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⚠️ 本記事は公開情報(有価証券報告書等の一次情報)に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示や将来の業績・株価の予測は行っていません。投資には元本割れリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。

🔬 東京エレクトロン(8035)を数字で見る|半導体をつくる装置の会社を有価証券報告書で確認

公開日:2026年10月17日 / 読了時間:約15分 / カテゴリ:数字で見る企業(第19回・日本株)

「数字で見る、話題の企業」シリーズ第19回は、半導体の工場で、ウエハ(半導体の土台になる薄い円い板)の上に回路をつくるための装置と、その保守・改造などを手がける東京エレクトロン株式会社(証券コード8035、以下「東京エレクトロン」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が金融庁の開示システム(EDINET)に提出した有価証券報告書(上場会社が決算期ごとに金融庁へ出す、事業や決算をくわしく書いた報告書。以下「有報」。第63期・2025年4月〜2026年3月)をもとに、①事業の中身 ②半導体の工程の中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。

📌 30秒でわかるこの記事
  • 東京エレクトロンの第63期(2025年4月〜2026年3月)の売上高は約2兆4,435億円(前期比+0.5%)、営業利益は約6,249億円(同−10.4%)、親会社株主に帰属する当期純利益は約5,745億円(同+5.6%)でした(日本の会計基準・連結=グループ全体の数字)。当期純利益には、持っていた株式の一部を売った利益 約1,155億円が含まれます
  • 事業は「半導体製造装置」の1つだけです。売上高の74.4%が新しい装置の販売など、25.6%が納入した装置の保守・改造などです。顧客の所在地では中国が34.1%、韓国が22.3%、台湾が20.5%で、海外の顧客向けが90.2%でした。2社への売上がそれぞれ全体の15.1%と12.9%です
  • 有報には、2026年10月1日付で1株を5株に分ける株式分割を行う予定と書かれています。この記事の1株当たりの数字は、この分割の前の物差しです。直近の四半期(2026年4〜6月)の決算短信(決算の要点をまとめた書類)は取得できなかったため使っていません。「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
💡 なぜ東京エレクトロンか(選定根拠):本シリーズは日本株を中心にする方針(直近3本のうち海外株が1本以上あれば日本株)で、直近3本(日本株2本・海外株1本)に海外株が含まれるため、今回は日本株の番です。当サイトが機械的に集計する候補データ(edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-16時点)は、東京エレクトロンの登場を2026年10月2日・10月5日・10月13日の3回と数えています。当サイトのランキングデータ jp-rankings.json の更新履歴で確かめると、10月2日と10月13日は値下がりランキング、10月5日は値上がりランキングに入っていました(その前の9月25日・9月29日・10月1日にも値上がりランキングに入っていましたが、候補データが数える範囲の外です)。ランキングに最後に登場した日から中3営業日以上あいていること(「熱が残っているうちは書かない」ルール。同データの cooled: true)と、有報の本文が取得できていることを満たす候補の中から、時価総額の大きい順に選びました(時価総額の金額や順位は本文に書きません。それより大きい候補が1社ありましたが、当サイトのニュース記事と14日以内に重なるため見送りました)。

当サイトのニュース記事では、2026年10月1日の記事で、東京エレクトロンの株価の動きが取り上げられています。ニュース記事は「その日に何が起きたか」を伝えるもので、この記事は「この会社は何で稼いでいて、材料は何か」を整理するもので、役割が違います(その日の値動きは、ニュース記事をご覧ください)。本レーンでの既刊記事・この会社が主役の解説記事の既刊はありません(ls guide-*.html と guides.html を社名・証券コードで確認)。ランキングに登場した理由(なぜ値上がり・値下がりがあったか)は、一次情報で確かめられないため書きません。
数字の出どころと確認日(2026-10-17):決算の数字はすべて有価証券報告書 第63期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月22日提出)から引いています(同じ書類のPDF:EDINET公式のダウンロード)。東京エレクトロンは3月決算で、この有報が、確認日の時点でいちばん新しい通期の有報です。直近の四半期(2026年4〜6月期)の決算短信(決算を発表するときに証券取引所へ出す、決算の要点をまとめた書類)は、決算短信の掲載先であるTDnet(東京証券取引所の適時開示サイト。適時開示=上場会社が、株価に影響しうる情報を証券取引所を通じてすぐに公表する仕組み)で当サイトが確かめた時点(2026-10-17)では2026年9月8日より前の開示が見られず、取得できなかったため、この記事では使っていません(二次情報で補うこともしていません)。同じ理由で、会社の今期の業績予想の数字もこの記事には書いていません。2026年9月8日から10月16日までのTDnetには、東京エレクトロンの開示は見つかりませんでした。有報の数字は百万円単位で、億円に直した数字は当サイトが計算したもの(億円未満四捨五入)なので「約」を付けています。会社自身が有報の文章に書いている金額(例:設備投資額「2,160億円」)は、会社の書き方のまま引いています。

1️⃣ 東京エレクトロンはどんな会社か

東京エレクトロンは、有報の「沿革」によると、1963年11月に放送会社の関係会社(有報には社名の記載あり)として、東京都港区に株式会社東京エレクトロン研究所の名前で設立され、VTR(ビデオテープレコーダー)やカーラジオなどの輸出と、電子機器の輸入の仕事を始めました。会社は経営方針の中で、自社の歩みを「技術専門商社からスタートし、開発製造機能をもつメーカーへの移行」などと書いています。本社は東京都港区にあります。グループは会社本体と27社の関係会社でできていて、そのうち連結子会社が25社です。連結の従業員数は20,236人(2026年3月31日現在)です(出典:有価証券報告書 第63期「沿革」「事業の内容」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「主要な経営指標等の推移」・連結財務諸表注記、2026-10-17確認)。

