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⚠️ 本記事は公開情報(有価証券報告書・適時開示等の一次情報)に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示や将来の業績・株価の予測は行っていません。投資には元本割れリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。

🔩 京セラ(6971)を数字で見る|セラミック部品から機器までの会社を有価証券報告書で確認

公開日:2026年10月9日 / 読了時間:約15分 / カテゴリ:数字で見る企業(第11回・日本株)

「数字で見る、話題の企業」シリーズ第11回は、ファインセラミック(工業用の高性能なセラミック)の部品から、電子部品、工具やプリンターなどの機器までを手がける京セラ株式会社(証券コード6971、以下「京セラ」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が金融庁の開示システム(EDINET)に提出した有価証券報告書(第72期・2025年4月〜2026年3月)を中心に、①事業の中身 ②産業のつながりの中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。

📌 30秒でわかるこの記事
  • 京セラの売上高は、部品の2つのセグメント(コアコンポーネント・電子部品)で約49%、工具・プリンター・通信などの機器とサービスのセグメント(ソリューション)で約52%です(ほかに、その他の事業と調整の分があります)。第72期(2025年4月〜2026年3月)の売上高は約2兆702億円(前期比+2.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は約1,409億円(前期は約240億円)でした(どちらも国際会計基準〈IFRS〉の連結の数字)
  • 会社は売上高が増えた主な理由に、半導体関連部品(半導体のチップを包む「パッケージ」など)の販売増を挙げています。一方で、会社が持つ通信会社KDDIの株式は総資産の約33%にあたり、その株価の変動を会社自身がリスクとして挙げています
  • 「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
💡 なぜ京セラか(選定根拠):本シリーズは日本株を中心にする方針(直近3本のうち海外株が1本以上あれば日本株)で、直近3本(中外製薬・みずほフィナンシャルグループ・AMD)に海外株が含まれるため、今回は日本株の番です。当サイトが機械的に集計する候補データ(edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-08時点で20銘柄)のうち、京セラは2026年9月30日(値下がりランキング)と10月5日(値上がりランキング)の2日に登場しています。ランキングに最後に登場した日から中3営業日以上あいていること(「熱が残っているうちは書かない」ルール。同データの cooled: true)と、有価証券報告書の本文が取得できていることを満たす候補の中から、時価総額の大きい順に選びました(時価総額の金額は本文に書きません)。京セラより時価総額の大きい候補が1社ありましたが、当サイトの10月1日のニュース記事でその会社の株価の動きを取り上げていたため、ニュースと重ならないよう今回は見送りました。京セラについては、本レーンでの既刊記事・この会社が主役の解説記事の既刊はなく(ls guide-*.html と guides.html を社名・証券コードで確認)、直近14日のニュース記事(guide-news-*.html・NEWS_LEDGER.md)にも登場していません。ランキングに登場した理由(なぜ値上がり・値下がりしたか)は、一次情報で確かめられないため書きません。
数字の出どころと確認日(2026-10-09):決算の数字はすべて有価証券報告書 第72期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月19日提出)から引いています。直近の四半期(2026年4〜6月期)の決算短信は、決算短信の掲載先であるTDnet(東京証券取引所の適時開示サイト)で当サイトが確かめた時点(2026-10-09)では2026年8月31日より前の開示が見られず、取得できなかったため、この記事では使っていません(二次情報で補うこともしていません)。同じ理由で、会社が公表している2027年3月期の業績予想の数字も、この記事には書いていません。2026年8月31日以降のTDnetの開示は取得でき、自己株式の取得状況の開示(2026年9月4日・10月6日)はそちらから引いています。有報の数字は百万円単位で、億円に直した数字は当サイトが計算したもの(億円未満切り捨て)なので「約」を付けています。

1️⃣ 京セラはどんな会社か

京セラは、1959年にファインセラミックスの専門メーカーとして京都で始まった会社です。有報の「事業の内容」で会社は、自社のグループについて「素材・部品からデバイス、機器、システム、サービスに至るグループ内の経営資源を活用し、半導体、情報通信、産業機械、自動車、環境・エネルギー関連等の市場において、多種多様な製品の開発・製造・販売及びサービスの提供をグローバルに展開しています。」と書いています(出典:有価証券報告書 第72期「事業の内容」、2026-10-09確認)。連結の従業員数は73,856人(2026年3月31日現在)です。

