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🔬 数字で見る、話題の企業
⚠️ 本記事は公開情報(米SEC提出資料等の一次情報)に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示や将来の業績・株価の予測は行っていません。医薬品・医療機器の効き目や安全性について述べるものでもありません。投資には元本割れリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。

🔬 ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)を数字で見る|医薬品と医療機器の2本柱をSEC開示資料で確認

公開日:2026年10月16日 / 読了時間:約17分 / カテゴリ:数字で見る企業(第18回・海外株)

「数字で見る、話題の企業」シリーズ第18回は、米国の医療ヘルスケアの会社 Johnson & Johnson(ティッカー:JNJ、以下「J&J」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が米国の証券取引委員会(SEC)に出した書類から、①事業の中身 ②産業のつながりの中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。

📌 30秒でわかるこの記事
  • J&J は、医療用の医薬品(会社の呼び方で「イノベーティブ・メディスン」)と医療機器(同「メドテック」)の2つの事業を持つ会社です。2025年度の売上高は941.93億ドルで、約64.1%が医薬品、約35.9%が医療機器でした
  • 2026年6月29日〜9月27日の13週間(第3四半期)は、売上高が前年同期より5.9%増えて253.99億ドルでした。一方、純利益は2.10億ドルで前年同期より95.9%減りました。会社は、卵巣がんをめぐるタルク(滑石)訴訟の解決案に関わる特別な費用などが入ったと説明しています
  • 会社は10月13日に2026年の通期の見通しを引き上げたと公表しています。その前の7月29日には、買収・提携の影響で調整後EPSの見通しを一度引き下げていました(どちらも会社の見通しで、当サイトの予測ではありません)
  • 「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典つきで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
💡 なぜジョンソン・エンド・ジョンソンか(選定根拠):本シリーズは日本株を中心にする方針で、直近3本のうち海外株が1本以上あれば日本株、直近3本がすべて日本株のときだけ海外株を選べます。今回の直近3本(LINEヤフー・ディスコ・アドバンテスト)はすべて日本株だったため、海外株の番です。海外株の候補は、当サイトの決算予定データ(earnings-calendar.json)の米国企業から、決算発表が2営業日前〜14日前の会社を機械的に探しています。該当は2026年10月13日(米国時間)に発表した2社で、そのうち1社は、直近14日以内の当サイトのニュース記事で扱われていたため、手順どおり見送りました(ニュース記事と同じ会社を短い間隔で重ねないための決まりです)。残った J&J を選びました。J&J の決算発表は10月13日で、発表の当日・翌日ではありません。本シリーズでの J&J の掲載は今回が初めてで、当サイトの解説記事・ニュース記事で J&J を主役にしたものもありません。株価や時価総額の話は、この記事では扱いません。
数字の出どころと確認日(2026-10-16):この記事の数字は、米国の証券取引委員会(SEC)の開示システム(EDGAR)に出された次の書類から引いています。年次報告書(Form 10-K、2026年2月11日提出、2025年12月28日に終わった会計年度)、四半期報告書(Form 10-Q・第2四半期、2026年7月23日提出)、同(Form 10-Q・第1四半期、2026年4月22日提出)、臨時報告書(Form 8-K、2026年10月13日提出)に付いた第3四半期の決算発表資料(本文・数字の表)、2025年10〜12月の決算発表資料の数字の表(2026年1月21日提出)、2026年4〜6月の決算発表資料の数字の表(2026年7月15日提出)、2026年7月28日(7月27日付けの発表)・7月29日・8月4日提出の8-K。確認日はいずれも2026-10-16です。第3四半期の10-Qは、この記事の確認日の時点でまだ提出されていません(第3四半期の数字は決算発表資料からで、会社は資料を「unaudited(監査を受けていない)」としています)。「億ドル」の数字の出し方:書類の百万ドルの数字は100で割って億ドルにしています(端数はそのまま)。書類が「$5.5 billion」のように10億ドル単位で書いている数字は、10倍して億ドルにしています(例:$5.5 billion=55億ドル。小数が丸められている数字には「約」を付けます)。割合(%)のうち「約」が付くものは当サイトが計算したものです。円に換算した数字は書きません。
💡 用語メモ:10-K(フォーム10-K)は米国の上場企業が年に1回出す年次報告書、10-Qは四半期ごとの報告書、8-Kは決算発表や大きな出来事があったときに出す臨時報告書です。日本の有価証券報告書・四半期の報告・適時開示にあたります。GAAP(ギャップ)は米国で一般に認められた会計のルールで、非GAAPは、会社が特定の費用などを除いて独自に計算し直した数字です(J&J は「調整後(adjusted)」と呼び、買収で得た特許などの価値を毎年少しずつ費用にする「無形資産の償却」や、訴訟・事業の再編などの特別な項目を除いています)。EPS(1株あたり利益)は利益を株の数で割ったもので、希薄化後は将来増えるかもしれない株も数に入れて割った値です。為替の影響:米国の外の売上はドルに直して集計するため、ドルが高くなると数字が小さく、安くなると大きく見えます。J&J は、この影響を除いた伸びを「operational(為替の影響を除いた伸び)」として、非GAAPの数字で示しています。
💡 J&J の「年度」と「四半期」の区切り:J&J の会計年度は、12月の末日にいちばん近い日曜日に終わります(10-K の注記)。たとえば2025年度は2025年12月28日に終わりました。ふつうは1年が52週ですが、5〜6年に一度は53週になり、2026年度は53週の年だと会社は10-Kに書いています。四半期もほぼ暦どおりで、この記事の「2026年 第3四半期」は2026年6月29日〜9月27日、比べる前年の第3四半期は2025年9月28日に終わった3か月です。この記事では、取り違えを防ぐため「第3四半期(7〜9月ごろ)」のように月を添えて書きます。