💡 用語メモ:半導体は、電気を通したり止めたりできる性質を使って、計算や記憶をする部品(チップ)のことです。連結はグループ全体を1つの会社とみなした数字、単体は東京エレクトロン1社だけの数字です。この記事では、ことわりがなければ連結の数字を使います。子会社は、東京エレクトロンが議決権の過半数を持つなどして経営を支配している会社、関連会社は、支配まではしていないものの、経営に大きな影響を与えられる会社です。関係会社は、子会社と関連会社などをまとめた呼び方です。東京エレクトロンの連結の決算は日本の会計基準(日本基準)で作られています(世界の多くの国で使われる会計のルールである国際会計基準〈IFRS〉ではありません)。日本基準には、本業のもうけ(営業利益)に利息や為替などの本業以外の損益を足し引きした経常利益という項目があります。

会社は基本理念に「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」を掲げています。事業は、エレクトロニクスの技術を使った半導体製造装置の開発・製造・販売・保守サービスで、有報は事業の区分(セグメント:会社が業績を管理・開示するときの事業の区分)を「半導体製造装置」の1つだけとしています。会社は研究開発の説明の中で、開発している装置として「コータ/デベロッパ、エッチング装置、成膜装置、洗浄装置、先端パッケージ向けプロセス装置、ウェーハプローバ等」を挙げています。製造は東京エレクトロン テクノロジーソリューションズなどの子会社が行い(米国にも製造と販売をする子会社があります)、会社本体はそれらの子会社がつくった製品を仕入れて売る形です(出典:同有報「事業の内容」「研究開発活動」)。

💡 用語メモ(装置の名前):成膜装置=ウエハの表面に、ごく薄い膜をつける装置です。コータ/デベロッパ=ウエハに光に反応する薬液を塗り(コータ=塗布)、光で回路の形を写したあとに、いらない部分を溶かして形を浮かび上がらせる(デベロッパ=現像)装置です。エッチング装置=浮かび上がった形にそって、膜を削る装置です。洗浄装置=工程のあいだにウエハを洗って、ごみや汚れを取り除く装置です。ウェーハプローバ=ウエハの段階の検査で、ウエハを運んで、チップに検査用の針を当てて検査の装置につなぐ装置です。先端パッケージ=複数のチップを重ねたり、細かくつないだりして、1つの部品にまとめる新しい組み立ての技術です。どれも一般的な説明で、有報の言葉ではありません。

単一セグメントなので、事業ごとの売上はありませんが、有報の注記「収益認識関係」で、売上を新規装置とフィールドソリューション他に分けた数字と、顧客の所在地ごとの数字が開示されています。会社の説明では、新規装置には新しい装置の販売と装置の設置に関する作業が、フィールドソリューション他には納入済みの装置に対する保守用部品・サービス・装置の改造の提供と、中古装置の販売などが含まれます(出典:同有報 連結財務諸表注記「収益認識関係」「セグメント情報等」)。

東京エレクトロン 第63期(2025年4月〜2026年3月)の、新規装置とフィールドソリューション他に分けた売上高と、顧客の所在地ごとの売上高 上:中身ごとの売上高(第63期・単位:億円・構成比は当サイトの計算) 新規装置(新しい装置の販売と、その設置の作業) 約18,172(74.4%) フィールドソリューション他(納入済み装置の保守用部品・サービス・改造、中古装置など) 約6,263(25.6%) 下:顧客の所在地ごとの売上高(第63期・単位:億円・構成比は当サイトの計算) 中国 約8,326(34.1%) 韓国 約5,439(22.3%) 台湾 約4,999(20.5%) 日本 約2,394(9.8%) 北米(ほぼ米国) 約1,664(6.8%) その他 約940(3.8%) 欧州 約674(2.8%) 上と下は同じ売上高(約2兆4,435億円)を、別の切り口で分けたものです。 所在地は顧客の所在地による区分です(有報の区分のまま)。
▲ 有価証券報告書 第63期 連結財務諸表注記「収益認識関係」「セグメント情報等」(百万円、2026-10-17確認)を億円に直して作成(億円未満四捨五入)。カッコ内の構成比は、連結の売上高 2,443,533百万円に対する割合を当サイトが計算したもの(四捨五入のため、足し合わせても100にならないことがあります)。有報の地域ごとの百万円の数字を足すと2,443,531百万円で、売上高とは2百万円ずれます(有報の表の数字のまま使っています)。有報は、北米のうち米国が166,235百万円と書いています。※概念を示すイメージ図です。

前期と比べると、新規装置は約1兆8,931億円から約1兆8,172億円(−4.0%)に減り、フィールドソリューション他は約5,385億円から約6,263億円(+16.3%)に増えました(増減の率は当サイトの計算)。会社は第63期について、「AIサーバー等の先端技術が要求される領域での設備投資が活発に行われたことにより、当社の付加価値の高い製品の販売が好調に推移しました。」と書き、半導体メーカーの工場の稼働率が上がっているため「過去に販売した装置に対する改造や保守用部品・サービス等の売上も堅調に増加しました。」とも書いています(出典:同有報「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」〔以下「経営者による分析」と略します〕)。

