🔬 ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)を数字で見る|医薬品と医療機器の2本柱をSEC開示資料で確認
「数字で見る、話題の企業」シリーズ第18回は、米国の医療ヘルスケアの会社 Johnson & Johnson(ティッカー:JNJ、以下「J&J」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が米国の証券取引委員会(SEC)に出した書類から、①事業の中身 ②産業のつながりの中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。
- J&J は、医療用の医薬品(会社の呼び方で「イノベーティブ・メディスン」)と医療機器(同「メドテック」)の2つの事業を持つ会社です。2025年度の売上高は941.93億ドルで、約64.1%が医薬品、約35.9%が医療機器でした
- 2026年6月29日〜9月27日の13週間(第3四半期)は、売上高が前年同期より5.9%増えて253.99億ドルでした。一方、純利益は2.10億ドルで前年同期より95.9%減りました。会社は、卵巣がんをめぐるタルク(滑石)訴訟の解決案に関わる特別な費用などが入ったと説明しています
- 会社は10月13日に2026年の通期の見通しを引き上げたと公表しています。その前の7月29日には、買収・提携の影響で調整後EPSの見通しを一度引き下げていました(どちらも会社の見通しで、当サイトの予測ではありません)
- 「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典つきで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
earnings-calendar.json)の米国企業から、決算発表が2営業日前〜14日前の会社を機械的に探しています。該当は2026年10月13日(米国時間)に発表した2社で、そのうち1社は、直近14日以内の当サイトのニュース記事で扱われていたため、手順どおり見送りました(ニュース記事と同じ会社を短い間隔で重ねないための決まりです)。残った J&J を選びました。J&J の決算発表は10月13日で、発表の当日・翌日ではありません。本シリーズでの J&J の掲載は今回が初めてで、当サイトの解説記事・ニュース記事で J&J を主役にしたものもありません。株価や時価総額の話は、この記事では扱いません。1️⃣ ジョンソン・エンド・ジョンソンはどんな会社か
J&J は、医療の分野の幅広い製品の研究開発・製造・販売を行う会社です。本社は米国ニュージャージー州ニューブランズウィックにあり、会社自体は持株会社(グループの会社の株を持って全体をまとめる会社)で、世界のほぼすべての国で事業を営む会社をグループに持つと、会社は10-Kに書いています。2025年12月28日時点の従業員は約14万800人(フルタイムに換算すると約13万8,200人分)です(同じ10-Kの冒頭の文は、約13万8,200人を従業員の数として書いています。出典:10-K「Item 1. Business」、2026-10-16確認)。株式は米国のニューヨーク証券取引所で取引されています(同出典の表紙)。
会社は事業を2つの区分(セグメント)に分けて公表しています(同出典)。
- イノベーティブ・メディスン(Innovative Medicine):医師の処方で使う医療用の医薬品の事業です。がん(腫瘍)、免疫の病気(関節リウマチ・乾癬・炎症性の腸の病気など)、神経科学(気分の障害・統合失調症など)、肺高血圧症、感染症(HIV など)、循環器と代謝の6つの分野に取り組んでいると、会社は書いています
- メドテック(MedTech):医療機器の事業です。心臓・血管の治療に使う機器、整形外科(人工の関節・骨折の治療・背骨など)、外科手術の器具(手術用の機器・縫合など)、目の分野(コンタクトレンズ・目の手術の機器)の4つの分野があります
2025年度の売上高(原文 Sales to customers)は941.93億ドルで、医薬品の区分が604.01億ドル、医療機器の区分が337.92億ドルでした(出典:10-K、2026-10-16確認)。地域で見ると、米国の会社の売上が約538億ドルで全体の約57%を占め、米国の外が約43%(欧州 約23%、米国を除く南北アメリカ 約5%、アジア太平洋・アフリカ 約15%)です(同出典。約57%は当サイト計算)。会社は10-Kで、日本を、EU・英国・中国と並んで、政府が医療費の負担に深く関わり、直接・間接に価格の管理などを行う主要な市場の1つとして挙げています(英語の原文を当サイトが要約)。
