🔬 東京エレクトロン(8035)を数字で見る|半導体をつくる装置の会社を有価証券報告書で確認
「数字で見る、話題の企業」シリーズ第19回は、半導体の工場で、ウエハ(半導体の土台になる薄い円い板)の上に回路をつくるための装置と、その保守・改造などを手がける東京エレクトロン株式会社(証券コード8035、以下「東京エレクトロン」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が金融庁の開示システム(EDINET)に提出した有価証券報告書(上場会社が決算期ごとに金融庁へ出す、事業や決算をくわしく書いた報告書。以下「有報」。第63期・2025年4月〜2026年3月)をもとに、①事業の中身 ②半導体の工程の中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。
- 東京エレクトロンの第63期(2025年4月〜2026年3月)の売上高は約2兆4,435億円(前期比+0.5%)、営業利益は約6,249億円(同−10.4%)、親会社株主に帰属する当期純利益は約5,745億円(同+5.6%)でした(日本の会計基準・連結=グループ全体の数字)。当期純利益には、持っていた株式の一部を売った利益 約1,155億円が含まれます
- 事業は「半導体製造装置」の1つだけです。売上高の74.4%が新しい装置の販売など、25.6%が納入した装置の保守・改造などです。顧客の所在地では中国が34.1%、韓国が22.3%、台湾が20.5%で、海外の顧客向けが90.2%でした。2社への売上がそれぞれ全体の15.1%と12.9%です
- 有報には、2026年10月1日付で1株を5株に分ける株式分割を行う予定と書かれています。この記事の1株当たりの数字は、この分割の前の物差しです。直近の四半期(2026年4〜6月)の決算短信(決算の要点をまとめた書類)は取得できなかったため使っていません。「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-16時点)は、東京エレクトロンの登場を2026年10月2日・10月5日・10月13日の3回と数えています。当サイトのランキングデータ jp-rankings.json の更新履歴で確かめると、10月2日と10月13日は値下がりランキング、10月5日は値上がりランキングに入っていました(その前の9月25日・9月29日・10月1日にも値上がりランキングに入っていましたが、候補データが数える範囲の外です)。ランキングに最後に登場した日から中3営業日以上あいていること(「熱が残っているうちは書かない」ルール。同データの cooled: true)と、有報の本文が取得できていることを満たす候補の中から、時価総額の大きい順に選びました(時価総額の金額や順位は本文に書きません。それより大きい候補が1社ありましたが、当サイトのニュース記事と14日以内に重なるため見送りました)。当サイトのニュース記事では、2026年10月1日の記事で、東京エレクトロンの株価の動きが取り上げられています。ニュース記事は「その日に何が起きたか」を伝えるもので、この記事は「この会社は何で稼いでいて、材料は何か」を整理するもので、役割が違います(その日の値動きは、ニュース記事をご覧ください)。本レーンでの既刊記事・この会社が主役の解説記事の既刊はありません(
ls guide-*.html と guides.html を社名・証券コードで確認)。ランキングに登場した理由(なぜ値上がり・値下がりがあったか)は、一次情報で確かめられないため書きません。1️⃣ 東京エレクトロンはどんな会社か
東京エレクトロンは、有報の「沿革」によると、1963年11月に放送会社の関係会社(有報には社名の記載あり)として、東京都港区に株式会社東京エレクトロン研究所の名前で設立され、VTR(ビデオテープレコーダー)やカーラジオなどの輸出と、電子機器の輸入の仕事を始めました。会社は経営方針の中で、自社の歩みを「技術専門商社からスタートし、開発製造機能をもつメーカーへの移行」などと書いています。本社は東京都港区にあります。グループは会社本体と27社の関係会社でできていて、そのうち連結子会社が25社です。連結の従業員数は20,236人(2026年3月31日現在)です(出典:有価証券報告書 第63期「沿革」「事業の内容」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「主要な経営指標等の推移」・連結財務諸表注記、2026-10-17確認)。
