🔌 フジクラ(5803)を数字で見る|光ファイバから電力ケーブルまでの会社を有価証券報告書で確認
「数字で見る、話題の企業」シリーズ第12回は、光ファイバ・光ケーブルから、電子部品、自動車用の配線部品、電力ケーブルまでを手がける株式会社フジクラ(証券コード5803、以下「フジクラ」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が金融庁の開示システム(EDINET)に提出した有価証券報告書(第178期・2025年4月〜2026年3月)をもとに、①事業の中身 ②産業のつながりの中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。
- フジクラの第178期(2025年4月〜2026年3月)の売上高は約1兆1,824億円(前年度比20.7%増)、営業利益は約1,887億円(同39.2%増)でした(日本の会計基準・連結)。売上高の約55%、連結の営業利益の約81%にあたる営業利益を、光ファイバや光ケーブルの「情報通信事業部門」が占めています
- 会社は情報通信事業部門の伸びの理由に、生成AIの広がりを背景にしたデータセンター向けの需要を挙げています。一方で、製品の主要な材料である銅の価格の変動や、需要の大きな変動を、会社自身がリスクとして挙げています
- 「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-09時点で20銘柄)のうち、フジクラは2026年9月30日・10月2日・10月6日の3日、いずれも値上がりランキングに登場しています。ランキングに最後に登場した日から中3営業日以上あいていること(「熱が残っているうちは書かない」ルール。同データの cooled: true)と、有価証券報告書の本文が取得できていることを満たす候補の中から、時価総額の大きい順に選びました(時価総額の金額や順位は本文に書きません)。フジクラより時価総額の大きい候補が2社ありましたが、当サイトの10月1日のニュース記事でその2社の株価の動きを取り上げていたため、ニュースと重ならないよう今回は見送りました。フジクラについては、本レーンでの既刊記事・この会社が主役の解説記事の既刊はなく(ls guide-*.html と guides.html を社名・証券コードで確認)、直近14日のニュース記事(guide-news-*.html・NEWS_LEDGER.md)にも登場していません。14日より前には、2026年6月19日のニュース記事でフジクラの株価の動きを取り上げています(ニュース記事=その日に何が起きたか、この記事=この会社は何で稼ぎ、どんな材料があるか、という役割の違いがあります)。ランキングに登場した理由(なぜ値上がりしたか)は、一次情報で確かめられないため書きません。1️⃣ フジクラはどんな会社か
フジクラは、1910年に藤倉電線株式会社として東京で設立された会社で、1992年に今の社名に変わりました。有報の「事業の内容」によると、グループは会社本体と子会社107社・関連会社12社で構成され、情報通信、エレクトロニクス、自動車、エネルギー、不動産の5つの事業部門で、製品の製造・販売やサービスを行っています(出典:有価証券報告書 第178期「事業の内容」、2026-10-10確認)。連結の従業員数は50,586人(2026年3月31日現在)です。
有報のセグメント情報によると、5つの事業部門の主な製品は次のとおりです(出典:同有報「セグメント情報」)。
- 情報通信事業部門:光ファイバ、光ケーブル、通信部品、光部品、光関連機器、ネットワーク機器、工事など
- エレクトロニクス事業部門:プリント配線板、電子ワイヤ、ハードディスク(HDD)用部品、各種コネクタなど
- 自動車事業部門:自動車用ワイヤハーネス、電装品など
- エネルギー事業部門:電力ケーブル、通信ケーブル、アルミ線、被覆線など
- 不動産事業部門:不動産の賃貸など(会社の旧深川工場の跡地の再開発で生まれた施設の賃貸収入など)
第178期のセグメントごとの売上高(外部の顧客への売上高)は次のとおりです(出典:同有報「セグメント情報」)。
情報通信事業部門の売上高は約6,530億円で、全体の約55%でした。セグメントの利益(フジクラでは営業利益の段階の数字)で見ると、情報通信事業部門が約1,527億円で、連結の営業利益 約1,887億円の約81%にあたる額です(割合は当サイトの計算)。売上高を顧客の所在地で分けると、米国が約5,222億円で全体の約44%、日本が約2,414億円(約20%)、中国が約508億円(約4%)、その他が約3,679億円(約31%)でした。外部の顧客への売上高のうち、1社で連結の売上高の10%以上を占める相手先はない、と有報は書いています(出典:同有報「セグメント情報」「関連情報」)。
2️⃣ どのつながりの中にいるか
次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、フジクラが「モノの流れ」のどこに立っているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。フジクラは1つの流れではなく、通信・電子部品と自動車・電力という3つの流れに立っています。