顧客の所在地ごとに前期と比べると、中国は約1兆151億円から約8,326億円(−18.0%)、北米は約2,430億円から約1,664億円(−31.5%)、欧州は約755億円から約674億円(−10.7%)に減りました。韓国は約4,090億円から約5,439億円(+33.0%)、台湾は約4,106億円から約4,999億円(+21.7%)、日本は約1,900億円から約2,394億円(+26.0%)、その他は約884億円から約940億円(+6.3%)に増えました(日本の増減の率は有報の記載、それ以外は当サイトの計算)。中国の割合は、前期の41.7%から34.1%になりました(当サイトの計算)。会社は第63期の半導体製造装置の市場について、「前年度と比べ中国における設備投資は一服感がみられた一方、生成AI用途の半導体向け設備投資が顕著に伸長しました。」と書いています。海外の顧客向けの売上の割合は90.2%です(出典:同有報「経営者による分析」「セグメント情報等」)。

主な相手先ごとの売上も有報に載っています。第63期は、1社(大手の半導体メーカー)への売上が約3,681億円で全体の15.1%、もう1社(大手の半導体メーカー)への売上が約3,158億円で12.9%でした。前期は同じ2社がそれぞれ11.8%と11.5%でした。どちらの数字にも、その会社と同じ企業グループに属する顧客への売上が含まれます。有報には相手先の社名が書かれていますが、この記事では社名を書きません(出典:同有報「経営者による分析」・連結財務諸表注記「セグメント情報等」)。

2️⃣ ウエハの上に回路をつくる工程の中のどこにいるか

次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、東京エレクトロンの装置が、半導体ができるまでの流れのどこで使われているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。東京エレクトロンは「半導体をつくる会社」ではなく、半導体をつくる会社が工場で使う装置をつくって売り、納入したあとの保守や改造も請け負う会社です。装置の多くは、ウエハの上に回路をつくる工程(前工程)で使われます。この工程は、膜をつける・塗る・形を写す・現像する・削る・洗う、をくり返して回路を何層にも重ねていくのが特徴です。

半導体ができるまでの流れと東京エレクトロンの位置。ウエハの上に回路をつくる前工程のうち、膜をつける、薬液を塗る、現像する、削る、洗うの工程で東京エレクトロンの装置が使われ、形を写す工程は別の種類の装置で行う。ウエハの段階の検査と、先端パッケージの工程にも装置がある。納入した装置への保守・改造や中古装置の販売も手がける。装置を使うのは半導体メーカーで、全体は大手半導体メーカーの投資の波、地政学、各国の規制、自然災害、為替の影響を受ける 半導体ができるまでの流れの中での位置(色の濃い枠=東京エレクトロンの装置・サービス) ① 設計から前工程まで 設計 回路を決める ウエハ 土台の円い板 前工程:ウエハの上に回路をつくる(くり返す) 膜をつける 成膜装置 =ここ 薬液を塗る コータ =ここ 形を写す 露光の装置で行う 現像する デベロッパ =ここ 削る エッチング装置 =ここ 洗う 洗浄装置 =ここ ↑ 洗ったあと、また膜をつけるところへ戻って回路を重ねる ② ウエハの検査から使い道まで ウエハの検査 =ここ ウェーハプローバ (検査の装置につなぐ) 切り分け・組み立て チップに分けて包む (後工程) 先端パッケージ =ここ チップを重ねる・つなぐ (組み立ての新しい技術) 最後の使い道 AIサーバー・ロボット など(会社が挙げる例) ③ 納入したあとの装置と、装置を使う会社 納入した装置への保守用部品・サービス・改造、中古装置 =ここ フィールドソリューション他:売上高の25.6%(新規装置は74.4%) 装置を使う会社 半導体メーカー(海外向け90.2%) 支える側:部品のサプライヤー・材料のパートナー・大学や研究機関 会社は、重要な部品の調達先を複数にする(マルチソース化)などの対策を書いている 外側の枠組み:大手半導体メーカーの投資の波・地政学・各国の規制・自然災害・為替 会社自身が、有価証券報告書の「事業等のリスク」でこれらを挙げている ※矢印は「工程とモノが流れる方向」を示す事実の関係です。 業績や株価が連動する方向を示すものではありません。
▲ 半導体ができるまでの流れの中での東京エレクトロンの位置(概念図)。工程の並びと「前工程」「後工程」という分け方は一般的な流れを簡単にしたもので、有報の言葉ではありません。実際の工場では、熱を加える工程なども入り、製品によって順番や回数は違います。色の濃い枠は、会社が有報の「研究開発活動」「事業の内容」「収益認識関係」で挙げている装置とサービスです。フィールドソリューション他の構成比と、海外の顧客向けの割合は、有報の数字(2026-10-17確認)。白い枠は工程や会社の種類の一般名で、特定の会社を指すものではありません。※概念を示すイメージ図です。
💡 用語メモ:前工程はウエハの上に回路をつくる工程、後工程は回路ができたウエハをチップに切り分けて、包んで(パッケージにして)部品の形にする工程です。露光は、光を当てて、回路の形をウエハの上の薬液に写すことです。設備投資は、工場や機械など、長く使う設備にお金を使うことです。フィールドソリューションは、会社の言葉で、すでに顧客の工場で動いている装置向けの部品・サービス・改造などのことです。

東京エレクトロンが前工程の箱の多くに立っている根拠は、会社自身の開示にあります。事業の区分は「半導体製造装置」の1つだけで、会社が開発している装置として挙げるのは、上の図の色の濃い枠の装置です。売上高のうち新規装置が74.4%、フィールドソリューション他が25.6%でした(当サイトの計算)。会社は中期の取り組みとして、「半導体のスケーリング(微細化)と先端パッケージングの両領域」へ新製品と技術サービスを提供すると書いていて、前工程(微細化)だけでなく、先端パッケージの工程にも装置を出していることがわかります(出典:有価証券報告書 第63期「事業の内容」「研究開発活動」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」・連結財務諸表注記「収益認識関係」、2026-10-17確認)。