会社は基本理念に「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」を掲げています。事業は、エレクトロニクスの技術を使った半導体製造装置の開発・製造・販売・保守サービスで、有報は事業の区分(セグメント:会社が業績を管理・開示するときの事業の区分)を「半導体製造装置」の1つだけとしています。会社は研究開発の説明の中で、開発している装置として「コータ/デベロッパ、エッチング装置、成膜装置、洗浄装置、先端パッケージ向けプロセス装置、ウェーハプローバ等」を挙げています。製造は東京エレクトロン テクノロジーソリューションズなどの子会社が行い(米国にも製造と販売をする子会社があります)、会社本体はそれらの子会社がつくった製品を仕入れて売る形です(出典:同有報「事業の内容」「研究開発活動」)。
単一セグメントなので、事業ごとの売上はありませんが、有報の注記「収益認識関係」で、売上を新規装置とフィールドソリューション他に分けた数字と、顧客の所在地ごとの数字が開示されています。会社の説明では、新規装置には新しい装置の販売と装置の設置に関する作業が、フィールドソリューション他には納入済みの装置に対する保守用部品・サービス・装置の改造の提供と、中古装置の販売などが含まれます(出典:同有報 連結財務諸表注記「収益認識関係」「セグメント情報等」)。
前期と比べると、新規装置は約1兆8,931億円から約1兆8,172億円(−4.0%)に減り、フィールドソリューション他は約5,385億円から約6,263億円(+16.3%)に増えました(増減の率は当サイトの計算)。会社は第63期について、「AIサーバー等の先端技術が要求される領域での設備投資が活発に行われたことにより、当社の付加価値の高い製品の販売が好調に推移しました。」と書き、半導体メーカーの工場の稼働率が上がっているため「過去に販売した装置に対する改造や保守用部品・サービス等の売上も堅調に増加しました。」とも書いています(出典:同有報「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」〔以下「経営者による分析」と略します〕)。
顧客の所在地ごとに前期と比べると、中国は約1兆151億円から約8,326億円(−18.0%)、北米は約2,430億円から約1,664億円(−31.5%)、欧州は約755億円から約674億円(−10.7%)に減りました。韓国は約4,090億円から約5,439億円(+33.0%)、台湾は約4,106億円から約4,999億円(+21.7%)、日本は約1,900億円から約2,394億円(+26.0%)、その他は約884億円から約940億円(+6.3%)に増えました(日本の増減の率は有報の記載、それ以外は当サイトの計算)。中国の割合は、前期の41.7%から34.1%になりました(当サイトの計算)。会社は第63期の半導体製造装置の市場について、「前年度と比べ中国における設備投資は一服感がみられた一方、生成AI用途の半導体向け設備投資が顕著に伸長しました。」と書いています。海外の顧客向けの売上の割合は90.2%です(出典:同有報「経営者による分析」「セグメント情報等」)。
主な相手先ごとの売上も有報に載っています。第63期は、1社(大手の半導体メーカー)への売上が約3,681億円で全体の15.1%、もう1社(大手の半導体メーカー)への売上が約3,158億円で12.9%でした。前期は同じ2社がそれぞれ11.8%と11.5%でした。どちらの数字にも、その会社と同じ企業グループに属する顧客への売上が含まれます。有報には相手先の社名が書かれていますが、この記事では社名を書きません(出典:同有報「経営者による分析」・連結財務諸表注記「セグメント情報等」)。
2️⃣ ウエハの上に回路をつくる工程の中のどこにいるか
次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、東京エレクトロンの装置が、半導体ができるまでの流れのどこで使われているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。東京エレクトロンは「半導体をつくる会社」ではなく、半導体をつくる会社が工場で使う装置をつくって売り、納入したあとの保守や改造も請け負う会社です。装置の多くは、ウエハの上に回路をつくる工程(前工程)で使われます。この工程は、膜をつける・塗る・形を写す・現像する・削る・洗う、をくり返して回路を何層にも重ねていくのが特徴です。
東京エレクトロンが前工程の箱の多くに立っている根拠は、会社自身の開示にあります。事業の区分は「半導体製造装置」の1つだけで、会社が開発している装置として挙げるのは、上の図の色の濃い枠の装置です。売上高のうち新規装置が74.4%、フィールドソリューション他が25.6%でした(当サイトの計算)。会社は中期の取り組みとして、「半導体のスケーリング(微細化)と先端パッケージングの両領域」へ新製品と技術サービスを提供すると書いていて、前工程(微細化)だけでなく、先端パッケージの工程にも装置を出していることがわかります(出典:有価証券報告書 第63期「事業の内容」「研究開発活動」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」・連結財務諸表注記「収益認識関係」、2026-10-17確認)。
