🔬 IHI(7013)を数字で見る|航空エンジン・エネルギー・社会基盤を手がける重工メーカーを有価証券報告書で確認
「数字で見る、話題の企業」シリーズ第25回は、有価証券報告書の「沿革」に「1853年…隅田河口の石川島に幕命により創設せられ」と書かれている重工業の会社、株式会社IHI(証券コード7013、以下「IHI」)を取り上げます。航空エンジンの部品・整備、ロケット、発電設備、原子力機器、橋梁・水門、車両用過給機(エンジンに空気を多く送り込んで出力や燃費を高める装置)など、幅広い製品とサービスを手がけています。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が金融庁の開示システム(EDINET)に提出した有価証券報告書(上場会社が決算期ごとに金融庁へ出す、事業や決算をくわしく書いた報告書。以下「有報」。第209期・2025年4月〜2026年3月)と、証券取引所を通じた適時開示をもとに、①事業の中身 ②事業が使われるつながりの中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。初めて出てくる言葉は、その場で説明します。
- 2026年3月期(第209期)の連結売上収益(売上のこと。IFRSでの呼び名)は1兆6,434億円(前期比+1.0%)、営業利益(売上収益から原価と販売費・一般管理費などを引き、その他の収益・費用を加えた利益)は1,655億円(同+15.3%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,609億円(前期1,127億円)でした(IFRS・連結=グループ全体の数字)。会社は有報で「売上収益・営業利益ともに過去最高を達成」と書いています。ただし営業利益には、土地・建物などの売却益や事業の譲渡益を含む「その他の収益」543億円(前期166億円)が含まれています
- 外部顧客への売上収益の構成は、航空・宇宙・防衛39.4%、産業システム・汎用機械26.7%、資源・エネルギー・環境22.7%、社会基盤7.9%、その他3.2%(当サイトの計算)。区分ごとの営業利益は、航空・宇宙・防衛が1,227億円から1,124億円へ減った一方、産業システム・汎用機械は108億円から307億円へ、資源・エネルギー・環境は161億円から59億円へ動きました。受注残高は1兆7,683億円(前期末比+18.9%)、海外売上比率は50.6%です
- この記事は有報(2026年3月期)と適時開示だけを根拠にしていて、2026年4月以降の四半期の決算は扱っていません。決算日(2026年3月末)のあとの出来事として、固定資産の売却(譲渡益は合計で約539億円。有報の「重要な後発事象」に記載)が、有報の提出後にはドイツ子会社の持分譲渡(連結で約140億円の費用を計上予定)が開示されています。「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。上がる・下がるの結論は書きません
edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-22時点)は、IHIの登場を2026年10月16日・10月19日の2回(いずれも値上がりランキング)と数えています。最後に登場した日から中3営業日以上あいていること(「熱が残っているうちは書かない」ルール。同データの cooled: true)、有報の本文が取得できていること、当サイトのニュース記事と14日以内に重ならないこと、直近3本がすべて日本株であることを確かめたうえで、候補の中の1社として選びました(時価総額の金額や順位は本文に書きません)。当サイトの解説記事に、この会社が主役の記事はありません。2026年5月の週次記事に、他の会社と並べて社名が出る箇所が1つあるだけです。ランキングに登場した理由(なぜ値上がりがあったか)は、一次情報で確かめられないため書きません。
億円の数字は、有報の百万円単位の表から億円未満を切り捨てたもの(有報の「経営者による分析」と同じ方法)で、「当サイト計算」と書いた増減率などは、その数字から当サイトが計算して四捨五入したものです。会社は2025年10月1日付で普通株式1株を7株に分割しました(当期の中の出来事)。1株当たりの数字は、有報が分割後の基準にそろえて開示しているものです。会社が文章に書いている言葉は、会社の書き方のまま引いています。航空エンジン・防衛・宇宙・エネルギー・社会基盤の分野について、会社が将来の需要や政策の見方を書いている部分は、会社の認識として引用するだけで、この記事の見方ではありません。取引先・提携先・子会社・官公庁の名前は、この記事では一般名に置き換えています(出典には書かれています)。
1️⃣ IHIはどんな会社か
有報の「事業の内容」によると、IHIグループは、連結子会社127社と持分法適用関連会社18社(2026年3月31日現在)で、「資源・エネルギー・環境、社会基盤、産業システム・汎用機械及び航空・宇宙・防衛の4つの事業を主として行なっており、その製品は多岐にわたって」います。連結の従業員数は26,224人(前期末は27,990人)です。会社は、経営理念を「技術をもって社会の発展に貢献する」「人材こそが最大かつ唯一の財産である」とし、2040年に向けて策定した「中長期の方向性」で「世界中の人々の安心・安全、豊かな暮らしを根幹から支える」の実現を掲げています(出典:有価証券報告書 第209期「事業の内容」「従業員の状況」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、2026-10-23確認)。
IHIは、報告セグメントを「資源・エネルギー・環境」「社会基盤」「産業システム・汎用機械」「航空・宇宙・防衛」の4つに分け、そのほかに検査・計測や都市開発(不動産販売・賃貸)などの「その他」があります。各セグメントの主な事業は、有報に次のように書かれています。