会社の最大の製品は、多発性骨髄腫(血液のがんの一種)の薬 DARZALEX(ダラザレックス)の系統で、2025年度の総収入の約15.0%を占めたと会社は書いています。2番目が免疫の病気の薬 STELARA(ステラーラ)で約6.5%、3番目が同じく免疫の病気の薬 TREMFYA(トレムフィア)で約5.5%です(出典:10-K「Item 1. Business」の特許の節)。製品名は売上の説明のための事実として挙げており、製品の効き目や安全性について述べるものではありません。
2️⃣ どのつながりの中にいるか
次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、J&J が「新しい薬や医療機器が研究されてから、患者や医療機関に届くまで」の工程のどこに立っているかを地図にして示します。医療の分野の特徴は、モノの流れ(研究→承認→製造→届ける)とは別に、「お金を払う側」の流れがあることです。会社は10-Kで、売上が公的な医療保険や民間の保険などの払い戻しに大きく左右されると書いています。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。
J&J が「研究」「臨床試験」「製造」の箱にいる根拠:10-Kによると、2025年度の研究開発費は146.65億ドルで、売上高の約15.6%にあたります(当サイト計算)。会社は、研究開発を自社の研究のほか、他社との共同研究・買収・ライセンス(他社の特許などを使う権利)でも進めていると書いています。製造では、グループの会社が63か所の工場(床面積 約1,036万平方フィート。医薬品の区分と医療機器の区分でほぼ半分ずつ)を運営していると「Item 2. Properties」に書かれています。一方で、会社は一部の製品の製造と部材の供給を外部の会社に頼っているとも書いています(出典:10-K「Item 1」「Item 1A」「Item 2」「Item 7」、2026-10-16確認)。
前後の工程にいる会社の種類:川上には、新しい薬の種を研究する大学や研究機関、小さなバイオの会社(生き物のしくみを使った薬などを研究する会社)、臨床試験の実施を請け負う会社、薬の原料や医療機器の部品を作る会社、製造を請け負う会社があります。川下には、医薬品や医療機器の卸、病院や診療所、薬局がいます。会社は10-Kで、2025年度に3社の卸が、値引きなどを差し引く前の売上(原文 gross revenues)のそれぞれ約21.8%・15.5%・11.1%を占めたと書いています。さらにその外側に、公的・民間の保険や、薬の給付を管理する会社がいます。同じ箱には、ほかの大手の製薬会社や医療機器メーカー、特許が切れた薬と同じ成分の薬(ジェネリック)や、それに近い仕組みのバイオの薬(バイオシミラー)を作る会社がいて、10-Kはこれらを競争相手の種類として挙げています。
つながりが細る条件:会社は10-Kのリスク要因で、保険など費用を払う側が、医療費を抑えるために払い戻しの価格を下げる圧力をかけていると書いています。また、特許が切れたり、特許に異議を申し立てられたりすると、同じ成分の薬やバイオシミラーが出て、その製品の売上の大きな部分を短い期間で失うことがあるとしています。外部の製造の会社や部材の供給元に問題が起きると、遅れや費用の増加につながり得るとも書いています(出典:同10-K「Item 1A. Risk Factors」)。つまり、⑥の箱(使われる場所)と「お金を払う側」の条件が変わると、①から⑥までのつながりの太さそのものが変わり得ます。
3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事
確かめられる出来事だけを並べた年表です。原因の決めつけや物語にすることは避けています。SECの書類に無い古い出来事(創業など)は、英語版ウィキペディアで確かめた行で、そう明記しています。
| 年月 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1886年 | ロバート・ウッド・ジョンソン氏が兄弟と、すぐに使える殺菌済みの手術用の包帯などの製品をつくり、会社を始めた | 英語版ウィキペディア「Johnson & Johnson」(2026-10-16確認) |
| 1887年 | ニュージャージー州で会社として設立 | 10-K「Item 1. Business」(2026-10-16確認) |