💡 用語メモ:ファインセラミックは、原料の粉の成分や粒の大きさを細かくそろえて焼き固めた、工業用のセラミック(焼き物)です。熱や摩耗に強い、電気を通しにくい、といった性質を持たせることができます。IFRS(国際財務報告基準)は、世界の多くの国で使われている会計のルールで、京セラは連結の決算をこのルールで作っています。連結はグループ全体を1つの会社とみなした数字、単体は京セラ1社だけの数字です。この記事では、ことわりがなければ連結の数字を使います。セグメントは、会社が業績を管理・開示するときの事業の区分のことです。

会社は事業を3つのセグメント(会社の呼び方では「レポーティングセグメント」)に分けています。有報の説明を短くまとめると、次のとおりです(出典:同有報「事業の内容」)。

💡 用語メモ:パッケージ(セラミックパッケージ・有機パッケージ)は、半導体のチップを包んで守り、外の回路とつなぐための入れ物や基板のことです。セラミックでできたものと、樹脂などの有機材料でできたものがあります。コンデンサは、電気を一時的にためたり、電気の流れを整えたりする電子部品です。水晶部品は、水晶が決まった速さで振動する性質を使って、電子機器に正確な時間の基準を与える部品です。コネクタは、部品や機器どうしを電気的につなぐ部品です。

第72期のセグメントと、その中の事業ごとの売上高は次のとおりです(出典:同有報「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」のレポーティングセグメント別売上高の表)。

京セラ 第72期(2025年4月〜2026年3月)のセグメント・事業別の売上高 セグメント・事業別の売上高(第72期・単位:億円・構成比は会社の表の値) コアコンポーネント:半導体関連部品(セラミック・有機パッケージなど) 約3,794(18.3%) コアコンポーネント:産業・車載用部品(ファインセラミック部品・車載カメラなど) 約2,500(12.1%) コアコンポーネント:その他(医療機器など) 約239(1.2%) 電子部品(コンデンサ・水晶部品・コネクタなど) 約3,634(17.5%) ソリューション:ドキュメントソリューション(プリンター・複合機など) 約4,784(23.1%) ソリューション:機械工具(切削工具・空圧工具・電動工具) 約2,859(13.8%) ソリューション:コミュニケーション(通信端末・通信サービスなど) 約2,191(10.6%) ソリューション:その他(スマートエネルギー関連など) 約873(4.2%) 濃い青=コアコンポーネント/中くらいの青=電子部品/薄い青=ソリューション
▲ 有価証券報告書 第72期「経営者による分析」のレポーティングセグメント別売上高(百万円、2026-10-09確認)を億円に直して作成(億円未満切り捨て)。構成比は有報の表に載っている値で、売上高の合計 約2兆702億円に対する割合。図には、その他の事業(約141億円・0.7%)と、セグメントの間の取引を消す調整(マイナス約318億円)を入れていない。※概念を示すイメージ図です。

セグメントの合計では、コアコンポーネントが約6,534億円(31.6%)、電子部品が約3,634億円(17.5%)、ソリューションが約1兆709億円(51.7%)でした(構成比は有報の表の値)。会社は経営方針の中で、部品の2つのセグメントを「中長期的な成長牽引役」、ソリューション事業を「継続的な安定利益を創出する事業」と位置づけています(出典:同有報「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」)。

💡 用語メモ:事業利益は、京セラがセグメントごとの利益として示している数字です。有報の表では「レポーティングセグメント別税引前利益」として載っていて、本社部門の損益は含みません。第72期の事業利益は、コアコンポーネントが約630億円(利益率9.7%)、電子部品が約73億円(同2.0%)、ソリューションが約1,039億円(同9.7%)でした(出典:同有報「経営者による分析」)。売上高の大きさと利益の大きさの並びは、セグメントごとに違います。

2️⃣ どのつながりの中にいるか

次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、京セラが「部品と機器の流れ」のどこに立っているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。

