとみられ、取得できていません。そのため決算短信の数字は使いません。会社のIRサイトはアクセスが拒否された(403)ため、内容は確認していません(回避はしていません)。上の適時開示は2026年9月10日付の会社の発表資料にも触れていますが、その資料自体は確認していません。

1️⃣ 第一三共はどんな会社か

有報の「事業の内容」によると、第一三共は医薬品等の製造販売を主な事業とする会社で、当社と子会社43社、関連会社1社の計45社でグループを構成しています(国内7社・海外38社)。国内では医療用医薬品の研究開発・製造・販売を当社が行い、一般用医薬品を扱う子会社やワクチンの子会社があります。海外では米国・欧州・中国・ブラジルなどにある子会社が、医薬品の研究開発・製造・販売を行っています。連結の従業員数は20,171人(前期末19,765人)です。有報の「大株主の状況」(2026年3月31日現在)では、上位10名の所有株式数の割合の合計が41.71%と書かれています(上位には、信託業務として株式を持つ信託銀行の信託口が含まれます。株式の需給や値動きについての見方ではありません)。出典:有価証券報告書 第21期「事業の内容」「従業員の状況」「大株主の状況」、2026-10-26確認。

会社は有報の「経営方針」で、2035年のビジョンと、2026〜2030年度の「第6期中期経営計画」を書いています。柱として、DXd ADC(会社独自のADC技術)の製品価値の最大化によるがん事業の拡大、次の成長の柱となる技術の特定(有報は「BGTs(Breakthrough Generating Technologies)」と呼び、「より革新的な医薬品を患者さんに迅速に届けるための創薬技術プラットフォーム」と注記しています)、全社の生産性とコストの最適化(有報は「Operational Excellence」と呼びます)を挙げています。株主還元では、「累進配当」(原則として配当を維持・増配し続ける方針)を導入し、配当水準の指標として「調整後DOE」(株主資本から株価や為替で変わる項目を除いた「調整後株主資本」に対する配当総額の割合)を掲げています(会社の方針の紹介で、この記事の見方ではありません。2030年度の目標などの将来の数字は、この記事では扱いません)。

💡 用語メモ:売上収益は、IFRSでの「売上」にあたる項目です。営業利益は、売上収益から売上原価・販売費及び一般管理費・研究開発費などを引き、「その他の収益・費用」を加減した本業の利益です。コア営業利益は、会社が独自に決めた指標で、営業利益から「一過性の収益・費用」(固定資産の売却損益、事業再編に伴う損益、減損損失、損害賠償や和解に伴う損益など、非経常的かつ多額の損益)を除いたものです(IFRSの指標ではありません)。ADC(抗体薬物複合体)は、有報によると、抗体医薬と薬物(低分子医薬)を適切なリンカーを介して結合させた医薬品です。引当金は、将来の支出に備えて、見積りの金額をあらかじめ費用として計上しておくお金です。製造委託先(CMO)は、薬の製造を請け負う外部の会社、最低購入義務は、委託元が一定の数量以上を発注する約束です。契約一時金・マイルストーン・ロイヤリティーは、提携や権利の許諾の対価として受け取る(または支払う)お金で、契約の時に払う一時金、開発や承認、売上などの節目で払う成果報酬、売上に応じて払う使用料です。契約負債は、役務などを提供する前に対価を受け取った分の残高です。連結は、グループ全体を1つの会社とみなした数字です。薬価は、公的医療保険で使われる医療用医薬品の公定価格です。

2026年3月期の売上収益を、地域別と中身で分けると次のとおりです(有報・連結・IFRS。2026年3月期は2025年4月1日〜2026年3月31日)。構成比と前期比は、当サイトが百万円単位の数字から計算しました。

地域(有報の区分)売上収益構成比前期前期比
日本5,801億円27.3%5,838億円−0.6%
米国7,494億円35.3%6,422億円+16.7%
欧州4,974億円23.4%4,182億円+18.9%
その他の地域2,962億円13.9%2,420億円+22.4%
合計(連結)2兆1,230億円全体1兆8,863億円+12.6%
第一三共の2026年3月期の売上収益の構成(連結・IFRS)。上は地域別(日本・米国・欧州・その他)、下は売上収益の中身(製商品の販売・技術料収入・その他) 上:地域別の売上収益(連結・2026年3月期・単位:億円・構成比は当サイトの計算) 日本 5,801(27.3%) 米国 7,494(35.3%) 欧州 4,974(23.4%) その他の地域 2,962(13.9%) 構成比は連結の売上収益2兆1,230億円に対する割合です。 地域は有報の「地理的近接度による区分」。億円未満は四捨五入のため合計が合わないことがあります。 下:売上収益の中身(連結・2026年3月期・単位:億円・構成比は当サイトの計算) 製商品の販売 18,540(87.3%) 技術料収入 1,902(9.0%) その他 788(3.7%) 技術料収入は、提携先から受け取る契約一時金・マイルストーン収入・ロイヤリティー等です。 上と下は別の切り口で、棒の長さの目盛りも違います。会社の報告セグメントは医薬品事業の1つです。
▲ 有価証券報告書 第21期「事業セグメント」「売上収益」の注記(連結・IFRS、億円未満四捨五入、2026-10-26確認)。構成比は、連結の売上収益に対する割合を当サイトが計算したもの(四捨五入)。※概念を示すイメージ図です。