工程の前後とのつながりも、開示に書かれています。
- 装置を使う側とのつながり:会社はリスクの項で、「当社グループの売上高は、最先端の大手半導体メーカー等を中心とした投資動向の影響を受けやすい傾向にあります。」と書いています。主な2社への売上で全体の28.0%(15.1%と12.9%の合計・当サイトの計算)を占めます(出典:同有報「事業等のリスク」「経営者による分析」)。
- 納入したあとのつながり:会社は、半導体メーカーの工場の稼働率が上がっていることを、納入済みの装置に対する改造・保守用部品・サービスの売上が増えた背景に挙げています。装置を売ったあとも、その装置が動いているあいだは、部品やサービスの取引が続く関係です(出典:同有報「経営者による分析」・連結財務諸表注記「収益認識関係」)。
- 支える側とのつながり:会社は、安定した製品の製造には、サプライヤー(部品などの供給元)による部品の安定供給が欠かせないと書き、重要な部品の調達先を複数にすることや、主要なサプライヤーと半導体の需要の見通し(フォーキャスト)を共有することを挙げています。研究開発では、国内外の大学・研究機関や、材料・部品のパートナーとの共同開発を進めていると書いています(出典:同有報「事業等のリスク」「研究開発活動」)。
- 前後の工程にいる会社の種類:前(支える側)には、装置に使う部品やコンポーネント(部品を組み合わせたまとまり)のメーカー、ウエハや薬液・ガスなどの材料のメーカーがあります。同じ前工程の中でも、形を写す工程は露光の装置で行います。後ろには、装置を使って半導体をつくるメーカーや、組み立て・検査を請け負う会社、さらにその先に、サーバーや通信機器、ロボットなどをつくる会社や、データセンターを運営する会社がいます。
このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報で挙げています。会社は、半導体の市場は中長期的には成長が見込まれる一方で、世界経済の動向や最終製品の需要、貿易・関税政策、地政学的な要因などにより、短い期間では需要と供給のバランスが崩れて市場の規模が変動することがあると書いています。顧客の投資が急に縮んだ場合には、つくり過ぎによる在庫の増加や、顧客の財務状況の悪化による貸し倒れ(売上の代金が回収できなくなること)のリスクが発生するとしています。逆に需要が急に増えたときに対応できなかった場合も、製品をタイミングよく供給できずに販売の機会を逃すなど、業績に影響する可能性があるとしています(出典:有価証券報告書「事業等のリスク」、2026-10-17確認)。
3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事
各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。この年表は、有価証券報告書の「沿革」などだけで作っています(Wikipediaなどの二次情報は使っていません)。
| 年月 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1963年11月 | 放送会社の関係会社(有報には社名の記載あり)として、東京都港区に株式会社東京エレクトロン研究所を設立(資本金5百万円)。VTR(ビデオテープレコーダー)、カーラジオなどの輸出と、電子機器の輸入の仕事を始める | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 1972年4月 | 米国に Tokyo Electron America, Inc.(旧 TEL America, Inc.)を設立 | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 1978年10月 | 株式の額面の金額を500円から50円に変えるため、休業中の東京エレクトロン株式会社(旧 桜洋行株式会社)に形式上合併される(形式上の存続会社は旧 桜洋行で、営業の実体は合併される側がそのまま続ける) | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 1980年6月・1984年3月 | 東京証券取引所の市場第二部に上場(1980年)。