1️⃣ ジョンソン・エンド・ジョンソンはどんな会社か

J&J は、医療の分野の幅広い製品の研究開発・製造・販売を行う会社です。本社は米国ニュージャージー州ニューブランズウィックにあり、会社自体は持株会社(グループの会社の株を持って全体をまとめる会社)で、世界のほぼすべての国で事業を営む会社をグループに持つと、会社は10-Kに書いています。2025年12月28日時点の従業員は約14万800人(フルタイムに換算すると約13万8,200人分)です(同じ10-Kの冒頭の文は、約13万8,200人を従業員の数として書いています。出典:10-K「Item 1. Business」、2026-10-16確認)。株式は米国のニューヨーク証券取引所で取引されています(同出典の表紙)。

会社は事業を2つの区分(セグメント)に分けて公表しています(同出典)。

💡 用語メモ:イノベーティブ・メディスンは、会社が自社の医薬品の事業につけている名前で、直訳すると「革新的な医薬品」です。メドテックは「メディカル・テクノロジー(医療の技術)」を縮めた言葉で、ここでは医療機器の事業のことです。どちらも会社の区分の名前で、製品の良し悪しを示す言葉ではありません。なお、J&J はかつて、一般の消費者向けの健康の製品(コンシューマー・ヘルス)の事業も持っていましたが、2023年に別の会社として切り離しました(§3の年表)。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの2025年度の区分別の売上高の構成と、医薬品の分野別・医療機器の分野別の構成 上:区分別の売上高(2025年度・合計941.93億ドル) イノベーティブ・メディスン(医薬品) 604.01億ドル(約64.1%) メドテック(医療機器) 337.92億ドル(約35.9%) 中:医薬品の分野別(2025年度・合計604.01億ドル) がん(腫瘍) 253.80億ドル(約42.0%) 免疫の病気 157.28億ドル(約26.0%) 神経科学 78.37億ドル(約13.0%) 肺高血圧症 44.37億ドル(約7.3%) 循環器・代謝など 37.78億ドル(約6.3%) 感染症 32.41億ドル(約5.4%) 下:医療機器の分野別(2025年度・合計337.92億ドル) 外科手術の器具 101.37億ドル(約30.0%) 整形外科 92.58億ドル(約27.4%) 心臓・血管 89.28億ドル(約26.4%) 目の分野 54.68億ドル(約16.2%) 分野の数字を足すと、四捨五入のため合計と0.01億ドルずれることがあります。
▲ 10-K「Item 7(経営者による分析)」の区分別・分野別の売上の表(百万ドル)をもとに作成(2026-10-16確認)。割合は当サイトが計算。分野の原文は Oncology・Immunology・Neuroscience・Pulmonary Hypertension・Cardiovascular / Metabolism / Other・Infectious Diseases(医薬品)、Surgery・Orthopaedics・Cardiovascular・Vision(医療機器)。※概念を示すイメージ図です。