有報は、製品・サービス別の売上収益を「医療用医薬品」2兆295億円(構成比95.6%・前期比+12.9%)、「ヘルスケア」908億円(4.3%・同+4.8%)、「その他」27億円(0.1%)と書いています。別の切り口の「収益の分解」では、「製商品の販売」が1兆8,540億円(87.3%)、「技術料収入」が1,902億円(9.0%・前期1,608億円・当サイト計算で+18.3%)、「その他」が788億円(3.7%)です。技術料収入は、有報によると、第三者に製品の研究開発・製造・販売や技術の使用を許諾する契約から得る契約一時金、マイルストーン収入、ランニング・ロイヤリティーなどです。有報は、過去の期間に充足した履行義務(契約で約束した製品や役務を相手に渡す義務)から認識した収益(主なものはマイルストーン収入とロイヤリティー)を1,037億円(前期892億円)と書き、技術料収入などに関わる契約負債の残高は8,812億円(前期末8,190億円)と書いています。

主な製品の売上収益は次のとおりです(有報「経営者による分析」の表。連結・IFRS・億円)。製品名は売上の説明のための事実として挙げており、効き目や安全性について述べるものではありません。

製品(有報の区分)2026年3月期前期前期比有報の説明
エンハーツ(がんの薬)8,195億円6,514億円+25.8%「グローバル主力品」。地域別は、米国3,863億円(+27.9%)、欧州1,748億円(+16.9%)、日本377億円(+21.4%)。有報は増収の理由を「既上市国での市場浸透及び上市国の拡大」と書いています
リクシアナ(血液が固まるのを防ぐ薬)3,677億円3,440億円+6.9%「グローバル主力品」。日本1,418億円(+6.6%)、欧州1,930億円(+7.8%)
ダトロウェイ(がんの薬)米欧344億円、日本131億円米欧11億円、日本3億円—有報の表の区分(オンコロジー事業ユニットとジャパン事業ユニット)。米国332億円、欧州12億円

出典:有価証券報告書 第21期「経営者による分析」(グローバル主力品売上収益、ユニット別売上収益)(2026-10-26確認)。エンハーツが売上収益に占める割合は38.6%、リクシアナは17.3%(いずれも当サイト計算)。有報は、がん領域の売上収益を9,540億円と書いています(売上収益2兆1,230億円のうち。割合44.9%は当サイト計算)。

有報の「後発事象」(決算日のあとに起きた出来事の注記)には、一般用医薬品などを扱う国内の連結子会社の全株式を、国内の飲料・食品を扱う会社に譲渡する契約(2026年4月15日締結)が書かれています。譲渡価額は2,465億円(予定。契約の価格調整で変わる可能性があると注記)、譲渡は2026年7月1日(議決権割合が70%となるよう)、2027年6月1日(同30%)、2029年6月1日(全て)の段階的な日程で、連結財務諸表の注記は、譲渡益は計上の時点を精査中で、額は支配を失う時点の子会社の純資産によって変わるため「現時点では未定」と書いています。一方、提出会社(第一三共単体)の財務諸表の「重要な後発事象」は「株式譲渡の都度、子会社株式売却益を計上する見込み」「2027年3月期においては、約600億円の株式売却益を計上する見込み」と書いています。これは単体の見込みで、連結の売却益の額ではありません(会社の見込みであり、この記事の予想ではありません)。この子会社の資産・負債は、2026年3月期末の連結財政状態計算書で「売却目的で保有する資産」(1,222億円)と「直接関連する負債」(316億円)に区分されています。損益計算書の上で「継続事業」と「非継続事業」(すでに処分された、または売却目的保有に分類された企業の構成要素の損益)を分けた表示は、当サイトが確認した範囲では見当たりません。

2️⃣ 事業が使われるつながりの中のどこにいるか

次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、第一三共の事業が、薬が研究されて患者さんに届くまでの流れのどこに入っているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。有報の記載から読み取れる第一三共は、薬の研究開発・製造・販売を自社グループで行い、一部の開発と販売で海外の製薬会社と組み、製造の一部を外部の会社に委託している会社です。

