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🔬 数字で見る、話題の企業
⚠️ 本記事は公開情報(米SEC提出資料等の一次情報)に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示や将来の業績・株価の予測は行っていません。投資には元本割れリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。

🔬 ウォルマート(WMT)を数字で見る|米国の大手小売の稼ぎ方をSEC開示資料で確認

公開日:2026年10月12日 / 読了時間:約16分 / カテゴリ:数字で見る企業(第14回・海外株)

「数字で見る、話題の企業」シリーズ第14回は、米国の小売の会社 Walmart Inc.(ティッカー:WMT、以下「ウォルマート」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が米国の証券取引委員会(SEC)に出した書類から、①事業の中身 ②産業のつながりの中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。

📌 30秒でわかるこの記事
  • ウォルマートは、米国を中心に19か国で1万900を超える店とネット通販を運営する小売の会社です。2026年1月に終わった1年間(会社の呼び方で fiscal 2026)の売上高(総収入)は7,131.63億ドルでした
  • 純売上高の約68.4%が米国の「ウォルマートU.S.」、約18.5%が米国の外の「インターナショナル」、約13.2%が会員制の倉庫型店「サムズ・クラブU.S.」です
  • 2026年5〜7月の3か月(第2四半期)は、売上高(総収入)が前年同期より5.9%増え、営業利益は28.8%増えました。ただし営業利益には、関税の還付(約29億ドル)が含まれると会社は説明しています(会社は、そのかなりの部分を同じ四半期のうちに値下げなどに回したとも書いています)
  • 「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典つきで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
💡 なぜウォルマートか(選定根拠):本シリーズは日本株を中心にする方針で、直近3本のうち海外株が1本以上あれば日本株、直近3本がすべて日本株のときだけ海外株を選べます。今回の直近3本(京セラ・フジクラ・SCREENホールディングス)はすべて日本株だったため、海外株の番です。海外株の候補は、当サイトのデータから次の順で機械的に探しています。①earnings-calendar.json の米国企業で、決算発表が2営業日前〜14日前の会社=該当なし(直近の発表予定は期間の外)。②直近15〜60日の当サイトのニュース記事(guide-news-*.html)で主役として扱われた海外企業=8月17日のニュース記事(米国の大手小売3社の決算が集中した週を扱った記事で、ウォルマートは主役の1社)のウォルマート、8月26日の記事のModerna などが見つかりました。10月1日の記事のMicronは14日以内のため対象外、NVIDIA・Apple・Broadcom・Applied Materials・AMDは本シリーズで90日以内に掲載済みのため対象外です。残った候補のうち時価総額が最大の1社としてウォルマートを選びました(時価総額の金額は本文に書きません)。ウォルマートは、米国で食品や日用品などを個人向けに売る大手小売です。直近の決算発表は2026年8月20日(米国時間)で、発表の当日・翌日ではありません。本シリーズでのウォルマートの掲載は今回が初めてで、ウォルマートが主役の既刊の記事もありません。
💡 ニュース記事とのちがい:8月17日のニュース記事は「その週の決算で、何が問われていたか」を伝える記事です。この記事は「この会社は何で稼いでいて、材料は何か」を、会社が出した書類の数字で整理する記事です。株価や値動きの話は、ここでは扱いません。
数字の出どころと確認日(2026-10-12):この記事の数字は、米国の証券取引委員会(SEC)の開示システム(EDGAR)に出された次の書類から引いています。年次報告書(Form 10-K、2026年3月13日提出、2026年1月31日に終わった会計年度)、四半期報告書(Form 10-Q・第2四半期、2026年8月28日提出、2026年7月31日までの3か月)、同(Form 10-Q・第1四半期、2026年5月29日提出)、臨時報告書(Form 8-K)に付いた決算発表資料(2026年5〜7月・2026年2〜4月・2025年11月〜2026年1月と通期・2025年8〜10月)。確認日はいずれも2026-10-12です。「億ドル」の数字の出し方:書類の百万ドルの数字は100で割って億ドルにしています(端数はそのまま)。書類が「$29.4 billion」のように10億ドル単位の小数1桁で書いている数字は、10倍して億ドルにし「約」を付けています(例:$29.4 billion=約294億ドル)。割合(%)のうち「約」が付くものは当サイトが計算したものです。円に換算した数字は書きません。
💡 用語メモ:10-K(フォーム10-K)は米国の上場企業が年に1回出す年次報告書、10-Qは四半期ごとの報告書、8-Kは決算発表や大きな出来事があったときに出す臨時報告書です。日本の有価証券報告書・四半期の報告・適時開示にあたります。GAAP(ギャップ)は米国で一般に認められた会計のルールで、非GAAPは、会社が投資の評価損益などを除いて独自に計算し直した数字です(ウォルマートは「調整後(adjusted)」と呼びます)。会社はGAAPの数字との差を表にして公表しています。EPS(1株あたり利益)は利益を株の数で割ったもので、希薄化後は将来増えるかもしれない株も数に入れて割った値です。
💡 ウォルマートの「年度」の呼び方:ウォルマートの会計年度(Fiscal year=決算の区切りの1年)は1月31日に終わります(米国とカナダの事業。ほかの国の事業は、多くが1か月遅れの暦年の区切りで集計されると10-Kに書かれています)。そして、その年度が終わる年の数字で呼びます。たとえば「fiscal 2026(2026年度)」は2025年2月1日〜2026年1月31日、「fiscal 2027(2027年度)」は2026年2月1日〜2027年1月31日です。日本流に言えば、それぞれ「2026年1月期」「2027年1月期」にあたります。会社の資料に出てくる「Q2 FY27(2027年度の第2四半期)」は、2026年5月〜7月の3か月です。この記事では、取り違えを防ぐため、できるだけ「2026年5〜7月」のように月で書きます。