| セグメント | 主な事業(有報の記載の抜粋) | 外部顧客への売上収益(2026年3月期) | 構成比 | 営業利益(セグメント利益) | 前期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 資源・エネルギー・環境 | 原動機(陸用原動機プラント、舶用原動機)、カーボンソリューション(ボイラ、貯蔵設備)、原子力(原子力機器)等 | 3,734億円 | 22.7% | 59億円 | 161億円 |
| 社会基盤 | 橋梁・水門、交通システム、シールドシステム(トンネルを掘る機械)、コンクリート建材等 | 1,296億円 | 7.9% | 37億円 | −42億円 |
| 産業システム・汎用機械 | 車両過給機、パーキング、回転機械(圧縮機、分離装置、舶用過給機)、熱・表面処理、運搬機械、物流・産業システム等 | 4,388億円 | 26.7% | 307億円 | 108億円 |
| 航空・宇宙・防衛 | 航空エンジン、ロケットシステム・宇宙利用、防衛機器システム等 | 6,481億円 | 39.4% | 1,124億円 | 1,227億円 |
| その他 | 検査・計測、都市開発(不動産販売・賃貸)、その他サービス業等 | 532億円 | 3.2% | 358億円 | 168億円 |
出典:有価証券報告書 第209期「事業の内容」「セグメント情報」「収益認識関係」(2026-06-22提出、2026-10-23確認)。外部顧客への売上収益と営業利益は百万円単位の表の億円未満切り捨て、構成比は連結の売上収益 1兆6,434億円に対する割合を当サイトが計算(四捨五入)。5つの区分の営業利益の合計に、全社費用などの調整額(今期−232億円、前期−187億円)を加えると連結の営業利益(1,655億円)になります(億円未満の切り捨てのため、表の数字の足し算とは1億円ほどずれることがあります)。前期の社会基盤と「その他」の数字は、有報が都市開発の区分を組み替えたあとの数字です。有報の「経営者による分析」には、区分間の内部取引を含む売上収益(資源・エネルギー・環境3,767億円、社会基盤1,319億円、産業システム・汎用機械4,505億円、航空・宇宙・防衛6,517億円)も書かれています。表の外部顧客への売上収益とは数字が違うのは、内部取引を含むかどうかの違いです。
有報の「収益認識関係」には、製品・サービスの種類別の数字(区分間の内部取引を含む表)もあります。2026年3月期は、民間向け航空エンジン3,788億円(前期3,520億円)、防衛向け航空エンジン1,324億円(同1,020億円)、車両過給機2,237億円(同2,086億円)、原動機995億円(同897億円)、カーボンソリューション1,298億円(同1,391億円)、原子力576億円(同419億円)、アジア拠点EPC917億円(同1,427億円)、橋梁・水門868億円(同922億円)です。売上を顧客の所在地で分けると、日本が8,110億円(49.4%)、北米が4,221億円(25.7%)、アジアが2,827億円(17.2%)、ヨーロッパが915億円(5.6%)で、海外の合計は8,323億円(50.6%)です(割合は当サイト計算)。
有報の「主要な顧客に関する情報」には、主要な顧客として、航空エンジンの国際共同事業に関わる一般財団法人が3,320億円(連結の20.2%)、国の機関が1,857億円(同11.3%)と書かれています(いずれも航空・宇宙・防衛セグメントに関する顧客です。名前は一般名に置き換えています)。
2️⃣ 事業が使われるつながりの中のどこにいるか
次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、IHIの事業が、航空エンジン・防衛・宇宙、エネルギー、自動車・産業・社会基盤の流れのどこに入っているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。有報の事業の内容から読み取れるIHIは、ひとつの完成品を売る会社というより、エンジンの部品や整備、発電設備や原子力機器、過給機、橋梁といった、完成品の中や、社会の設備の側で使われる製品・サービスを手がけている会社です。
この流れの中に立っている根拠は、会社自身の開示にあります。外部顧客への売上収益では、航空・宇宙・防衛が6,481億円(連結の39.4%)、産業システム・汎用機械が4,388億円(26.7%)、資源・エネルギー・環境が3,734億円(22.7%)、社会基盤が1,296億円(7.9%)です。
- 航空エンジンの流れ:会社は有報で、「民間向け航空エンジンにおける小型~大型・超大型クラスに至るベストセラーエンジンの開発・量産事業に参画しています」と書き、整備拠点として鶴ヶ島工場を挙げています。つまりIHIは、エンジン全体を一社で作る立場ではなく、国際的な共同事業に参画する形でエンジンの開発・量産と、整備などのアフターマーケットに関わっています。会社は「民間向け航空エンジンでは、運航時間の増加などを背景に、アフターマーケット事業が拡大しています」とも書いています(会社の認識であり、この記事の見方ではありません)。
- 防衛・宇宙の流れ:会社は、国の機関向けの売上収益が1,857億円(連結の11.3%)あると書いています。経営者による分析では、「防衛力強化政策を背景に、継続して大型案件への受注対応を進めています」と書かれています(会社の認識であり、この記事の見方ではありません。防衛・宇宙の需要や政策の先行きについて、この記事は何も予想していません)。
- エネルギーの流れ:資源・エネルギー・環境は、原動機(発電や船の動力)、カーボンソリューション(ボイラなど)、原子力機器を手がけています。会社は、この分野の事業環境として「安定供給とカーボンニュートラルを両立させる原子力拡大の動きも強まっています」と書いています(会社の認識であり、この記事の見方ではありません。エネルギーの需要や政策の先行きについて、この記事は何も予想していません)。