第一三共が立っている工程の地図。外部の研究機関や企業、研究・臨床開発、規制当局の承認審査、製造・供給、販売と医療従事者への情報提供、医薬品の卸売会社、医療機関・薬局という薬の流れのうち、グループが自ら行う箇所を濃い枠で示す。外側の枠組みとして薬価制度や各国の規制、関税、為替があり、会社が有価証券報告書のリスクで挙げている 工程の地図(色の濃い枠=第一三共グループが自ら行っていると有報に書かれている箇所) 薬の流れ(一般的な工程を簡単にしたもの) 外部の 研究機関や 企業 [自社] 研究・ 臨床開発 規制当局の 承認の審査 [自社] 製造・供給 (委託先も) [自社] 販売と医療従事 者への情報提供 医薬品の 卸売会社 医療機関・ 薬局 上の流れを支える、グループの仕事と取引先との関係(有報に書かれているもの) [自社]海外の製薬会社2社との共同開発・販売提携(利益は折半、費用の分け方は契約ごと) 製造と供給は主に自社が担う(有報の注記「共同開発及び共同販促」) 製造委託先との長期の契約に「年別の最低購入義務」(有報「事業等のリスク」) 最低購入義務を満たせないと補償金を払う場合がある(この記事の4節・6節) 外側の枠組み:薬価制度・医療費抑制策、各国の規制、米国の関税政策、為替 会社が有価証券報告書の「事業等のリスク」で挙げているもの(この記事の5節) ※矢印は「薬や取引が流れる方向」を示す事実の関係です。業績や株価が連動する方向を示すものではありません。 ※濃い枠は有報で確認できる箇所で、各箇所での売上や利益の大きさを示すものではありません。 ※白い枠は役割の一般名で、特定の会社を指すものではありません。
▲ 医薬品が使われる流れの中での第一三共グループの位置(概念図)。流れの並びは一般的なしくみを簡単にしたもので、有報の言葉ではありません。濃い枠の内容は、有報の「事業の内容」「重要な契約等」「事業等のリスク」「注記」に出てくるものから選んだ例で、すべてではありません(2026-10-26確認)。白い枠は役割の一般名で、特定の会社を指すものではありません。※概念を示すイメージ図です。

この流れの中に立っている根拠は、会社自身の開示にあります。

このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報で挙げています。提携については、「第三者との研究開発に係る提携に関して契約の条件変更・終了等が起こった場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります」と書いています。製造については、需要予測や供給計画が当初の想定から変わり、最低購入義務を満たせない場合には「CMOに対して補償金の支払いの必要が生じる可能性があります」と書いています。薬の価格や規制については、「薬価基準の改定をはじめとして、医療制度や健康保険に関する行政施策の動向によっては、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります」と書いています(出典:有価証券報告書 第21期「事業等のリスク」「重要な契約等」、2026-10-26確認。会社の認識であり、この記事の見方ではありません)。

産業のつながりがあることと、株価が連動することは別です。同じ工程にいる会社でも、業績も株価も会社ごとに大きく異なります。ここでお伝えしているのは産業構造の事実であって、値動きの予想ではありません。薬の需要や価格、規制、為替などの先行きについても、この記事は何も予想していません。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。

3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事

各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。この年表は、有価証券報告書と適時開示だけで作っています(Wikipediaなどの二次情報は使っていません)。提携先・買収や譲渡の相手・訴訟の相手方・過去の子会社の社名は、この記事では一般名に置き換えています(出典には書かれています)。