1️⃣ ウォルマートはどんな会社か

ウォルマートは、店とネット通販の両方で商品を売る小売の会社です。米国アーカンソー州ベントンビルに本社があり、毎週およそ2億8,000万人の客が、19か国の1万900を超える店と、会社のネット通販のサイトやアプリを利用していると、会社は10-Kに書いています。2026年1月31日時点の従業員は約210万人です(出典:10-K「Item 1. Business」、2026-10-12確認)。株式は米国のナスダック(Nasdaq)市場で取引されています(同出典)。

会社は事業を3つの区分(セグメント)に分けて公表しています(同出典)。

💡 用語メモ:会員制の倉庫型店は、年会費を払った会員だけが、大きな単位の商品を安く買える店です。会費の収入がサムズ・クラブU.S.の区分の営業利益の大きな部分を占めると、会社は10-Kに書いています。Walmart+(ウォルマート・プラス)は、ウォルマートU.S.の有料の会員サービスで、送料無料や店からの配達などの特典があります。eコマースはネット通販のことです。ウォルマートの「eコマースの売上」には、ネットで注文して店で受け取る・店から届ける分や、一部の広告の収入なども含まれると、会社は注記しています。
ウォルマートの2026年1月期(fiscal 2026)の区分別の純売上高の構成と、ウォルマートU.S.の商品の分類別の構成 上:区分別の純売上高(2026年1月期・合計7,064.13億ドル) ウォルマートU.S. 4,829.75億ドル(約68.4%) インターナショナル 1,304.23億ドル(約18.5%) サムズ・クラブU.S. 930.15億ドル(約13.2%) 下:ウォルマートU.S.の商品の分類別(2026年1月期・合計4,829.75億ドル) 食品・日用の消耗品 2,854.82億ドル(約59.1%) 一般の商品(家電・衣料・家庭用品など) 1,150.60億ドル(約23.8%) 健康(薬局・市販薬など) 695.47億ドル(約14.4%) その他 128.86億ドル(約2.7%) 純売上高は、会費とその他の収入を含まない売上の数字です。
▲ 10-K「Note 11. Segments and Disaggregated Revenue」の数字(百万ドル)をもとに作成(2026-10-12確認)。割合は当サイトが計算。商品の分類の原文は Grocery・General merchandise・Health and wellness・Other。※概念を示すイメージ図です。

