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⚠️ 本記事は公開情報(有価証券報告書などの一次情報)に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示や将来の業績・株価の予測は行っていません。投資には元本割れリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。

🔌 フジクラ(5803)を数字で見る|光ファイバから電力ケーブルまでの会社を有価証券報告書で確認

公開日:2026年10月10日 / 読了時間:約15分 / カテゴリ:数字で見る企業(第12回・日本株)

「数字で見る、話題の企業」シリーズ第12回は、光ファイバ・光ケーブルから、電子部品、自動車用の配線部品、電力ケーブルまでを手がける株式会社フジクラ(証券コード5803、以下「フジクラ」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が金融庁の開示システム(EDINET)に提出した有価証券報告書(第178期・2025年4月〜2026年3月)をもとに、①事業の中身 ②産業のつながりの中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。

📌 30秒でわかるこの記事
  • フジクラの第178期(2025年4月〜2026年3月)の売上高は約1兆1,824億円(前年度比20.7%増)、営業利益は約1,887億円(同39.2%増)でした(日本の会計基準・連結)。売上高の約55%、連結の営業利益の約81%にあたる営業利益を、光ファイバや光ケーブルの「情報通信事業部門」が占めています
  • 会社は情報通信事業部門の伸びの理由に、生成AIの広がりを背景にしたデータセンター向けの需要を挙げています。一方で、製品の主要な材料である銅の価格の変動や、需要の大きな変動を、会社自身がリスクとして挙げています
  • 「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
💡 なぜフジクラか(選定根拠):本シリーズは日本株を中心にする方針(直近3本のうち海外株が1本以上あれば日本株)で、直近3本(みずほフィナンシャルグループ・AMD・京セラ)に海外株が含まれるため、今回は日本株の番です。当サイトが機械的に集計する候補データ(edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-09時点で20銘柄)のうち、フジクラは2026年9月30日・10月2日・10月6日の3日、いずれも値上がりランキングに登場しています。ランキングに最後に登場した日から中3営業日以上あいていること(「熱が残っているうちは書かない」ルール。同データの cooled: true)と、有価証券報告書の本文が取得できていることを満たす候補の中から、時価総額の大きい順に選びました(時価総額の金額や順位は本文に書きません)。フジクラより時価総額の大きい候補が2社ありましたが、当サイトの10月1日のニュース記事でその2社の株価の動きを取り上げていたため、ニュースと重ならないよう今回は見送りました。フジクラについては、本レーンでの既刊記事・この会社が主役の解説記事の既刊はなく(ls guide-*.html と guides.html を社名・証券コードで確認)、直近14日のニュース記事(guide-news-*.html・NEWS_LEDGER.md)にも登場していません。14日より前には、2026年6月19日のニュース記事でフジクラの株価の動きを取り上げています(ニュース記事=その日に何が起きたか、この記事=この会社は何で稼ぎ、どんな材料があるか、という役割の違いがあります)。ランキングに登場した理由(なぜ値上がりしたか)は、一次情報で確かめられないため書きません。
数字の出どころと確認日(2026-10-10):決算の数字はすべて有価証券報告書 第178期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月23日提出)から引いています。直近の四半期(2026年4〜6月期)の決算短信は、決算短信の掲載先であるTDnet(東京証券取引所の適時開示サイト)で当サイトが確かめた時点(2026-10-10)では2026年9月1日より前の開示が見られず、取得できなかったため、この記事では使っていません(二次情報で補うこともしていません)。同じ理由で、会社が公表している2027年3月期の業績予想の数字(その後の修正を含む)も、この記事には書いていません。2026年9月1日から10月9日までのTDnetには、フジクラの開示は見当たりませんでした。有報の数字は百万円単位で、億円に直した数字は当サイトが計算したもの(億円未満四捨五入=会社が「経営者による分析」で使っている億円の数字と同じになる計算)なので「約」を付けています。

1️⃣ フジクラはどんな会社か

フジクラは、1910年に藤倉電線株式会社として東京で設立された会社で、1992年に今の社名に変わりました。有報の「事業の内容」によると、グループは会社本体と子会社107社・関連会社12社で構成され、情報通信、エレクトロニクス、自動車、エネルギー、不動産の5つの事業部門で、製品の製造・販売やサービスを行っています(出典:有価証券報告書 第178期「事業の内容」、2026-10-10確認)。連結の従業員数は50,586人(2026年3月31日現在)です。