年月出来事出典
2005年2月〜9月国内の製薬会社2社(三共株式会社と第一製薬株式会社)が、株式移転により完全親会社となる共同持株会社を設立して経営統合することに基本合意(2月)。2005年9月、当社設立。東京証券取引所第一部に株式を上場有報 第21期「沿革」(2026-10-26確認)
2007年4月当社が、上の2社を吸収合併有報 第21期「沿革」(2026-10-26確認)
2008年11月/2015年3月ある会社の株式取得により、そのグループを子会社化(2008年11月)。2015年3月、そのグループが別の会社に吸収合併されたことにより、連結の範囲から除外有報 第21期「沿革」(2026-10-26確認)
2011年4月/2014年11月ある会社の株式取得により子会社化(2011年4月)。別の会社の株式取得により子会社化(2014年11月。この会社は2026年3月期に清算された)有報 第21期「沿革」(2026-10-26確認)
2019年3月29日海外の製薬会社と、がんの薬エンハーツの全世界(日本を除く)での共同開発・販売の契約を締結。同社から13.5億米ドルの契約一時金を受領(有報の記載)有報 第21期「注記 共同開発及び共同販促」(2026-10-26確認)
2020年7月27日同じ海外の製薬会社と、がんの薬ダトロウェイの共同開発・販売の契約を締結。同社から10億米ドルの契約一時金を受領(有報の記載)有報 第21期「注記 共同開発及び共同販促」(2026-10-26確認)
2020年10月1日普通株式1株を3株とする株式分割(効力発生日)。この記事の5期の表(2022年3月期以降)の期間中に、株式分割はありません有報 第21期「新株予約権等の状況」の注(2026-10-26確認)
2022年4月東京証券取引所の市場区分の見直しに伴い、市場第一部からプライム市場に移行有報 第21期「沿革」(2026-10-26確認)
2023年10月20日別の海外の製薬会社と、開発中のがんの薬3つの全世界(日本を除く)での共同開発・販売の契約を締結。同社から3つの開発品についてそれぞれ15億米ドルの契約一時金を受領(有報の記載)有報 第21期「注記 共同開発及び共同販促」(2026-10-26確認)
2024年4月国内の子会社の株式を国内の企業に一部譲渡し、持分法適用関連会社(出資先の損益を持ち分に応じて取り込む会社)にした有報 第21期「沿革」(2026-10-26確認)
2025年4月当社が、国内の子会社2社を吸収合併有報 第21期「沿革」(2026-10-26確認)
2025年5月開発中のがんの薬の1つについて、米国での非小細胞肺がんに係る承認申請を自主的に取り下げ(有報「研究開発活動」の記載)有報 第21期「研究開発活動」(2026-10-26確認)
2025年6月がんの薬ダトロウェイについて、EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がんを対象とした米国での承認を取得(有報の記載)有報 第21期「経営者による分析」「研究開発活動」(2026-10-26確認)
2025年12月〜2026年3月ADC製品の米国特許をめぐる特許侵害訴訟(一審は、損害賠償及びエンハーツの米国売上に対するロイヤルティの支払いを命じた)について、2025年12月、米国の控訴裁判所は当該特許は無効であるとして一審判決を取り消す判決を下し、相手方が期限の2026年3月2日までに不服申立て手続きを行わなかったため、特許係争は終結(有報の記載。法的な評価はこの記事では行いません)有報 第21期「事業等のリスク」(2026-10-26確認)
2026年3月がんの薬エンハーツについて、HER2陽性(HER2遺伝子増幅 又は IHC 3+)の進行・再発の固形がんを対象とした日本での承認を取得(有報の記載)有報 第21期「経営者による分析」「研究開発活動」(2026-10-26確認)
2026年3月31日/4月15日取締役会で、一般用医薬品などを扱う国内の連結子会社の全株式を国内の飲料・食品を扱う会社に譲渡することを決議(3月31日)。4月15日に株式譲渡契約を締結(段階的に2029年度中に完了する予定)有報 第21期「重要な後発事象」(2026-10-26確認)
2026年6月10日自己株式31,457,200株を消却(2026年5月11日の取締役会決議に基づく。消却前の発行済株式総数の1.66%)有報 第21期「重要な後発事象」(2026-10-26確認)
2026年6月19日有価証券報告書(第21期)を提出。同日、2,000億円(3年・5年)のシンジケートローン(複数の銀行による協調融資)による借入を実行有報 第21期「表紙」「重要な後発事象」(2026-10-26確認)
2026年9月28日適時開示:会社に対して提起されていた損害賠償等の請求訴訟について、2026年9月10日に東京地方裁判所が請求を全て棄却する判決を言い渡したあと、相手方が2026年9月24日に東京高等裁判所へ控訴したことを公表適時開示(2026年9月28日・控訴提起のお知らせ)(2026-10-26確認)

4️⃣ 直近の決算の数字(有報)

【有報】2026年3月期(第21期・連結・IFRS)

有報の連結の数字です。期間は2025年4月1日〜2026年3月31日、前期(第20期)は2024年4月1日〜2025年3月31日です。確認日は2026-10-26です。この表の主な数字は、有報に付く監査法人の監査報告書の対象となった連結財務諸表に基づきます(従業員数などは監査の対象外の記載です)。億円は百万円単位の数字を四捨五入したため、会社の説明文の数字と1億円ずれる場合があります。

指標(連結・IFRS)2026年3月期2025年3月期増減
売上収益2兆1,230億円1兆8,863億円+12.6%
売上原価6,690億円4,158億円+60.9%(当サイト計算)
販売費及び一般管理費7,807億円7,312億円+6.8%(当サイト計算)
研究開発費4,660億円4,360億円+6.9%
その他の収益/その他の費用221億円/3億円287億円/1億円—
営業利益2,291億円3,319億円−31.0%
金融収益/金融費用408億円/80億円341億円/119億円—
税引前利益2,634億円3,556億円−25.9%
法人所得税費用36億円599億円—
親会社の所有者に帰属する当期利益2,599億円2,958億円−12.1%
基本的1株当たり当期利益140.44円155.96円—
営業活動によるキャッシュ・フロー777億円538億円+44.2%(当サイト計算)
投資活動によるキャッシュ・フロー−1,482億円+3,342億円—
財務活動によるキャッシュ・フロー−979億円−3,778億円—
現金及び現金同等物(期末)4,498億円6,398億円—
総資産(期末)4兆54億円3兆4,561億円+5,493億円(会社の説明)
親会社の所有者に帰属する持分/比率(期末)1兆6,642億円/41.5%1兆6,234億円/47.0%—
親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)15.8%17.9%—