工程の前後とのつながりも、開示に書かれています。

このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報で挙げています。会社は、半導体の市場は中長期的には成長が見込まれる一方で、世界経済の動向や最終製品の需要、貿易・関税政策、地政学的な要因などにより、短い期間では需要と供給のバランスが崩れて市場の規模が変動することがあると書いています。顧客の投資が急に縮んだ場合には、つくり過ぎによる在庫の増加や、顧客の財務状況の悪化による貸し倒れ(売上の代金が回収できなくなること)のリスクが発生するとしています。逆に需要が急に増えたときに対応できなかった場合も、製品をタイミングよく供給できずに販売の機会を逃すなど、業績に影響する可能性があるとしています(出典:有価証券報告書「事業等のリスク」、2026-10-17確認)。

産業のつながりがあることと、株価が連動することは別です。同じ工程にいる会社でも、業績も株価も会社ごとに大きく異なります。ここでお伝えしているのは産業構造の事実であって、値動きの予想ではありません。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。

3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事

各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。この年表は、有価証券報告書の「沿革」などだけで作っています(Wikipediaなどの二次情報は使っていません)。

年月出来事出典
1963年11月放送会社の関係会社(有報には社名の記載あり)として、東京都港区に株式会社東京エレクトロン研究所を設立(資本金5百万円)。VTR(ビデオテープレコーダー)、カーラジオなどの輸出と、電子機器の輸入の仕事を始める有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
1972年4月米国に Tokyo Electron America, Inc.(旧 TEL America, Inc.)を設立有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
1978年10月株式の額面の金額を500円から50円に変えるため、休業中の東京エレクトロン株式会社(旧 桜洋行株式会社)に形式上合併される(形式上の存続会社は旧 桜洋行で、営業の実体は合併される側がそのまま続ける)有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
1980年6月・1984年3月東京証券取引所の市場第二部に上場(1980年)。市場第一部へ指定替え(1984年)有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
1990年1月テル・ジェンラッド株式会社の全株式を取得し、テル山梨株式会社に吸収合併(新しい社名は東京エレクトロン山梨株式会社)有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
1993年4月東京エレクトロン相模株式会社と東京エレクトロン東北株式会社を合併(新しい社名は東京エレクトロン東北株式会社)。東京エレクトロン佐賀株式会社と東京エレクトロン九州株式会社を合併(今の東京エレクトロン九州株式会社)有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
1993年9月・1994年4月・1996年1月韓国(1993年)、欧州(英国の現地法人・1994年)、台湾(1996年)に会社を設立(現地法人=その国に置いた会社)有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
2002年1月・2003年4月中国に現地法人を設立(2002年に今の Tokyo Electron (Shanghai) Logistic Center Ltd.、2003年に Tokyo Electron (Shanghai) Ltd.)有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
2003年3月子会社の東京エレクトロン デバイス株式会社が、東京証券取引所に上場有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
2010年7月東京エレクトロン宮城株式会社を設立有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
2014年4月東京エレクトロン デバイス株式会社の株式の一部を売り、連結子会社から持分法適用関連会社に変わる有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
2017年7月東京エレクトロン山梨株式会社と東京エレクトロン東北株式会社を合併(今の東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社)有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
2022年4月東京証券取引所の市場区分の見直しで、市場第一部からプライム市場に移行有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認)
2023年4月普通株式1株を3株に分ける株式分割を実施(4月1日付)有価証券報告書 第63期「主要な経営指標等の推移」の注記・「発行済株式総数、資本金等の推移」(2026-10-17確認)
2025年8月〜2026年4月台湾の子会社の元従業員が、顧客の機密情報に関する事案への関与で、国家安全法などの違反により台湾の検察当局に起訴される(2025年8月・2026年1月)。子会社自身も、元従業員への監督義務の違反を理由に起訴され(2025年12月・2026年1月)、2026年4月27日に罰金の支払いを命じる判決(顧客と台湾政府への支払いを前提とした執行猶予3年)を言い渡される有価証券報告書 第63期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-17確認)
2026年4月持っていた自己株式のうち3,600,000株を消却し(4月30日)、発行済株式総数(会社が発行している株の総数)が471,632,733株から468,032,733株になる有価証券報告書 第63期「株式の総数等」・連結財務諸表注記「重要な後発事象」(2026-10-17確認)
2026年5月取締役会で、1株を5株に分ける株式分割(基準日9月30日・効力発生日10月1日)と、新しい自己株式の取得枠の設定を決議(5月29日)有価証券報告書 第63期 連結財務諸表注記「重要な後発事象」(2026-10-17確認)
2026年6月有価証券報告書 第63期を提出(6月22日)EDINET 有価証券報告書 第63期(2026-10-17確認)

市場第二部・市場第一部=東京証券取引所の当時の市場の区分です(2022年4月に今のプライム・スタンダード・グロースの区分に見直されました)。額面=昔の株券に書かれていた1株の金額です。持分法適用関連会社=関連会社のうち、その会社の利益のうち持ち分にあたる分を、連結の決算に取り込んでいる会社です。株式分割=1株をいくつかの株に分けて、株数を増やすことです。会社の価値そのものは変わらず、1株当たりの利益や配当の金額は、分けた分だけ小さく見えます。自己株式の消却=会社が買い戻して持っている自社の株を、なくしてしまうことです(買い戻しただけでは発行済株式総数は減らず、消却したときに減ります)。執行猶予=判決で決まった刑の実行を、一定の期間見合わせることです。後発事象=決算期の末日のあとに起きた、決算書の利用者に知らせるべき出来事です。1株を5株に分ける株式分割は、有報の提出時点では予定として書かれていて、当サイトは実施されたことを一次情報では確かめていません。基準日=その日の最終の株主名簿に載っている株主が、株式分割の対象になる日です。効力発生日=株式分割の効力が生じる日です。国家安全法=台湾の法律の名前です(有報に書かれた名前のまま使っています)。