| 1920年 | アール・ディクソン氏が、自社の製品のテープとガーゼを組み合わせた、商品としての絆創膏を考案(翌年に発売) | 英語版ウィキペディア「Johnson & Johnson」 |
| 1961年 | ベルギーの医薬品の会社 Janssen(ヤンセン)を買収 | 英語版ウィキペディア「Johnson & Johnson」 |
| 2023年5月・8月 | 一般向けの製品の事業(Kenvue)の株式を5月に公開し、8月23日に株式の交換の手続き(エクスチェンジ・オファー)で80.1%分を手放して切り離した | 10-K 注記(Note 1・Note 21) |
| 2023年 | タルクを使ったベビーパウダーの販売を世界で終えた(会社は、製品の構成を見直す中での商業上の判断と説明) | 8-K 付属資料(2026-07-27) |
| 2024年5月 | 心臓・血管の治療機器の会社 Shockwave を買収(31日) | 10-K「Item 7」の医療機器の売上の表の注 |
| 2025年1〜3月ごろ(第1四半期) | タルク関連の請求をまとめて解決するために、会社がグループ会社を通じて申し立てた3回の破産手続きは、いずれも最終的に退けられた。これを受けて、そのために積んでいた約70億ドルを2025年の第1四半期に戻し入れた(3回の手続きがそれぞれいつ退けられたかは、この10-Qには書かれていない)。以後、訴訟は通常の裁判の手続きに戻った | 10-Q 第2四半期「Note 11」 |
| 2025年4月 | 神経科学の薬 CAPLYTAを持つ Intra-Cellular Therapies を買収(2日) | 10-K「Item 7」の医薬品の売上の表の注 |
| 2025年10月 | 整形外科の事業を切り離す意向を発表。最初の発表から18〜24か月以内の完了を目標とし、複数の方法を検討するとした | 10-K「Item 1. Business」 |
| 2026年1月 | 米国の患者の薬へのアクセスの改善と費用の引き下げについて、米国の政権と合意 | 10-K「Item 1. Business」の規制の節 |
| 2026年7月27日 | 卵巣がんをめぐるタルク訴訟について、原告側の主な法律事務所と包括的な解決案で合意したと発表。残る請求の95%以上の参加などが条件 | 8-K(2026-07-28提出) |
| 2026年7月29日 | Firefly Bio の買収を完了(会社は、がんの分野の研究を進めるためと説明)し、Sail Biomedicines との提携を発表 | 8-K(2026-07-29提出) |
| 2026年9月1日 | 医薬品の事業の責任者(執行副社長)が退任(8月4日に発表) | 8-K(2026-08-04提出) |
| 2026年10月13日 | 第3四半期の決算を発表。2026年の通期の会社の見通しを引き上げた | 8-K 決算発表資料(2026-10-13提出) |
4️⃣ 直近の決算の数字(2026年 第3四半期)
2026年6月29日〜9月27日の13週間(第3四半期。2026年10月13日発表)の数字です。前年同期(2025年9月28日に終わった第3四半期)と並べています。数字は決算発表資料(8-K)からで、確認日は2026-10-16です。
| 指標 | 2026年 第3四半期 | 2025年 第3四半期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 253.99億ドル | 239.93億ドル | +5.9% |
| うち医薬品(イノベーティブ・メディスン) | 167.57億ドル | 155.63億ドル | +7.7% |
| うち医療機器(メドテック) | 86.42億ドル | 84.30億ドル | +2.5% |
| うち米国 | 149.59億ドル | 137.08億ドル | +9.1% |
| うち米国の外 | 104.40億ドル | 102.85億ドル | +1.5% |
| 売上総利益率(売上高に対する割合) | 68.1% | 69.6% | −1.5ポイント |
| 研究開発費 | 46.52億ドル | 36.72億ドル | +26.7% |
| その他の損益(費用の側) | 57.80億ドルの費用 | 4.78億ドルの収益 | — |
| 純利益 | 2.10億ドル | 51.52億ドル | −95.9% |
| GAAPのEPS(希薄化後) | 0.09ドル | 2.12ドル | −95.8% |