出典:有価証券報告書 第21期「主要な経営指標等の推移」「経営者による分析」「連結財務諸表」(2026-06-19提出、2026-10-26確認)。現金及び現金同等物の4,498億円は連結財政状態計算書の値です。有報の「経営者による分析」は4,890億円と書いていますが、これは譲渡予定の子会社の現金392億円を「売却目的で保有する資産」へ振り替える前の値です(連結キャッシュ・フロー計算書の「売却目的で保有する資産への振替額」〈△392億円〉の行より・当サイトで差を確認)。キャッシュ・フロー=お金の出入りで、営業活動は本業の稼ぎや運転資金、投資活動は設備や有価証券・子会社株式などへの投資や売却、財務活動は借入・返済・社債・配当・自己株式の取得などによるものです。ROE(自己資本利益率)は、株主のお金に対する1年の利益の割合です。

会社は、営業利益の前期比−1,028億円の理由を「当期に製造委託先への損失補償等を一過性の費用に計上したことにより、減益となりました」と書き、税引前利益については「為替差損益の改善等により、金融収支が改善したため、営業利益に比べて減益額が縮小いたしました」、当期利益については「法人税等の減少により、税引前利益に比べて減益額が縮小いたしました」と書いています。売上収益の増加(前期比+2,368億円)については、エンハーツ等の伸長、ダトロウェイの売上寄与、円安の進行による為替の増収影響等を理由に挙げ、為替の増収影響は218億円(コア営業利益では147億円)としています。期中平均レートは、1米ドルが152.57円から150.78円、1ユーロが163.74円から174.79円でした。

【有報】会社が示す「コアベース」の数字

会社は、IFRSの数字とは別に、一過性の収益・費用を除いた「コアベース」の数字を有報の「経営者による分析」に載せています(会社独自の指標で、IFRSの指標ではありません)。IFRSの営業利益とコア営業利益の差が、会社が「一過性」に分類した項目です。

項目(コアベース・億円)2026年3月期2025年3月期増減
売上収益21,23018,863+12.6%
売上原価4,4134,157+6.2%
販売費及び一般管理費8,5967,248+18.6%
研究開発費4,6214,329+6.8%
コア営業利益3,6003,128+15.1%
一過性の収益221222−0.3%
一過性の費用1,53031—
営業利益(IFRS)2,2913,319−31.0%

出典:有価証券報告書 第21期「経営者による分析」(連結業績〈コアベース〉)(2026-10-26確認)。会社は、販売費及び一般管理費の増加の理由として、海外の提携先の製薬会社との利益分配(プロフィット・シェア)の増加による費用増等を、研究開発費の増加の理由として、開発中のがんの薬への研究開発投資の増加等を挙げています(社名は一般名に置き換えています)。

【有報】5期の推移

第一三共の連結の売上収益と、親会社の所有者に帰属する当期利益の推移。2022年3月期から2026年3月期まで、有価証券報告書の主要な経営指標等の数字(IFRS) 上:連結の売上収益(IFRS・単位:億円・億円未満四捨五入) 10,449 12,785 16,017 18,863 21,230 下:親会社の所有者に帰属する当期利益(IFRS・単位:億円・億円未満四捨五入) 670 1,092 2,007 2,958 2,599 第17期 2022年3月期 第18期 2023年3月期 第19期 2024年3月期 第20期 2025年3月期 第21期 2026年3月期 いずれも国際会計基準(IFRS)で作った連結の数字です(有報「主要な経営指標等の推移」)。 各期で連結の範囲や、一過性の収益・費用の大きさが違います(4節の表を参照)。 上と下は別の切り口で、棒の長さの目盛りも違います。
▲ 有価証券報告書 第21期「主要な経営指標等の推移」(連結・IFRS、億円未満四捨五入、2026-10-26確認)。※概念を示すイメージ図です。
期(連結・IFRS)売上収益税引前利益親会社の所有者に帰属する当期利益基本的1株当たり当期利益親会社所有者帰属持分比率ROE株価収益率(有報の表・参考)
第17期(2022年3月期)1兆449億円735億円670億円34.94円60.8%5.1%76.7倍
第18期(2023年3月期)1兆2,785億円1,269億円1,092億円56.96円57.6%7.8%84.7倍
第19期(2024年3月期)1兆6,017億円2,372億円2,007億円104.69円48.8%12.8%45.6倍
第20期(2025年3月期)1兆8,863億円3,556億円2,958億円155.96円47.0%17.9%22.5倍
第21期(2026年3月期)2兆1,230億円2,634億円2,599億円140.44円41.5%15.8%19.7倍

出典:有価証券報告書 第21期「主要な経営指標等の推移」(2026-10-26確認)。2020年10月1日の1株を3株にする株式分割は表の期間より前で、表の期間中に株式分割はありません(有報の発行済株式総数の推移と注記から)。株価収益率(PER)は、有報の表にある、年度末の株価と1株当たり当期利益から計算された倍率で、確認日時点の株価で計算した倍率ではありません。倍率が高いか低いかの評価はしません。

【有報】本業以外の損益項目と一過性の項目(上がる側にも下がる側にも)