- 自動車・産業・社会基盤の流れ:車両過給機は2,237億円(区分間の内部取引を含む表の数字)で、産業システム・汎用機械の中で売上が最も大きい製品として開示されています。社会基盤では橋梁・水門が868億円です。
- 前後の工程にいる会社の種類:上流には、金属材料や部品の素材を作る会社、燃料・原料を供給する会社があります。下流には、航空機メーカー、航空会社、国の機関、電力会社や産業の事業者、自動車・機械のメーカー、国や自治体などの発注者がいます(ここは一般的な説明で、有報の言葉ではありません。社名は挙げません)。
このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報で挙げています。「経済安全保障」のリスクとして、「複雑化する国際情勢の影響により、当社グループが輸出規制等の規制の対象となった場合には、販売機会の逸失や事業の停止、サプライチェーンの断絶が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります」と書き、「調達・物流」のリスクとして「資機材価格の急激な変動、需給バランスの変化や国際情勢の急変に加え、激甚災害や大規模な感染症の拡大に伴う当社グループのサプライチェーン途絶等の問題が生じた場合、コストアップ、納期遅延等の問題が生じる可能性があります」と書いています。受注についても、「お客さま都合による受注契約の取り消しのケースでは、受注契約条件の中で違約金条項を設定する等そのリスク回避に最大限努力しているものの、必ずしも支出したコストの全額を回収できない可能性があり、その結果として当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります」と書かれています(出典:有価証券報告書 第209期「事業等のリスク」、2026-10-23確認)。
3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事
各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。この年表は、有価証券報告書と適時開示だけで作っています(Wikipediaなどの二次情報は使っていません)。取引先・提携先・子会社の社名、官公庁の名前は、この記事では書いていません(出典には書かれています)。
| 年月 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1889年1月 | 1853年に隅田河口の石川島に創設され、1876年に個人経営となった事業を会社組織に改め、有限責任石川島造船所を設立(有報の「沿革」の書き方による) | 有価証券報告書 第209期「沿革」(2026-10-23確認) |
| 1949年5月 | 東京及び名古屋証券取引所に上場(その後、他の取引所にも上場) | 有価証券報告書 第209期「沿革」(2026-10-23確認) |
| 1957年3月 | 航空機用ジェットエンジンを製作するため、田無工場を新設 | 有価証券報告書 第209期「沿革」(2026-10-23確認) |
| 1960年12月 | 別の造船会社を合併し、商号を石川島播磨重工業株式会社に改称 | 有価証券報告書 第209期「沿革」(2026-10-23確認) |
| 2000年7月 | 自動車メーカーから宇宙航空事業を譲り受け、子会社として営業を開始 | 有価証券報告書 第209期「沿革」(2026-10-23確認) |
| 2002年10月/2013年1月 | 2002年10月に船舶・海洋事業を分社化。2013年1月に、分社化した造船の子会社が、造船事業の競争力強化のため別の造船会社と合併し、経営統合した(有報は、この統合会社を持分法適用会社と記載) | 有価証券報告書 第209期「沿革」「経営者による分析」(2026-10-23確認) |
| 2007年7月 | 商号を石川島播磨重工業株式会社から株式会社IHIに変更 | 有価証券報告書 第209期「沿革」(2026-10-23確認) |
| 2014年6月 | 褐炭焚きボイラ市場への早期参入を目的に、ドイツのエンジニアリング会社を買収し完全子会社とした(この子会社の持分譲渡は、下の2026年9月の行を参照) | 有価証券報告書 第209期「沿革」(2026-10-23確認) |
| 2021年6月 | 航空機用ジェットエンジンの整備工場として、鶴ヶ島工場の稼働を開始 | 有価証券報告書 第209期「沿革」(2026-10-23確認) |
| 2022年11月/2023年4月 | 2022年11月に名古屋・福岡・札幌証券取引所での上場を廃止。2023年4月に、原動機子会社の大型エンジン及び付随製品等に関する事業を、別の会社へ事業譲渡 | 有価証券報告書 第209期「沿革」(2026-10-23確認) |
| 2023年5月 | 航空会社が破産申請したことにより、航空エンジンの国際共同事業会社を通じて参画しているエンジンプログラムで、IHIが間接的に保有する営業債権の一部が回収不能となる可能性が生じた(有報の「事業等のリスク」の記載) | 有価証券報告書 第209期「事業等のリスク」(2026-10-23確認) |
| 2023年9月 | 出荷済みの特定型式の民間向け航空エンジンについて、プログラムのパートナー会社(米国のエンジンメーカー)が過去に製造した部品の製造工程に品質上の問題がまれにあることが判明し、同社の技術検討の結果、2023年9月に疑義対象品に対する繰り返し検査・対象部品寿命短縮等の方針が出された(追加検査プログラム) | 有価証券報告書 第209期「重要な会計上の見積り」(2026-10-23確認) |
| 2024年度(2024年4月〜2025年3月) | 子会社において相次いで不適切事案等が発覚した(有報の記載。内容の詳細はこの記事で読んだ範囲の有報には書かれていません) | 有価証券報告書 第209期「事業等のリスク」(2026-10-23確認) |