| 調整後の純利益(非GAAP) | 63.39億ドル | 68.01億ドル | −6.8% |
| 調整後EPS(非GAAP) | 2.59ドル | 2.80ドル | −7.5% |
出典:8-K 決算発表資料「Johnson & Johnson reports Q3 2026 results」・同 数字の表(Exhibit 99.2)(2026-10-13提出・監査前)。増減は会社の表の値(「うち医薬品」「うち医療機器」「うち米国」「うち米国の外」の行は、売上高の内訳です。区分の2行を足すと売上高に、地域の2行を足しても売上高になります)。売上総利益率の差は当サイト計算。確認日:2026-10-16。
売上高と純利益の向きがちがう理由(会社の説明):
- 売上高が増えた理由:会社は決算発表資料で、医薬品は為替の影響を除いて7.9%伸び、がんの分野の DARZALEX・CARVYKTI(カービクティ)・TECVAYLIなど、免疫の分野の TREMFYA、神経科学の分野の SPRAVATO・CAPLYTA などが伸びを支えたと書いています。一方で、STELARA の減少が医薬品の伸びを約6.9ポイント(原文 approximate 690 basis points)押し下げたとしています。医療機器は為替の影響を除いて2.5%伸び、心臓の不整脈の治療の機器、Shockwave の製品、コンタクトレンズ、骨折の治療の製品が伸びを支えたと書いています。
- 純利益が減った理由:会社は、第3四半期のEPSに、卵巣がんのタルク訴訟の解決案に関わる特別な費用(原文 special charge)と、Firefly Bio の買収、Sail Biomedicines との提携の影響が入っていると書いています。数字の表の調整表では、税引き前の「訴訟関連(Litigation related)」として55.19億ドル、整形外科の事業の切り離しに関わる費用として3.69億ドル、研究中の開発品の価値の減額(減損)として3.39億ドルなどを挙げています。調整後の純利益は、これらの特別な項目と無形資産の償却を除いた数字です。
9か月と通期の数字:2026年の最初の9か月(第1〜第3四半期)の売上高は747.71億ドルで、前年同期の696.29億ドルから7.4%増えました。純利益は109.79億ドルで、前年同期の216.88億ドルから49.4%減りました。前年同期の純利益には、タルク関連の破産手続きが退けられたことに伴う約70億ドルの戻し入れ(利益を増やす方向の項目)が入っていたと、会社は10-Qに書いています。2025年度の通期は、売上高が941.93億ドル(前の年度888.21億ドル・+6.0%)、純利益が268.04億ドル(同140.66億ドル)、GAAPのEPS(希薄化後)が11.03ドル(同5.79ドル)でした(出典:10-K・10-Q 第2四半期・8-K 第3四半期の数字の表、2026-10-16確認)。
タルク訴訟の状況(会社の開示の範囲):第2四半期の10-Qによると、2026年6月28日時点で、タルクを含むボディパウダー(主にベビーパウダー)の使用で健康被害を受けたとして、米国で約7万6,000人の原告が会社とグループ会社に訴えを起こしていました。原告側は、タルクを含む製品の使用でがんになったと主張しています。これに対し会社は、タルクの製品は安全だと考えていると書き、判決が出た裁判では会社の主張が認められた例がある一方、会社に不利な評決もあり、その多くは控訴審で覆されたとしています。同じ時点の、タルク関連の準備金(将来の支払いに備えて計上しておく金額)は、現在の価値に直して約37億ドルでした。そのあと会社は2026年7月27日の8-Kで、卵巣がんをめぐる残りの請求について、原告側の主な法律事務所と解決案で合意したと発表しました。残る請求の95%以上が明示的に参加することなどが条件で、請求ごとに支払う形、会社の負担の約束は55億ドル、最初の支払いは2027年に30億ドル以内、2028年より前に追加の支払いはない、という内容です。会社は同じ資料で、7月22日に、訴訟をまとめて扱う連邦の裁判所が、原告側に対し、残りの請求を退けるべきでない理由を示すよう命じたと説明しています(いずれも会社の資料による説明です)。解決案が条件を満たして成立するかどうかは、この記事の確認日の時点の開示からはわかりません。訴訟の中身の正しさや結果について、この記事は判断しません(出典:10-Q 第2四半期「Note 11」・8-Kと付属資料、2026-10-16確認)。