💡 用語メモ:光ファイバは、ガラスなどでできた髪の毛ほどの細い線で、光の信号でデータを送ります。光ケーブルは、その光ファイバを何本も束ねて守るように覆った線です。コネクタは、ケーブルや部品どうしをつなぐための部品です。連結はグループ全体を1つの会社とみなした数字、単体はフジクラ1社だけの数字です。この記事では、ことわりがなければ連結の数字を使います。フジクラの決算は日本の会計基準(日本基準)で作られています(京セラなどが使う国際会計基準〈IFRS〉とは、利益の項目の名前などが違います)。セグメントは、会社が業績を管理・開示するときの事業の区分のことです。

有報のセグメント情報によると、5つの事業部門の主な製品は次のとおりです(出典:同有報「セグメント情報」)。

💡 用語メモ:プリント配線板は、電子部品をのせて電気の通り道をつくる板で、フジクラは薄く曲げられる「フレキシブルプリント配線板(FPC)」を手がけています。ワイヤハーネスは、自動車の中で電気や信号を送る電線を束ね、コネクタなどを付けた配線部品です。被覆線は、銅などの電線をビニールなどで覆った線です。

第178期のセグメントごとの売上高(外部の顧客への売上高)は次のとおりです(出典:同有報「セグメント情報」)。

フジクラ 第178期(2025年4月〜2026年3月)のセグメント別の売上高 セグメント別の売上高(第178期・外部の顧客への売上高・単位:億円) 情報通信事業部門(光ファイバ・光ケーブル・光部品・接続機など) 約6,530(55.2%) エレクトロニクス事業部門(プリント配線板・電子ワイヤ・コネクタなど) 約1,723(14.6%) 自動車事業部門(自動車用ワイヤハーネス・電装品など) 約1,794(15.2%) エネルギー事業部門(電力ケーブル・通信ケーブル・アルミ線など) 約1,570(13.3%) 不動産事業部門(不動産の賃貸など) 約110(0.9%) その他(事業化を検討している新規事業など) 約97(0.8%) 濃い青=情報通信/中くらいの青=電子部品と自動車/薄い青=エネルギー・不動産・その他
▲ 有価証券報告書 第178期「セグメント情報」の外部顧客への売上高(百万円、2026-10-10確認)を億円に直して作成(億円未満四捨五入=会社の「経営者による分析」の億円表記と同じ値)。カッコ内の構成比は、売上高の合計 約1兆1,824億円に対する割合を当サイトが計算したもの。※概念を示すイメージ図です。

情報通信事業部門の売上高は約6,530億円で、全体の約55%でした。セグメントの利益(フジクラでは営業利益の段階の数字)で見ると、情報通信事業部門が約1,527億円で、連結の営業利益 約1,887億円の約81%にあたる額です(割合は当サイトの計算)。売上高を顧客の所在地で分けると、米国が約5,222億円で全体の約44%、日本が約2,414億円(約20%)、中国が約508億円(約4%)、その他が約3,679億円(約31%)でした。外部の顧客への売上高のうち、1社で連結の売上高の10%以上を占める相手先はない、と有報は書いています(出典:同有報「セグメント情報」「関連情報」)。

2️⃣ どのつながりの中にいるか

次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、フジクラが「モノの流れ」のどこに立っているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。フジクラは1つの流れではなく、通信・電子部品と自動車・電力という3つの流れに立っています。