部品と機器の流れ。原材料から京セラの部品へ、部品は半導体製造装置や半導体、電子機器や自動車を作る会社へ流れ、最後はデータセンターや通信、自動車、工場で使われる。京セラは工具やプリンターなどの機器とサービスも作り、工場やオフィスなどで使われる。全体は設備投資の波、通商政策、為替の影響を受ける 部品と機器の流れの中での位置(モノが流れる方向) 原材料 セラミックの原料の粉 金属・樹脂など 部品をつくる セラミック部品・パッケージ コンデンサ・コネクタなど 京セラの部品の2セグメント =ここに立つ 部品を組み込む会社 半導体製造装置メーカー 半導体メーカー 電子機器メーカー 自動車・電装品メーカー 最後の使い道 データセンター 通信・スマートフォン 自動車・工場の機械 機器・サービスをつくる 工具・プリンター・複合機 通信端末・通信サービス ソリューション=ここ 使う会社・人 自動車や機械の工場・建設の現場(工具) オフィス(プリンター・複合機)・通信の利用者 外側の枠組み:半導体・通信・自動車の設備投資と需要の波・各国の通商政策(関税・輸出入の規制)・為替 会社自身が、有価証券報告書の「事業等のリスク」でこれらを挙げている ※矢印は「モノが流れる方向」を示す事実の関係です。 業績や株価が連動する方向を示すものではありません。
▲ 部品と機器の流れの中での京セラの位置(概念図)。会社の「事業の内容」「経営者による分析」「事業等のリスク」の開示をもとに作成(2026-10-09確認)。前後の箱は会社の種類の一般名で、特定の会社を指すものではありません。※概念を示すイメージ図です。

京セラが「部品をつくる」箱に立っている根拠は、会社自身の開示にあります。第72期のコアコンポーネントと電子部品の売上高は合わせて約1兆169億円で、売上高全体の約49%でした(構成比は有報の表の値〈31.6%と17.5%〉を足したもの)。そのうち半導体関連部品の売上高は約3,794億円(前期比+16.0%)で、会社はコアコンポーネントの増収の理由を「情報通信関連市場向けセラミックパッケージやデータセンター向け有機パッケージ等の半導体関連部品事業の販売増を主因に増加しました。」と説明しています。半導体関連部品の受注高(注文を受けた額)は約3,614億円で、前期より15.6%増えました(出典:有価証券報告書 第72期「経営者による分析」、2026-10-09確認)。

工程の前後とのつながりも、数字や文章で開示されています。

このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報のリスクで挙げています。たとえば経済の変動の項では、「当社の主要市場である半導体関連市場や情報通信関連市場では、AI関連投資が引き続き堅調に推移することが見込まれるものの、自動車関連市場は減速することが見込まれます。」と、市場によって見方が違うことを書いています(これは会社の見方の紹介で、当サイトの予測ではありません)。競合の項では、価格と納期が全事業分野で影響を及ぼす主な要因だとし、「製品価格の値下げ要求は概して恒常化している」と書いています。国際的な事業活動の項では、関税の引き上げや製品・原材料の輸出入の規制などの変更を挙げています(出典:有価証券報告書「事業等のリスク」、2026-10-09確認)。

産業のつながりがあることと、株価が連動することは別です。同じ工程にいる会社でも、業績も株価も会社ごとに大きく異なります。ここでお伝えしているのは産業構造の事実であって、値動きの予想ではありません。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。

3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事

各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。有価証券報告書の「沿革」などに無い事実(創業者の名前・2026年6月以降の出来事・一部の日付など)は、Wikipedia(二次情報)から年表に限って使っています。