4️⃣ 直近の決算の数字(有価証券報告書 第63期)

有価証券報告書 第63期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月22日提出)の連結の数字です(日本基準)。東京エレクトロンは3月決算で、その後の四半期の決算短信(2026年4〜6月期)は、上の注意書きのとおり当サイトでは取得できていません。有報の財務諸表(決算書)は、会社の外の監査法人による監査(決算の数字が正しいかを確かめること)を受けています。確認日は2026-10-17です。

指標(連結・日本基準)第63期(2025/4〜2026/3)第62期(前期・2024/4〜2025/3)増減
売上高約2兆4,435億円約2兆4,316億円+0.5%
売上総利益約1兆1,079億円約1兆1,463億円−3.4%
売上総利益率45.3%47.1%−1.8ポイント
販売費及び一般管理費約4,829億円約4,490億円+7.6%
うち研究開発費約2,779億円約2,500億円+11.1%
営業利益約6,249億円約6,973億円−10.4%
営業利益率25.6%28.7%−3.1ポイント
経常利益約6,303億円約7,077億円−10.9%
特別利益約1,207億円約0.3億円—
税金等調整前当期純利益約7,482億円約7,061億円+6.0%
親会社株主に帰属する当期純利益約5,745億円約5,441億円+5.6%
1株当たり当期純利益(EPS)1,254.57円1,182.40円—
自己資本利益率(ROE)29.6%30.3%—
自己資本比率71.5%70.1%—
営業活動によるキャッシュ・フロー約5,397億円約5,822億円−7.3%
設備投資額(会社の記載)2,160億円——
1株当たり配当額(東京エレクトロン単体の数字)628円592円+36円

出典:有価証券報告書 第63期「主要な経営指標等の推移」「経営者による分析」「設備投資等の概要」「研究開発活動」・連結損益計算書(2026-06-22提出)。億円の数字は有報の百万円から当サイトが計算したもの(億円未満四捨五入。前期の特別利益は31百万円のため小数で示しています)。売上高・売上総利益・販売費及び一般管理費・研究開発費・営業利益・経常利益・税金等調整前当期純利益・当期純利益の増減の率と、売上総利益率・営業利益率とその増減は、有報の「経営者による分析」「研究開発活動」の記載。前期の売上総利益率・営業利益率と、営業活動によるキャッシュ・フローの増減の率は、当サイトが有報の数字から計算したもの。前期の設備投資額は、この記事で読んだ範囲では確かめていないため「—」としています。第63期の1株当たり配当額628円は、中間配当(期の途中で払う配当)264円と期末配当(期末の後に払う配当)364円の合計です。1株当たりの数字は、2026年10月1日付の株式分割(1株→5株の予定)の前の物差しです。確認日:2026-10-17。

💡 用語メモ:売上総利益=売上高から、製品をつくるのにかかった費用(売上原価)を引いたもので、売上総利益率は売上高に対する割合です。販売費及び一般管理費=売るための費用や、会社を運営するための費用(人件費など)で、東京エレクトロンでは研究開発費もここに入っています。特別利益=ふだんの事業とは別の、その期に特別に出た利益です。EPS=1株当たりの利益です。ROE(自己資本利益率)=株主のお金に対して1年でどれだけ利益を出したかの割合です。自己資本比率=総資産のうち株主のお金が占める割合です。キャッシュ・フロー=実際のお金の出入りで、営業活動によるキャッシュ・フローは本業で入ってきたお金の額です。

会社は第63期について、「売上高については、2期連続で過去最高を更新しました。」と書いています。一方で利益の面では、「原材料の高騰や人件費の増加等の影響により売上総利益率は45.3%(前連結会計年度比1.8ポイント減)となり」と書き、研究開発を積極的に進めた結果、営業利益率は25.6%(前期比3.1ポイント減)になったと説明しています。販売費及び一般管理費の売上高に対する割合は、会社の記載で19.7%(前期比1.3ポイント増)、研究開発費の売上高に対する割合は11.4%(同1.1ポイント増)でした(出典:同有報「経営者による分析」「研究開発活動」)。

営業利益の下の段にも、前期と比べるときに知っておきたい項目があります。経常利益の計算では、本業以外の費用として為替差損(外国のお金で持っている資産などを円に直したときに、為替の動きで出た損。逆に出た利益は為替差益)約46億円(前期 約9億円)が入っています。さらに会社の説明では、第63期の特別利益 約1,207億円は、主に政策保有株式(取引先との関係を保つなどの目的で持っている他社の株式)の一部を売って計上した投資有価証券売却益 約1,155億円によるものです。このため、営業利益と経常利益は前期より減った一方で、税金等調整前当期純利益と当期純利益は前期より増えています。会社は、資本効率を高める施策として政策保有株式の一部を売ったと書いています。こうした売却益が今後も出るかどうかは、この記事で読んだ範囲の有報には書かれていないため、この記事でも書きません。特別損失には、後で紹介する台湾の子会社の件の損失の見込み額(訴訟損失引当金繰入額 約7億円)が入っています(出典:同有報「経営者による分析」・連結損益計算書と注記)。