2026年3月期は、営業利益の動き(−31.0%)と、当期利益の動き(−12.1%)が大きく違います。営業利益に含まれる「その他の収益・費用」や一過性の項目、営業利益より下の項目を、利益を増やす項目と減らす項目の両方で並べます。

項目(連結)2026年3月期2025年3月期内訳・会社の説明(有報)
損失補償金及び損失補償引当金の繰入額(費用)1,859億円—うち損失補償引当金への繰入1,822億円。内訳は、ADC製品の製造委託に係る1,695億円(有報は、臨床試験結果等を踏まえて供給計画を見直し、リスク調整を織り込んだ新たな供給計画に変更した結果、製造委託契約の年別の最低購入義務との間に差異が生じたため、と書いています)(どの臨床試験のどんな結果かは有報に書かれておらず、この記事は特定の治験の結果や製品の評価について何も述べていません)と、国内工場の一部の設備投資を中止する意思決定に伴う127億円。有報は「具体的な損失補償の発生年度とその額は…現時点では未定」とし、見積りの前提が異なる結果になれば翌年度に修正する可能性があると書いています
環境対策引当金の繰入(費用)160億円—旧工場跡地の土壌浄化対策で、同工場南側敷地に追加の対策が必要と判明したため新たに計上(有報の注記)
減損損失(費用)60億円31億円「主な費用の性質に関する情報」の注記
子会社清算益(その他の収益)168億円—子会社の清算によるもの(有報の注記)
前期にあった収益(その他の収益)—子会社売却益163億円、固定資産売却益38億円、仲裁費用の受領75億円子会社売却益は国内の子会社の出資持分の譲渡によるもの(有報の注記)
金融収益/金融費用408億円/80億円341億円/119億円有報は、為替差損益の改善等により金融収支が改善したと書いています
法人所得税費用/実際負担税率36億円/1.4%599億円/16.8%税率の差の主な項目は、試験研究費等の税額控除(今期−23.8%、前期−11.6%)と連結子会社清算の影響(今期−5.7%、前期0.0%)。法定実効税率は両期とも30.5%(有報の注記)

出典:有価証券報告書 第21期「連結損益計算書」「注記 引当金」「注記 主な費用の性質」「注記 その他の収益及び費用」「注記 法人所得税」(2026-10-26確認)。内訳は主なものだけで、すべてではありません。損失補償の引当金は、会社の見積りです。このほか、有報の「その他の収益」の注記には、前期に固定資産売却益として国内の支店ビルの売却益などが含まれると書かれています。

【有報】お金の出入り・自己株式・配当

5️⃣ 会社自身が挙げているリスク

以下は有報(第21期)の「事業等のリスク」から、会社自身が挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社は「重大リスク」として12項目を挙げ、さらに「エマージング・リスク」(新しいリスクで、複数年にわたる影響が生じうる可能性があり、初期的な検討は始めているが全容は把握できていないもの)も別に挙げています。ここでは5つを紹介します。提携先・訴訟の相手の社名は一般名に置き換えています。原文は有価証券報告書 第21期「事業等のリスク」でご確認ください。

出典:有価証券報告書 第21期「事業等のリスク」(2026-06-19提出、2026-10-26確認)。有報のリスクには、このほか、海外における事業展開(地政学・各国の法規制・米国の関税政策を含む通商政策)、製造・仕入れ(自然災害や、特定の取引先に供給を依存する製品の品質問題)、環境・安全、法令違反、金融市況及び為替変動、情報セキュリティ、人材、AIの利活用(エマージング・リスク)が並びます。これらは2026年6月時点の有報の記載です。2026年9月28日の適時開示(この記事の6節)は、有報の提出より後に公表されたもので、有報の本文には、この訴訟を指す記載を当サイトの検索では見つけられませんでした。