| 2025年4月〜2026年6月 | 事業ポートフォリオ改革として、子会社の株式譲渡・事業譲渡が相次いで完了。2025年4月に汎用ボイラ子会社の全株式、6月に芝草・芝生管理機器事業、7月に運搬機械事業、10月に建材子会社の全株式、12月に交通システム子会社の全株式、2026年2月に気象・防災・宇宙事業を担っていた子会社と資源・エネルギー・環境セグメントの子会社の全株式、2026年6月に発電事業を行う連結子会社の子会社の全株式を、それぞれ譲渡。2025年度中には、持分法適用会社の持分の一部も別の造船会社へ譲渡し、IHIの議決権比率は35%から20%になった | 有価証券報告書 第209期「沿革」「経営者による分析」(2026-10-23確認) |
| 2025年10月1日 | 普通株式1株につき7株の割合で株式分割(効力発生日。発行済株式総数は約1億5,468万株から約10億8,276万株へ) | 有価証券報告書 第209期「株式等の状況」「主要な経営指標等の推移」(2026-10-23確認) |
| 2025年11月1日 | 橋梁・水門を担う子会社が、傘下の別の子会社のすべての事業を承継し、統合 | 有価証券報告書 第209期「沿革」「経営者による分析」(2026-10-23確認) |
| 2026年1月26日 | 別の会社の機械式駐車場事業を、連結子会社が吸収分割により承継することを決定(効力発生日は2026年11月1日の予定) | 有価証券報告書 第209期「追加情報」(2026-10-23確認) |
| 2026年4月20日 | 資本効率の改善と成長・育成事業の強化などの投資原資の確保を目的として、東京都江東区の賃貸用不動産(建物・土地の持分2件)を売却(売買契約の締結と所有権持分の移転は同日)。譲渡益は合計で約393億円で、連結では2027年3月期に「その他の収益」として計上する予定と開示 | 有価証券報告書 第209期「重要な後発事象」(2026-10-23確認) |
| 2026年5月8日 | 2040年に向けた「中長期の方向性」を公表。同日、物流・産業システム事業を担う子会社の全株式の80%を、国内の別のメーカーに譲渡する契約の締結を公表(譲渡時期は2027年4月の予定、残り20%は5年を目途に継続保有した後に譲渡する予定。譲渡損益は2028年3月期に計上する見込みで、金額は精査中と開示) | 有価証券報告書 第209期「事業等のリスク」「追加情報」(2026-10-23確認) |
| 2026年6月(契約)/12月(所有権移転の予定) | 東京都江東区の賃貸用不動産(土地)を売却する契約を締結。譲渡益は約146億円で、連結では2027年3月期に「その他の収益」として計上する予定と開示 | 有価証券報告書 第209期「重要な後発事象」(2026-10-23確認) |
| 2026年6月2日 | 宇宙・航空分野の連結子会社が、国の研究開発機関から5か月間の競争参加資格停止処分を受けたと公表した、と有報に記載(作業未了にもかかわらず完了したとする報告に基づいて費用を請求していたことが判明、との説明。詳しくは5節) | 有価証券報告書 第209期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-23確認) |
| 2026年6月22日 | 有価証券報告書 第209期を提出 | EDINET 有価証券報告書 第209期(2026-10-23確認) |
| 2026年9月28日(決議)/9月29日(公表) | ドイツの連結子会社(カーボンソリューション分野)の持分の全部を、欧州の上場産業持株会社の完全子会社に譲渡することを決議し、公表。持分譲渡日は2026年10月中旬の予定、譲渡価額は非開示。本件により、2027年3月期の連結で約140億円を「その他の費用」として、個別で約170億円を特別損失として計上する予定と開示。会社は譲渡理由として、欧州での火力発電関連投資の変化などによる事業環境の変化を挙げている。同じ開示に、2027年3月期の通期連結業績予想(2026年8月5日公表分)に変更はないと書かれている | TDnet 適時開示(IHI・2026-09-29)(2026-10-23確認) |
持分法適用会社=出資先の損益を、持ち分に応じて自社の連結の数字に取り込む会社です。事業譲渡=会社の事業の一部を、別の会社に売ることです。後発事象=決算日のあとに起きた出来事で、次の期以降の決算に影響するものです。追加検査プログラム=エンジンの部品に品質上の問題がまれにあることが判明したため、既に出荷されたエンジンを繰り返し検査し、部品を交換するプログラムです。競争参加資格停止処分=国の機関などが発注する契約の入札に、一定期間、参加できなくする措置です。特別損失=その期に限った性格の強い損失で、日本基準の個別(IHI単体)の決算に使う区分です。2026年3月期より前の年表の行は、有報の沿革に書かれた出来事から主なものを選んだもので、すべてではありません。
4️⃣ 直近の決算の数字(有報 第209期)
まず、有報 第209期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月22日提出)の連結の数字です(IFRS)。有報の財務諸表(決算書)は、会社の外の監査法人による監査(決算の数字が正しいかを確かめること)を受けています。確認日は2026-10-23です。
| 指標(連結・IFRS) | 2026年3月期 | 2025年3月期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 受注高 | 1兆9,547億円 | 1兆7,511億円 | +11.6% |
| 受注残高(期末) | 1兆7,683億円 | 約1兆4,873億円 | +18.9% |
| 売上収益 | 1兆6,434億円 | 1兆6,268億円 | +1.0% |
