🔬 古河電気工業(5801)を数字で見る|電線・光ファイバ・自動車部品の素材メーカーを有価証券報告書で確認
「数字で見る、話題の企業」シリーズ第23回は、1896年に電線の会社として設立され、いまは光ファイバ・電力ケーブル、自動車用ワイヤハーネス(自動車の中の電線を束ねた配線部品)、銅の加工品、放熱・冷却製品などを手がける素材・部品メーカー、古河電気工業株式会社(証券コード5801、以下「古河電工」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が金融庁の開示システム(EDINET)に提出した有価証券報告書(上場会社が決算期ごとに金融庁へ出す、事業や決算をくわしく書いた報告書。以下「有報」。第204期・2025年4月〜2026年3月)と、証券取引所を通じた適時開示をもとに、①事業の中身 ②製品が使われるつながりの中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。初めて出てくる言葉は、その場で説明します。
- 2025年度(2026年3月期・第204期)の連結売上高は1兆3,076億円(前期比+8.8%)、営業利益(売上から原価と販売費・一般管理費を引いた、本業の利益)は639億円(同+35.8%)、経常利益は759億円(同+56.4%)、親会社株主に帰属する当期純利益は725億円(同+117.4%)でした(日本基準・連結=グループ全体の数字)。会社は増収の要因として、データセンタ関連製品と自動車部品の増収、銅地金価格の高騰の影響を挙げています。純利益には、投資有価証券売却益193億円や退職給付制度改定益194億円などを含む特別損益(純額)+291億円が入っています
- 外部顧客への売上高の構成は、電装エレクトロニクス57.8%、インフラ27.8%、機能製品11.5%、サービス・開発等2.8%(当サイトの計算)。セグメントの営業利益はインフラが57億円から214億円へ増えた一方、サービス・開発等は67億円の損失でした。海外売上高比率は50.6%です。会社は2030年度の到達水準として、営業利益2,500億円・ROE(自己資本利益率)20%・ROIC(投下資本利益率)15%を公表しています(目標であり、予想ではありません)
- この記事は有報(2026年3月期)と適時開示だけを根拠にしていて、2026年4月以降の四半期の決算は扱っていません。「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。上がる・下がるの結論は書きません
edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-20時点)は、古河電工の登場を2026年10月9日・10月15日の2回と数えています。最後に登場した日から中3営業日以上あいていること(「熱が残っているうちは書かない」ルール。同データの cooled: true)、有報の本文が取得できていること、当サイトのニュース記事と14日以内に重ならないこと、直近3本がすべて日本株であることを確かめたうえで、候補の中の1社として選びました(時価総額の金額や順位は本文に書きません)。当サイトの解説記事に、この会社が主役の記事はありません。2026年6月19日のニュース記事に、同じ日の株式市場の値動きの中で社名が出る箇所が1つありますが、主役ではなく、14日より前の記事です。ランキングに登場した理由(なぜ値上がり・値下がり・出来高の増加があったか)は、一次情報で確かめられないため書きません。
1️⃣ 古河電工はどんな会社か
有報の「事業の内容」によると、古河電工グループは、「インフラ、電装エレクトロニクス、機能製品の各事業において培われた技術を発展、応用した製品の製造販売を主な内容とし、さらに各事業に関連する研究及びその他のサービス等の事業活動を展開して」います。連結の従業員数は49,112人(2026年3月31日現在・前期末は51,167人)で、うち電装エレクトロニクスが34,934人、インフラが9,319人、機能製品が2,503人、サービス・開発等が2,356人です。外部顧客への売上高のうち、連結売上高の10%以上を占める相手先はない、と有報に書かれています。会社は、グループのパーパス(存在意義)を「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」とし、2030年の「ありたい姿」を「古河電工グループ ビジョン2030」と呼んでいます(出典:有価証券報告書 第204期「事業の内容」「従業員の状況」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「セグメント情報」、2026-10-21確認)。
古河電工は、報告セグメントを「インフラ」「電装エレクトロニクス」「機能製品」「サービス・開発等」の4つに分けています。2025年度から区分の一部を組み替えており、前期の数字も新しい区分に直して開示されています。各セグメントの主な製品は、有報に次のように書かれています。