2026年1月期の売上高(総収入、原文 Total revenues)は7,131.63億ドルで、そのうち純売上高(Net sales)が7,064.13億ドル、会費とその他の収入(Membership and other income)が67.50億ドルでした(出典:10-K、2026-10-12確認)。3つの区分のeコマースの売上を足すと約1,504億ドル(ウォルマートU.S. 約996億ドル、インターナショナル 約358億ドル、サムズ・クラブU.S. 約150億ドル)で、純売上高の約21.3%にあたります(当サイト計算。出典:同10-Kの注記)。インターナショナルの中では、メキシコと中米が524.92億ドル、中国が246.23億ドル、カナダが237.24億ドルでした(同出典)。

2️⃣ どのつながりの中にいるか

次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、ウォルマートが「商品が作られてから消費者に届くまで」の工程のどこに立っているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。

商品が作られてから消費者に届くまでの工程。生産、輸入と輸送、物流センター、店舗とネット通販、受け取りと配達の順につながる。ウォルマートは店舗とネット通販を中心に、物流センターと配達の一部も自社で担う 商品が作られてから消費者に届くまで(川上から川下へ) ① 生産 メーカー・農家 海外の工場も ② 輸入・輸送 船・港・トラック 関税はここで ③ 物流センター 仕分け・保管 一部を自社で運営 ④ 店舗・ネット 消費者に売る ウォルマートはここ ⑤ 受け取り・配達 店から届ける 一部を自社で ④の店とネットを土台にした、別の収入 広告・他社の出店(マーケットプレイス)・会員の会費・薬局など 消費者・会員 店とネットの両方 矢印はモノが流れる向きで、業績や株価が連動する向きではありません。
▲ ウォルマートの10-K・10-Qの事業とリスクの記載をもとに作成した工程の地図(2026-10-12確認)。箱の中は会社の種類で、具体的な社名は入れていません。濃い枠=中心の箱、点線の枠=一部を自社で担う箱。※概念を示すイメージ図です。
💡 用語メモ:物流センターは、メーカーから届いた商品をまとめて保管し、店ごとに仕分けて送り出す施設です。マーケットプレイスは、ほかの会社(出店者)が自社のサイトの上で商品を売れるしくみで、運営する側は手数料や配送の代行などで収入を得ます。関税は、外国から商品を輸入するときに国がかける税で、輸入した会社(輸入者)が払います。

ウォルマートが「店舗・ネット」の箱にいる根拠:10-Kによると、2026年1月31日時点で、米国と18か国に合計10,955の店(会社の言い方では retail units)を持ち、純売上高の約21.3%がeコマースの売上です(§1。当サイト計算)。ウォルマートは「物流センター」と「配達」の箱にも一部で立っています。米国では192か所の物流施設(自社のトラックと外部の運送会社を組み合わせて使う)、米国の外では179か所を使っていると10-Kに書かれています。10-Kには、米国のほぼすべての店が当日の受け取りと配達に対応していると書かれています。また、配達を請け負うドライバーが使う会社のしくみ(Spark Driver)を運営していることが、10-Qの訴訟の注記からわかります(出典:10-K「Item 1」「Item 2. Properties」・10-Q 第2四半期「Note 5」、2026-10-12確認)。