💡 用語メモ:投資有価証券売却益=長く持つ目的で持っていた株式などを売って出た利益です。資本効率=株主から預かったお金などを使って、どれだけ効率よく利益を出しているかのことです。引当金=将来に出ていきそうなお金を見積もって、先に費用として計上しておくものです。特別損失=ふだんの事業とは別の、その期に特別に出た損失です。
東京エレクトロンの売上高と、親会社株主に帰属する当期純利益の推移。第59期から第63期 上:売上高(連結・日本基準・単位:億円・億円未満四捨五入) 20,038 22,090 18,305 24,316 24,435 下:親会社株主に帰属する当期純利益(連結・日本基準・単位:億円・億円未満四捨五入) 4,371 4,716 3,640 5,441 5,745 第59期 2022年3月期 第60期 2023年3月期 第61期 2024年3月期 第62期 2025年3月期 第63期 2026年3月期 上と下で縦の目盛りが違います(上は3兆円、下は8,000億円を基準にした高さ)。
▲ 有価証券報告書 第63期「主要な経営指標等の推移」の数値(百万円)を億円に換算して作成(億円未満四捨五入、2026-10-17確認)。東京エレクトロンは3月決算。第59期=2021年4月〜2022年3月、第63期=2025年4月〜2026年3月。第63期の当期純利益には、投資有価証券売却益 約1,155億円を含む特別利益が入っています。※概念を示すイメージ図です。

5期の数字では、売上高は約2兆38億円(第59期)、約2兆2,090億円、約1兆8,305億円、約2兆4,316億円、約2兆4,435億円(第63期)と動きました。親会社株主に帰属する当期純利益は、約4,371億円、約4,716億円、約3,640億円、約5,441億円、約5,745億円です。第61期(2024年3月期)は、前の期と比べて売上高が約17.1%、当期純利益が約22.8%減りました(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」、増減の率は当サイトの計算)。この記事で読んだ範囲の有報には、第62期より前の年ごとの増減の理由の説明はないため、理由は書きません。

💡 株式分割と、1株当たりの数字の見方:東京エレクトロンは2023年4月1日付で、普通株式1株を3株に分けました(株式分割)。有報の「主要な経営指標等の推移」は、1株当たりの利益(EPS)などを第59期の期首(期の初め)に分割があったと仮定して計算し直しているので、第59期から第63期のEPSは同じ物差しで比べられます。一方、東京エレクトロン単体の1株当たり配当額は、第59期(1,403円)と第60期(1,711円。会社の創立60周年の記念配当200円を含む)が分割前の実際の金額で、第61期(393円)・第62期(592円)・第63期(628円)は分割後の物差しなので、そのまま並べて比べることはできません。さらに有報には、2026年10月1日を効力発生日として1株を5株に分ける予定が書かれています。会社は、この分割が前期の期首にあったと仮定した場合の1株当たり当期純利益を、第62期 236円48銭、第63期 250円91銭と示しています。この記事のほかの1株当たりの数字(EPS 1,254.57円・配当628円など)は、すべてこの5分割の前の物差しです。会社は、9月30日を基準日とする2027年3月期の中間配当は、分割前の株数を基準に行うと書いています(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」・連結財務諸表注記「重要な後発事象」)。

株主への還元について、会社は有報の「配当政策」で、業績に連動した配当を基本とし、親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向(利益のうち配当に回す割合)50%をめどにすると書いています。ただし、1株当たりの年間配当金は50円を下回らないこととし、2期連続で当期利益を生まなかった場合は配当金の見直しを検討するとしています(この50円は、有報の提出時点の書き方のままです)。自己株式の取得については、機動的に(状況に応じて)実施を検討するとしています。第63期の配当金の支払いは約2,716億円、自己株式の取得による支出は約1,500億円で、会社は、配当と自己株式の取得で合わせて4,216億1千5百万円を株主に還元し、これはフリーキャッシュ・フロー(会社の定義=営業活動と投資活動のキャッシュ・フローの合計で、定期預金や短期投資の増減を除いたもの)4,332億4千8百万円の97%にあたると書いています(出典:同有報「配当政策」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「経営者による分析」)。

自己株式(会社が買い戻した自社の株)については、2026年2月6日の取締役会の決議にもとづく取得(上限750万株・1,500億円、取得期間は2026年2月9日〜3月31日。取得したのは3,620,400株・149,997百万円)が有報に載っています(会社は経営方針の項では、この取得を「1,499億円」と書いています)。第63期末に会社が持っている自己株式は15,474,275株で、2026年4月30日に、そのうち3,600,000株を消却しました。さらに2026年5月29日の取締役会で、新しい取得枠(上限750万株・1,500億円、取得期間は2026年6月1日〜2027年3月31日)を決めています。株式分割の後は、上限の株数を3,750万株に読み替えるとしています。会社は、市場環境などによって一部または全部の取得が行われない可能性があるとも書いています(出典:同有報「自己株式の取得等の状況」・連結財務諸表注記「重要な後発事象」)。

お金の使い方では、第63期の設備投資額は2,160億円(会社の記載)で、会社は、売上の拡大にともなう増産への対応と、研究開発用の機械装置などに投資したと書いています。宮城県と熊本県の子会社で新しい開発棟が、岩手県の事業所で生産・物流棟ができあがり、宮城県では新しい生産棟を建設中(2027年夏にできあがる予定)としています。有形固定資産(土地・建物・機械など)の約7割(589,335百万円のうち419,957百万円・当サイトの計算で71.3%)が日本にあります。会社は、2025年3月期からの5年間の成長投資の計画として、研究開発投資1.5兆円以上、設備投資7,000億円以上、グローバルで約10,000人の人材採用(いずれも5年の累計)を挙げています。これは会社の計画で、当サイトの予測ではありません(出典:同有報「設備投資等の概要」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」・連結財務諸表注記「セグメント情報等」)。