| セグメント | 主な製品・サービス(有報の記載の抜粋) | 外部顧客への売上高(2025年度) | 構成比 | 営業利益(セグメント利益) | 前期 |
|---|---|---|---|---|---|
| インフラ | 光ファイバ、光ファイバケーブル、光接続製品、光半導体デバイス、光送受信機、ネットワーク機器、電力ケーブル及び接続部品、産業用電線、送配電部品等 | 3,639億円 | 27.8% | 214億円 | 57億円 |
| 電装エレクトロニクス | 自動車部品(ワイヤハーネス、ステアリング・ロール・コネクタ、バッテリ状態検知センサ、周辺監視レーダほか)、自動車用・産業用電池、銅線・アルミ線、巻線、伸銅品(条、線、棒)、貴金属めっき製品、特殊金属材料等 | 7,562億円 | 57.8% | 339億円 | 326億円 |
| 機能製品 | ケーブル管路材、発泡製品、半導体製造用テープ、電子部品、放熱・冷却製品、ハードディスクドライブ用アルミブランク材、電解銅箔等 | 1,508億円 | 11.5% | 154億円 | 141億円 |
| サービス・開発等 | 主に水力発電、新製品研究開発、不動産賃貸等 | 366億円 | 2.8% | −67億円 | −54億円 |
出典:有価証券報告書 第204期「セグメント情報等」「収益認識関係」(2026-06-24提出、2026-10-21確認)。外部顧客への売上高と営業利益は百万円単位の表を当サイトが億円に換算(億円未満四捨五入)、構成比は連結売上高 1兆3,076億円に対する割合を当サイトが計算(四捨五入)。4つのセグメントの営業利益の合計は約640億円で、連結の営業利益(639億円)との差(約−1億円)は、有報の注記によると、主に未実現利益の消去等の調整額です。有報の「経営者による分析」には、セグメント間の内部取引を含む売上高(インフラ3,709億円〈前期比+20.0%〉、電装エレクトロニクス7,651億円〈+3.9%〉、機能製品1,611億円〈+9.6%〉、サービス・開発等422億円〈+21.2%〉)も書かれています。この表の外部顧客への売上高とは数字が違うのは、内部取引を含むかどうかの違いです。
外部顧客への売上高の内訳を、有報の「収益認識関係」でさらに見ると、インフラのうち「情報通信ソリューション事業」が2,276億円(前期1,643億円)、「エネルギーインフラ事業」が1,363億円(前期1,391億円)、電装エレクトロニクスのうち「自動車部品・電池」が4,112億円(前期4,201億円)、「電装エレクトロニクス材料」が3,450億円(前期3,076億円)です(百万円単位の表を当サイトが換算)。売上を顧客の所在地で分けると、日本が6,456億円(49.4%)、アジア(中国を除く)が2,902億円、北中米が1,786億円、中国が1,257億円、その他が675億円で、会社は海外売上高比率を50.6%(前期比−2.4ポイント)と書いています。
2️⃣ 製品が使われるつながりの中のどこにいるか
次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、古河電工の製品が、情報通信・電力と、自動車・産業向けの流れのどこで使われているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。古河電工は、素材(金属やポリマー)の加工技術をもとに、ひとつの完成品ではなく、完成品の中や、完成品をつなぐ設備に使われる部材・部品を作る立場にいます。会社は、4つのコア技術として「メタル」「ポリマー」「フォトニクス」(光の技術)「高周波」を挙げています。
この流れの中に立っている根拠は、会社自身の開示にあります。外部顧客への売上高では、インフラのうち情報通信ソリューション事業が2,276億円(連結売上高の17.4%)、機能製品が1,508億円(11.5%)、電装エレクトロニクスが7,562億円(57.8%)です。会社は有報で、データセンター関連の事業に含まれるものとして、光ファイバ・ケーブル、放熱・冷却(サーマル)、光半導体デバイス、半導体製造用テープ、メモリーディスク、銅箔、光電融合デバイスなどを挙げています(会社の表記を当サイトが一般名に言い換えました)。なお、データセンター向けの売上高そのものの金額は、この記事で読んだ範囲の有報の文章には書かれていません。上の図の濃い枠は、製品が使われる場所を示すもので、売上の大きさを示すものではありません。
- 情報通信・データセンターの流れ:会社は、「AIの急速な拡大・普及により世界のデータセンタ市場は高成長が見込まれ、大容量化・高密度化が加速しています。これに伴い、電力消費量の増加も課題になっています」と書き、「データセンタ関連市場を重要な収益機会と捉え、当該領域における事業の拡大を重点的に推進します」としています(会社の認識であり、当サイトの見方ではありません)。2025年度の設備投資では、インフラで光半導体デバイスや光ファイバの製造能力増強と電力ケーブルの製造拠点の構築、機能製品でデータセンター向け水冷モジュールの新工場の建設などを行った、と書かれています(設備投資の総額は567億円)。