前後の工程にいる会社の種類:川上には、食品や日用品のメーカー、農家や食肉の加工の会社、衣料・家電・家庭用品を作る工場(海外の工場を含む)があります。その先に、海運や港の会社、トラックの運送会社、倉庫の会社が続きます。川下には、配達を請け負う個人や運送の会社がいます。④の箱の上には、ウォルマートの店やサイトに広告を出すメーカーや、マーケットプレイスに出店する会社もいます。さらに同じ④の箱には、ほかの総合スーパー、会員制の倉庫型店、ネット通販の会社、ドラッグストア、食品スーパーなどがいて、10-Kはこれらを競争相手の種類として挙げています。

つながりが細る条件:会社は第2四半期の10-Qで、米国で売っている商品のうち輸入品は3分の1未満で、輸入品の多くは中国・ベトナム・メキシコ・インド・カナダから来ていると書いています。10-Kでは、米国の店で売る一般の商品のかなりの部分が外国で作られており、関税などの貿易の政策の変更が、仕入れの値段や売る値段を通じて、事業と利益率に影響してきたし、今後も影響し得ると書いています(出典:同10-Q「経営者による分析」・10-K「Item 1A. Risk Factors」)。つまり、②の箱(輸入)にかかる条件が変わると、①から④へのつながりの太さそのものが変わり得ます。

産業のつながりがあることと、株価が連動することは別です。同じ工程にいる会社でも、業績も株価も会社ごとに大きく異なります。ここでお伝えしているのは産業構造の事実であって、値動きの予想ではありません。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。

3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事

確かめられる出来事だけを並べた年表です。原因の決めつけや物語にすることは避けています。今回は、すべての行をSECに出された会社の書類で確かめられました(10-Kの「The Development of Our Company(会社の歩み)」の節など)。

年月出来事出典
1945年創業者のサム・ウォルトン氏が、アーカンソー州ニューポートで雑貨店(Ben Franklin のフランチャイズ)を開いた10-K「Item 1. Business」(2026-10-12確認)
1962年それまでの雑貨店に加えて、ディスカウントストアを開き始めた10-K「Item 1. Business」
1970年株式を公開(新規株式公開)10-K「Item 1. Business」
1983年最初のサムズ・クラブを開いた10-K「Item 1. Business」
1988年最初のスーパーセンター(食品と一般の商品を1か所で売る大型の店)を開いた10-K「Item 1. Business」
1991年メキシコでの合弁事業(ほかの会社と共同で出資して営む事業)で、初めて米国の外へ進出10-K「Item 1. Business」
1996年walmart.com と samsclub.com を立ち上げ、ネット通販を始めた10-K「Item 1. Business」
1998年最初の Walmart Neighborhood Market(小型の食品スーパー)を開いた10-K「Item 1. Business」
2007年ネットで買った商品を店で受け取れるサービス(Site-to-Store)を始めた10-K「Item 1. Business」
2018年インドの Flipkart と PhonePe の株の過半数を取得10-K「Item 1. Business」
2021年2月英国の子会社だった Asda(アズダ)を売却10-Q 第2四半期「Note 5. Contingencies」(2026-10-12確認)
2024年2月1株を3株に分ける株式分割(2024年2月22日の株主が対象)8-K(2024-01-31提出、2026-10-12確認)
2025年12月株式の上場先をニューヨーク証券取引所からナスダックへ移した(ナスダックでの取引は12月9日に始まる予定と開示)8-K(2025-11-20提出)/10-K 表紙・Item 1(ナスダックでの取引を記載)
2026年2月ジョン・ファーナー氏が社長兼CEO(最高経営責任者)に就任(それまではウォルマートU.S.の社長兼CEO)10-K「Information About Our Executive Officers」
2026年3月配達のしくみ(Spark Driver)の支払いと運用をめぐる米連邦取引委員会(FTC)と一部の州の調査について、責任を認めない形で和解。1億ドルの判決に同意(うち約6,300万ドルは執行が停止され〔原文 suspended〕、残りの約3,700万ドルを2026年1月31日時点で計上)10-Q 第2四半期「Note 5. Contingencies」
2026年5〜7月輸入者として払った関税の還付を、米国の税関・国境警備局(CBP)の手続きで約29億ドル受け取った10-Q 第2四半期
2026年8月2026年5〜7月の決算を発表(20日)。2027年1月期の会社の見通しを引き上げた8-K 決算発表資料(2026-08-20提出)
💡 株式分割のメモ:2024年2月に1株を3株に分けたため、それより前の1株あたりの数字は、分割のあとの物差しと3倍ちがいます。この記事に出てくる1株あたりの数字(EPS・配当・自社株買いの株数)は、すべて分割のあとの物差しです(会社の書類が分割のあとの株数で示している数字)。