| 売上総利益 | 3,795億円 | 3,745億円 | +1.3%(当サイト計算) |
| 販売費及び一般管理費 | 2,426億円 | 2,236億円 | +8.5%(当サイト計算) |
| その他の収益/その他の費用 | 543億円/256億円 | 166億円/239億円 | — |
| 営業利益 | 1,655億円 | 1,435億円 | +15.3%(220億円の増益) |
| 持分法による投資損益 | 142億円 | 62億円 | — |
| 税引前利益 | 1,854億円 | 1,384億円 | +33.9%(当サイト計算) |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 1,609億円 | 1,127億円 | +42.8%(当サイト計算) |
| 基本的1株当たり当期利益(分割後の基準) | 151.88円 | 106.41円 | — |
| 親会社所有者帰属持分比率(期末) | 26.86% | 21.50% | +5.36ポイント |
| 親会社所有者帰属持分利益率(有報の表) | 28.39% | 26.29% | — |
| 株価収益率(有報の表・参考) | 20.66倍 | 13.86倍 | — |
| 総資産(期末) | 2兆4,285億円 | 2兆2,403億円 | +1,881億円 |
| 有利子負債(リース負債を含む、期末) | 4,898億円 | 約5,146億円 | −248億円 |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,213億円 | 1,776億円 | −563億円(当サイト計算) |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | −184億円 | −588億円 | — |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | −978億円 | −1,162億円 | — |
| 現金及び現金同等物(期末) | 1,550億円 | 約1,368億円 | +182億円 |
| 設備投資(投資総額)/研究開発費 | 976億円/396億円 | — | — |
| 従業員数(連結・期末) | 26,224人 | 27,990人 | −1,766人 |
出典:有価証券報告書 第209期「主要な経営指標等の推移」「経営者による分析」「連結損益計算書」「設備投資等の概要」「研究開発活動」「収益認識関係」(2026-06-22提出、2026-10-23確認)。億円は百万円単位の表の億円未満切り捨て。「約」を付けた前期の数字(受注残高・有利子負債・現金及び現金同等物)は、有報に書かれた当期の数字と増減額から当サイトが計算したものです。受注残高の前期は「残存履行義務」の前期末の数字と同じです。キャッシュ・フロー=お金の出入りで、営業活動は本業の稼ぎや運転資金、投資活動は設備や有価証券などへの投資、財務活動は借入・返済や配当などによるものです。株価収益率(PER)は、有報の表にある、年度末の株価と1株当たり当期利益から会社が計算した倍率で、確認日時点の株価で計算した倍率ではありません。親会社所有者帰属持分利益率は、株主のお金(親会社の所有者に帰属する持分)でどれだけ利益を出したかを表す割合です。会社は2025年10月1日付で1株を7株に分割しており、1株当たり当期利益は前期の期首に分割が行われたと仮定した、分割後の基準にそろえて開示されています。有報の「その他の収益」「その他の費用」は営業利益に含まれる項目です。
会社は、2026年3月期の業績を次のように説明しています。「売上収益については、中核事業における事業譲渡に伴う減収や前期の大型工事進捗の反動はありましたが、防衛事業や民間向け航空エンジンの拡大に加え、車両過給機での需要拡大・販価改善などにより、1.0%増の1兆6,434億円となりました。損益面では、民間向け航空エンジンでの整備費用の増加や研究開発費等販管費の増加、資源・エネルギー・環境事業での一部海外事業の採算悪化等の影響はあったものの、原子力の採算性向上のほか、車両過給機の構造改革費用の前期反動や運搬機械事業及び投資不動産の譲渡益計上もあり、営業利益は220億円増益の1,655億円となりました」。税引前利益については、「為替円安の影響や持分法投資利益の増加により470億円増益の1,854億円」と書かれています。セグメントごとの会社の説明は、次のとおりです(売上収益は区分間の内部取引を含みます)。
- 資源・エネルギー・環境(売上収益3,767億円、前期比−8.4%/営業利益59億円、同−63.1%):「受注高は、アジア拠点EPCやカーボンソリューションでの大型案件の受注をはじめ、エネルギー分野の需要拡大により」増加しました。売上収益は「原子力の拡大や、中型機種の販売増による原動機の増収はあったものの、アジア拠点EPCやカーボンソリューションの前期大型工事に進捗の反動などにより減収」、営業利益は「事業構造改革費用の計上や海外事業での採算悪化により減益」と書かれています。
- 社会基盤(売上収益1,319億円、−9.6%/営業利益37億円、前期は−42億円):営業利益は「交通システムの譲渡による減益はありましたが、コンクリート建材事業の譲渡に関連する構造改革費用の前期計上による反動や橋梁・水門の採算性向上により増益」と書かれています。
- 産業システム・汎用機械(売上収益4,505億円、−7.1%/営業利益307億円、同+185.0%):営業利益は「熱・表面処理での事業構造改革費用の計上などはありましたが、前期の車両過給機での事業構造改革費用計上の反動影響に加え、当期における車両過給機の販価改善や運搬機械の譲渡益の計上などにより、増益」と書かれています。