- 電力の流れ:会社は、「国内の超高圧地中線や再生可能エネルギー向け海底線及び地中線の堅調な需要を背景に、電力ケーブルの製造能力及び工事施工能力の増強に取り組んでまいりました」と書いています。長距離・大容量の送電に適した高電圧直流送電方式(HVDC)のケーブルについて、国内の生産拠点の新設(千葉県)を決定したとも書かれています。
- 自動車・産業向けの流れ:電装エレクトロニクスは、売上高の半分以上を占める最大のセグメントです。自動車部品では、「米国の通商政策や為替、人件費の上昇等の影響を受け販売価格の適正化に取り組んだ」と会社は書いています。原材料の銅やアルミは、リスクの項目で価格変動が挙げられています。
- 前後の工程にいる会社の種類:上流には、半導体・電子部品を作るメーカー、銅やアルミなどの非鉄金属を供給する会社があります。下流には、サーバー・ネットワーク機器を作るメーカー、データセンターを建設・運営する会社、通信回線や電力を届ける事業者、自動車や機器の完成品メーカーとその部品の取りまとめ役の部品メーカーがあります(ここは一般的な説明で、有報の言葉ではありません。社名は挙げません)。
このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報で挙げています。「政治経済情勢」のリスクとして、「景気悪化や顧客の設備投資、購買施策の変化による需要減退の影響が事業全体に及ぶことによる収益の低下」と「競争激化による製品及びサービスの優位性の低下」を挙げ、「国際紛争の影響拡大に伴う、国家群間での経済制裁の影響等によるサプライチェーンの寸断」や「特定の購入先への供給依存による供給不足、供給停止」も書いています。データセンター領域については、「市場環境の変動リスクが大きいため、市況をいち早く捉え即座にアクションを起こせるように、主要顧客からの信頼感を一層高め共創関係の構築を強化します」と書いています(出典:有価証券報告書 第204期「事業等のリスク」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、2026-10-21確認)。
3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事
各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。この年表は、有価証券報告書と適時開示だけで作っています(Wikipediaなどの二次情報は使っていません)。取引先・出資先・提携先・子会社の社名は、この記事では書いていません(出典には書かれています)。
| 年月 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1896年6月 | 横浜電線製造株式会社として設立 | 有価証券報告書 第204期「沿革」(2026-10-21確認) |
| 1920年4月 | 別の会社から日光電気精銅所(現・日光事業所)を取得し、商号を現在の古河電気工業株式会社に変更 | 有価証券報告書 第204期「沿革」(2026-10-21確認) |
| 1949年5月 | 株式を東京証券取引所に上場 | 有価証券報告書 第204期「沿革」(2026-10-21確認) |
| 1981年4月 | 非鉄金属の総合メーカーとして将来の発展を図るため、別の金属会社を吸収合併 | 有価証券報告書 第204期「沿革」(2026-10-21確認) |
| 2001年11月 | 米国の通信関連会社(当時)の光ファイバ・ケーブル部門を買収(有報は、これを現在の連結子会社の一つと記載) | 有価証券報告書 第204期「沿革」(2026-10-21確認) |
| 2005年1月/2015年4月/2016年10月 | 2005年1月に電力事業部門を持分法適用関連会社へ営業譲渡。2015年4月に海外電力ケーブル事業、2016年10月に国内電力ケーブル事業を、同じ会社から譲り受けた | 有価証券報告書 第204期「沿革」(2026-10-21確認) |
| 2022年4月 | 東京証券取引所の市場区分の見直しにより、市場第一部からプライム市場へ移行 | 有価証券報告書 第204期「沿革」(2026-10-21確認) |
| 2024年7月23日 | 取締役会で、電池事業を行う上場子会社の株式(所有割合57.30%)のすべてを、公開買付けなど一連の手続きの後に譲渡すること、および買い手側の持株会社の株式(所有割合約20%)を取得することなどを定めた契約の締結を決議 | 有価証券報告書 第204期「企業結合等関係(事業分離)」(2026-10-21確認) |