2025年度の売上高(原文 Sales to customers)は941.93億ドルで、医薬品の区分が604.01億ドル、医療機器の区分が337.92億ドルでした(出典:10-K、2026-10-16確認)。地域で見ると、米国の会社の売上が約538億ドルで全体の約57%を占め、米国の外が約43%(欧州 約23%、米国を除く南北アメリカ 約5%、アジア太平洋・アフリカ 約15%)です(同出典。約57%は当サイト計算)。会社は10-Kで、日本を、EU・英国・中国と並んで、政府が医療費の負担に深く関わり、直接・間接に価格の管理などを行う主要な市場の1つとして挙げています(英語の原文を当サイトが要約)。

会社の最大の製品は、多発性骨髄腫(血液のがんの一種)の薬 DARZALEX(ダラザレックス)の系統で、2025年度の総収入の約15.0%を占めたと会社は書いています。2番目が免疫の病気の薬 STELARA(ステラーラ)で約6.5%、3番目が同じく免疫の病気の薬 TREMFYA(トレムフィア)で約5.5%です(出典:10-K「Item 1. Business」の特許の節)。製品名は売上の説明のための事実として挙げており、製品の効き目や安全性について述べるものではありません。

2️⃣ どのつながりの中にいるか

次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、J&J が「新しい薬や医療機器が研究されてから、患者や医療機関に届くまで」の工程のどこに立っているかを地図にして示します。医療の分野の特徴は、モノの流れ(研究→承認→製造→届ける)とは別に、「お金を払う側」の流れがあることです。会社は10-Kで、売上が公的な医療保険や民間の保険などの払い戻しに大きく左右されると書いています。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。

新しい薬と医療機器が研究されてから患者や医療機関に届くまでの工程。薬と医療機器のそれぞれで、研究、臨床試験、承認審査、製造、卸、病院や薬局の順につながり、その下に費用を払う保険の流れがある。ジョンソン・エンド・ジョンソンは研究、臨床試験、製造の箱に立つ 薬(医薬品)の流れ ① 研究 薬の候補を 見つける ② 臨床試験 人に使って 確かめる ③ 承認審査 国の規制当局 が判断する ④ 製造 自社の工場 一部は委託 ⑤ 卸・物流 医薬品の卸が 届ける ⑥ 病院・薬局 医師が処方し 患者へ 医療機器の流れ ① 研究開発 器具や装置を 設計する ② 臨床試験 人に使って 確かめる ③ 承認審査 国の規制当局 が判断する ④ 製造 自社の工場 一部は委託 ⑤ 卸・販売 卸や病院へ 届ける ⑥ 病院 医師が手術や 治療で使う お金を払う側:公的な医療保険(高齢者向けのメディケアなど)・民間の保険・薬の給付を管理する会社 薬や医療機器の値段と、保険からの払い戻しの決まりが、売上の大きさに関わる(10-K の記載) 矢印はモノと情報が流れる向きで、業績や株価が連動する向きではありません。 濃い枠=J&J が自社で担う箱(製造は一部を外部に委託)。
▲ J&J の10-K(事業・リスク要因・経営者による分析)の記載をもとに作成した工程の地図(2026-10-16確認)。箱の中は会社や機関の種類で、具体的な社名は入れていません。※概念を示すイメージ図です。
💡 用語メモ:臨床試験は、薬や医療機器の候補を、同意を得た人に使ってもらい、効き目や安全性を確かめる試験です(治験とも呼ばれます)。承認審査は、国の規制当局(米国では食品医薬品局=FDA)が、売ってよいかを判断する手続きです。医薬品の卸は、メーカーから薬を仕入れて病院や薬局へ届ける会社です。メディケアは、米国の主に65歳以上の人のための公的な医療保険です。薬の給付を管理する会社(原文 Pharmacy Benefit Managers=PBM)は、保険の代わりに薬の値段や払い戻しの交渉をする米国の会社です。

J&J が「研究」「臨床試験」「製造」の箱にいる根拠:10-Kによると、2025年度の研究開発費は146.65億ドルで、売上高の約15.6%にあたります(当サイト計算)。会社は、研究開発を自社の研究のほか、他社との共同研究・買収・ライセンス(他社の特許などを使う権利)でも進めていると書いています。製造では、グループの会社が63か所の工場(床面積 約1,036万平方フィート。医薬品の区分と医療機器の区分でほぼ半分ずつ)を運営していると「Item 2. Properties」に書かれています。一方で、会社は一部の製品の製造と部材の供給を外部の会社に頼っているとも書いています(出典:10-K「Item 1」「Item 1A」「Item 2」「Item 7」、2026-10-16確認)。