4️⃣ 直近の決算の数字(2026年5〜7月)

2026年5〜7月の3か月(会社の呼び方で2027年度の第2四半期。2026年8月20日発表)の数字です。前年同期(2025年5〜7月)と並べています。数字は決算発表資料(8-K)と10-Qからで、確認日は2026-10-12です。

指標2026年5〜7月2025年5〜7月増減
売上高(総収入)1,879.37億ドル1,774.02億ドル+5.9%
うち純売上高1,861.00億ドル1,757.50億ドル+5.9%
 ウォルマートU.S.1,251.89億ドル1,209.11億ドル+3.5%
 インターナショナル351.98億ドル312.01億ドル+12.8%
 サムズ・クラブU.S.257.13億ドル236.38億ドル+8.8%
うち会費とその他の収入18.37億ドル16.52億ドル+11.2%
粗利率(純売上高に対する割合)25.4%24.5%+0.96ポイント
営業利益93.83億ドル72.86億ドル+28.8%
純利益(ウォルマートの株主の分)63.66億ドル70.26億ドル−9.4%
GAAPのEPS(希薄化後)0.80ドル0.88ドル−9.1%
調整後EPS(非GAAP)0.81ドル0.68ドル—

出典:8-K 決算発表資料「Walmart reports second quarter results」(2026-08-20提出)・10-Q 第2四半期(2026-08-28提出)。増減は会社の表の値。粗利率の差は会社の記載(96ベーシスポイント=0.96ポイント)。調整後EPSは会社が独自に計算した数字で、会社は前年同期の0.68ドルとの増減率を表に載せていないため「—」としています。確認日:2026-10-12。

営業利益と純利益の向きがちがう理由(会社の説明):

💡 用語メモ:粗利率は、売上から仕入れなどの原価を引いた「粗利」が、売上の何%かを表します。既存店売上は、開店から12か月以上たった店(ネット通販の売上を含む)の売上が、前年より何%変わったかを見る数字で、新しい店の分を除いて比べられます。為替一定(constant currency)は、為替レートが前年と同じだったと仮定して計算し直した数字で、非GAAPの指標です。ベーシスポイントは0.01%のことで、96ベーシスポイントは0.96ポイントです。

既存店売上とeコマース:10-Qによると、2026年5〜7月の既存店売上(燃料を含む・会社の会計の暦で計算)は、ウォルマートU.S.が+3.3%、サムズ・クラブU.S.が+8.6%でした(サムズ・クラブU.S.は燃料の売上の伸びが+4.2ポイント分を占めます)。決算発表資料は別の暦(4週・5週・4週の小売の暦)と燃料を除く形で、ウォルマートU.S. +2.6%、サムズ・クラブU.S. +4.4%と書いており、計算のしかたのちがいで数字が異なります。eコマースの売上は、ウォルマートU.S.が約294億ドル(前年同期 約237億ドル)、インターナショナルが約99億ドル(同 約83億ドル)、サムズ・クラブU.S.が約47億ドル(同 約37億ドル)で、会社は世界全体のeコマースの売上が23%増えたと書いています(出典:10-Q・8-K、2026-10-12確認)。広告の事業は世界全体で38%、会費の収入(membership fee revenue)は世界全体で17%増えたと、会社は決算発表資料に書いています。