フジクラが立っている3つの流れ。光ファイバと光ケーブルはデータセンターや通信網へ、配線板・コネクタ・ワイヤハーネスはスマートフォンやサーバー、自動車へ、電力ケーブルは送電網やビル、データセンターの建設へつながる。全体は顧客の設備投資の波、銅などの原材料の価格、為替、関税などの通商政策の影響を受ける 産業のつながりの中での位置(モノが流れる方向) 原材料 ガラスの原料 樹脂など 光ファイバ・光ケーブル 光コネクタ・接続機 情報通信事業部門 =ここ(売上の55.2%) 敷設・組み立てる会社 通信工事の会社 通信機器メーカー サーバーの組立会社 最後の使い道 データセンター データセンター間の回線 各国の通信網 部材 銅・樹脂フィルム 電子部品の材料 配線板・コネクタ・電子ワイヤ HDD用部品・ワイヤハーネス エレクトロニクスと自動車 =ここ(合計 約30%) 部品を組み込む会社 スマートフォンのメーカー サーバー・HDDのメーカー 自動車メーカー 最後の使い道 スマートフォン データの保存 自動車 原材料 銅・アルミ 電力ケーブル・送電線 被覆線など エネルギー事業部門 =ここ(売上の13.3%) 使う・敷設する会社 電力会社 建設・電気工事の会社 最後の使い道 送電網・ビル 都市の再開発 データセンターの建設 外側の枠組み:顧客の設備投資の波・銅などの原材料の価格・為替・関税などの通商政策 会社自身が、有価証券報告書の「事業等のリスク」「経営方針」でこれらを挙げている ※矢印は「モノが流れる方向」を示す事実の関係です。 業績や株価が連動する方向を示すものではありません。
▲ 産業のつながりの中でのフジクラの位置(概念図)。会社の「事業の内容」「セグメント情報」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業等のリスク」の開示をもとに作成(2026-10-10確認)。構成比は外部顧客への売上高から当サイトが計算。前後の箱は会社の種類の一般名で、特定の会社を指すものではありません。※概念を示すイメージ図です。
💡 用語メモ:データセンターは、たくさんのサーバー(データを処理・保存するコンピューター)を集めて動かす施設です。会社は有報で、とくに大きなIT企業向けの非常に大規模なデータセンターを「ハイパースケールデータセンタ」と呼び、データセンター同士をつなぐ通信を「Data Center Interconnect(DCI)」と書いています。融着接続機は、光ファイバの端どうしを熱で溶かしてつなぐ機械です。多心光コネクタは、たくさんの光ファイバをまとめて一度につなぐコネクタで、MTフェルールはその中心にある部品です。

フジクラが「光ファイバ・光ケーブル」の箱に立っている根拠は、会社自身の開示にあります。第178期の情報通信事業部門の売上高は約6,530億円(前年度比44.7%増)、営業利益は約1,527億円(同65.7%増)でした。会社はその理由を「生成AIの普及・拡大を背景としたデータセンタ向けの需要が引き続き伸長した」ことと説明しています(出典:有価証券報告書 第178期「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」、2026-10-10確認)。

工程の前後とのつながりも、文章や数字で開示されています。

このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報で挙げています。需要動向の項では、製品が主にインフラ用や最終消費財の部品などであるため、景気の循環に加えて「各マーケットの設備投資の動向や競合環境、サプライヤの動向、顧客の購買政策の変化や信用状況等によって影響を受けます。」と書いています。経営方針では、エレクトロニクス事業の主要な顧客のスマートフォンについて「メモリ価格の高騰等により端末価格が上昇した場合、買い替え需要に影響を及ぼす可能性がある」と、自動車事業について「米国政府による自動車への追加関税の発動や、EV市場の成長鈍化については慎重に見極め」ると書いています(EV=電気自動車。これらは会社の見方の紹介で、当サイトの予測ではありません。出典:有価証券報告書「事業等のリスク」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、2026-10-10確認)。

産業のつながりがあることと、株価が連動することは別です。同じ工程にいる会社でも、業績も株価も会社ごとに大きく異なります。ここでお伝えしているのは産業構造の事実であって、値動きの予想ではありません。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。

3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事

各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。有価証券報告書の「沿革」などに無い事実(創業の年と創業者)は、Wikipedia(二次情報)から年表に限って使っています。