フジクラが「光ファイバ・光ケーブル」の箱に立っている根拠は、会社自身の開示にあります。第178期の情報通信事業部門の売上高は約6,530億円(前年度比44.7%増)、営業利益は約1,527億円(同65.7%増)でした。会社はその理由を「生成AIの普及・拡大を背景としたデータセンタ向けの需要が引き続き伸長した」ことと説明しています(出典:有価証券報告書 第178期「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」、2026-10-10確認)。
工程の前後とのつながりも、文章や数字で開示されています。
- 原材料とのつながり:会社はリスクの項で、製品の主要な材料である銅の価格が国際的な需給の動きなどで変わり、仕入れの値段の変化がすぐに製品の値段に反映されるとは限らない、と書いています。第178期の自動車事業部門については「当期間に売価転嫁できない銅価高騰影響がある」(売価転嫁=材料の値上がり分などを製品の売り値に上乗せすること)と説明しています(出典:同有報「事業等のリスク」「経営者による分析」)。
- 使う側とのつながり:会社は経営方針で、情報通信事業について、北米を中心とした大規模なデータセンター向けの需要と、データセンター同士をつなぐ通信を含む光通信インフラを挙げています。エレクトロニクス事業では、データセンター向けのサーバー、スマートフォンなどの情報端末、産業機器向けにコネクタ・電子ワイヤ・HDD部品などを出していると書いています。エネルギー事業では、都市の再開発やデータセンターの建設、古くなった送電線の更新などの需要を取り込む方針を書いています(出典:同有報「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」)。
- 前後の工程にいる会社の種類:前には、光ファイバのガラスの原料、銅・アルミ、樹脂などの素材メーカーがあります。後ろには、通信の工事をする会社、通信機器やサーバーの組み立てをする会社、スマートフォンやHDDのメーカー、自動車メーカーがいます。その先に、データセンターを運営する会社や通信事業者があります。電力ケーブルの側では、電力会社や建設・電気工事の会社がつながっています。
このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報で挙げています。需要動向の項では、製品が主にインフラ用や最終消費財の部品などであるため、景気の循環に加えて「各マーケットの設備投資の動向や競合環境、サプライヤの動向、顧客の購買政策の変化や信用状況等によって影響を受けます。」と書いています。経営方針では、エレクトロニクス事業の主要な顧客のスマートフォンについて「メモリ価格の高騰等により端末価格が上昇した場合、買い替え需要に影響を及ぼす可能性がある」と、自動車事業について「米国政府による自動車への追加関税の発動や、EV市場の成長鈍化については慎重に見極め」ると書いています(EV=電気自動車。これらは会社の見方の紹介で、当サイトの予測ではありません。出典:有価証券報告書「事業等のリスク」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、2026-10-10確認)。
3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事
各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。有価証券報告書の「沿革」などに無い事実(創業の年と創業者)は、Wikipedia(二次情報)から年表に限って使っています。
| 年月 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1885年 | 藤倉善八が創業(有報の「沿革」は1910年の会社設立から始まるため、創業の年と創業者はWikipediaによる) | Wikipedia「フジクラ」(2026-10-10確認) |
| 1910年3月 | 藤倉電線護謨合名会社から電線部門を分離独立し、東京千駄ヶ谷に藤倉電線株式会社を設立 | 有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認)・Wikipedia「フジクラ」(2026-10-10確認) |
| 1949年5月 | 東京証券取引所に上場(1961年10月の市場区分の設置で市場第一部) | 有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認) |
| 1965年1月 | 千葉県佐倉市に佐倉工場を開設 | 有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認) |
| 1984年8月 | タイに現地法人「Fujikura (Thailand) Ltd.」を設立 | 有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認) |
| 1992年10月 | 商号を藤倉電線株式会社から株式会社フジクラに変更 | 有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認) |