前後の工程にいる会社の種類:川上には、新しい薬の種を研究する大学や研究機関、小さなバイオの会社(生き物のしくみを使った薬などを研究する会社)、臨床試験の実施を請け負う会社、薬の原料や医療機器の部品を作る会社、製造を請け負う会社があります。川下には、医薬品や医療機器の卸、病院や診療所、薬局がいます。会社は10-Kで、2025年度に3社の卸が、値引きなどを差し引く前の売上(原文 gross revenues)のそれぞれ約21.8%・15.5%・11.1%を占めたと書いています。さらにその外側に、公的・民間の保険や、薬の給付を管理する会社がいます。同じ箱には、ほかの大手の製薬会社や医療機器メーカー、特許が切れた薬と同じ成分の薬(ジェネリック)や、それに近い仕組みのバイオの薬(バイオシミラー)を作る会社がいて、10-Kはこれらを競争相手の種類として挙げています。

つながりが細る条件:会社は10-Kのリスク要因で、保険など費用を払う側が、医療費を抑えるために払い戻しの価格を下げる圧力をかけていると書いています。また、特許が切れたり、特許に異議を申し立てられたりすると、同じ成分の薬やバイオシミラーが出て、その製品の売上の大きな部分を短い期間で失うことがあるとしています。外部の製造の会社や部材の供給元に問題が起きると、遅れや費用の増加につながり得るとも書いています(出典:同10-K「Item 1A. Risk Factors」)。つまり、⑥の箱(使われる場所)と「お金を払う側」の条件が変わると、①から⑥までのつながりの太さそのものが変わり得ます。

💡 用語メモ:特許切れは、新しい薬を独占的に作って売れる権利(特許)の期間が終わることです。終わると、ほかの会社が同じ成分の薬を作れるようになります。ジェネリックは、そうして作られる、同じ成分の薬です。バイオシミラーは、細胞などを使って作る薬(バイオの薬)について、特許が切れたあとに別の会社が作る、元の薬とほぼ同じ性質の薬です。
産業のつながりがあることと、株価が連動することは別です。同じ工程にいる会社でも、業績も株価も会社ごとに大きく異なります。ここでお伝えしているのは産業構造の事実であって、値動きの予想ではありません。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。

3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事

確かめられる出来事だけを並べた年表です。原因の決めつけや物語にすることは避けています。SECの書類に無い古い出来事(創業など)は、英語版ウィキペディアで確かめた行で、そう明記しています。

年月出来事出典
1886年ロバート・ウッド・ジョンソン氏が兄弟と、すぐに使える殺菌済みの手術用の包帯などの製品をつくり、会社を始めた英語版ウィキペディア「Johnson & Johnson」(2026-10-16確認)
1887年ニュージャージー州で会社として設立10-K「Item 1. Business」(2026-10-16確認)
1920年アール・ディクソン氏が、自社の製品のテープとガーゼを組み合わせた、商品としての絆創膏を考案(翌年に発売)英語版ウィキペディア「Johnson & Johnson」
1961年ベルギーの医薬品の会社 Janssen(ヤンセン)を買収英語版ウィキペディア「Johnson & Johnson」
2023年5月・8月一般向けの製品の事業(Kenvue)の株式を5月に公開し、8月23日に株式の交換の手続き(エクスチェンジ・オファー)で80.1%分を手放して切り離した10-K 注記(Note 1・Note 21)
2023年タルクを使ったベビーパウダーの販売を世界で終えた(会社は、製品の構成を見直す中での商業上の判断と説明)8-K 付属資料(2026-07-27)
2024年5月心臓・血管の治療機器の会社 Shockwave を買収(31日)10-K「Item 7」の医療機器の売上の表の注
2025年1〜3月ごろ(第1四半期)タルク関連の請求をまとめて解決するために、会社がグループ会社を通じて申し立てた3回の破産手続きは、いずれも最終的に退けられた。これを受けて、そのために積んでいた約70億ドルを2025年の第1四半期に戻し入れた(3回の手続きがそれぞれいつ退けられたかは、この10-Qには書かれていない)。以後、訴訟は通常の裁判の手続きに戻った10-Q 第2四半期「Note 11」
2025年4月神経科学の薬 CAPLYTAを持つ Intra-Cellular Therapies を買収(2日)10-K「Item 7」の医薬品の売上の表の注
2025年10月整形外科の事業を切り離す意向を発表。最初の発表から18〜24か月以内の完了を目標とし、複数の方法を検討するとした10-K「Item 1. Business」
2026年1月米国の患者の薬へのアクセスの改善と費用の引き下げについて、米国の政権と合意10-K「Item 1. Business」の規制の節
2026年7月27日卵巣がんをめぐるタルク訴訟について、原告側の主な法律事務所と包括的な解決案で合意したと発表。残る請求の95%以上の参加などが条件8-K(2026-07-28提出)
2026年7月29日Firefly Bio の買収を完了(会社は、がんの分野の研究を進めるためと説明)し、Sail Biomedicines との提携を発表8-K(2026-07-29提出)
2026年9月1日医薬品の事業の責任者(執行副社長)が退任(8月4日に発表)8-K(2026-08-04提出)
2026年10月13日第3四半期の決算を発表。2026年の通期の会社の見通しを引き上げた8-K 決算発表資料(2026-10-13提出)
💡 用語メモ:タルク(滑石)は、やわらかい鉱物の一種で、粉にしてベビーパウダーなどに使われてきました。Kenvue(ケンビュー)は、J&J から切り離された一般向けの製品の会社で、会社は、切り離す前に、米国とカナダのタルク関連の責任をすべて J&J 側に残し、Kenvue の費用を補うことに合意したと書いています(2026-07-27 の8-K付属資料)。