年月出来事出典
1885年藤倉善八が創業(有報の「沿革」は1910年の会社設立から始まるため、創業の年と創業者はWikipediaによる)Wikipedia「フジクラ」(2026-10-10確認)
1910年3月藤倉電線護謨合名会社から電線部門を分離独立し、東京千駄ヶ谷に藤倉電線株式会社を設立有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認)・Wikipedia「フジクラ」(2026-10-10確認)
1949年5月東京証券取引所に上場(1961年10月の市場区分の設置で市場第一部)有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認)
1965年1月千葉県佐倉市に佐倉工場を開設有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認)
1984年8月タイに現地法人「Fujikura (Thailand) Ltd.」を設立有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認)
1992年10月商号を藤倉電線株式会社から株式会社フジクラに変更有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認)
2005年1月電力事業全般を合弁会社へ営業譲渡し、ほかの電線メーカーとのこの事業の統合を完了。建設・電販事業の販売合弁会社も設立有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認)
2005年3月アメリカに、情報通信と自動車用電装品の製造販売会社と、情報通信関連製品の製造販売会社(AFL Telecommunications LLC)を設立有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認)
2016年10月合弁会社の再編に伴い、配電線・架空送電線の事業を当社へ移管有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認)
2017年6月監査等委員会設置会社に移行有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認)
2022年4月東京証券取引所の市場区分の見直しで、プライム市場へ移行有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認)
2024年4月導体事業を分割して子会社の株式会社フジクラ・ダイヤケーブルに承継し、銅電線の製造販売事業を同社に集約有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認)
2025年10月28日日米両国政府の「戦略的投資に関する覚書」に基づき、米国商務省と枠組み合意書を結ぶ。会社は、米国のAIインフラ強化における光ファイバケーブルの供給者として選定されていると書いている有価証券報告書 第178期「設備投資等の概要」「重要な後発事象」(2026-10-10確認)
2026年3月日米で合計最大3,000億円を投じ、光ファイバケーブルの生産能力を現状の最大3倍に広げる方針を決める有価証券報告書 第178期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-10確認)
2026年4月1日普通株式1株を6株に分割(2月25日の取締役会で決議。分割後の発行済株式総数は1,775,180,526株)有価証券報告書 第178期「重要な後発事象」(2026-10-10確認)
2026年5月2028年度までの「2028年中期経営計画」を公表。14日の取締役会で、佐倉事業所に新工場(投資予定額 約400億円・稼働開始は2030年12月の予定)の建設を決議有価証券報告書 第178期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「重要な後発事象」(2026-10-10確認)
2026年6月23日有価証券報告書 第178期を提出EDINET 有価証券報告書(2026-10-10確認)

※監査等委員会設置会社=取締役のうち監査を受け持つ人たちで委員会をつくり、取締役会の監督の役目を強める会社の形です。株式分割=1株を複数の株に分けることで、株主の持ち分の割合は変わらず、1株当たりの数字(利益や純資産)が小さくなります。会社は今回の分割の目的を「当社株式の投資単位当たりの金額を下げることで、個人をはじめとした投資家の皆様が投資しやすい環境を整えて投資家層の拡大を図ること」と書いています(出典:同有報「重要な後発事象」)。重要な後発事象=決算期末のあとに起きた、次の期以降に大きく影響しうる出来事として、有報に書くことになっている事項です。

4️⃣ 直近の決算の数字(有価証券報告書 第178期)

有価証券報告書 第178期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月23日提出)の連結の数字です(日本基準)。フジクラは3月決算で、その後の四半期の数字(2026年4〜6月期の決算短信)は、上の注意書きのとおり当サイトでは取得できていません。確認日は2026-10-10です。

指標(連結・日本基準)第178期(2025/4〜2026/3)第177期(前期・2024/4〜2025/3)増減
売上高約1兆1,824億円約9,794億円+20.7%
営業利益約1,887億円約1,355億円+39.2%
経常利益約1,995億円約1,372億円+45.4%
親会社株主に帰属する当期純利益約1,572億円約911億円+72.5%
1株当たり当期純利益(EPS・株式分割後の株数で計算)94.93円55.05円—
自己資本利益率(ROE)32.48%24.35%—
自己資本比率57.80%49.08%—
営業活動によるキャッシュ・フロー約1,329億円約1,159億円—
1株当たり配当額(フジクラ単体・株式分割前の株数)225円100円+125円
研究開発費約168億円——
設備投資の総額約403億円——