市場第一部へ指定替え(1984年) | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 1990年1月 | テル・ジェンラッド株式会社の全株式を取得し、テル山梨株式会社に吸収合併(新しい社名は東京エレクトロン山梨株式会社) | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 1993年4月 | 東京エレクトロン相模株式会社と東京エレクトロン東北株式会社を合併(新しい社名は東京エレクトロン東北株式会社)。東京エレクトロン佐賀株式会社と東京エレクトロン九州株式会社を合併(今の東京エレクトロン九州株式会社) | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 1993年9月・1994年4月・1996年1月 | 韓国(1993年)、欧州(英国の現地法人・1994年)、台湾(1996年)に会社を設立(現地法人=その国に置いた会社) | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 2002年1月・2003年4月 | 中国に現地法人を設立(2002年に今の Tokyo Electron (Shanghai) Logistic Center Ltd.、2003年に Tokyo Electron (Shanghai) Ltd.) | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 2003年3月 | 子会社の東京エレクトロン デバイス株式会社が、東京証券取引所に上場 | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 2010年7月 | 東京エレクトロン宮城株式会社を設立 | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 2014年4月 | 東京エレクトロン デバイス株式会社の株式の一部を売り、連結子会社から持分法適用関連会社に変わる | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 2017年7月 | 東京エレクトロン山梨株式会社と東京エレクトロン東北株式会社を合併(今の東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社) | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 2022年4月 | 東京証券取引所の市場区分の見直しで、市場第一部からプライム市場に移行 | 有価証券報告書 第63期「沿革」(2026-10-17確認) |
| 2023年4月 | 普通株式1株を3株に分ける株式分割を実施(4月1日付) | 有価証券報告書 第63期「主要な経営指標等の推移」の注記・「発行済株式総数、資本金等の推移」(2026-10-17確認) |
| 2025年8月〜2026年4月 | 台湾の子会社の元従業員が、顧客の機密情報に関する事案への関与で、国家安全法などの違反により台湾の検察当局に起訴される(2025年8月・2026年1月)。子会社自身も、元従業員への監督義務の違反を理由に起訴され(2025年12月・2026年1月)、2026年4月27日に罰金の支払いを命じる判決(顧客と台湾政府への支払いを前提とした執行猶予3年)を言い渡される | 有価証券報告書 第63期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-17確認) |
| 2026年4月 | 持っていた自己株式のうち3,600,000株を消却し(4月30日)、発行済株式総数(会社が発行している株の総数)が471,632,733株から468,032,733株になる | 有価証券報告書 第63期「株式の総数等」・連結財務諸表注記「重要な後発事象」(2026-10-17確認) |
| 2026年5月 | 取締役会で、1株を5株に分ける株式分割(基準日9月30日・効力発生日10月1日)と、新しい自己株式の取得枠の設定を決議(5月29日) | 有価証券報告書 第63期 連結財務諸表注記「重要な後発事象」(2026-10-17確認) |
| 2026年6月 | 有価証券報告書 第63期を提出(6月22日) | EDINET 有価証券報告書 第63期(2026-10-17確認) |