- 航空・宇宙・防衛(売上収益6,517億円、+17.3%/営業利益1,124億円、同−8.4%):売上収益は「民間向け航空エンジンのスペアパーツの販売増や防衛事業の拡大により増収」、営業利益は「防衛の拡大及び採算改善のほか、民間向け航空エンジンでのスペアパーツの販売増加や前期の貸倒引当金計上の反動はありましたが、民間向け航空エンジンでの整備費用の増加や研究開発費等販管費の増加などの影響により、減益」と書かれています。受注高は「前期の防衛の大型工事受注の反動などにより減少」(同−2.3%)です。
5期の数字では、連結売上収益は1兆1,729億円(第205期・2022年3月期)から1兆6,434億円(第209期)へ、親会社の所有者に帰属する当期利益は660億円から1,609億円へと動きました。この間、第207期(2024年3月期)は売上収益が1兆3,225億円(前期比で微減)、親会社の所有者に帰属する当期損失が682億円と、赤字になった期もありました(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」。有報の経営目標の表には、2023年度(2024年3月期)の営業利益率△5.3%について、追加検査プログラムと海外の連結子会社の訴訟の和解合意による損失の影響を除くと7.0%だった、という注記があります。損失の金額の内訳は、この記事では扱いません)。
営業利益などに含まれる売却益・損失の項目
営業利益と最終の利益のあいだには、「その他の収益」「その他の費用」「金融収益・費用」「持分法による投資損益」「税金」が入ります。2026年3月期は、営業利益に含まれる「その他の収益」が543億円(前期166億円)、「その他の費用」が256億円(前期239億円)でした。主な項目には、利益を増やす側と減らす側の両方があります。
| 主な項目(連結) | 2026年3月期 | 2025年3月期 | 利益への向き(2026年3月期) |
|---|---|---|---|
| 投資不動産売却益(その他の収益) | 224億円 | 104億円 | 押し上げ |
| 事業再編関連収益(その他の収益) | 177億円 | 3億円 | 押し上げ |
| 有形固定資産売却益(その他の収益) | 21億円 | 1億円 | 押し上げ |
| 旧事業所内設備の解体撤去費の戻入(その他の収益) | 39億円 | — | 押し上げ(前期はなし) |
| 減損損失(その他の費用) | 104億円 | 46億円 | 押し下げ(前期より大きい) |
| 事業再編関連損失(その他の費用) | — | 90億円 | 前期のみ押し下げ |
| 為替差益(金融収益)/為替差損(金融費用) | 差益101億円 | 差損66億円 | 押し上げ(前期は押し下げ) |
| 支払利息(償却原価で測定する金融負債) | 60億円 | 50億円 | 押し下げ |
| 持分法による投資損益 | 142億円(利益) | 62億円(利益) | 押し上げ(前期より大きい) |
| 法人所得税費用 | 202億円 | 211億円 | 費用(前期よりやや小さい) |
出典:有価証券報告書 第209期「連結損益計算書」「連結財務諸表注記 17(非金融資産の減損)、31(その他の収益及び費用)、32(金融収益及び金融費用)」(2026-10-23確認、百万円単位の表の億円未満切り捨て)。表の向きは、利益に対する向きです。投資不動産売却益の内訳は、有報の注記によると、東京都江東区の投資不動産(建物・土地)の持分が87億円、同区の土地が72億円、その他が63億円です。事業再編関連収益の内訳は、運搬機械事業の譲渡が110億円、子会社の株式の譲渡が38億円、その他が28億円です。減損損失(見込んでいた収益が得られなくなった資産の帳簿価額を、回収できる金額まで減らす処理)の主なものは、売却予定の交通システム子会社の建物など(27億円)、収益性の低下を理由とするドイツの子会社ののれん等(27億円)、同じく収益性の低下を理由とするイタリアの子会社の機械装置等(27億円)です。このドイツの子会社は、年表の2026年9月に持分譲渡が公表された子会社と同じ会社です(当サイトが有報とTDnetの開示で社名を突き合わせました)。為替差益は、有報の注記では金融収益の項目として開示されています。こうした項目は期ごとに入る項目も金額も違い、同じ項目が今後も出るかどうかは、この記事で読んだ範囲の開示には書かれていないため、書きません。
会社の経営計画と、株主への還元の方針
会社は、2025年度(2026年3月期)を最終年度とする3か年の中期経営計画(会社の呼び名は「グループ経営方針2023」)について、「売上収益・営業利益ともに過去最高を達成しました」と書き、営業利益率とROICについては掲げた「経営目標を達成し」、一方で「CCCは未達となり、キャッシュ・フロー創出力については未だ課題として残りました」と書いています(ROIC=投下資本利益率、CCC=キャッシュ・コンバージョン・サイクル。会社の定義では運転資本÷売上収益×365日)。営業利益率は、2026年3月期が10.1%で、経営目標は7.5%でした。2026年度からは、2040年に向けた「中長期の方向性」に移り、事業ドメイン(注力する事業の領域)として「エアロスペース、エネルギー、インフラの3つ」を挙げています。2026年度から2028年度までの3か年は「先行投資及び財務基盤強化に注力する期間(フェーズ1)」、2029年度以降の「フェーズ2では、営業利益・営業キャッシュ・フローの拡大を実現」、2032年度以降の「フェーズ3では、先行投資を回収するとともにフリーキャッシュ・フローの大幅な拡大を実現」すると書かれています。これらは会社の計画であり、この記事の予測ではありません。