| 2025年4月 | 光ファイバ・ケーブル事業の再編を実施し、同事業を新設した連結子会社に承継(ブランド名はLightera) | 有価証券報告書 第204期「沿革」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-21確認) |
| 2025年6月 | 監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行 | 有価証券報告書 第204期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-21確認) |
| 2025年10月 | メタル電線事業の再編を実施し、同事業を連結子会社に承継 | 有価証券報告書 第204期「沿革」(2026-10-21確認) |
| 2025年12月 | 電池事業を行う子会社の株式を譲渡し、同社は連結の範囲から除外された(事業分離日は2025年12月24日。その期の連結損益計算書に含まれる当該事業の売上高は約590億円、営業利益は約18億円) | 有価証券報告書 第204期「沿革」「企業結合等関係(事業分離)」(2026-10-21確認) |
| 2025年12月11日/2026年2月10日 | 12月11日の取締役会で、超高圧電力ケーブルなどを作る中国の連結子会社の全持分の譲渡を決議し、2026年2月10日に譲渡。会社は理由を「今後の中長期的な市場拡大を前提としても現体制のままでの当期純利益の黒字化は困難と判断」と書いている | 有価証券報告書 第204期「企業結合等関係(事業分離)」(2026-10-21確認) |
| 2026年3月 | 持分法適用関連会社の解散に伴い、同社は持分法適用範囲から除外された。また、3月1日に、退職給付制度を企業型確定拠出年金制度へ全面移行し、退職給付制度改定益194億円を特別利益に計上 | 有価証券報告書 第204期「沿革」「追加情報」(2026-10-21確認) |
| 2026年4月 | 2026年度から、事業の組み替えや本部機能の事業部門への移管、CXO制(経営上の重要課題ごとに担当役員を置く体制)の導入など、執行力を強化する組織体制へ変更 | 有価証券報告書 第204期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-21確認) |
| 2026年6月24日 | 有価証券報告書 第204期を提出 | EDINET 有価証券報告書 第204期(2026-10-21確認) |
| 2026年7月1日 | 2026年5月12日の取締役会決議に基づき、普通株式1株を10株に分割(効力発生日は2026年7月1日。分割前の発行済株式総数70,666,917株、分割後706,669,170株。資本金の額に変更なし) | 有価証券報告書 第204期「重要な後発事象」(2026-10-21確認) |
| 2026年9月24日/9月25日 | 保有する上場株式1銘柄(政策保有株式)の売却を発表(理由は「政策保有株式の削減および成長資金の確保」と記載)。9月25日に売却を実行し、売却益約217億円を2027年3月期第2四半期に特別利益として計上すると開示。業績予想への織り込みについての会社の説明は原文でご確認ください(この記事は業績の予想を扱いません)。売却された側の会社も同日に開示しています | TDnet 適時開示(古河電工・2026-09-24)、TDnet 適時開示(古河電工・2026-09-25)(2026-10-21確認) |
持分法適用関連会社=出資先の損益を、持ち分に応じて自社の連結の数字に取り込む会社です。承継=会社分割などで、事業を別の会社に引き継がせることです。監査等委員会設置会社=取締役会の中に、取締役の職務を監査する委員会を置く形の株式会社です。企業型確定拠出年金制度=会社が掛金を拠出し、従業員が運用方法を選ぶ年金制度です。政策保有株式=取引先との関係維持などのために持つ株式です。所有割合=発行済みの株式のうち、その会社が持つ割合です。
4️⃣ 直近の決算の数字(有報 第204期)
まず、有報 第204期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月24日提出)の連結の数字です(日本基準)。有報の財務諸表(決算書)は、会社の外の監査法人による監査(決算の数字が正しいかを確かめること)を受けています。前期(2025年3月期)の数字は、企業結合に係る暫定的な会計処理(買収した会社の資産などの金額を、いったん仮の金額で処理すること)が確定したことを反映した後の数字です。確認日は2026-10-21です。
| 指標(連結・日本基準) | 2025年度(2026年3月期) | 2024年度(2025年3月期) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆3,076億円 | 1兆2,018億円 | +8.8% |
| 営業利益 | 639億円 | 約470億円 | +35.8% |