出典:有価証券報告書 第178期「主要な経営指標等の推移」「経営者による分析」「セグメント情報」「研究開発活動」「設備投資等の概要」(2026-06-23提出)。億円の数字は有報の百万円から当サイトが計算したもの(億円未満四捨五入)。増減の率は有報の「経営者による分析」の記載と一致することを確かめた値。研究開発費と設備投資の総額は有報の億円の記載。前期の営業利益はセグメント情報の表の値。確認日:2026-10-10。

💡 用語メモ:営業利益=本業のもうけ、経常利益=営業利益に、利息や為替の差など本業以外の毎年ある損益を足し引きした利益、親会社株主に帰属する当期純利益=税金などを引いたあと、グループのうち親会社の株主の取り分になる最終的な利益です(日本基準の呼び方)。EPS=1株当たりの利益です。ROE(自己資本利益率)=株主のお金(自己資本)に対して、1年でどれだけ利益を出したかの割合です。自己資本比率=総資産のうち、返す必要のない株主のお金が占める割合です。キャッシュ・フロー=実際のお金の出入りのことで、営業活動によるキャッシュ・フローは本業で入ってきたお金の額です。研究開発費=新しい技術や製品を生み出すために使ったお金です。

1株当たりの数字の読み方の注意:フジクラは2026年4月1日付で、普通株式1株を6株に分割しました。有報の「主要な経営指標等の推移」では、1株当たり当期純利益(EPS)と1株当たり純資産額は、第174期の期首に分割したと仮定して計算されています。一方で、発行済株式総数(2026年3月末 295,863千株)と1株当たり配当額(225円)は、分割前の数字で書かれています(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」の注記)。配当225円の内訳は、中間配当95円と期末配当130円で、期末配当は有報の提出時点では2026年6月26日の定時株主総会で決める予定とされていました(出典:同有報「配当政策」)。このため、上の表のEPS(分割後の株数で計算)と1株当たり配当額(分割前の株数)は、同じ物差しではありません。また、2026年4月1日以降の株価は分割後の株数に対応した値なので、分割前の配当額225円をそのまま今の株価と比べることはできません(比べるときは、分割の割合〈1株→6株〉で直す必要があります)。

セグメントごとの第178期の数字と、会社の説明は次のとおりです(出典:同有報「経営者による分析」。億円の数字は会社の記載のまま)。

💡 用語メモ:デリバティブは、銅などの相場や為替をもとに値段が決まる取引のことで、相場の変動に備える目的などで使われます。評価益は、持っている取引を期末の時価で評価し直したときに出る、まだ売り買いを終えていない段階の利益です。相場の動きによっては評価損になることもあります。
フジクラの売上高と、親会社株主に帰属する当期純利益の推移。第174期から第178期 上:売上高(連結・単位:億円・億円未満四捨五入) 6,704 8,065 7,998 9,794 11,824 下:親会社株主に帰属する当期純利益(連結・単位:億円・億円未満四捨五入) 391 409 510 911 1,572 第174期 2022年3月期 第175期 2023年3月期 第176期 2024年3月期 第177期 2025年3月期 第178期 2026年3月期 上と下で縦の目盛りが違います(上は1兆2,000億円、下は1,600億円を基準にした高さ)。
▲ 有価証券報告書 第178期「主要な経営指標等の推移」の連結の数値(百万円)を億円に直して作成(億円未満四捨五入、2026-10-10確認)。フジクラは3月決算。第174期=2021年4月〜2022年3月、第178期=2025年4月〜2026年3月。※概念を示すイメージ図です。

5期の数字では、売上高は約6,704億円(第174期)から約1兆1,824億円(第178期)、親会社株主に帰属する当期純利益は約391億円から約1,572億円でした。第176期(2024年3月期)は、売上高が前の期をわずかに下回っています(約8,065億円→約7,998億円)。この記事で読んだ範囲の有報には、第177期より前の年ごとの増減の理由の説明はないため、理由は書きません(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」)。

お金の面では、第178期末の総資産は約9,695億円、純資産は約5,932億円でした。会社は、負債が減った主な理由に有利子負債(利息を払って返す借入金や社債など)の減少を挙げ、手元の現金などから有利子負債を引いた「ネットキャッシュ」の残高は962億円(前年度比584億円増)になったと書いています。投資活動によるキャッシュ・フローは設備投資を中心に362億円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは借入金の返済や配当金の支払いを中心に1,113億円の支出でした(出典:同有報「経営者による分析」)。