お金の出入り・配当・自社株の買い付け:会社は決算発表資料で、2026年の最初の9か月のフリーキャッシュフロー(営業活動で入ったお金から設備への投資を引いた、会社独自の計算の数字・非GAAP)を約151億ドル(10月13日時点の見積もり・前年同期142.26億ドル)としています。2025年度に払った配当は1株5.14ドル(前の年度4.91ドル)で、会社は配当を63年続けて引き上げたと10-Kに書いています。2026年は、1株1.30ドル(1月に決定)、1.34ドル(4月と7月に決定)の四半期ごとの配当を決めています。また会社は、2026年の最初の6か月に、自社の株の買い付けに42.53億ドル(自社株の買い付けにかかる税を含む)を使いました。会社はこの買い付けを、報酬の制度に使う株を手当てするための計画的な買い付けと説明しています(出典:10-K・10-Q 第2四半期・8-K、2026-10-16確認)。
5️⃣ 会社自身が挙げているリスク
以下は、会社がSECに出した10-K(2025年度)の「Item 1A. Risk Factors(リスク要因)」で、会社自身が開示しているリスクの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズでいちばん大事にしている情報です。原文はSEC EDGARの J&J の提出書類一覧から確かめられます。
- ①医療費の抑制と価格の圧力:医薬品と医療機器の売上は、公的な医療保険や民間の保険などの払い戻しに大きく左右され、費用を払う側が払い戻しの価格を下げる圧力をかけていると書いています。米国では、2022年に成立した法律(インフレ抑制法=IRA)で、高齢者向けの公的保険(メディケア)の一部の薬に、政府が定める価格が2026年から適用されており、今後さらに対象の製品が増え得るとしています。10-Kの規制の節では、2026年から STELARA と XARELTO(イグザレルト)などがその対象で、2028年の対象に ERLEADA(アーリーダ)が入ったと書いています。あわせて、メディケアを運営する米国の役所(CMS)が、2027年から XARELTO と STELARA をこの対象から外すと示したとも書いています。米国の外でも、日本・EU・英国・中国などの主要な市場で、政府が直接・間接に価格を管理しているとしています。
- ②特許への挑戦と特許切れ:主力の医薬品について、特許が切れる前にジェネリックやバイオシミラーを売ろうとする会社からの特許への挑戦が増えていると書いています。特許を守れなかったり、他社が先に発売したりすると、その製品の売上の大きな部分を短い期間で失うことがあるとしています。10-Kの事業の節では、STELARA のバイオシミラーの発売が世界で続き、その売上に引き続き悪い影響が出る見込みだと書いています。最大の製品 DARZALEX については、他社が持ち J&J が独占的なライセンスを受けている2つの特許の系統が、米国で2029年に切れると書いています(DARZALEX の製剤〔皮下注射の FASPRO と点滴の IV〕については、グループ会社が別の特許を持っているとも書いています)。
- ③大きな訴訟:製品の責任、特許、販売や価格のやり方などをめぐって多くの訴訟があり、数千人の原告がいる訴訟や、何年も解決しない訴訟もあると書いています。例として、タルクを含むボディパウダーの訴訟を挙げ、会社には十分な反論の材料があると考えているものの、最終的な結果は予測できず、引当金を超える支払いが必要になる可能性もあるとしています。会社は製品の責任について外部の保険を買っておらず、グループの保険会社を使っているとも書いています。
- ④新しい製品の開発の見通しにくさ:成長は、新しい製品を生み出せるかにかかっていると書いています。2025年の売上の約25%は、過去5年に出した新しい製品によるものでした。一方で、医薬品の研究開発のうち、商品になるものはごく一部で、臨床試験の結果や承認の時期、承認のあとに売れるかどうかは見通しにくいとしています。米国の規制当局の予算や人員が減れば、審査が長くなることもあり得ると書いています。
- ⑤整形外科の事業の切り離し:計画している整形外科の事業の切り離しは、想定した条件や時期で完了しないかもしれず、完了しても期待した効果が得られないかもしれないと書いています。切り離しの費用は大きく、切り離したあと、会社の株価が大きく動くことがあり得るとも書いています。
出典:10-K「Item 1. Business」「Item 1A. Risk Factors」(2026-02-11提出)の要旨(英語の原文を当サイトが要約したもの)。確認日:2026-10-16。原文には、このほかにも競争、製造の中断や遅れ、外部の製造の会社への依存、偽物の製品、税、為替、各国の政治や経済、人材の確保、気候の変化、サイバー攻撃、個人情報の保護などの項目が並んでいます。