市場第二部・市場第一部=東京証券取引所の当時の市場の区分です(2022年4月に今のプライム・スタンダード・グロースの区分に見直されました)。額面=昔の株券に書かれていた1株の金額です。持分法適用関連会社=関連会社のうち、その会社の利益のうち持ち分にあたる分を、連結の決算に取り込んでいる会社です。株式分割=1株をいくつかの株に分けて、株数を増やすことです。会社の価値そのものは変わらず、1株当たりの利益や配当の金額は、分けた分だけ小さく見えます。自己株式の消却=会社が買い戻して持っている自社の株を、なくしてしまうことです(買い戻しただけでは発行済株式総数は減らず、消却したときに減ります)。執行猶予=判決で決まった刑の実行を、一定の期間見合わせることです。後発事象=決算期の末日のあとに起きた、決算書の利用者に知らせるべき出来事です。1株を5株に分ける株式分割は、有報の提出時点では予定として書かれていて、当サイトは実施されたことを一次情報では確かめていません。基準日=その日の最終の株主名簿に載っている株主が、株式分割の対象になる日です。効力発生日=株式分割の効力が生じる日です。国家安全法=台湾の法律の名前です(有報に書かれた名前のまま使っています)。
4️⃣ 直近の決算の数字(有価証券報告書 第63期)
有価証券報告書 第63期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月22日提出)の連結の数字です(日本基準)。東京エレクトロンは3月決算で、その後の四半期の決算短信(2026年4〜6月期)は、上の注意書きのとおり当サイトでは取得できていません。有報の財務諸表(決算書)は、会社の外の監査法人による監査(決算の数字が正しいかを確かめること)を受けています。確認日は2026-10-17です。
| 指標(連結・日本基準) | 第63期(2025/4〜2026/3) | 第62期(前期・2024/4〜2025/3) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 約2兆4,435億円 | 約2兆4,316億円 | +0.5% |
| 売上総利益 | 約1兆1,079億円 | 約1兆1,463億円 | −3.4% |
| 売上総利益率 | 45.3% | 47.1% | −1.8ポイント |
| 販売費及び一般管理費 | 約4,829億円 | 約4,490億円 | +7.6% |
| うち研究開発費 | 約2,779億円 | 約2,500億円 | +11.1% |
| 営業利益 | 約6,249億円 | 約6,973億円 | −10.4% |
| 営業利益率 | 25.6% | 28.7% | −3.1ポイント |
| 経常利益 | 約6,303億円 | 約7,077億円 | −10.9% |
| 特別利益 | 約1,207億円 | 約0.3億円 | — |
| 税金等調整前当期純利益 | 約7,482億円 | 約7,061億円 | +6.0% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 約5,745億円 | 約5,441億円 | +5.6% |
| 1株当たり当期純利益(EPS) | 1,254.57円 | 1,182.40円 | — |
| 自己資本利益率(ROE) | 29.6% | 30.3% | — |
| 自己資本比率 | 71.5% | 70.1% | — |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 約5,397億円 | 約5,822億円 | −7.3% |
| 設備投資額(会社の記載) | 2,160億円 | — | — |
| 1株当たり配当額(東京エレクトロン単体の数字) | 628円 | 592円 | +36円 |
出典:有価証券報告書 第63期「主要な経営指標等の推移」「経営者による分析」「設備投資等の概要」「研究開発活動」・連結損益計算書(2026-06-22提出)。億円の数字は有報の百万円から当サイトが計算したもの(億円未満四捨五入。前期の特別利益は31百万円のため小数で示しています)。売上高・売上総利益・販売費及び一般管理費・研究開発費・営業利益・経常利益・税金等調整前当期純利益・当期純利益の増減の率と、売上総利益率・営業利益率とその増減は、有報の「経営者による分析」「研究開発活動」の記載。前期の売上総利益率・営業利益率と、営業活動によるキャッシュ・フローの増減の率は、当サイトが有報の数字から計算したもの。前期の設備投資額は、この記事で読んだ範囲では確かめていないため「—」としています。第63期の1株当たり配当額628円は、中間配当(期の途中で払う配当)264円と期末配当(期末の後に払う配当)364円の合計です。1株当たりの数字は、2026年10月1日付の株式分割(1株→5株の予定)の前の物差しです。確認日:2026-10-17。