| 経常利益 | 759億円 | 約485億円 | +56.4% |
| 税金等調整前当期純利益 | 1,049億円 | 約540億円 | 約+509億円 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 725億円 | 約334億円 | +117.4% |
| 1株当たり当期純利益 | 1,030.17円 | 473.36円 | — |
| 自己資本利益率(有報の表の定義) | 19.12% | 9.96% | — |
| 自己資本比率(期末) | 39.1% | 34.6% | +4.5ポイント |
| 総資産(期末) | 1兆664億円 | 約9,881億円 | +783億円 |
| 純資産(期末) | 4,352億円 | 約3,738億円 | +615億円 |
| 有利子負債(借入金・社債・コマーシャル・ペーパーの合計、期末) | 3,167億円 | 約3,062億円 | +105億円 |
| 設備投資(有形・無形固定資産の増加額) | 約567億円 | 約386億円 | +46.8% |
| 研究開発費 | 約284億円 | 約254億円 | +11.7% |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 281億円 | 約598億円 | −317億円 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | −471億円 | 約−72億円 | 約−399億円 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | +199億円 | 約−442億円 | +641億円 |
| 現金及び現金同等物(期末) | 705億円 | 約661億円 | +44億円 |
| 従業員数(連結・期末) | 49,112人 | 51,167人 | −2,055人 |
出典:有価証券報告書 第204期「主要な経営指標等の推移」「経営者による分析」「連結損益計算書」「設備投資等の概要」「研究開発活動」(2026-06-24提出、2026-10-21確認)。「約」を付けた数字は百万円単位の表を当サイトが億円に直したもの(億円未満四捨五入)、「約」を付けていない数字は有報の「経営者による分析」に億円単位で書かれたもの(前期の有利子負債は有報の増減額から当サイトが計算)です。営業活動によるキャッシュ・フロー=本業の稼ぎや運転資金の増減によるお金の出入りです。投資活動によるキャッシュ・フロー=設備や有価証券などへの投資によるお金の出入りです。財務活動によるキャッシュ・フロー=借入や返済、株主への配当などによるお金の出入りです。自己資本利益率(ROE)=株主のお金(自己資本)でどれだけ利益を出したかを表す割合です。有報の表の自己資本利益率は19.12%で、会社が経営指標に掲げるROEは19.1%です。なお、会社は2026年7月1日付で普通株式1株を10株に分割しています(有報「重要な後発事象」)。表の1株当たり当期純利益と本文の1株当たり配当金は分割前の基準の数字で、分割が前期の初めに行われたと仮定すると1株当たり当期純利益は103.01円(前期47.33円)と有報に書かれています。
会社は、2025年度の業績を次のように説明しています。「光ファイバケーブル等のデータセンタ関連製品の増収、ワイヤハーネス等の自動車部品での増収、また銅地金価格の高騰の影響により、グループ全体の売上は増加しました。損益面では、売上増による利益押上げに加えて生産性改善や販売価格の適正化に取り組んだことにより増益となりました」。セグメントごとの会社の説明は、次のとおりです(セグメントの売上高は内部取引を含みます)。
- インフラ(売上高3,709億円、前期比+20.0%/営業利益214億円、同+276.1%):情報通信ソリューション事業では、「データセンタ関連製品の需要増加を背景に」、ローラブルリボンケーブルやMTフェルール(光通信のコネクタ部品)、DFBレーザダイオードチップ(通信用の半導体レーザ)などの開発と拡販を進め、「北米における光ファイバケーブルの拡販体制の整備を進めたことで、増収増益となりました」。エネルギーインフラ事業では電力ケーブルの製造能力等の増強に取り組み、事業再編を目的として中国子会社の全持分を譲渡しました。産業電線・機器事業は「売上高及び利益は前年同水準」と書かれています。
- 電装エレクトロニクス(売上高7,651億円、+3.9%/営業利益339億円、+3.9%):自動車部品事業は、「電池事業を行う子会社の非連結化の影響を受け減収となったものの増益」。電装エレクトロニクス材料事業は、「販売価格の適正化や低採算品種の撤退を含む製品ミックスの改善」に取り組み、「銅地金価格の高騰や円安の影響を受けたものの、増収増益」でした。