6️⃣ 上がる材料/下がる材料

ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。

📈 上がる可能性がある材料
がんの薬エンハーツの売上収益が増えた。2026年3月期は8,195億円(前期6,514億円、+25.8%)で、地域別は米国3,863億円(+27.9%)、欧州1,748億円(+16.9%)、日本377億円(+21.4%)。会社は増収の理由を「既上市国での市場浸透及び上市国の拡大」と書いている。売上収益の38.6%(当サイト計算)にあたる。出典:有報 第21期「経営者による分析」/確認日2026-10-26/効くと:売上収益の約4割を占める製品の動きが、連結の売上に響く(製品の売上は需要・競合・薬価など多くの要因で変わる)
会社が示すコア営業利益が増えた。2026年3月期は3,600億円(前期3,128億円、+15.1%)で、売上収益に対する割合は17.0%(前期16.6%・当サイト計算)。会社はコア営業利益を「経常的な収益性を示す指標」として開示している。出典:有報 第21期「経営者による分析」(コア営業利益は会社独自の指標でIFRSの指標ではない)/確認日2026-10-26/効くと:一過性の収益・費用を除いた本業の収益性を、会社がどう示しているかを表す(一過性の費用は下がる材料の1つ目を参照)
薬を使える病気の種類や国の承認が進んだ。有報は、2025年6月にダトロウェイの米国での承認(EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がん)、2025年8月にエンハーツの日本での承認(化学療法未治療のHER2低発現又はHER2超低発現の乳がん)、2025年12月にエンハーツの米国での承認(他の薬との併用療法・HER2陽性乳がんの1次治療)、2026年3月にエンハーツの日本での承認(HER2陽性の進行・再発の固形がん)を取得したと書いている。中国での承認取得(2025年12月・2026年1月・2026年3月)も書かれている。出典:有報 第21期「経営者による分析」「研究開発活動」/確認日2026-10-26/効くと:使える病気の種類や国が増えれば、売上の対象が広がる方向に働く(承認を得ても売上の大きさは別)
税負担が小さく、当期利益の減益幅が営業利益より小さかった。法人所得税費用は36億円(前期599億円)で、実際負担税率は1.4%(前期16.8%)。税率調整表では、試験研究費等の税額控除が−23.8%(前期−11.6%)、連結子会社清算の影響が−5.7%。営業利益は−31.0%、当期利益は−12.1%だった。その他の収益には子会社清算益168億円も含まれる。出典:有報 第21期「連結損益計算書」「注記 法人所得税」「注記 その他の収益及び費用」/確認日2026-10-26/効くと:当期利益の減益幅を縮める方向に働いた項目で、毎期同じとは限らない
国内の子会社の譲渡による受取と売却益。2026年4月15日に、一般用医薬品などを扱う国内の連結子会社の全株式を譲渡する契約を締結。譲渡価額2,465億円(予定)で、2026年7月1日・2027年6月1日・2029年6月1日と段階的に譲渡する。連結の注記は、譲渡益の額を「現時点では未定」と書いている。提出会社(単体)の注記は「2027年3月期においては、約600億円の株式売却益を計上する見込み」と書いている(単体の見込みで、連結の額ではない)。出典:有報 第21期 連結注記「38. 後発事象」・提出会社「重要な後発事象」(売却益は会社の見込みで確定ではない)/確認日2026-10-26/効くと:受取額や売却益が計上される方向に働く一方、その事業の売上は連結から外れていく方向(有報は「ヘルスケアユニット」の売上収益を907億円と書くが、譲渡する子会社と範囲が同じかは有報から確認できていない)。実行の状況はこの記事では確認していない
配当と自己株式の取得。1株当たり配当は、2022年3月期の27円から、2026年3月期の78円(中間39円・期末39円。期末は2026年6月22日の定時株主総会の決議事項で、決議の結果はこの記事では確認していない)。会社は第6期中期経営計画で、累進配当(原則として維持・増配し続ける方針)を導入すると書いている。自己株式は、2025年4月25日の決議に基づき当期に31,457,200株(918億円)を取得し、2026年6月10日に同数を消却した。出典:有報 第21期「主要な経営指標等の推移」「配当政策」「自己株式の取得等の状況」「重要な後発事象」/確認日2026-10-26/効くと:1株当たりの受け取りや、発行済株式の数に関わる(配当は決議で決まり、将来も同じとは限らない。お金が出ていく面は下がる材料の6つ目を参照)
📉 下がる可能性がある材料
一過性の費用で営業利益が減り、引当金が大きい。営業利益は2,291億円(前期3,319億円、−31.0%)で、会社は一過性の費用が1,530億円(前期31億円)になったことを理由に挙げる。注記では、損失補償引当金1,822億円(製造委託先との最低購入義務に関わる1,695億円〈有報は供給計画の見直しの結果として差異が生じたためと書く〉、国内工場の設備投資の中止に関わる127億円)を計上し、旧工場跡地の土壌浄化の環境対策引当金も160億円を新たに計上している。有報は損失補償の発生年度と額は「現時点では未定」とし、見積りの前提が変わると翌年度に修正する可能性があると書く。出典:有報 第21期「経営者による分析」「注記 引当金」/確認日2026-10-26/効くと:計上した期の営業利益を押し下げる。支払いの時期や額は今後の協議などで決まり、見積りが変わると別の期の損益にも響く
費用の増加。コアベースの販売費及び一般管理費は8,596億円(前期7,248億円、+18.6%)で、会社は海外の提携先の製薬会社との利益分配(プロフィット・シェア)の増加による費用増等を理由に挙げる。研究開発費はコアベースで4,621億円(+6.8%)、IFRSベースで4,660億円(売上収益の21.9%)で、会社は開発中のがんの薬への投資の増加等を理由に挙げる。出典:有報 第21期「経営者による分析」「研究開発活動」/確認日2026-10-26/効くと:売上が伸びても費用が先に増えると、営業利益の伸びが小さくなる方向に働く
米国の薬価・通商政策と為替。会社は有報で、米国における最恵国待遇薬価政策の導入やIRAの運用見直しがADC製品を含む米国での販売や収益性に重大な影響を与える可能性、米国の関税政策がサプライチェーンや製造・調達コストに影響を及ぼす可能性、為替相場の変動が業績に不利な影響を与える可能性を挙げている。売上収益の35.3%は米国(当サイト計算)。2026年3月期の為替の増収影響は、売上収益で218億円、コア営業利益で147億円。出典:有報 第21期「事業等のリスク」「経営者による分析」「注記 事業セグメント」/確認日2026-10-26/効くと:政策や為替レートが変わると、米国での売上や費用、円換算後の数字に響く(会社の認識で、この記事の見方ではない)
訴訟が続いている。2026年9月28日の適時開示によると、海外の医療グループの子会社が起こした損害賠償等の請求訴訟について、東京地方裁判所は2026年9月10日に請求を全て棄却する判決を言い渡したが、相手方が2026年9月24日に東京高等裁判所へ控訴した。請求の内容は損害賠償、株式取得等の妨害差止め、指定する文章の掲載等で、請求金額は2,033億円余。会社は「連結業績に与える影響につきましては、精査中」と書いている。この記事は裁判の結果を予想しない。出典:適時開示(2026-09-28)/確認日2026-10-26/効くと:控訴審の経過や結果、費用によっては、会社の損益に響く可能性がある(会社は影響を精査中としている)
開発は計画どおりに進むとは限らない。有報は、新薬候補品の研究開発に多額の費用と長い年月が必要で、有用性が確認できず中止する可能性などを挙げる。2025年5月には、開発中のがんの薬(HER3を標的とするもの)の米国での非小細胞肺がんの承認申請を自主的に取り下げた。会社は第6期中期経営計画で「独占的販売期間終了(Loss of Exclusivity、以下「LOE」という。)後も持続的な成長を実現するためのBGTsの早期同定」に取り組むと書くが、その時期は有報に書かれていない(DXd ADCは、有報が「第1のBGT」と呼ぶ技術)。出典:有報 第21期「事業等のリスク」「経営方針」「研究開発活動」/確認日2026-10-26/効くと:開発や承認が計画どおりに進まない場合、費用が先に出て回収が遅れる方向に働く
お金の出入りと借入。営業活動によるキャッシュ・フローは777億円(前期538億円)で、税引前利益2,634億円より小さい。会社は運転資金の増加等と説明し、棚卸資産は6,924億円(前期末5,149億円)に増えた。社債及び借入金は3,005億円(前期末1,013億円)、親会社所有者帰属持分比率は47.0%から41.5%になった。決算日のあとの2026年6月に、シンジケートローン2,000億円の借入を実行している。出典:有報 第21期「経営者による分析」「連結財政状態計算書」「重要な後発事象」/確認日2026-10-26/効くと:利払い・返済、成長投資や株主還元に使えるお金の余裕に関わる