会社は第63期について、「売上高については、2期連続で過去最高を更新しました。」と書いています。一方で利益の面では、「原材料の高騰や人件費の増加等の影響により売上総利益率は45.3%(前連結会計年度比1.8ポイント減)となり」と書き、研究開発を積極的に進めた結果、営業利益率は25.6%(前期比3.1ポイント減)になったと説明しています。販売費及び一般管理費の売上高に対する割合は、会社の記載で19.7%(前期比1.3ポイント増)、研究開発費の売上高に対する割合は11.4%(同1.1ポイント増)でした(出典:同有報「経営者による分析」「研究開発活動」)。
営業利益の下の段にも、前期と比べるときに知っておきたい項目があります。経常利益の計算では、本業以外の費用として為替差損(外国のお金で持っている資産などを円に直したときに、為替の動きで出た損。逆に出た利益は為替差益)約46億円(前期 約9億円)が入っています。さらに会社の説明では、第63期の特別利益 約1,207億円は、主に政策保有株式(取引先との関係を保つなどの目的で持っている他社の株式)の一部を売って計上した投資有価証券売却益 約1,155億円によるものです。このため、営業利益と経常利益は前期より減った一方で、税金等調整前当期純利益と当期純利益は前期より増えています。会社は、資本効率を高める施策として政策保有株式の一部を売ったと書いています。こうした売却益が今後も出るかどうかは、この記事で読んだ範囲の有報には書かれていないため、この記事でも書きません。特別損失には、後で紹介する台湾の子会社の件の損失の見込み額(訴訟損失引当金繰入額 約7億円)が入っています(出典:同有報「経営者による分析」・連結損益計算書と注記)。
5期の数字では、売上高は約2兆38億円(第59期)、約2兆2,090億円、約1兆8,305億円、約2兆4,316億円、約2兆4,435億円(第63期)と動きました。親会社株主に帰属する当期純利益は、約4,371億円、約4,716億円、約3,640億円、約5,441億円、約5,745億円です。第61期(2024年3月期)は、前の期と比べて売上高が約17.1%、当期純利益が約22.8%減りました(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」、増減の率は当サイトの計算)。この記事で読んだ範囲の有報には、第62期より前の年ごとの増減の理由の説明はないため、理由は書きません。
株主への還元について、会社は有報の「配当政策」で、業績に連動した配当を基本とし、親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向(利益のうち配当に回す割合)50%をめどにすると書いています。ただし、1株当たりの年間配当金は50円を下回らないこととし、2期連続で当期利益を生まなかった場合は配当金の見直しを検討するとしています(この50円は、有報の提出時点の書き方のままです)。自己株式の取得については、機動的に(状況に応じて)実施を検討するとしています。第63期の配当金の支払いは約2,716億円、自己株式の取得による支出は約1,500億円で、会社は、配当と自己株式の取得で合わせて4,216億1千5百万円を株主に還元し、これはフリーキャッシュ・フロー(会社の定義=営業活動と投資活動のキャッシュ・フローの合計で、定期預金や短期投資の増減を除いたもの)4,332億4千8百万円の97%にあたると書いています(出典:同有報「配当政策」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「経営者による分析」)。
自己株式(会社が買い戻した自社の株)については、2026年2月6日の取締役会の決議にもとづく取得(上限750万株・1,500億円、取得期間は2026年2月9日〜3月31日。取得したのは3,620,400株・149,997百万円)が有報に載っています(会社は経営方針の項では、この取得を「1,499億円」と書いています)。第63期末に会社が持っている自己株式は15,474,275株で、2026年4月30日に、そのうち3,600,000株を消却しました。さらに2026年5月29日の取締役会で、新しい取得枠(上限750万株・1,500億円、取得期間は2026年6月1日〜2027年3月31日)を決めています。株式分割の後は、上限の株数を3,750万株に読み替えるとしています。会社は、市場環境などによって一部または全部の取得が行われない可能性があるとも書いています(出典:同有報「自己株式の取得等の状況」・連結財務諸表注記「重要な後発事象」)。