年月出来事出典
1959年4月稲盛和夫らが、ファインセラミックスの専門メーカー「京都セラミック株式会社」を京都市中京区に設立有価証券報告書 第72期「沿革」・Wikipedia「京セラ」(2026-10-09確認)
1971年10月・1972年9月大阪証券取引所の市場第二部(1971年10月)、東京証券取引所の市場第二部(1972年9月)に株式を上場(どちらも1974年2月に第一部に指定)有価証券報告書 第72期「沿革」(2026-10-09確認)
1980年5月ニューヨーク証券取引所に株式を上場有価証券報告書 第72期「沿革」(2026-10-09確認)・Wikipedia「京セラ」(2026-10-09確認)
1982年10月関連会社4社を吸収合併し、社名を京セラ株式会社に変更有価証券報告書 第72期「沿革」(2026-10-09確認)・Wikipedia「京セラ」(2026-10-09確認)
1984年6月第二電電企画株式会社(現 KDDI株式会社)を設立有価証券報告書 第72期「沿革」(2026-10-09確認)
1990年1月米国の電子部品メーカー AVX Corporation(現 Kyocera AVX Components Corporation)を株式交換で子会社にする有価証券報告書 第72期「沿革」(2026-10-09確認)・Wikipedia「京セラ」(2026-10-09確認)
2000年4月京セラミタ株式会社(現 京セラドキュメントソリューションズ株式会社)に出資し、連結子会社にする有価証券報告書 第72期「沿革」(2026-10-09確認)
2018年6月ニューヨーク証券取引所の上場を廃止有価証券報告書 第72期「沿革」(2026-10-09確認)
2020年3月米国の電子部品の子会社 AVX Corporation を完全子会社にする(同社はニューヨーク証券取引所の上場を廃止)有価証券報告書 第72期「沿革」(2026-10-09確認)
2022年4月東京証券取引所の市場区分の見直しで、市場第一部からプライム市場に移行有価証券報告書 第72期「沿革」(2026-10-09確認)
2023年3月期連結の売上高が約2兆253億円と、2兆円を超える(Wikipediaは「初めて2兆円を超え」と記載)有価証券報告書 第72期「主要な経営指標等の推移」・Wikipedia「京セラ」(2026-10-09確認)
2025年4月〜2026年3月保有するKDDI株式について、同社が行った自己株式の公開買付けに応募し、約108百万株(約2,500億円)が買い付けられる。総額2,000億円の自己株式を市場で取得有価証券報告書 第72期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-09確認)
2025年10月メディカル事業を会社分割し、京セラメディカル株式会社に承継。同じ時期に、コネクタ事業の成長を図るため、国内のコネクタメーカーと資本業務提携を結び、その会社の株式33.0%を取得(同月31日、Wikipediaによる)有価証券報告書 第72期「沿革」「経営者による分析」・Wikipedia「京セラ」(2026-10-09確認)
2026年1月シリコンダイオード・パワー半導体事業を他社へ譲渡。米国の工具の子会社 Kyocera Industrial Tools, Inc. の全株式を譲渡有価証券報告書 第72期「沿革」「経営者による分析」(2026-10-09確認)
2026年4月取締役会で、総額2,500億円を上限とする自己株式の取得を決議(4月30日)。経営企画室を新設有価証券報告書 第72期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-09確認)
2026年6月有価証券報告書 第72期を提出(6月19日)。6月25日の定時株主総会で監査等委員会設置会社へ移行(会社は2月2日の取締役会で、移行を総会に諮ることを決議していた)EDINET 有価証券報告書・Wikipedia「京セラ」(2026-10-09確認)
2026年9月長崎県諫早市に、半導体製造装置用のセラミック部品と半導体パッケージを生産する長崎諫早工場を開設Wikipedia「京セラ」(2026-10-09確認)
2026年10月6日4月30日の決議にもとづく自己株式の取得の累計(9月30日まで)が49,227,800株・約1,776億円と開示適時開示「自己株式の取得状況に関するお知らせ」(2026-10-06開示、2026-10-09確認)

※TDnet(適時開示)のPDFは保管期間(約1か月〜1か月半)を過ぎるとリンクが切れます。その場合は会社のIRサイトの適時開示一覧でご確認ください。監査等委員会設置会社=取締役のうち監査を受け持つ人たちで委員会をつくり、取締役会の監督の役目を強める会社の形です。株式交換=ある会社が相手の会社の株主に自社の株を渡して、相手を子会社にする方法、会社分割=会社の事業の一部を切り分けて別の会社に引き継ぐ方法です。自己株式(の取得)=会社が自分の会社の株を市場などで買い戻すことです。公開買付け=買う株数・値段・期間を公告して、株主から株をまとめて買い取る方法です。政策保有株式=取引関係の維持などを目的に持つほかの会社の株、純資産比率=その株が純資産に占める割合です。利益剰余金=これまでの利益のうち会社に残してきた分、その他の資本の構成要素=保有株の時価の変動などをためておく、資本の中の区分です。

4️⃣ 直近の決算の数字(有価証券報告書 第72期)

有価証券報告書 第72期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月19日提出)の連結の数字です(IFRS)。京セラは3月決算で、その後の四半期の数字(2026年4〜6月期の決算短信)は、上の注意書きのとおり当サイトでは取得できていません。確認日は2026-10-09です。