- 機能製品(売上高1,611億円、+9.6%/営業利益154億円、+8.9%):「データセンタ関連投資の活況や再生可能エネルギー関連需要の増加を背景に」、放熱・冷却製品、半導体製造用テープ、高周波基板用電解銅箔などの拡販に注力し、半導体製造用テープは「2025年度より新工場が稼働し、製品の安定供給を開始」しました。
- サービス・開発等(売上高422億円、+21.2%/営業損失67億円、13億円悪化):水力発電、新製品の研究開発、不動産の賃貸、各種業務受託などで、グループの各事業のサポート等を行っています。
5期の数字では、連結売上高は9,305億円(2021年度)から1兆3,076億円(2025年度)へ、親会社株主に帰属する当期純利益は101億円から725億円へと動きました。この間、2023年度(2024年3月期)は売上高が1兆565億円(前期比で微減)、純利益が65億円と、数字が下がった期もありました(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」)。
経常利益などに含まれる「本業以外」の項目
営業利益と純利益のあいだには、営業外の収益・費用、特別利益・特別損失、税金が入ります。2025年度は、特別損益(純額)が約291億円の利益(特別利益402億円、特別損失111億円)で、前期の約55億円の利益から増えました。主な項目には、利益を増やす側と減らす側の両方があります。
| 主な項目(連結) | 2025年度 | 2024年度 | 利益への向き(2025年度) |
|---|---|---|---|
| 持分法による投資利益 | 約165億円 | 約106億円 | 押し上げ(前期より大きい) |
| 受取配当金 | 約30億円 | 約22億円 | 押し上げ |
| 為替差益(△は為替差損) | 約2億円 | 約−22億円 | 押し上げ(前期は押し下げ) |
| 投資有価証券売却益 | 約193億円 | 約104億円 | 押し上げ |
| 退職給付制度改定益 | 約194億円 | — | 押し上げ |
| 株式交換差益・受取保険金 | — | 約48億円・約20億円 | 前期のみ(押し上げ) |
| 貸倒引当金繰入額 | 約−41億円 | 約−0.4億円 | 押し下げ |
| 減損損失 | 約−16億円 | 約−26億円 | 押し下げ |
| 製品補償引当金繰入額 | — | 約−61億円 | 前期のみ(押し下げ) |
| 法人税等調整額(税金の費用側) | 約−96億円 | 約+18億円 | 押し下げ(前期は押し上げ) |
出典:有価証券報告書 第204期「連結損益計算書」「連結損益計算書関係」「経営者による分析」(2026-10-21確認、百万円単位の表を当サイトが億円に換算)。表の符号は、利益に対する向きです。投資有価証券売却益は、有報の注記によると、2024年度・2025年度とも「主に政策保有株式の一部を売却したことによるもの」です。退職給付制度改定益は、退職一時金制度・確定給付企業年金制度・企業型確定拠出年金制度からなる従来の制度を、企業型確定拠出年金制度へ全面移行したことによるものです。貸倒引当金繰入額は、2025年度は「当社の連結子会社であった」中国の会社への貸付金に対して計上したものです。減損損失は、見込んでいた収益が得られなくなった設備などの帳簿価額を、回収できる金額まで減らす処理です。製品補償引当金繰入額(2024年度)は、電池子会社が過去に出荷した製品の不具合への対応費用と、過去に納品した電力の大型プロジェクトの不具合への対応費用(ケーブルの交換と費用の一部負担への合意)などです(2026年9月の売却益の開示は年表に記載)。こうした項目は期ごとに入る項目も金額も違い、同じ項目が今後も出るかどうかは、この記事で読んだ範囲の開示には書かれていないため、書きません。
会社の目標と、株主への還元の方針
会社は、2025年度を最終年度とする中期経営計画(会社の4年間の経営計画。以下「25中計」)の財務目標について、「全て達成いたしました」と書いています。2025年度の目標と実績は、ROIC(投下資本利益率)が6%以上に対して12.2%、ROEが11%以上に対して19.1%、Net D/Eレシオ(純有利子負債が自己資本の何倍か)が0.8以下に対して0.6、自己資本比率が35%以上に対して39.1%、連結売上高が1.1兆円以上に対して1.3兆円、連結営業利益が580億円以上に対して639億円、親会社株主に帰属する当期純利益が370億円以上に対して725億円でした。2026年度以降は、新しい考え方の経営に移り、「2030年度財務到達水準は、営業利益2,500億円、自己資本利益率(ROE)20%、投下資本利益率(ROIC)15%」と書いています。会社は、経営環境や財務状況を継続的に点検し、必要に応じて「財務到達水準も見直してまいります」とも書いています。2030年度までの5年間合計の投資額は6,500億円(うち注力分野投資は5,000億円)、フリーキャッシュフロー(一般には、営業活動で得たお金から投資に使ったお金を引いたもの)は5年間合計2,400億円を予定し、「2026、2027年度については、大型投資の実行のため一時的に資金調達が拡大する見込みですが、2030年度以降は、先行投資分の刈り取り等を踏まえて投下資本の増加を抑制しつつ収益性を高めます」と書かれています。これらは会社の目標と計画であり、当サイトの予測ではありません。