4️⃣ 直近の決算の数字(2026年 第3四半期)

2026年6月29日〜9月27日の13週間(第3四半期。2026年10月13日発表)の数字です。前年同期(2025年9月28日に終わった第3四半期)と並べています。数字は決算発表資料(8-K)からで、確認日は2026-10-16です。

指標2026年 第3四半期2025年 第3四半期増減
売上高253.99億ドル239.93億ドル+5.9%
 うち医薬品(イノベーティブ・メディスン)167.57億ドル155.63億ドル+7.7%
 うち医療機器(メドテック)86.42億ドル84.30億ドル+2.5%
 うち米国149.59億ドル137.08億ドル+9.1%
 うち米国の外104.40億ドル102.85億ドル+1.5%
売上総利益率(売上高に対する割合)68.1%69.6%−1.5ポイント
研究開発費46.52億ドル36.72億ドル+26.7%
その他の損益(費用の側)57.80億ドルの費用4.78億ドルの収益—
純利益2.10億ドル51.52億ドル−95.9%
GAAPのEPS(希薄化後)0.09ドル2.12ドル−95.8%
調整後の純利益(非GAAP)63.39億ドル68.01億ドル−6.8%
調整後EPS(非GAAP)2.59ドル2.80ドル−7.5%

出典:8-K 決算発表資料「Johnson & Johnson reports Q3 2026 results」・同 数字の表(Exhibit 99.2)(2026-10-13提出・監査前)。増減は会社の表の値(「うち医薬品」「うち医療機器」「うち米国」「うち米国の外」の行は、売上高の内訳です。区分の2行を足すと売上高に、地域の2行を足しても売上高になります)。売上総利益率の差は当サイト計算。確認日:2026-10-16。

売上高と純利益の向きがちがう理由(会社の説明):

💡 用語メモ:売上総利益率は、売上から製品の原価を引いた「売上総利益」が、売上の何%かを表します。減損は、持っている資産(ここでは買収などで手に入れた研究中の薬の権利)の価値が下がったと判断したときに、帳簿の金額を減らして費用にすることです。ベーシスポイントは0.01%のことで、690ベーシスポイントは6.9ポイントです。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの四半期ごとの売上高(医薬品と医療機器の内訳)と純利益の推移。2025年第3四半期から2026年第3四半期までの5つの四半期 上:四半期ごとの売上高(単位:億ドル) 医薬品 医療機器 239.93 245.64 240.62 253.10 253.99 下:四半期ごとの純利益(GAAP・単位:億ドル) 51.52 51.16 52.35 55.34 2.10 2025年 7〜9月ごろ 2025年 10〜12月ごろ 2026年 1〜3月ごろ 2026年 4〜6月ごろ 2026年 7〜9月ごろ
▲ 8-K 決算発表資料の数字の表(2025年10〜12月期と通期・2026年4〜6月期・2026年7〜9月期)と、10-Q 第1四半期の売上高・純利益(百万ドル)をもとに作成(2026-10-16確認)。2026年1〜3月期の区分の内訳は、4〜6月期の決算発表資料の6か月の数字から4〜6月期を引いて当サイトが計算し、10-Q 第1四半期の数字と一致することを確かめました。会社の四半期は日曜日で区切るため、月の区切りとは数日ずれます。2026年7〜9月期の純利益には、タルク訴訟の解決案に関わる特別な費用などが入っています(会社の説明)。※概念を示すイメージ図です。