| 2005年1月 | 電力事業全般を合弁会社へ営業譲渡し、ほかの電線メーカーとのこの事業の統合を完了。建設・電販事業の販売合弁会社も設立 | 有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認) |
| 2005年3月 | アメリカに、情報通信と自動車用電装品の製造販売会社と、情報通信関連製品の製造販売会社(AFL Telecommunications LLC)を設立 | 有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認) |
| 2016年10月 | 合弁会社の再編に伴い、配電線・架空送電線の事業を当社へ移管 | 有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認) |
| 2017年6月 | 監査等委員会設置会社に移行 | 有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認) |
| 2022年4月 | 東京証券取引所の市場区分の見直しで、プライム市場へ移行 | 有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認) |
| 2024年4月 | 導体事業を分割して子会社の株式会社フジクラ・ダイヤケーブルに承継し、銅電線の製造販売事業を同社に集約 | 有価証券報告書 第178期「沿革」(2026-10-10確認) |
| 2025年10月28日 | 日米両国政府の「戦略的投資に関する覚書」に基づき、米国商務省と枠組み合意書を結ぶ。会社は、米国のAIインフラ強化における光ファイバケーブルの供給者として選定されていると書いている | 有価証券報告書 第178期「設備投資等の概要」「重要な後発事象」(2026-10-10確認) |
| 2026年3月 | 日米で合計最大3,000億円を投じ、光ファイバケーブルの生産能力を現状の最大3倍に広げる方針を決める | 有価証券報告書 第178期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-10確認) |
| 2026年4月1日 | 普通株式1株を6株に分割(2月25日の取締役会で決議。分割後の発行済株式総数は1,775,180,526株) | 有価証券報告書 第178期「重要な後発事象」(2026-10-10確認) |
| 2026年5月 | 2028年度までの「2028年中期経営計画」を公表。14日の取締役会で、佐倉事業所に新工場(投資予定額 約400億円・稼働開始は2030年12月の予定)の建設を決議 | 有価証券報告書 第178期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「重要な後発事象」(2026-10-10確認) |
| 2026年6月23日 | 有価証券報告書 第178期を提出 | EDINET 有価証券報告書(2026-10-10確認) |
※監査等委員会設置会社=取締役のうち監査を受け持つ人たちで委員会をつくり、取締役会の監督の役目を強める会社の形です。株式分割=1株を複数の株に分けることで、株主の持ち分の割合は変わらず、1株当たりの数字(利益や純資産)が小さくなります。会社は今回の分割の目的を「当社株式の投資単位当たりの金額を下げることで、個人をはじめとした投資家の皆様が投資しやすい環境を整えて投資家層の拡大を図ること」と書いています(出典:同有報「重要な後発事象」)。重要な後発事象=決算期末のあとに起きた、次の期以降に大きく影響しうる出来事として、有報に書くことになっている事項です。
4️⃣ 直近の決算の数字(有価証券報告書 第178期)
有価証券報告書 第178期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月23日提出)の連結の数字です(日本基準)。フジクラは3月決算で、その後の四半期の数字(2026年4〜6月期の決算短信)は、上の注意書きのとおり当サイトでは取得できていません。確認日は2026-10-10です。
| 指標(連結・日本基準) | 第178期(2025/4〜2026/3) | 第177期(前期・2024/4〜2025/3) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 約1兆1,824億円 | 約9,794億円 | +20.7% |
| 営業利益 | 約1,887億円 | 約1,355億円 | +39.2% |
| 経常利益 | 約1,995億円 | 約1,372億円 | +45.4% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 約1,572億円 | 約911億円 | +72.5% |
| 1株当たり当期純利益(EPS・株式分割後の株数で計算) | 94.93円 | 55.05円 | — |
| 自己資本利益率(ROE) | 32.48% | 24.35% | — |