💡 会社が公表している計画と目標について:会社は2026年5月に公表した「2028年中期経営計画」で、最終年度(2028年度)の目標として、売上高1兆6,000億円、営業利益3,150億円、ROE(株主資本利益率)28.5%、ROIC(投下資本利益率:事業に投じたお金に対してどれだけ利益を出したかの割合)21.6%を掲げています。あわせて、自己資本比率50%を維持しながら成長分野へ資金を重点的に配分すること、株主還元は連結配当性向(利益のうち配当に回す割合)40%を目安とすることを書いています(出典:同有報「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」)。2027年3月期の業績の予想など、決算短信に載る数字は、当サイトが確かめた時点でTDnetの保管期間を過ぎていて取得できなかったため、この記事に書いていません。会社のIRサイトでご確認ください。なお、ここで扱う数字はすべて会社の開示の紹介で、当サイトによる業績予測ではありません。

5️⃣ 会社自身が挙げているリスク

以下は有価証券報告書(第178期)の「事業等のリスク」から、会社自身が挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社は12の項目を挙げており、ここではそのうち5つを紹介します。原文はEDINET掲載の有価証券報告書でご確認ください。

出典:有価証券報告書 第178期「事業等のリスク」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-06-23提出、2026-10-10確認)。原文にはこのほか、金利の変動、法的な規制、訴訟や規制当局の措置、知的財産、情報セキュリティ、災害や感染症、人材の確保が挙げられています。サプライチェーン=原材料の調達から製造・販売までのつながりのこと、製造物責任=製品の欠陥で人や物に損害が出たときに、作った会社が負う賠償の責任のことです。