指標(連結・IFRS)第72期(2025/4〜2026/3)第71期(前期・2024/4〜2025/3)増減
売上高約2兆702億円約2兆144億円+2.8%
売上総利益率29.4%27.8%+1.6ポイント
営業利益約1,181億円約272億円+332.8%
税引前利益約1,689億円約636億円+165.6%
親会社の所有者に帰属する当期利益約1,409億円約240億円+485.0%
基本的1株当たり当期利益(基本的EPS)102.70円17.11円—
親会社所有者帰属持分利益率(ROE)4.3%0.7%—
親会社所有者帰属持分比率71.9%71.3%+0.6ポイント
受注高約2兆982億円約2兆297億円+3.4%
営業活動によるキャッシュ・フロー約2,262億円約2,379億円—
1株当たり配当額(京セラ単体)52円50円+2円

出典:有価証券報告書 第72期「経営者による分析」の表と「主要な経営指標等の推移」(2026-06-19提出)。億円の数字は有報の百万円から当サイトが計算したもの(億円未満切り捨て)。増減の率とポイントは有報の記載。確認日:2026-10-09。

💡 用語メモ:売上総利益率=売上高から製品をつくる費用(売上原価)を引いた利益が、売上高に占める割合です。EPS=1株当たりの利益です。基本的/希薄化後=実際に発行されている株数で割ったものが基本的、将来増えうる株も含めて割ったものが希薄化後です(この記事では基本的の数字だけを載せています)。ROE(自己資本利益率)=株主のお金(IFRSでは「親会社の所有者に帰属する持分」)に対して、1年でどれだけ利益を出したかの割合です。親会社所有者帰属持分比率=総資産のうち、株主のお金が占める割合です。キャッシュ・フロー=実際のお金の出入りのことで、営業活動によるキャッシュ・フローは本業で入ってきたお金の額です。

会社の説明では、利益について「前連結会計年度にコアコンポーネントセグメントで減損損失等を計上した一方、当連結会計年度の子会社譲渡益、増収効果及び構造改革の進展等により、営業利益及び税引前利益は大幅な増益となりました。」としています。前期には、半導体部品の有機材料の事業で有形固定資産などの減損損失を約401億円計上していました。第72期には、米国の工具の子会社の譲渡益(関連する費用を引いたあと)約167億円を計上しています。当期利益が大きく増えたことについては、KDDI株式の売却などで課税所得が増えたことに伴って税額控除が増え、法人所得税の費用が減った(実際の税率は前期の56.9%から14.2%)と説明しています(出典:同有報「経営者による分析」)。

💡 用語メモ:減損損失は、工場の設備などの資産から、将来それに見合うお金が生まれないと判断したときに、資産の帳簿上の値段を引き下げて計上する損失です。一時的な損益:会社はセグメントの説明で、コアコンポーネントの一時損失を前期 約430億円・第72期 約100億円、電子部品ではパワー半導体の事業の譲渡に伴う一時損失 約15億円、ソリューションでは米国の工具の子会社の譲渡に伴う一時利益 約170億円と書いています(いずれも会社の記載の「約」の数字)。

また、有報の説明によると、保有する株式など(有報の言葉では「資本性証券」)の売却差額などの約2,022億円は、「その他の資本の構成要素」から利益剰余金へ振り替えられています。有報は、資本性証券の残高が減った主な理由としてKDDI株式の売却を挙げています。利益剰余金の増加の説明の中で、親会社の所有者に帰属する当期利益とは別の項目として書かれています(出典:同有報「経営者による分析」の資産、負債及び資本の説明)。

京セラの売上高と、親会社の所有者に帰属する当期利益の推移。第68期から第72期 上:売上高(IFRS・単位:億円・億円未満切り捨て) 18,389 20,253 20,042 20,144 20,702 下:親会社の所有者に帰属する当期利益(IFRS・単位:億円・億円未満切り捨て) 1,484 1,279 1,010 240 1,409 第68期 2022年3月期 第69期 2023年3月期 第70期 2024年3月期 第71期 2025年3月期 第72期 2026年3月期 上と下で縦の目盛りが違います(上は2兆1,000億円、下は1,500億円を基準にした高さ)。
▲ 有価証券報告書 第72期「主要な経営指標等の推移」の数値(円)を億円に換算して作成(億円未満切り捨て、2026-10-09確認)。京セラは3月決算。第68期=2021年4月〜2022年3月、第72期=2025年4月〜2026年3月。※概念を示すイメージ図です。