ウォルマートの四半期ごとの売上高(総収入)と営業利益の推移。2025年5〜7月から2026年5〜7月までの5つの四半期 上:四半期ごとの売上高(総収入・単位:億ドル) 1,774.02 1,794.96 1,906.56 1,777.51 1,879.37 下:四半期ごとの営業利益(単位:億ドル) 72.86 66.96 87.08 74.93 93.83 2025年 5〜7月 2025年 8〜10月 2025年11月 〜2026年1月 2026年 2〜4月 2026年 5〜7月
▲ 8-K 決算発表資料(2025年8〜10月・2025年11月〜2026年1月と通期・2026年2〜4月・2026年5〜7月)の売上高(総収入)と営業利益(百万ドル)をもとに作成(2026-10-12確認)。濃い色が直近の四半期。2026年5〜7月の営業利益には関税の還付 約29億ドルが、2025年5〜7月の営業利益には一部の訴訟に関わる費用4.4億ドルが含まれます(会社の説明)。会社は、例年11月〜1月の四半期の売上がいちばん大きくなると10-Kに書いています。※概念を示すイメージ図です。

通期(1年間)の数字:2026年1月期の売上高(総収入)は7,131.63億ドルで、2025年1月期の6,809.85億ドルから4.7%増えました。営業利益は298.25億ドル(前期293.48億ドル)、ウォルマートの株主の分の純利益は218.93億ドル(前期194.36億ドル)、GAAPのEPS(希薄化後)は2.73ドル(前期2.41ドル)でした。2026年2〜7月の6か月の売上高(総収入)は3,656.88億ドルで、前年同期の3,430.11億ドルから6.6%増えています(出典:10-K・8-K 2026年5〜7月の決算発表資料、2026-10-12確認)。

お金の出入りと株主への還元:2026年2〜7月の営業活動によるキャッシュフロー(事業で入ったお金)は197.10億ドルで、前年同期の183.52億ドルから増えました。一方で、設備への投資は141.81億ドル(前年同期114.09億ドル)に増え、会社独自の計算によるフリーキャッシュフローは55.29億ドル(前年同期69.43億ドル)に減りました。同じ6か月で、会社は自社の株を4,230万株、約51億ドル分買い戻しました(自社株買い)。2026年2月に決めた300億ドルの買い戻しの枠のうち、7月31日時点で約251億ドルが残っています。会社は、買い戻した株を「消却したものとして扱い、まだ発行していない状態に戻す」(原文 constructively retired and returned to an unissued status の訳)と10-Qに書いています。2027年1月期の年間の配当は1株0.99ドルで、前の年度の0.94ドルから引き上げたと10-Kに書かれています(出典:8-K・10-Q・10-K、2026-10-12確認)。

💡 用語メモ:自社株買いは、会社が市場から自分の会社の株を買い戻すことです。買い戻した株を手元に持っておく会社(日本の「自己株式」)もありますが、ウォルマートは上のとおり、買い戻した株を消却した扱いにしています。フリーキャッシュフローは、営業活動で入ったお金から設備への投資を引いた、会社独自の計算の数字(非GAAP)です。
💡 会社が公表している見通し:会社は2026年8月20日の決算発表資料で、2026年8〜10月(2027年度の第3四半期)の純売上高を前年同期より3.0〜3.75%増(為替一定)、調整後の営業利益を2.0〜4.0%増(為替一定)、調整後EPSを0.62〜0.64ドルと見込んでいます。2027年1月期の通期は、純売上高を4.0〜5.0%増(為替一定・2月時点は3.5〜4.5%増)、調整後の営業利益を7.0〜8.5%増(為替一定・同6.0〜8.0%増)、調整後EPSを2.80〜2.87ドル(同2.75〜2.85ドル)に引き上げました。会社の財務の責任者は同じ資料で、第2四半期に受け取った関税の還付を下期の値下げなどに回す方針のため、第2四半期と第3四半期を合わせて見てほしいと述べています。また、インドの Flipkart の大型セールの時期のずれで、第3四半期の売上の伸びは1ポイント以上押し下げられる見込みだとしています(出典:8-K 決算発表資料「Guidance」、2026-10-12確認)。これは会社自身が公表している見通しで、当サイトの予測ではありません。会社は同じ資料で、見通しには大きなリスクと不透明さがあり、実際の結果は大きく変わり得るとも書いています。