設備投資については、2026年度の計画額を1,300億円(うち航空・宇宙・防衛が766億円)とし、所要資金は「主として自己資金により充当する予定」と書いています(2026年3月期の投資総額は976億円)。配当については、「安定的に実施することを基本に、当社グループの成長に応じて、持続的に増加することを目指します」と書いています。2026年3月期の配当は、中間配当が1株70円(株式分割の前の基準。分割後に換算すると10円)、期末配当が10円(2026年6月24日の定時株主総会に付議する予定とされ、有報の提出時点では議案。当サイトは承認の結果を確認していません)で、年間では分割後の換算で1株20円と有報に書かれています。連結の配当性向(利益のうち配当に回した割合)は13.2%です(前期は16.1%)。中長期の方向性では、「フェーズ1では、安定配当を基本方針として、1株当たり配当を持続的に成長させます。営業キャッシュ・フローが伸長するフェーズ2以降は、株主還元の更なる拡大を目指します」とされています。
5️⃣ 会社自身が挙げているリスク
以下は有価証券報告書(第209期)の「事業等のリスク」から、会社自身が挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社は、リスクを「社会的責任」「外部環境変化への備え」「経営リソース」「企業活動・エンジニアリング」の4つに分けて挙げています。ここではそのうち5つを紹介します。原文は有価証券報告書 第209期「事業等のリスク」でご確認ください。
- ①コンプライアンス(法令遵守):会社は「一部の役員・従業員による法令違反等が生じた場合、過料や課徴金、追徴課税等による損失や営業停止等の行政処分による機会逸失を被る、あるいはそれに伴う社会的評価の低下によって当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります」と書いています。そのうえで、「当社グループにおいては、2024年度に、当社子会社において相次いで不適切事案等が発覚しました」と書き、直近の事案として、宇宙・航空分野の連結子会社が国の研究開発機関から受注した業務の一部で「事実と異なる報告を行ない、不当な費用請求を行なったとして」「競争参加資格停止処分を受けました」と書いています。経営方針の項では、「作業未了にも関わらず完了したとする報告を行ない、当該報告に基づいて費用を請求していたことが判明しています」「5か月間の競争参加資格停止処分」と書き、「取り組みを進める中でこうした新たな事象が確認される等、まだまだ不十分な点があることを痛切に認識しており、改善に向けての取り組みは依然として道半ばにあるものと考えています」としています(これは会社の記述の紹介で、法的な評価や責任の有無をこの記事が判断するものではありません)。取り組みとして、コンプライアンス教育プログラムの展開、人財ローテーションの活性化、職場ごとの対話活動などを書いています。
- ②カントリーリスク・経済安全保障:「各国・各地域の政治・経済・社会状況等の変化に起因して、国家間や各国内における紛争の拡大、テロや労働争議の発生、政情不安、デフォルト等により事業の継続が困難になるリスク」を挙げ、「足元における中東情勢の悪化、長期化するロシアによるウクライナへの軍事侵攻、米中の政治的対立や経済安全保障問題の拡大等、不確実性が一層高まっていると認識しています」と書いています。経済安全保障では、輸出規制の対象となった場合に「販売機会の逸失や事業の停止、サプライチェーンの断絶」が起こりうると書き、取り組みとして取引審査や取引先スクリーニング、セキュリティ強化を挙げています。
- ③為替・金利・資金調達・格付(財務活動):為替については、「外貨に対して円が上昇した場合は外貨建輸出工事における円換算後の入金額は目減りし、下落した場合は現地通貨建の海外調達において円換算支出額の増加を招く」と書き、為替予約などで対応するとしています。金利は「金利が上昇した場合、当社グループの支払利息が増加し金融収支が悪化します」。資金調達は、「借入金にはシンジケート・ローンが含まれており、自己資本と利益に関する財務制限条項が付されています。業績の悪化等により同条項に抵触した場合、同ローンの借入れ条件の見直しや期限前弁済義務が生じる可能性があり」と書かれています(シンジケート・ローン=複数の金融機関が共同で貸す融資、財務制限条項=融資契約で定めた、守るべき財務の条件)。
- ④プロジェクト管理:「契約締結後に当初想定できなかった紛争等の地政学リスクの顕在化によるエネルギー価格の高騰、資機材価格や輸送コストの急激な変動、サプライチェーンの途絶、為替相場の変動などの経済環境の変化や検討不足、予期しないトラブル、JV等のパートナー企業の経営悪化等により見積コストを上回る工事の発生、お客さまから要求された性能・納期の未達によるペナルティーの支払い、追加費用の発生等の可能性があり、その結果として当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります」と書き、受注・投資前の審査や、受注後のモニタリングを取り組みとして挙げています。
- ⑤与信管理:「2023年5月に航空会社が破産申請したことにより、当社が民間向け航空エンジンの国際共同事業会社を通じて参画しているエンジンプログラムにおいて、当社が間接的に保有する営業債権の一部が回収不能となる可能性が生じました」と書き、「債権管理の高度化に向けた取り組みを進めています」としています。
このほか、品質に関わる事項として、有報の「重要な会計上の見積り」には、出荷済みの特定型式の民間向け航空エンジンに関する追加検査プログラムが書かれています。会社は、プログラムのパートナー会社(米国のエンジンメーカー)の粉末冶金部品(金属の粉末を固めて作る部品)の製造工程で「まれに品質上の問題があることが判明」し、「対象となるエンジンは約3,000台であり、一定サイクル間隔での繰り返し検査と部品交換を要することとなった」と書いています。IHIはこのプログラムに「約15%のシェアで参画している」ため、「補償費用や追加整備費用等の発生が見込まれる」として、返金負債(将来、顧客へ払い戻す・補償するお金として見積もり、負債に計上した金額)の残高を、2026年3月末で535億円(前期末は954億円)と開示しています。見積りの前提として、「2024年から2026年までの期間に平均350機の地上駐機が見込まれる」「エンジン取り卸しから取り付けまでの期間は250~300日となる見込み」と書き、一方で「製造工程に対する有効な対策は既にとられており、現在判明している対象部品以外で同様の問題は発生していません」とも書いています。さらに、「見積り特有の不確実性が存在するため、将来において認識される業績及び財政状態に影響を与える可能性があります」とも書かれています。