お金の使い方では、第63期の設備投資額は2,160億円(会社の記載)で、会社は、売上の拡大にともなう増産への対応と、研究開発用の機械装置などに投資したと書いています。宮城県と熊本県の子会社で新しい開発棟が、岩手県の事業所で生産・物流棟ができあがり、宮城県では新しい生産棟を建設中(2027年夏にできあがる予定)としています。有形固定資産(土地・建物・機械など)の約7割(589,335百万円のうち419,957百万円・当サイトの計算で71.3%)が日本にあります。会社は、2025年3月期からの5年間の成長投資の計画として、研究開発投資1.5兆円以上、設備投資7,000億円以上、グローバルで約10,000人の人材採用(いずれも5年の累計)を挙げています。これは会社の計画で、当サイトの予測ではありません(出典:同有報「設備投資等の概要」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」・連結財務諸表注記「セグメント情報等」)。
5️⃣ 会社自身が挙げているリスク
以下は有価証券報告書(第63期)の「事業等のリスク」から、会社自身が挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社はリスクを16項目挙げていて、これらは会社に関するすべてのリスクを網羅したものではない、とも書いています。ここではそのうち5つを紹介します。原文はEDINET掲載の有価証券報告書でご確認ください。
- ①市場変動:「当社グループの売上高は、最先端の大手半導体メーカー等を中心とした投資動向の影響を受けやすい傾向にあります。」と書いています。半導体の市場が急に縮んだり、需要と供給のバランスが悪くなったり、半導体の価格が変わったりして顧客の投資が急に縮んだ場合、つくり過ぎによる在庫の増加や、顧客の財務状況の悪化による貸し倒れのリスクが発生するとしています。逆に需要の急な増加に対応できなかった場合も、販売の機会を逃すなど業績に影響する可能性があるとしています。対策として、市場環境や受注の状況を取締役会などで定期的に確かめ、設備投資や人員・在庫の計画を見直すことなどを挙げています。
- ②研究開発:最先端の技術への研究開発と新製品の早い投入で、高い市場シェアと高い利益率を実現してきたとする一方、顧客の技術の要求に応える新製品を時期を逃さずに出せない場合や、新製品が顧客の要求に合わなかった場合、競合他社の新しい技術・製品が先に出た場合には、製品の競争力を失い、開発費の回収が難しくなるなど、業績に影響する可能性があるとしています。
- ③地政学:売上高に占める海外売上高の割合が高く、さまざまな国・地域で事業をしているため、地政学的な対立や地域の紛争が各国の安全保障・外交・産業・環境の政策に影響し、その結果、供給網への影響やマクロ経済(国や世界全体の経済)の悪化などが起きることで、事業活動が制約され、業績に影響する可能性があるとしています。製品の輸出入や技術開発に関する規制の影響を分析しているとも書いています。
- ④調達・生産・供給:「当社グループは、主要な生産拠点を日本国内に有し、国内外の顧客に製品を供給しております。」と書き、国内の地震や風水害などで生産が止まり、復旧に時間がかかる場合には、顧客に製品をタイミングよく供給できない可能性があるとしています。サプライヤーの経営の悪化、供給能力を上回る需要、法改正や働く人口の減少、地政学リスクなどで部品の調達や物流が滞った場合も挙げています。対策として、代わりに生産できる体制づくりや建物の耐震の強化、重要な部品の調達先を複数にすることなどを挙げています。
- ⑤リーガル(法令):輸出入、環境、競争、営業秘密の保護、労働、汚職・贈賄の防止、経済安全保障など、さまざまな分野の各国の法令・規制の制約を受けているとし、法令・規制に違反した場合には、社会的な信用の低下、課徴金・損害賠償、事業の制限などが起きる可能性があるとしています。安全保障上の政策や思いがけない法令・規制の改正にうまく対応できなかった場合の費用の負担や事業の制限も挙げています。
出典:有価証券報告書 第63期「事業等のリスク」(2026-06-22提出、2026-10-17確認)。原文のリスクには、このほか安全、品質、環境対応、知的財産、情報セキュリティ、人材、感染症・自然災害等、ファイナンス、M&A(会社の買収など)、IT&オペレーション、拠点展開が並んでいます。ファイナンスの項で会社は、急な為替の変動があった場合に業績に影響する可能性を挙げる一方、「当社製品の取引を原則円建てで行っていることに加えて、一部の外貨建売上等についても為替予約などによるリスクヘッジを行っております。」と書いています(為替予約=将来の決められた日に、決められた為替レートで通貨を交換する約束。リスクヘッジ=損失が出る可能性を小さくするための手当て)。税務当局との見解の違いによる追加の税負担の可能性も挙げています。なお会社は、受注の実績を有報に載せていません。その理由として、短い期間の受注の動きは顧客の投資の動きで大きく変わる傾向があり、中長期の会社の業績を予測するための指標としてふさわしいとは限らないため、と説明しています(出典:同有報「経営者による分析」)。受注=顧客から注文を受けることです。地政学=国どうしの関係や地理的な条件が、政治や経済に与える影響のことです。課徴金=法令の違反に対して、国などが納めさせるお金です。