9か月と通期の数字:2026年の最初の9か月(第1〜第3四半期)の売上高は747.71億ドルで、前年同期の696.29億ドルから7.4%増えました。純利益は109.79億ドルで、前年同期の216.88億ドルから49.4%減りました。前年同期の純利益には、タルク関連の破産手続きが退けられたことに伴う約70億ドルの戻し入れ(利益を増やす方向の項目)が入っていたと、会社は10-Qに書いています。2025年度の通期は、売上高が941.93億ドル(前の年度888.21億ドル・+6.0%)、純利益が268.04億ドル(同140.66億ドル)、GAAPのEPS(希薄化後)が11.03ドル(同5.79ドル)でした(出典:10-K・10-Q 第2四半期・8-K 第3四半期の数字の表、2026-10-16確認)。

タルク訴訟の状況(会社の開示の範囲):第2四半期の10-Qによると、2026年6月28日時点で、タルクを含むボディパウダー(主にベビーパウダー)の使用で健康被害を受けたとして、米国で約7万6,000人の原告が会社とグループ会社に訴えを起こしていました。原告側は、タルクを含む製品の使用でがんになったと主張しています。これに対し会社は、タルクの製品は安全だと考えていると書き、判決が出た裁判では会社の主張が認められた例がある一方、会社に不利な評決もあり、その多くは控訴審で覆されたとしています。同じ時点の、タルク関連の準備金(将来の支払いに備えて計上しておく金額)は、現在の価値に直して約37億ドルでした。そのあと会社は2026年7月27日の8-Kで、卵巣がんをめぐる残りの請求について、原告側の主な法律事務所と解決案で合意したと発表しました。残る請求の95%以上が明示的に参加することなどが条件で、請求ごとに支払う形、会社の負担の約束は55億ドル、最初の支払いは2027年に30億ドル以内、2028年より前に追加の支払いはない、という内容です。会社は同じ資料で、7月22日に、訴訟をまとめて扱う連邦の裁判所が、原告側に対し、残りの請求を退けるべきでない理由を示すよう命じたと説明しています(いずれも会社の資料による説明です)。解決案が条件を満たして成立するかどうかは、この記事の確認日の時点の開示からはわかりません。訴訟の中身の正しさや結果について、この記事は判断しません(出典:10-Q 第2四半期「Note 11」・8-Kと付属資料、2026-10-16確認)。

お金の出入り・配当・自社株の買い付け:会社は決算発表資料で、2026年の最初の9か月のフリーキャッシュフロー(営業活動で入ったお金から設備への投資を引いた、会社独自の計算の数字・非GAAP)を約151億ドル(10月13日時点の見積もり・前年同期142.26億ドル)としています。2025年度に払った配当は1株5.14ドル(前の年度4.91ドル)で、会社は配当を63年続けて引き上げたと10-Kに書いています。2026年は、1株1.30ドル(1月に決定)、1.34ドル(4月と7月に決定)の四半期ごとの配当を決めています。また会社は、2026年の最初の6か月に、自社の株の買い付けに42.53億ドル(自社株の買い付けにかかる税を含む)を使いました。会社はこの買い付けを、報酬の制度に使う株を手当てするための計画的な買い付けと説明しています(出典:10-K・10-Q 第2四半期・8-K、2026-10-16確認)。