配当については、25中計の期間は親会社株主に帰属する当期純利益の30%を目途に業績に連動した配当を行う方針でした。2025年度の期末配当は、2026年6月26日開催予定の定時株主総会で承認された場合に1株当たり210円(分割前の基準。提出会社の1株当たり配当金は前期120円)とされています(有報の提出時点では株主総会の議案で、当サイトは承認の結果を確認していません)。今後は、2026年度から2030年度の期間について、「企業価値向上に向けた投資を進めたうえで、安定的な株主還元を行うことを基本方針とし」、現行の配当性向に代えて株主資本配当率(DOE=配当の総額が株主資本の何%にあたるか)を新しい指標とし、株主資本の3.5%を目途とした配当を行う、と書かれています。また、2027年3月期の配当は、「利益配分の機会を充実させること及び長期保有していただけるよう株価の動きを安定させることを意図して中間配当を再開する予定」と書かれています。
5️⃣ 会社自身が挙げているリスク
以下は有価証券報告書(第204期)の「事業等のリスク」から、会社自身が挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社は、発生可能性と影響度の両方が「中」以上の重要なリスクとして19項目を挙げ、「経営視点のリスク」6項目と「オペレーショナル視点のリスク」13項目に分けています。ここではそのうち5つを紹介します。原文は有価証券報告書 第204期「事業等のリスク」でご確認ください。
- ①政治経済情勢(影響度・発生可能性とも「大」):「国際紛争の影響拡大に伴う、国家群間での経済制裁の影響等によるサプライチェーンの寸断。特定の購入先への供給依存による供給不足、供給停止」「各地域における政権交代や政策転換に伴う、関税政策や経済安全保障政策等の法規制の変更・強化の影響によるグローバル分業体制の見直し」「景気悪化や顧客の設備投資、購買施策の変化による需要減退の影響が事業全体に及ぶことによる収益の低下」「競争激化による製品及びサービスの優位性の低下」を挙げています。主な取組みとして、サプライチェーンの多重化(購入先の複数化、製造拠点の分散)、在庫数量の適正化、長期契約による安定調達などを書いています。
- ②原料及び燃料価格の変動(影響度「中」・発生可能性「大」):「需給関係や投機的取引、世界情勢等の変動による、銅・アルミ等の非鉄金属やポリエチレン等合成樹脂及び燃料である重油やLPG、LNG価格の急激な変動」をリスクとし、取組みとして「市況を反映した非鉄金属、合成樹脂、燃料価格等の製品販売価格への転嫁」「先物取引を利用したヘッジ」(ヘッジ=価格変動による損失を、反対方向の取引で和らげること)、コスト低減、複数購買を挙げています。
- ③為替・金利・株価変動(影響度「中」・発生可能性「大」):輸出入などの外貨建て取引や、海外子会社の決算の円換算の金額が変わることをリスクとし、海外子会社などの決算の円換算についての記載として「米ドルに対し1円円高につき年間で約5億円の減益を予想」と書いています。また、「金利上昇による資金調達コストの増加(当連結会計年度末の有利子負債残高は3,167億円)」も挙げ、先物為替予約、長期固定金利での調達、キャッシュマネジメントシステムによる資金効率の改善、有利子負債の削減などを取組みとして書いています。
- ④品質管理(影響度「大」・発生可能性「中」):「製品及びサービスでの不具合の発生等による将来に予期せぬ損失補償の発生(特に、電力ケーブル、通信ケーブル、自動車用部品等の関連製品で、不具合等の内容により多額な追加コストの発生)」を挙げ、不具合の未然防止、品質マネジメントシステムの強化、生産物賠償責任保険や生産物回収費用保険への加入などを書いています。
- ⑤工事プロジェクトの採算悪化(影響度・発生可能性とも「中」):「工事途中での設計変更、建設資材及び労務費の高騰」「ケーブル敷設工事における災害、疫病の発生、海洋条件や台風等天候の影響による追加費用の発生」「重大な瑕疵や事故の発生、それに伴う工期遅れが生じた場合の、修復費用や損害賠償金の支払」などを挙げ、プロジェクトごとのリスク分析、進捗と採算のモニタリング、建設工事保険の付保などを取組みとして書いています。
このほか、有報は「法令違反等」のリスクに付けた注として、次のことを書いています。「当社は、自動車用部品カルテルに関し、ブラジル競争法当局の審査を受けております。また、米国での一連の自動車用部品カルテルによる損害の賠償を求める集団訴訟等において、当社や当社連結子会社がその被告となっております。このほか、自動車メーカー等の顧客に対して、当社又は当社関係会社が民事賠償金を支払う可能性があります」。会社は、「これまで複数の原告・顧客等との間で和解が成立し、上記継続案件の当社決算への潜在的な金額的インパクトは大きくないものと認識しております」と書き、継続案件はいずれも過去の競争法違反行為に関するもので、「現時点においてはこれらの行為は行われておりません」としています(会社の認識であり、結果を当サイトが保証するものではありません)。