| 自己資本比率 | 57.80% | 49.08% | — |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 約1,329億円 | 約1,159億円 | — |
| 1株当たり配当額(フジクラ単体・株式分割前の株数) | 225円 | 100円 | +125円 |
| 研究開発費 | 約168億円 | — | — |
| 設備投資の総額 | 約403億円 | — | — |
出典:有価証券報告書 第178期「主要な経営指標等の推移」「経営者による分析」「セグメント情報」「研究開発活動」「設備投資等の概要」(2026-06-23提出)。億円の数字は有報の百万円から当サイトが計算したもの(億円未満四捨五入)。増減の率は有報の「経営者による分析」の記載と一致することを確かめた値。研究開発費と設備投資の総額は有報の億円の記載。前期の営業利益はセグメント情報の表の値。確認日:2026-10-10。
1株当たりの数字の読み方の注意:フジクラは2026年4月1日付で、普通株式1株を6株に分割しました。有報の「主要な経営指標等の推移」では、1株当たり当期純利益(EPS)と1株当たり純資産額は、第174期の期首に分割したと仮定して計算されています。一方で、発行済株式総数(2026年3月末 295,863千株)と1株当たり配当額(225円)は、分割前の数字で書かれています(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」の注記)。配当225円の内訳は、中間配当95円と期末配当130円で、期末配当は有報の提出時点では2026年6月26日の定時株主総会で決める予定とされていました(出典:同有報「配当政策」)。このため、上の表のEPS(分割後の株数で計算)と1株当たり配当額(分割前の株数)は、同じ物差しではありません。また、2026年4月1日以降の株価は分割後の株数に対応した値なので、分割前の配当額225円をそのまま今の株価と比べることはできません(比べるときは、分割の割合〈1株→6株〉で直す必要があります)。
セグメントごとの第178期の数字と、会社の説明は次のとおりです(出典:同有報「経営者による分析」。億円の数字は会社の記載のまま)。
- 情報通信:売上高 6,530億円(前年度比44.7%増)・営業利益 1,527億円(同65.7%増)。理由=「生成AIの普及・拡大を背景としたデータセンタ向けの需要が引き続き伸長した」
- エレクトロニクス:売上高 1,723億円(同7.3%減)・営業利益 77億円(同66.5%減)。理由=「川下におけるサプライチェーン問題の発現、競争の激化、及びタイバーツ高によるコスト増加」(川下=部品を組み込んだり使ったりする顧客の側の工程。タイバーツ高=タイの通貨バーツが円などに対して値上がりすること。タイで作る費用が増える方向に働く)
- 自動車:売上高 1,794億円(同1.3%増)・営業利益 68億円(同17.0%増)。理由=「当期間に売価転嫁できない銅価高騰影響があるものの、一過性のインフレ影響等の売価反映が進み」
- エネルギー:売上高 1,570億円(同8.1%増)・営業利益 189億円(同58.6%増)。理由=「高採算製品の出荷増加や売価改善、銅価高騰に起因するデリバティブ評価益もあり」
- 不動産:売上高 110億円(同1.9%増)・営業利益 50億円(同2.1%増)
5期の数字では、売上高は約6,704億円(第174期)から約1兆1,824億円(第178期)、親会社株主に帰属する当期純利益は約391億円から約1,572億円でした。第176期(2024年3月期)は、売上高が前の期をわずかに下回っています(約8,065億円→約7,998億円)。この記事で読んだ範囲の有報には、第177期より前の年ごとの増減の理由の説明はないため、理由は書きません(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」)。
お金の面では、第178期末の総資産は約9,695億円、純資産は約5,932億円でした。会社は、負債が減った主な理由に有利子負債(利息を払って返す借入金や社債など)の減少を挙げ、手元の現金などから有利子負債を引いた「ネットキャッシュ」の残高は962億円(前年度比584億円増)になったと書いています。投資活動によるキャッシュ・フローは設備投資を中心に362億円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは借入金の返済や配当金の支払いを中心に1,113億円の支出でした(出典:同有報「経営者による分析」)。
5️⃣ 会社自身が挙げているリスク
以下は有価証券報告書(第178期)の「事業等のリスク」から、会社自身が挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社は12の項目を挙げており、ここではそのうち5つを紹介します。原文はEDINET掲載の有価証券報告書でご確認ください。
- ①需要の動き:製品が主にインフラ用や最終消費財の部品などであるため、景気の循環に加え、各市場の設備投資の動き、競合の環境、仕入れ先の動き、顧客の購買の方針や信用の状況などの影響を受けるとしています。生産・在庫・コストの調整で影響を小さくするよう努めているものの、「景気後退等に伴い短期的に需要が大きく変動した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。」と書いています。