💡 用語メモ:自己株式は、会社が買い戻して手元に持っている自分の会社の株です。J&J は買い戻した株を自己株式(原文 common stock held in treasury)として持っており、10-Kの貸借対照表では、2025年度末の発行済みの株は31億1,984万3,000株、そのうち自己株式が7億1,190万4,000株でした。自己株式を買っても、発行済みの株の数そのものは減りません。
💡 会社が公表している見通し:会社は2026年10月13日の決算発表資料で、2026年の通期の売上高(報告ベース)を1,010〜1,014億ドル(中央値1,012億ドル・前年比7.2〜7.6%増)、調整後EPSを11.05〜11.15ドル(中央値11.10ドル)としました。7月29日時点では、それぞれ1,008〜1,014億ドル、10.96〜11.11ドルでした。なお会社は7月29日の8-Kで、Firefly Bio の買収と Sail Biomedicines との提携により、2026年の調整後EPSが約0.64ドル下がる見込みとして、7月15日時点の見通し(11.60〜11.75ドル)を引き下げていました。報告ベースの売上高と調整後EPSの見通しは、ユーロを1.15ドルとして計算した例示とされています。会社は、訴訟の結果などを合理的に予測できないため、GAAPでの見通しは出していないと書いています(出典:8-K 決算発表資料「Full-year 2026 guidance」・8-K(2026-07-29)、2026-10-16確認)。これは会社自身が公表している見通しで、当サイトの予測ではありません。会社は同じ資料で、前提が外れたりリスクが現実になったりすれば、実際の結果は見通しと大きく変わり得るとも書いています。

5️⃣ 会社自身が挙げているリスク

以下は、会社がSECに出した10-K(2025年度)の「Item 1A. Risk Factors(リスク要因)」で、会社自身が開示しているリスクの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズでいちばん大事にしている情報です。原文はSEC EDGARの J&J の提出書類一覧から確かめられます。

出典:10-K「Item 1. Business」「Item 1A. Risk Factors」(2026-02-11提出)の要旨(英語の原文を当サイトが要約したもの)。確認日:2026-10-16。原文には、このほかにも競争、製造の中断や遅れ、外部の製造の会社への依存、偽物の製品、税、為替、各国の政治や経済、人材の確保、気候の変化、サイバー攻撃、個人情報の保護などの項目が並んでいます。

6️⃣ 上がる材料/下がる材料

ここがこの記事の主役です。会社の開示で確かめられる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。タルク訴訟の解決案は、両側で書き分けています。7月の買収・提携は、会社が示した利益の見通しへの影響を右側に置き、会社が説明する目的(Firefly Bio の買収は、がんの分野の研究を進めるため)は§3の年表に載せています。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。