出典:有価証券報告書 第204期「事業等のリスク」(2026-06-24提出、2026-10-21確認)。有報のリスクには、このほか、事業ポートフォリオ(収益性・成長性の停滞・悪化、M&A後の効果が期待に届かないこと)、新事業の創出、気候変動、人材・組織、人権・労働慣行、災害・感染症、情報システム・情報セキュリティ、研究開発・知的財産、従業員の安全・衛生、環境汚染・環境規制、固定資産の減損、資金管理、開示・ブランドなどが並びます。会社は、リスクを認識したうえで、リスク管理体制の整備・充実に努めると書いています。
6️⃣ 上がる材料/下がる材料
ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。
以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。
※ 材料の数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来の予測は行っていません。会社の目標・計画・認識として書いた内容は、会社がそう公表しているという事実の紹介で、当サイトが実現を見込むものではありません。
7️⃣ これから何を見れば分かるか
次の決算(2027年3月期の第2四半期=2026年4〜9月)の発表日は、当サイトの決算予定データ earnings-calendar.json に古河電工が載っておらず、一次情報でも確かめられていません。会社のIRサイト(投資家向けの情報を載せたページ)でご確認ください。この記事で挙げた材料がその後どうなったかは、次の開示で確かめられます。直近の通期決算(2026年3月期)の有報は2026年6月24日に提出されています。2026年4〜6月(第1四半期)の決算短信は、この記事では取得できず、扱っていません。
- セグメント別の営業利益:2025年度はインフラ214億円、電装エレクトロニクス339億円、機能製品154億円、サービス・開発等−67億円。次の開示で、同じ区分で数字がどう書かれるか
- 設備投資・有利子負債・営業キャッシュ・フロー:2025年度は設備投資約567億円、有利子負債3,167億円、営業キャッシュ・フロー281億円。会社が書く資金調達の拡大と、投資の進み具合がどう開示されるか
- 原材料の価格・為替についての会社の説明:2025年度は、電装エレクトロニクス材料事業や機能製品事業の説明に「銅地金価格の高騰」「円安(為替)の影響」が書かれていた。次の説明でどう書かれるか
- 本業以外の項目:2025年度の特別損益(純額)は約291億円の利益。次の期の特別損益や持分法による投資損益の中身がどう開示されるか
- 2030年度の到達水準と株主還元:営業利益2,500億円・ROE20%・ROIC15%、DOE3.5%、中間配当の再開。会社がこれらの進み具合をどう開示していくか
有価証券報告書と半期報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説に、適時開示のしくみはこちらの解説にまとめています。
8️⃣ まとめ
結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①セグメント別の営業利益(特にインフラと機能製品の動きと、売上の中身)、②設備投資・有利子負債・営業キャッシュ・フローの関係(投資の負担と、本業でお金を生み出す力)、③本業以外の項目(特別損益・持分法による投資損益)を除いた営業利益の推移。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。
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⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事は金融庁の開示システム(EDINET)に提出された有価証券報告書や、証券取引所の適時開示などの一次情報に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示、将来の業績・株価・原材料価格・為替の予測、株価水準に関する評価的な断定は行っていません。会社の方針・目標・計画・見方として引用した内容は、あくまで「会社がそのように公表している」という事実の紹介です。文中に出てくる会社や分野の種類は、産業の構造を説明するための一般名で、特定の会社の株式をおすすめするものではありません。投資には元本割れのリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。