💡 用語メモ:配当性向=利益のうち、配当として株主に払う割合です(有報の表にある「配当性向」60.3%は東京エレクトロン単体の数字で、会社の方針の50%は連結の当期純利益に対する割合です)。フリーキャッシュ・フロー=本業で入ってきたお金から、投資に使ったお金を差し引いた、自由に使えるお金のめやすです。取締役会=会社の経営の大事なことを決める、取締役の会議です。有形固定資産=土地・建物・機械など、形があって長く使う資産です。

5️⃣ 会社自身が挙げているリスク

以下は有価証券報告書(第63期)の「事業等のリスク」から、会社自身が挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社はリスクを16項目挙げていて、これらは会社に関するすべてのリスクを網羅したものではない、とも書いています。ここではそのうち5つを紹介します。原文はEDINET掲載の有価証券報告書でご確認ください。

出典:有価証券報告書 第63期「事業等のリスク」(2026-06-22提出、2026-10-17確認)。原文のリスクには、このほか安全、品質、環境対応、知的財産、情報セキュリティ、人材、感染症・自然災害等、ファイナンス、M&A(会社の買収など)、IT&オペレーション、拠点展開が並んでいます。ファイナンスの項で会社は、急な為替の変動があった場合に業績に影響する可能性を挙げる一方、「当社製品の取引を原則円建てで行っていることに加えて、一部の外貨建売上等についても為替予約などによるリスクヘッジを行っております。」と書いています(為替予約=将来の決められた日に、決められた為替レートで通貨を交換する約束。リスクヘッジ=損失が出る可能性を小さくするための手当て)。税務当局との見解の違いによる追加の税負担の可能性も挙げています。なお会社は、受注の実績を有報に載せていません。その理由として、短い期間の受注の動きは顧客の投資の動きで大きく変わる傾向があり、中長期の会社の業績を予測するための指標としてふさわしいとは限らないため、と説明しています(出典:同有報「経営者による分析」)。受注=顧客から注文を受けることです。地政学=国どうしの関係や地理的な条件が、政治や経済に与える影響のことです。課徴金=法令の違反に対して、国などが納めさせるお金です。