📈 上がる可能性がある材料
会社は2026年の通期の見通しを、売上高(報告ベース)1,010〜1,014億ドル、調整後EPS 11.05〜11.15ドルに引き上げたと公表している(会社自身の見通しで、当サイトの予測ではない)。出典:8-K 決算発表資料「Full-year 2026 guidance」(2026-10-13提出)/確認日2026-10-16/効くと:通期の決算で、実際の数字をこの見通しと比べられる
第3四半期の米国の売上高は149.59億ドルで前年同期より9.1%増えた。医薬品の米国の売上は11.1%増だった。出典:8-K 決算発表資料・数字の表/確認日2026-10-16/効くと:売上の約57%(2025年度)を占める米国の伸びが、会社全体の売上を左右する
第3四半期のがんの分野の医薬品の売上は76.02億ドルで前年同期より16.4%増えた(DARZALEX 42.39億ドル・+15.4%、CARVYKTI 7.10億ドル・+35.5%)。出典:8-K 数字の表(Exhibit 99.2)/確認日2026-10-16/効くと:第3四半期の医薬品の売上の約45%(当サイト計算)を占める分野の動きが、区分全体の伸びに関わる
2025年の売上の約25%は過去5年に出した新しい製品によるものだと会社は書いている。第3四半期には TREMFYA が23.96億ドル(前年同期より68.3%増)だった。出典:10-K「Item 1A」・8-K 数字の表/確認日2026-10-16/効くと:特許切れを迎える製品の減少を、新しい製品の売上がどれだけ補うかを見られる
会社は卵巣がんのタルク訴訟について解決案で合意したと発表した。会社の発表資料は、この解決案を、残る約7万6,000件の卵巣がんの請求を裁判で争い続けることに伴う費用をなくすものと位置づけている(解決案は、残る請求の95%以上の参加などが条件)。支払いは最初が2027年に30億ドル以内、2028年より前に追加はない形とされる(逆側の1件目を参照)。出典:8-K と付属資料(2026-07-27)/確認日2026-10-16/効くと:条件が満たされるかどうかで、訴訟の費用と支払いの時期の見え方が変わる
📉 下がる可能性がある材料
第3四半期の純利益は2.10億ドルで前年同期より95.9%減った。税引き前の「訴訟関連」55.19億ドルなどが入ったため。タルク訴訟の解決案は、残る請求の95%以上の参加などが条件で、会社の負担の約束は55億ドルとされる。出典:8-K 数字の表(調整表)・8-K(2026-07-27)/確認日2026-10-16/効くと:解決案が条件を満たすか、支払いがいつ・いくら出ていくかで、利益とお金の出入りが動き得る
STELARA の第3四半期の売上は7.16億ドルで前年同期より54.4%減った。会社はバイオシミラーの発売が世界で続くと見ており、この減少が医薬品の伸びを約6.9ポイント押し下げたとしている。出典:8-K 決算発表資料・数字の表・10-K「Item 1」/確認日2026-10-16/効くと:特許が切れた製品の減り方が、医薬品の区分の伸びを左右する
メディケアの一部の薬に政府が定める価格が2026年から適用され(STELARA・XARELTO など)、2028年の対象に ERLEADA が入った。会社は、今後さらに対象の製品が増え得ると書いている(あわせて、2027年から XARELTO と STELARA を対象から外すと役所が示したとも書いている)。出典:10-K「Item 1」の規制の節・「Item 1A」/確認日2026-10-16/効くと:対象の薬の米国での売上の大きさが、価格の決まりで変わり得る
会社は、7月の Firefly Bio の買収と Sail Biomedicines との提携で、調整後EPSが2026年に約0.64ドル、2027年に約1.36ドル下がる見込みとしている(2027年分は、相手の開発の節目の達成と会社の権利の行使を前提とした数字)。第3四半期の調整後EPSは2.59ドルで前年同期より7.5%減った。出典:8-K(2026-07-29)・8-K 決算発表資料/確認日2026-10-16/効くと:研究開発への投資が、当面の利益の数字を押し下げる要因として表に出る
医療機器の第3四半期の売上の伸びは2.5%(米国の外は0.1%)だった。会社は2026年1〜6月について、医療機器の税引き前の利益率が13.8%(前年同期15.9%)に下がった理由に、整形外科の切り離しの費用(約4億ドル)や、製品の原価に入った関税などを挙げている。出典:8-K 数字の表・10-Q 第2四半期「経営者による分析」/確認日2026-10-16/効くと:医療機器の区分の利益の出方と、切り離しの費用の大きさを見比べることになる

※ 材料の数は左右5件ずつでそろえています。上の内容は開示の要約で、どちらが重いかの判断や将来の予測はしていません。調整後の数字・為替の影響を除いた伸び・フリーキャッシュフローは、会社が独自に計算した非GAAPの指標です。製品名は売上の説明のための事実として挙げており、効き目や安全性について述べるものではありません。

以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。

7️⃣ これから何を見れば分かるか

第3四半期の10-Q(四半期報告書)は、この記事の確認日の時点でまだ提出されていません。次の決算(2026年の第4四半期と通期)の発表日は、当サイトの決算予定データ(earnings-calendar.json)にも、この記事で確かめた会社の書類にも書かれていないため、この記事では日付を書きません。会社のIRサイト(投資家向けの情報のページ)で確かめてください。なお、2026年度は53週の年です(10-K)。この記事で挙げた材料は、次のところで確かめられます。

いずれもSEC EDGAR(米国の証券取引委員会の開示システム)と会社のIRサイトで、無料で確かめられます。

8️⃣ まとめ

結論は出しません。J&J は、医療用の医薬品と医療機器の2つの事業を持ち、2025年度の売上高の約64.1%を医薬品、約35.9%を医療機器が占めた会社です。2026年の第3四半期は売上高が5.9%増えた一方、タルク訴訟の解決案に関わる特別な費用などで、純利益は95.9%減りました。会社自身は、医療費の抑制と価格の圧力、特許への挑戦と特許切れ、大きな訴訟、新しい製品の開発の見通しにくさ、整形外科の事業の切り離しなどをリスクとして挙げています。次の決算と開示で見るべき指標はこの3つです。①タルク訴訟の解決案が条件を満たしたかと、それについての会社の説明 ②STELARA の減少と、新しい製品の伸びの差し引き ③会社の通期の見通しと実際の数字の比較。どう見るかは、読者ご自身の判断にゆだねます。

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