- ②為替レートの変動:実際の取引の範囲内で通貨の変動に備える取引(ヘッジ)をしているものの、為替のリスクを完全に避けられるわけではないとしています。海外の子会社の収益・費用・資産を円に直すときの為替レートによっても、円に直したあとの値が変わりうると書いています。
- ③原材料の調達と価格(銅):サプライチェーンの混乱や需給のひっ迫などで必要な量を確保できない場合や、原材料・エネルギーの価格が大きく上がった場合の影響を挙げています。銅については「銅価格の急激な変化による仕入価格の変動が即座に製品価格に反映されるとは限らないため、銅価格の著しい変動によって当社グループの経営成績は影響を受ける可能性があります。」と書いています。
- ④製品の欠陥と品質:品質管理の体制の強化や品質のコンプライアンスの意識の向上に取り組み、製造物責任の賠償については保険に入っているとしたうえで、重大なクレームや品質の問題が起きた場合の、製品の回収や補償の費用、体制の改善の費用、信用の低下による販売への影響を挙げています。
- ⑤政治・経済の情勢:国内外で事業をしているため、各国の政治・経済の情勢の急な変化、貿易摩擦の激化、紛争・テロの発生などが業績に影響しうるとしています。経営方針でも、2026年度の環境について、米国の関税政策の動向や中東情勢を含む地政学のリスク(国どうしの対立や紛争など、地理と政治の事情から生じるリスク)などを背景に、先行きが見通しにくい状況が続くとの見方を書いています(会社の見方の紹介で、当サイトの予測ではありません)。
出典:有価証券報告書 第178期「事業等のリスク」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-06-23提出、2026-10-10確認)。原文にはこのほか、金利の変動、法的な規制、訴訟や規制当局の措置、知的財産、情報セキュリティ、災害や感染症、人材の確保が挙げられています。サプライチェーン=原材料の調達から製造・販売までのつながりのこと、製造物責任=製品の欠陥で人や物に損害が出たときに、作った会社が負う賠償の責任のことです。
6️⃣ 上がる材料/下がる材料
ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。
以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。
※ 材料の数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来の予測は行っていません。
7️⃣ これから何を見れば分かるか
次の決算発表日は、当サイトの決算予定データ(earnings-calendar.json)に載っておらず、会社の公式な日程も確認できていないため、ここには書きません。会社のIRサイトの決算発表予定でご確認ください。この記事で挙げた材料がその後どうなったかは、次の開示で確かめられます。
- 情報通信事業部門の売上高と営業利益:第178期は約6,530億円・約1,527億円。決算短信のセグメント情報で確かめられます
- セグメントの区分の変更:会社は2026年度から、エレクトロニクス事業部門と自動車事業部門を統合して「電子・電装事業部門」として運営すると書いています(出典:同有報「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」)。この記事の部門ごとの数字と、次の決算の数字を比べるときは、区分が同じかどうかを確かめる必要があります
- 生産能力の増強の進み具合:日米で合計最大3,000億円の方針と、佐倉事業所の新工場(約400億円・2030年12月稼働の予定)。設備投資の額と説明は、決算短信や次の有価証券報告書の「設備投資等の概要」で確かめられます
- 銅の価格と、自動車・エネルギーの利益:会社が「売価転嫁できない銅価高騰影響」「デリバティブ評価益」と書いた要因が、次の期にどう説明されるか
- 2028年中期経営計画の目標に対する進み方:売上高1兆6,000億円・営業利益3,150億円・ROE 28.5%(2028年度の目標)に対する毎期の実績
有価証券報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説にまとめています。
8️⃣ まとめ
結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①情報通信事業部門の売上高と営業利益(売上の約55%、営業利益が連結の営業利益の約81%にあたる部門の動き)、②銅の価格の影響(自動車の「売価転嫁できない」影響と、エネルギーのデリバティブ評価益の説明)、③生産能力の増強(日米で合計最大3,000億円の方針)の進み具合と、その資金の手当て。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。
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