5️⃣ 会社自身が挙げているリスク

以下は、会社がSECに出した10-K(2026年1月期)の「Item 1A. Risk Factors(リスク要因)」で、会社自身が開示しているリスクの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズでいちばん大事にしている情報です。なお、第1四半期と第2四半期の10-Qは、10-Kのリスク要因から大きな変更はないと書いています。原文はSEC EDGARのウォルマートの提出書類一覧から確かめられます。

出典:10-K「Item 1A. Risk Factors」「Item 3. Legal Proceedings」(2026-03-13提出)・10-Q 第2四半期「Note 5. Contingencies」「Item 1A. Risk Factors」(2026-08-28提出)の要旨(英語の原文を当サイトが要約したもの)。確認日:2026-10-12。原文には、このほかにも為替、医薬品の支払いのしくみ、人材の確保と人件費、仕入れ先、自然災害、税などの項目が並んでいます。

6️⃣ 上がる材料/下がる材料

ここがこの記事の主役です。会社の開示で確かめられる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。関税の還付(会社が依頼した還付のほぼ全額を第2四半期に受け取ったもの)は、両側で書き分けています。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。

📈 上がる可能性がある材料
会社は2027年1月期の通期の見通しを、純売上高4.0〜5.0%増(為替一定)、調整後EPS 2.80〜2.87ドルに引き上げたと公表している(会社自身の見通しで、当サイトの予測ではない)。出典:8-K 決算発表資料「Guidance」(2026-08-20提出)/確認日2026-10-12/効くと:次の決算と通期の決算で、実際の数字をこの見通しと比べられる
2026年5〜7月の営業利益は93.83億ドルで前年同期より28.8%増えた。ただし会社は、ここに関税の還付 約29億ドル(依頼した還付のほぼ全額)が含まれると説明している。あわせて会社は、還付のかなりの部分を同じ四半期のうちに値下げなどに回したと書き、この差し引きの影響を除いた営業利益の伸びは会社の見通しの上限だったとしている(逆側の1件目を参照)。出典:8-K 決算発表資料・10-Q 第2四半期/確認日2026-10-12/効くと:還付の分を除いたあとの利益の動きを、次の四半期で見比べる材料になる
世界全体のeコマースの売上は23%増え、ウォルマートU.S.のeコマースは約294億ドル(前年同期 約237億ドル)だった。出典:8-K 決算発表資料・10-Q 第2四半期の注記/確認日2026-10-12/効くと:ネット通販の割合が増えると、売上の中身が変わる
広告の事業は世界全体で38%増え、会費の収入は世界全体で17%増えた。会社は、広告など利益率の高い事業の伸びが粗利率を押し上げたと書いている。出典:8-K 決算発表資料・10-Q「経営者による分析」/確認日2026-10-12/効くと:物を売る以外の収入の割合が、利益率に関わる
インターナショナルの純売上高は351.98億ドルで前年同期より12.8%増(為替一定で7.9%増)。中国は74.16億ドル(前年同期57.86億ドル)、メキシコと中米は143.31億ドル(同125.46億ドル)。出典:8-K 決算発表資料・10-Q 第2四半期の注記/確認日2026-10-12/効くと:米国の外の売上の伸びが、会社全体の売上を支えるかどうかを見られる
📉 下がる可能性がある材料
関税の還付 約29億ドルについて、会社は依頼した還付のほぼ全額を第2四半期に受け取ったと書いている。会社は、還付のかなりの部分を第2四半期のうちに値下げなどに回し、残りも下期の値下げなどに回す方針だとしている。2026年8〜10月の調整後の営業利益の見通しは2.0〜4.0%増(為替一定)としている。出典:10-Q 第2四半期・8-K 決算発表資料「Guidance」/確認日2026-10-12/効くと:次の四半期の数字に還付がどれだけ含まれるかを、会社の説明で確かめることになる
米国で売る商品のうち輸入品は3分の1未満で、多くは中国・ベトナム・メキシコ・インド・カナダから。会社は、関税をめぐる状況が変わりやすい状態は2027年1月期も続くと見ている。出典:10-Q 第2四半期・10-K「Item 1A. Risk Factors」/確認日2026-10-12/効くと:関税が変わると、仕入れの値段と売る値段の両方が変わり得る
純利益(ウォルマートの株主の分)は63.66億ドルで前年同期より9.4%減った。持っている株式などの投資の時価の変動で、12億ドルの損失が出たため。出典:8-K 決算発表資料・10-Q「経営者による分析」/確認日2026-10-12/効くと:投資先の株価しだいで、純利益は四半期ごとに大きく振れ得る
2026年1月から一部の処方薬に上限の価格の規制(maximum fair price regulation)が入り、ウォルマートU.S.の健康(薬局など)の売上は169.42億ドル(前年同期172.48億ドル)に減った。会社は、この規制に関わる薬の値下がりが、ウォルマートU.S.の既存店売上の伸びを1.25ポイント押し下げたと書いている。出典:10-Q 第2四半期・8-K 決算発表資料/確認日2026-10-12/効くと:規制や薬の支払いのしくみが、売上の一部を左右する
2026年2〜7月の設備への投資は141.81億ドル(前年同期114.09億ドル)に増え、フリーキャッシュフローは55.29億ドル(同69.43億ドル)に減った。5〜7月は、自社で負担する事故などの賠償の費用、減価償却費(設備を買ったお金を、使う年数に分けて毎年の費用にしたもの)、従業員の医療の費用が増えたと会社は書いている。出典:8-K 決算発表資料・10-Q「経営者による分析」/確認日2026-10-12/効くと:費用の増え方が、売上の伸びのうちどれだけ利益に残るかを左右する