以上が、いま公開情報から拾える材料です。どれが重いか、どう見るかはご自身で。この記事は上がる・下がるの結論を出していません。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。

※ 材料の数は左右6件ずつでそろえています。上の内容は開示の要約で、どちらが重いかの判断や将来の予測はしていません。製品名は売上の説明のための事実として挙げており、効き目や安全性について述べるものではありません。承認・申請などの日付と事実は有報の記載のとおりで、承認の見通しや売上の見通しは書いていません。

7️⃣ これから何を見れば分かるか

次の決算発表の日は、当サイトの決算予定データ earnings-calendar.json に第一三共が載っておらず、一次情報でも確かめられていません。2026年10月26日時点のTDnetでは、第2四半期(2026年4〜9月)の決算短信は見つかりませんでした。会社のIRサイト(投資家向けの情報を載せたページ)でご確認ください。決算短信には、通期の連結業績予想や配当予想が載ることがありますが、この記事は会社の予想の数字を扱わないので、数字は書きません。

有価証券報告書と半期報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説に、適時開示のしくみはこちらの解説にまとめています。

8️⃣ まとめ

結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①主力のがんの薬の売上(地域別)と、承認・申請の進み方、②一過性の費用と引当金(営業利益とコア営業利益の差)、③お金の出入りと資本政策(営業活動によるキャッシュ・フロー、棚卸資産、借入、配当と自己株式)。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。

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⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事は金融庁の開示システム(EDINET)に提出された有価証券報告書や、証券取引所の適時開示などの一次情報に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示、将来の業績・株価・為替・薬価・景気の予測、株価水準に関する評価的な断定、薬の効き目・安全性・承認や売上の見通しの評価は行っていません。会社の方針・計画・見方として引用した内容は、あくまで「会社がそのように公表している」という事実の紹介で、この記事の見方ではありません。文中に出てくる会社や機関の種類は、産業の構造を説明するための一般名で、特定の会社の株式をおすすめするものではありません。訴訟については、会社の適時開示の記載を紹介したもので、結果を予想するものではありません。投資には元本割れのリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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