6️⃣ 上がる材料/下がる材料
ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。
以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。
※ 材料の数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来の予測は行っていません。投資有価証券売却益は、上がる材料(当期純利益に含まれる)と下がる材料(営業利益・経常利益は減った)の両方に書いています。逼迫=需要に対して供給が足りず、余裕がないことです。台湾元=台湾の通貨です。
7️⃣ これから何を見れば分かるか
次の決算(2027年3月期 第2四半期)の発表日は、当サイトの決算予定データ earnings-calendar.json では2026年10月30日(取引時間のあと)となっていますが、これは自動で集めた仮の日付(変更の可能性あり)で、当サイトは会社の一次情報では確かめていません。会社のIRサイト(投資家向けの情報を載せたページ)でご確認ください。会社は有報で、中期経営計画(会社が、数年先までの目標と取り組みをまとめた計画)の財務モデルの指標として売上高・営業利益率・ROEを使い、2027年3月期を目標の年度にしていると書いています(目標の数字は会社の計画で、この記事では書きません)。会社は、有報の将来に関する記述は、その時点の情報にもとづく一定の前提によるもので、「当社グループとしてその実現を約束する趣旨のものではありません。」と書いています。この記事で挙げた材料がその後どうなったかは、次の開示で確かめられます。
- 売上高と、新規装置・フィールドソリューション他の内訳:第63期は売上高 約2兆4,435億円・新規装置 約1兆8,172億円・フィールドソリューション他 約6,263億円。どちらが伸びたか、減ったか
- 利益率:第63期は売上総利益率45.3%・営業利益率25.6%。会社が挙げた原材料の高騰や人件費の増加、研究開発費の増加が、その後どう書かれるか
- 地域と顧客の偏り:第63期は中国34.1%・韓国22.3%・台湾20.5%、主な2社で28.0%。地域別・相手先別の数字は、次の有報(第64期)で確かめられます
- 本業以外の項目:第63期の当期純利益に含まれた投資有価証券売却益のような項目が、次の期にあるかどうか
- 株主還元と1株当たりの数字:配当(配当性向50%をめどとする方針)と自己株式の取得(取得期間は2027年3月31日まで)の実績。1株当たりの数字を見るときは、株式分割(2026年10月1日付・1株→5株の予定)の前後どちらの物差しかを注記で確かめてください
有価証券報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説に、株式分割で1株当たりの数字がどう変わるかはこちらの解説にまとめています。
8️⃣ まとめ
結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①売上高と、新規装置・フィールドソリューション他の内訳(新しい装置の販売と、納入した装置まわりの売上の動きの違い)、②地域と顧客の偏り(中国・韓国・台湾の割合と、主な2社への売上の割合)、③利益率と本業以外の項目(売上総利益率・営業利益率と、投資有価証券売却益などの項目のあるなし)。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。
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⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事は金融庁の開示システム(EDINET)に提出された有価証券報告書などの一次情報に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示、将来の業績・株価の予測、株価水準に関する評価的な断定は行っていません。会社の方針・目標・計画・見方として引用した内容は、あくまで「会社がそのように公表している」という事実の紹介です。文中に出てくる会社や工程の種類は、産業の構造を説明するための一般名で、特定の会社の株式をおすすめするものではありません。投資には元本割れのリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。