5期の数字では、売上高は約1兆8,389億円(第68期)から約2兆702億円(第72期)でした。親会社の所有者に帰属する当期利益は、第68期の約1,484億円から第71期の約240億円まで3期続けて減り、第72期は約1,409億円でした(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」)。この記事で読んだ範囲の有報には、第71期より前の年ごとの増減の理由の説明はないため、理由は書きません。なお、発行済株式総数(京セラ単体)は、第69期末(2023年3月末)の377,618,580株から、第70期末(2024年3月末)には1,510,474,320株と4倍になっています。このため、1株当たりの数字を年をまたいで比べるときは注意が要ります。

お金の使い道について、会社は第72期の主な資金の需要として、設備投資(約1,490億円)、研究開発(約1,157億円)、コネクタメーカーとの資本業務提携のための株式の取得(約812億円)、配当金の支払い(約697億円)、自己株式の取得(2,000億円)を挙げ、これらを本業で得たお金に加えて、KDDI株式の売却資金(約2,492億円)と米国の工具の子会社の譲渡で得たお金(約763億円)などでまかなったと書いています。第72期末の現金及び現金同等物は約4,558億円、借入金の残高は約2,450億円です(出典:同有報「経営者による分析」)。

💡 会社が公表している計画と目標について:会社は有報で、2027年3月期(2026年4月〜2027年3月)に設備投資を2,250億円、研究開発費を1,200億円とする予定を書いています。設備投資は「半導体関連市場や情報通信関連市場向け製品を中心に生産体制をさらに拡充するため」としています。目標とする経営指標として、ROEを2028年3月期に5.0%以上、2031年3月期に8.0%以上、将来的には10.0%以上とすることを掲げています(出典:同有報「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「経営者による分析」)。2027年3月期の業績の予想など、決算短信に載る数字は、当サイトが確かめた時点でTDnetの保管期間を過ぎていて取得できなかったため、この記事に書いていません。会社のIRサイトでご確認ください。なお、ここで扱う数字はすべて会社の開示の紹介で、当サイトによる業績予測ではありません。

5️⃣ 会社自身が挙げているリスク

以下は有価証券報告書(第72期)の「事業等のリスク」から、会社自身が挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社は最初に、経営への影響が特に大きい「コーポレートリスク」を挙げ、そのあとに事業活動・法規制・財務会計の面から多くの項目を並べています。ここではそのうち5つを紹介します。原文はEDINET掲載の有価証券報告書でご確認ください。

出典:有価証券報告書 第72期「事業等のリスク」「経営者による分析」(2026-06-19提出、2026-10-09確認)。原文にはこのほか、人権、情報セキュリティ、人材の確保、地震などの災害、競合の環境と製品価格の下落、原材料の価格と仕入れ先の供給、製造の遅れや不良、買収した会社から期待した成果が得られないこと、気候変動などが挙げられています。