6️⃣ 上がる材料/下がる材料

ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。

📈 上がる可能性がある材料
第63期の売上高は約2兆4,435億円(前期比+0.5%)で、会社は「売上高については、2期連続で過去最高を更新しました。」と書いている。親会社株主に帰属する当期純利益は約5,745億円(同+5.6%)で、会社は過去最高と書いている(この当期純利益には、政策保有株式の一部を売った投資有価証券売却益 約1,155億円が含まれる)。出典:有価証券報告書 第63期「経営者による分析」/確認日2026-10-17/効くと:この売上の水準が続くかどうかを、次の決算で比べる基準になる
フィールドソリューション他(納入済み装置への保守用部品・サービス・改造、中古装置など)の売上は約5,385億円から約6,263億円(+16.3%・当サイトの計算)に増え、全体の25.6%になった。会社は、顧客の工場の稼働率が上がっているため、改造や保守用部品・サービスなどの売上も増えたと書いている。出典:有価証券報告書 第63期「経営者による分析」・連結財務諸表注記「収益認識関係」/確認日2026-10-17/効くと:新しい装置の販売とは別に、動いている装置の数や稼働に応じて入る売上として、全体の売上を左右する
会社は、AIサーバーなどの先端技術が求められる領域で設備投資が活発だったことで、付加価値の高い製品の販売が好調だったと書いている。韓国の顧客向けは+33.0%、台湾は+21.7%、日本は+26.0%だった(日本は有報の記載・ほかは当サイトの計算)。会社は同じ有報(2026年6月提出)で、「足元では、旺盛なAIニーズで高性能半導体デバイスの需給が逼迫し、デバイス価格高騰の傾向がありますが、中長期的に見れば需給バランスは落ち着いていくと考えられます。」と書いたうえで、「一方、AIサーバーやロボティクスなど、用途の広がりにより、半導体市場は今後も成長していくことが期待されます。」とも書いている(会社の見方の紹介で、当サイトの予測ではない)。出典:有価証券報告書 第63期「経営者による分析」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」・連結財務諸表注記「セグメント情報等」/確認日2026-10-17/効くと:AI関連の半導体への設備投資の動きが、装置の売上の大きな部分を左右する
自己資本比率は71.5%、現金及び現金同等物は約5,054億円(現金と、すぐに現金に換えられる短期の預金など)。会社はフリーキャッシュ・フローが過去最高の4,332億4千8百万円だったと書いている。配当は1株当たり年間628円(会社は過去最高と記載・分割前の物差し)、配当性向50%をめどとする方針で、第63期は約1,500億円の自己株式を取得し、2026年5月に新しい取得枠(上限1,500億円・2027年3月31日まで)を決めた。会社は、取得の一部または全部が行われない可能性があるとも書いている。出典:有価証券報告書 第63期「主要な経営指標等の推移」「経営者による分析」「配当政策」「自己株式の取得等の状況」・注記「重要な後発事象」/確認日2026-10-17/効くと:お金の余力と、株主への還元の方針が、次の開示でどう実行されたかを確かめる材料になる
研究開発費は約2,779億円(前期比+11.1%・売上高の11.4%)、設備投資額は2,160億円(会社の記載)。宮城・熊本の開発棟と岩手の生産・物流棟ができあがり、宮城で新しい生産棟を建設中(2027年夏にできあがる予定)。会社は、2025年3月期からの5年間で研究開発投資1.5兆円以上・設備投資7,000億円以上・約10,000人の採用を計画として挙げている(会社の計画で、当サイトの予測ではない)。出典:有価証券報告書 第63期「研究開発活動」「設備投資等の概要」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」/確認日2026-10-17/効くと:開発や生産の体制づくりが、出せる製品と供給できる量に関わる
📉 下がる可能性がある材料
営業利益は約6,249億円(前期比−10.4%)、経常利益は約6,303億円(同−10.9%)に減った。会社は「原材料の高騰や人件費の増加等の影響により売上総利益率は45.3%(前連結会計年度比1.8ポイント減)となり」と書き、営業利益率は28.7%から25.6%になった。当期純利益が増えたのは、政策保有株式の一部を売った投資有価証券売却益 約1,155億円を含む特別利益 約1,207億円が入ったためで、こうした売却益が今後も出るかどうかは、この記事で読んだ範囲の有報には書かれていない。出典:有価証券報告書 第63期「経営者による分析」・連結損益計算書/確認日2026-10-17/効くと:費用の増え方と、本業以外の利益のあるなしが、利益の金額を動かす
会社はリスクの項で、売上高が最先端の大手半導体メーカーなどの投資動向の影響を受けやすいと書いている。主な2社への売上が全体の15.1%と12.9%(合計28.0%・当サイトの計算)。過去5期では、第61期(2024年3月期)に売上高が前の期より約17.1%、当期純利益が約22.8%減った(当サイトの計算)。出典:有価証券報告書 第63期「事業等のリスク」「経営者による分析」「主要な経営指標等の推移」/確認日2026-10-17/効くと:大口の顧客の投資の計画が変わると、装置の売上に響く
中国の顧客向けの売上は約1兆151億円から約8,326億円(−18.0%)に減ったが、なお全体の34.1%で、地域の中でいちばん大きい(当サイトの計算)。会社は第63期の市場について「前年度と比べ中国における設備投資は一服感がみられた」と書いている。北米も約2,430億円から約1,664億円(−31.5%)に減った。会社は、地政学的な対立や、製品の輸出入・技術開発に関する規制の影響をリスクに挙げている。出典:有価証券報告書 第63期「経営者による分析」「事業等のリスク」・連結財務諸表注記「セグメント情報等」/確認日2026-10-17/効くと:特定の地域の投資の動きや規制が、売れる地域と量に響く
会社は経営環境について、AI向けの需要で半導体の需給が逼迫している一方、「中長期的に見れば需給バランスは落ち着いていくと考えられます。」と書き、「なお、中東情勢の緊張が長期化する場合については、サプライチェーンの混乱が危惧されるため、注視してまいります。」とも書いている(サプライチェーン=部品の調達から製造・物流までのつながり)。リスクの項では、主要な生産拠点が日本国内にあり、国内の自然災害などで生産が止まった場合に、製品をタイミングよく供給できない可能性を挙げている。有形固定資産の71.3%が日本にある(当サイトの計算)。出典:有価証券報告書 第63期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業等のリスク」・連結財務諸表注記「セグメント情報等」/確認日2026-10-17/効くと:需給の変化や供給網の混乱が、装置の需要と出荷できる量に響く
台湾の子会社の元従業員が、顧客の機密情報に関する事案への関与で、国家安全法などの違反で起訴され、子会社自身も監督義務の違反で起訴されて、2026年4月27日に罰金1億5,000万台湾元の支払いを命じる判決(顧客に1億台湾元、台湾政府に5,000万台湾元を支払うことを前提として執行猶予3年)を言い渡された。会社は、この件の損失の見込み額(約7億円)を特別損失に計上し、情報管理とコンプライアンス(法令や決まりを守ること)の体制を一層強化するとしている。会社はリスクの項で、法令・規制に違反した場合の社会的な信用の低下や損害賠償などを挙げている。出典:有価証券報告書 第63期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業等のリスク」・連結損益計算書の注記/確認日2026-10-17/効くと:法令の問題が、顧客からの信用や費用に響く

以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。

※ 材料の数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来の予測は行っていません。投資有価証券売却益は、上がる材料(当期純利益に含まれる)と下がる材料(営業利益・経常利益は減った)の両方に書いています。逼迫=需要に対して供給が足りず、余裕がないことです。台湾元=台湾の通貨です。

7️⃣ これから何を見れば分かるか

次の決算(2027年3月期 第2四半期)の発表日は、当サイトの決算予定データ earnings-calendar.json では2026年10月30日(取引時間のあと)となっていますが、これは自動で集めた仮の日付(変更の可能性あり)で、当サイトは会社の一次情報では確かめていません。会社のIRサイト(投資家向けの情報を載せたページ)でご確認ください。会社は有報で、中期経営計画(会社が、数年先までの目標と取り組みをまとめた計画)の財務モデルの指標として売上高・営業利益率・ROEを使い、2027年3月期を目標の年度にしていると書いています(目標の数字は会社の計画で、この記事では書きません)。会社は、有報の将来に関する記述は、その時点の情報にもとづく一定の前提によるもので、「当社グループとしてその実現を約束する趣旨のものではありません。」と書いています。この記事で挙げた材料がその後どうなったかは、次の開示で確かめられます。

有価証券報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説に、株式分割で1株当たりの数字がどう変わるかはこちらの解説にまとめています。

8️⃣ まとめ

結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①売上高と、新規装置・フィールドソリューション他の内訳(新しい装置の販売と、納入した装置まわりの売上の動きの違い)、②地域と顧客の偏り(中国・韓国・台湾の割合と、主な2社への売上の割合)、③利益率と本業以外の項目(売上総利益率・営業利益率と、投資有価証券売却益などの項目のあるなし)。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。

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