6️⃣ 上がる材料/下がる材料
ここがこの記事の主役です。会社の開示で確かめられる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。タルク訴訟の解決案は、両側で書き分けています。7月の買収・提携は、会社が示した利益の見通しへの影響を右側に置き、会社が説明する目的(Firefly Bio の買収は、がんの分野の研究を進めるため)は§3の年表に載せています。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。
※ 材料の数は左右5件ずつでそろえています。上の内容は開示の要約で、どちらが重いかの判断や将来の予測はしていません。調整後の数字・為替の影響を除いた伸び・フリーキャッシュフローは、会社が独自に計算した非GAAPの指標です。製品名は売上の説明のための事実として挙げており、効き目や安全性について述べるものではありません。
以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。
7️⃣ これから何を見れば分かるか
第3四半期の10-Q(四半期報告書)は、この記事の確認日の時点でまだ提出されていません。次の決算(2026年の第4四半期と通期)の発表日は、当サイトの決算予定データ(earnings-calendar.json)にも、この記事で確かめた会社の書類にも書かれていないため、この記事では日付を書きません。会社のIRサイト(投資家向けの情報のページ)で確かめてください。なお、2026年度は53週の年です(10-K)。この記事で挙げた材料は、次のところで確かめられます。
- タルク訴訟の解決案が条件(残る請求の95%以上の参加など)を満たしたか、準備金の大きさ→第3四半期の10-Qの訴訟の注記と、2026年度の10-K
- 会社が公表した通期の見通し(売上高1,010〜1,014億ドル・調整後EPS 11.05〜11.15ドル)と、実際の数字→次の8-K 決算発表資料
- STELARA の減り方と、がん・免疫の分野の新しい製品の伸び→次の決算発表資料の製品別の売上の表
- メディケアの政府が定める価格の対象と、その影響についての会社の説明→2026年度の10-Kの規制の節とリスク要因
- 整形外科の事業の切り離しの進み具合と、その費用→次の10-Q・10-K と、関連する8-K
いずれもSEC EDGAR(米国の証券取引委員会の開示システム)と会社のIRサイトで、無料で確かめられます。
8️⃣ まとめ
結論は出しません。J&J は、医療用の医薬品と医療機器の2つの事業を持ち、2025年度の売上高の約64.1%を医薬品、約35.9%を医療機器が占めた会社です。2026年の第3四半期は売上高が5.9%増えた一方、タルク訴訟の解決案に関わる特別な費用などで、純利益は95.9%減りました。会社自身は、医療費の抑制と価格の圧力、特許への挑戦と特許切れ、大きな訴訟、新しい製品の開発の見通しにくさ、整形外科の事業の切り離しなどをリスクとして挙げています。次の決算と開示で見るべき指標はこの3つです。①タルク訴訟の解決案が条件を満たしたかと、それについての会社の説明 ②STELARA の減少と、新しい製品の伸びの差し引き ③会社の通期の見通しと実際の数字の比較。どう見るかは、読者ご自身の判断にゆだねます。
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⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事は米国の証券取引委員会(SEC)に提出された公開資料(Form 10-K・10-Q・8-K)等の一次情報に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示、将来の業績・株価の予測、株価水準に関する評価的な断定は行っていません。会社の見通しとして引用した内容は、あくまで「会社がそのように公表している」という事実の紹介です。記事中の製品名は売上の説明のために挙げたもので、医薬品・医療機器の効き目や安全性を示すものではありません。訴訟については会社の開示の範囲で事実を紹介したもので、その中身や結果を判断するものではありません。投資には元本割れのリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。