出典:有価証券報告書 第209期「事業等のリスク」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「重要な会計上の見積り」(2026-06-22提出、2026-10-23確認)。有報のリスクには、このほか、環境保全、人権・ダイバーシティ、関係会社の統制、安全衛生、自然災害・疾病・紛争・テロ、人財、保証債務、税務、情報セキュリティ、研究開発、知的財産管理、調達・物流、設計・製造、品質保証、他社との連携・M&Aなどが並びます。会社は、リスクを認識したうえで、リスク管理体制を整え、リスクの回避と影響の極小化に最大限努めると書いています。
6️⃣ 上がる材料/下がる材料
ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。
以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。
※ 材料の数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来の予測は行っていません。会社の目標・計画・認識として書いた内容は、会社がそう公表しているという事実の紹介で、この記事が実現を見込むものではありません。航空・防衛・宇宙・エネルギーなどの分野の需要や政策の先行きについて、この記事は何も予想していません。
7️⃣ これから何を見れば分かるか
次の決算(2027年3月期の第2四半期=2026年4〜9月)の発表日は、当サイトの決算予定データ earnings-calendar.json にIHIが載っておらず、一次情報でも確かめられていません。会社のIRサイト(投資家向けの情報を載せたページ)でご確認ください。この記事で挙げた材料がその後どうなったかは、次の開示で確かめられます。直近の通期決算(2026年3月期)の有報は2026年6月22日に提出されています。2026年4〜6月(第1四半期)の決算短信は、この記事では取得できず、扱っていません。なお、2026年9月29日の適時開示には、「2026年8月5日公表」の2027年3月期の通期連結業績予想に変更はない、という趣旨の記載があります。この記事は会社の業績予想の数字を扱わないので、数字は書きません(原文は2026-09-29の適時開示でご確認ください)。
- 区分別の営業利益:2026年3月期は、資源・エネルギー・環境59億円、社会基盤37億円、産業システム・汎用機械307億円、航空・宇宙・防衛1,124億円、その他358億円。次の開示で、同じ区分で数字がどう書かれるか
- 追加検査プログラムの返金負債と、為替の影響:2026年3月末の返金負債は535億円、この分野の営業損益への為替の影響は−50億円。次の開示で、残高や見積りの前提(地上駐機の機数など)がどう書かれるか
- 営業キャッシュ・フローと設備投資:2026年3月期の営業キャッシュ・フローは1,213億円、投資総額は976億円、2026年度の計画は1,300億円。会社が「喫緊の課題」とした営業キャッシュ・フローの強化が、どう開示されるか
- その他の収益・費用の中身:江東区の不動産の譲渡益(約393億円・約146億円)、ドイツ子会社の持分譲渡に伴う費用(約140億円)が、いつ・どの項目に出るか。営業利益のうち、これらを含む部分と含まない部分がどう開示されるか
- コンプライアンスの再発防止策:会社が「取り組みは依然として道半ば」と書いた再発防止の進み具合が、有報や適時開示でどう書かれるか
有価証券報告書と半期報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説に、適時開示のしくみはこちらの解説にまとめています。
8️⃣ まとめ
結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①区分別の営業利益(特に航空・宇宙・防衛と資源・エネルギー・環境の動きと、営業利益に含まれる売却益や譲渡損益の中身)、②営業キャッシュ・フローと設備投資の関係(投資の負担と、本業でお金を生み出す力)、③追加検査プログラムなど、見積りで決まる負担の金額(返金負債の残高と、為替の影響)。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。
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⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事は金融庁の開示システム(EDINET)に提出された有価証券報告書や、証券取引所の適時開示などの一次情報に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示、将来の業績・株価・為替・各分野の需要や政策の予測、株価水準に関する評価的な断定は行っていません。会社の方針・目標・計画・見方として引用した内容は、あくまで「会社がそのように公表している」という事実の紹介で、この記事の見方ではありません。文中に出てくる会社や機関の種類は、産業の構造を説明するための一般名で、特定の会社の株式をおすすめするものではありません。投資には元本割れのリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。