6️⃣ 上がる材料/下がる材料

ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。

📈 上がる可能性がある材料
情報通信事業部門の売上高は約6,530億円(前年度比44.7%増)、営業利益は約1,527億円(同65.7%増)。会社は理由に、生成AIの広がりを背景にしたデータセンター向けの需要の伸びを挙げ、経営方針では光配線ソリューションの需要について「高水準で推移する見通しです」と書いている(会社の見方の紹介で、当サイトの予測ではない)。出典:有価証券報告書 第178期「経営者による分析」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」/確認日2026-10-10/効くと:売上の約55%を占める部門の動きが、全体の業績を左右する材料になる
会社は2025年10月28日に米国商務省と枠組み合意書を結んだと書き、2026年3月に、日米で合計最大3,000億円を投じて光ファイバケーブルの生産能力を現状の最大3倍に広げる方針を決めたと書いている。2026年5月14日には佐倉事業所の新工場(投資予定額 約400億円・2030年12月稼働の予定)の建設を決議し、多心光コネクタの重要部品のMTフェルールは2024年度比で約1.7倍の生産能力の増強投資をした。出典:有価証券報告書 第178期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「設備投資等の概要」「重要な後発事象」/確認日2026-10-10/効くと:生産能力を広げた分が、その後の売上にどう表れるかを確かめる材料になる
エネルギー事業部門の営業利益は約189億円(前年度比58.6%増)。会社は理由に高採算製品の出荷増加や売価改善を挙げ、方針では都市の再開発・データセンターの建設・古くなった送電線の更新などの需要を取り込むと書いている。ただし会社は、この増益の理由に「銅価高騰に起因するデリバティブ評価益」も挙げている。出典:有価証券報告書 第178期「経営者による分析」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」/確認日2026-10-10/効くと:評価益を除いた本業の利益の動きを、次の決算で見分ける材料になる
自己資本比率は57.80%(前期49.08%)。会社は有利子負債が減り、ネットキャッシュの残高は962億円(前年度比584億円増)になったと書いている。1株当たり配当額は225円(株式分割前の株数・前期100円。2026年4月1日の1対6の株式分割より前の株数の数字で、分割後の株価とはそのまま比べられない)で、2028年中期経営計画では連結配当性向40%を目安としている。出典:有価証券報告書 第178期「主要な経営指標等の推移」「経営者による分析」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」/確認日2026-10-10/効くと:増産の投資と株主還元を、どのような資金の手当てで進めるかを確かめる材料になる
会社は2028年中期経営計画で、2028年度の目標を売上高1兆6,000億円・営業利益3,150億円・ROE 28.5%・ROIC 21.6%と掲げ、データセンターの需要の拡大と結びつけている「情報インフラ」「情報ストレージ」の分野に経営の資源を重点的に配分する方針を書いている(会社の目標の紹介で、当サイトの予測ではない)。出典:有価証券報告書 第178期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」/確認日2026-10-10/効くと:会社の目標に対する実績の進み方を、毎期の決算で確かめられる
📉 下がる可能性がある材料
情報通信事業部門が売上高の約55%、営業利益が連結の営業利益の約81%にあたり、顧客の所在地で見ると米国向けが売上高の約44%(当サイトの計算)。会社はリスクの項で、各市場の設備投資の動向や顧客の購買政策の変化などの影響を受け、短期的に需要が大きく変動した場合に業績に影響しうると書いている。出典:有価証券報告書 第178期「セグメント情報」「関連情報」「事業等のリスク」/確認日2026-10-10/効くと:1つの分野・地域の需要の変化が、全体の業績に大きく響く
会社は、主要な材料である銅の価格の変化が仕入れの値段の変動として「即座に製品価格に反映されるとは限らない」と書き、第178期の自動車事業部門では「売価転嫁できない銅価高騰影響」があったと説明している。エネルギー事業部門の増益の理由には「銅価高騰に起因するデリバティブ評価益」が含まれている。出典:有価証券報告書 第178期「事業等のリスク」「経営者による分析」/確認日2026-10-10/効くと:銅の値段の動きが、製品の値段との差や評価損益を通じて利益に響く
エレクトロニクス事業部門の売上高は約1,723億円(前年度比7.3%減)、営業利益は約77億円(同66.5%減)。会社は理由に川下のサプライチェーンの問題、競争の激化、タイバーツ高によるコスト増加を挙げ、主要な顧客のスマートフォンについてメモリ価格の高騰などで端末の価格が上がった場合に買い替え需要に影響しうると書いている。出典:有価証券報告書 第178期「経営者による分析」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」/確認日2026-10-10/効くと:売上の約15%を占める部門の利益の出方が、全体の利益を左右する材料になる
会社は為替について、ヘッジをしていても為替のリスクを完全には避けられないとし、海外の収益や資産を円に直すときのレートでも値が変わりうると書いている。売上高の約8割は日本以外の顧客向け(当サイトの計算)で、エレクトロニクス事業部門ではタイバーツ高がコスト増加の理由に挙がっている。出典:有価証券報告書 第178期「事業等のリスク」「関連情報」「経営者による分析」/確認日2026-10-10/効くと:同じ売れ行きでも、円に直した売上高や利益が為替で変わる
会社は2026年度の環境について、米国の関税政策の動向や中東情勢を含む地政学のリスクなどを背景に先行きが見通しにくいとの見方を書き、自動車事業では米国政府による自動車への追加関税やEV(電気自動車)市場の成長の鈍化を慎重に見極めるとしている(会社の見方の紹介で、当サイトの予測ではない)。出典:有価証券報告書 第178期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業等のリスク」/確認日2026-10-10/効くと:関税や通商の変化が、海外での生産・販売の費用と需要に響きうる

以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。

※ 材料の数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来の予測は行っていません。

7️⃣ これから何を見れば分かるか

次の決算発表日は、当サイトの決算予定データ(earnings-calendar.json)に載っておらず、会社の公式な日程も確認できていないため、ここには書きません。会社のIRサイトの決算発表予定でご確認ください。この記事で挙げた材料がその後どうなったかは、次の開示で確かめられます。

有価証券報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説にまとめています。

8️⃣ まとめ

結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①情報通信事業部門の売上高と営業利益(売上の約55%、営業利益が連結の営業利益の約81%にあたる部門の動き)、②銅の価格の影響(自動車の「売価転嫁できない」影響と、エネルギーのデリバティブ評価益の説明)、③生産能力の増強(日米で合計最大3,000億円の方針)の進み具合と、その資金の手当て。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。

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