※ 材料の数は左右5件ずつでそろえています。上の内容は開示の要約で、どちらが重いかの判断や将来の予測はしていません。為替一定・調整後の数字・フリーキャッシュフローは、会社が独自に計算した非GAAPの指標です。

以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。

7️⃣ これから何を見れば分かるか

次の四半期(2027年度の第3四半期)は、2026年10月31日に終わります(会社の四半期の区切りから。前の年の同じ四半期は2025年10月31日に終わっています)。その決算の発表日は、当サイトの決算予定データ(earnings-calendar.json)にはまだ入っていないため、この記事では日付を書きません。会社のIRサイト(投資家向けの情報のページ)で確かめてください。この記事で挙げた材料は、次のところで確かめられます。

いずれもSEC EDGAR(米国の証券取引委員会の開示システム)と会社のIRサイトで、無料で確かめられます。

8️⃣ まとめ

結論は出しません。ウォルマートは、米国の店とネット通販を中心に、米国の外の店と会員制の倉庫型店を合わせて運営する小売の会社で、2026年1月期の純売上高の約68.4%をウォルマートU.S.が占めました。2026年5〜7月は売上高(総収入)が5.9%増え、営業利益は関税の還付を含めて28.8%増えた一方、純利益は投資の時価の変動で9.4%減りました。会社自身は、関税と貿易の政策、景気と消費者の動向、競争、サイバー攻撃、訴訟などをリスクとして挙げています。次の決算と開示で見るべき指標はこの3つです。①第3四半期の営業利益(関税の還付の扱いについての会社の説明を含む)と、会社の見通しとの比較 ②eコマースと広告の伸び ③関税と訴訟について会社がどう書くか。どう見るかは、読者ご自身の判断にゆだねます。

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