6️⃣ 上がる材料/下がる材料

ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。

📈 上がる可能性がある材料
半導体関連部品の売上高は約3,794億円(前期比+16.0%)、受注高は約3,614億円(同+15.6%)。会社は増収の理由に、情報通信関連市場向けのセラミックパッケージとデータセンター向けの有機パッケージなどの販売増を挙げている。出典:有価証券報告書 第72期「経営者による分析」/確認日2026-10-09/効くと:この事業の売上と受注の動きが、コアコンポーネントの業績を左右する材料になる
営業利益は約1,181億円(前期 約272億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は約1,409億円(前期 約240億円)。コアコンポーネントの事業利益は約630億円(前期はマイナス約18億円)だった。会社は、前期の減損損失、第72期の米国の工具の子会社の譲渡益(約167億円)、税額控除の増加による法人所得税費用の減少も、増益の理由に挙げている。出典:有価証券報告書 第72期「経営者による分析」/確認日2026-10-09/効くと:この水準が続くかどうかを、次の決算で比べる基準になる
会社は2027年3月期に設備投資2,250億円・研究開発費1,200億円を予定していると書いている(第72期は約1,490億円・約1,157億円)。設備投資は、半導体関連・情報通信関連の市場向けの製品を中心に生産体制を広げるためとしている(当サイトの予測ではない)。出典:有価証券報告書 第72期「経営者による分析」/確認日2026-10-09/効くと:生産能力を広げた分が、その後の売上にどう表れるかを確かめる材料になる
第72期に総額2,000億円の自己株式を取得。2026年4月30日に上限2,500億円の取得を決議し、9月30日までの累計は49,227,800株・約1,776億円と開示した。配当は、次の期から株主資本に対する配当金の比率(DOE)を指標にし、1株当たり配当金を維持または増やす「累進配当」を採ると書いている。出典:有価証券報告書 第72期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」・適時開示(TDnet、2026-10-06)/確認日2026-10-09/効くと:会社が持つ自己株式を除いた株数が減ると、1株当たりの利益の計算の分母が小さくなる
会社は、事業の評価に新たにROIC(投下資本利益率:事業に投じたお金に対してどれだけ利益を出したかの割合)を入れ、事業の組み合わせの見直しを進めると書いている。第72期には米国の工具の子会社やパワー半導体の事業を譲渡し、ROEの目標(2028年3月期に5.0%以上、2031年3月期に8.0%以上)を掲げている(当サイトの予測ではない)。出典:有価証券報告書 第72期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「沿革」/確認日2026-10-09/効くと:会社の目標に対する実績の進み方を、毎期の決算で確かめられる
📉 下がる可能性がある材料
KDDI株式への投資は総資産の約33%。会社は、その市場価格の変動が「当社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります」と書いている。会社は政策保有株式の純資産比率を2031年3月期末をめどに20%未満にする計画で、2026年3月末時点は48.3%だった。出典:有価証券報告書 第72期「事業等のリスク」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」/確認日2026-10-09/効くと:1つの会社の株価の動きが、京セラの資産と資本の大きさに響く
前期は半導体部品の有機材料の事業で約401億円の減損損失を計上し、第72期もコアコンポーネントで、その事業の使われていない資産の評価減と、車載システム事業の旧ディスプレイ事業の減損損失などの一時損失(会社の記載で合計約100億円)があった。会社はこの事業の収益改善の施策を続けると書いている。出典:有価証券報告書 第72期「経営者による分析」「事業等のリスク」/確認日2026-10-09/効くと:設備の価値の見直しが、費用として利益に表れることがある
電子部品の事業利益は約73億円で、利益率は2.0%(コアコンポーネントとソリューションはどちらも9.7%)。会社は米国の子会社グループの収益改善の施策を続けると書いている。出典:有価証券報告書 第72期「経営者による分析」「事業等のリスク」/確認日2026-10-09/効くと:売上高の17.5%を占めるセグメントの利益の出方が、全体の利益を左右する材料になる
会社は為替について「今後も為替レートの急激な変動が予想されます」と書き、急な変動が事業の成果・海外の資産の価値・生産のコストに影響しうるとしている。第72期の電子部品では、米ドルに対する円高による減収があったと説明している。出典:有価証券報告書 第72期「事業等のリスク」「経営者による分析」/確認日2026-10-09/効くと:同じ売れ行きでも、円に直した売上高や利益が為替で変わる
会社はリスクの項で、自動車関連市場について「減速することが見込まれます」と書き、製品の値下げの要求が続いていること、関税の引き上げや輸出入の規制などの変更も挙げている(会社の見方の紹介で、当サイトの予測ではない)。出典:有価証券報告書 第72期「事業等のリスク」/確認日2026-10-09/効くと:車載向けの部品や工具の需要と、製品の値段の動きが、売上と利益に響きうる

以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。

※ 材料の数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来の予測は行っていません。

7️⃣ これから何を見れば分かるか

次の決算発表日は、当サイトの決算予定データ(earnings-calendar.json)に載っておらず、会社の公式な日程も確認できていないため、ここには書きません。会社のIRサイトの決算発表予定でご確認ください。この記事で挙げた材料がその後どうなったかは、次の開示で確かめられます。

有価証券報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説にまとめています。

8️⃣ まとめ

結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①半導体関連部品の売上高と受注高(会社が増収の主な理由に挙げた事業の動き)、②電子部品の事業利益率(第72期は2.0%)、③KDDI株式を中心とする政策保有株式の縮減と、その売却資金の使い道(自己株式の取得・設備投資)。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。

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