⚙️ SCREENホールディングス(7735)を数字で見る|半導体の洗浄装置を軸にする会社を有価証券報告書で確認
「数字で見る、話題の企業」シリーズ第13回は、半導体の製造装置、とくにウエハを洗う「洗浄装置」を中心に、ディスプレーの製造装置、印刷の機械、プリント基板の製造装置までを手がける株式会社SCREENホールディングス(証券コード7735、有報の表記は「株式会社SCREENホールディングス」、以下「SCREEN」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が金融庁の開示システム(EDINET)に提出した有価証券報告書(第85期・2025年4月〜2026年3月)をもとに、①事業の中身 ②半導体の製造工程の中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。
- SCREENの第85期(2025年4月〜2026年3月)の売上高は約6,057億円(前期比3.1%減)、営業利益は約1,225億円(同9.7%減)でした(日本の会計基準・連結)。売上高の約80%を「半導体製造装置事業」が占めています
- 顧客の所在地で見ると、売上高の約38%が中国、約22%が台湾向けで、1社への売上が全体の約15%を占めています。会社自身も、米中の関係の悪化による輸出入の規制、特定の顧客への売上の集中、半導体の市況の波をリスクとして挙げています
- 「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-09時点)のうち、SCREENは2026年9月28日(値上がり)・9月29日(値上がり)・9月30日(出来高急増)・10月1日(値上がり)の4日ランキングに登場しています(どのランキングだったかは、当サイトの jp-rankings.json の変更履歴で確認)。ランキングに最後に登場した日から中3営業日以上あいていること(「熱が残っているうちは書かない」ルール。同データの cooled: true)と、有価証券報告書の本文が取得できていることを満たす候補の中から、時価総額の大きい順に選びました(時価総額の金額や順位は本文に書きません)。SCREENより時価総額の大きい候補のうち、2社は当サイトの10月1日のニュース記事で株価の動きを取り上げていたため見送り、1社は前回(第12回)で取り上げ済み、1社は決算期が6月で、最新の通期の有価証券報告書が当サイトのデータで取得できていなかったため見送りました。SCREENについては、本レーンでの既刊記事・この会社が主役の解説記事の既刊はなく(ls guide-*.html と guides.html を社名・証券コードで確認)、当サイトのニュース記事(guide-news-*.html)にも全期間で登場していません。ランキングに登場した理由(なぜ値上がりや出来高の急増があったか)は、一次情報で確かめられないため書きません。1️⃣ SCREENはどんな会社か
SCREENは、1943年に大日本スクリーン製造株式会社として京都市で設立された会社で、2014年に持株会社の体制へ移り、今の社名に変わりました。有報の「事業の内容」によると、グループは半導体製造装置、印刷関連機器、ディスプレー製造装置、成膜装置、プリント基板関連機器の製造・販売を主な事業とし、それらに関連する研究・開発やサービスも行っています。持株会社の下に、製品ごとの事業会社を4社置いています(出典:有価証券報告書 第85期「沿革」「事業の内容」、2026-10-11確認)。連結の従業員数は6,884人(2026年3月31日現在)です。
有報によると、セグメント(報告セグメント)は次の4つで、ほかに「その他」の事業があります(出典:同有報「事業の内容」「セグメント情報」)。
- 半導体製造装置事業(SPE):半導体製造装置の開発・製造・販売・保守サービス
- グラフィックアーツ機器事業(GA):印刷関連機器の開発・製造・販売・保守サービス(インクの販売なども含む)
- ディスプレー製造装置および成膜装置事業(FT):ディスプレー製造装置と成膜装置の開発・製造・販売・保守サービス
- プリント基板関連機器事業(PE):プリント基板関連機器の開発・製造・販売・保守サービス
- その他:半導体先端パッケージ・ライフサイエンス・水素関連の新しい事業の製品、ドキュメントの企画・製作、ソフトウエアの開発・販売など
第85期のセグメントごとの売上高(外部の顧客への売上高)は次のとおりです(出典:同有報「セグメント情報」)。
半導体製造装置事業(SPE)の外部の顧客への売上高は約4,853億円で、全体の約80%でした。セグメントの利益(SCREENでは営業利益の段階の数字)で見ると、SPEは約1,227億円で、連結の営業利益 約1,225億円とほぼ同じ額です。4つのセグメントの利益を合計すると連結の営業利益を上回り、そこから「その他」の事業の損失(約24億円)と、どの事業にも配分していない会社の損益など(調整額 約103億円のマイナス)が差し引かれて連結の営業利益になります。SPE以外の3つのセグメントの利益(GA 約36億円・FT 約86億円・PE 約4億円)と、この差し引かれる分がほぼ同じ大きさのため、結果としてSPEの利益と連結の営業利益が近い額になっています(出典:同有報「セグメント情報」)。
売上高を顧客の所在地で分けると、中国が約2,325億円(全体の38.4%)、台湾が約1,360億円(22.4%)、日本が約856億円(14.1%)、米国が約496億円(8.2%)、韓国が約391億円(6.5%)、欧州が約261億円(4.3%)、その他が約368億円(6.1%)で、日本以外の顧客向けが全体の約86%でした(構成比は有報の記載。出典:同有報「関連情報」「収益認識関係」)。また、1社への売上高が約885億円で、連結の売上高の14.6%を占めています(有報には相手先の社名が書かれていますが、この記事では社名を書きません。SPEの顧客です)。
2️⃣ 半導体の製造工程の中のどこにいるか
次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、SCREENの装置が、半導体をつくる工程のどこで使われているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。SCREENは「半導体をつくる会社」ではなく、半導体をつくる会社が工場で使う装置をつくる会社です。
SCREENが「洗浄」の箱に立っている根拠は、会社自身の開示にあります。会社は研究開発活動の説明で、自分たちを「当社グループがトップシェアを誇る洗浄領域」と書き(シェアの数字は有報にはありません)、中期経営計画のSPEの戦略の1つ目に「洗浄装置マーケットシェアの向上」を挙げています。研究開発は「洗浄、乾燥、塗布、熱処理をはじめとした各領域」で進めているとしています。第85期のSPEの売上高(ほかのセグメントへの売上を含む)は約4,860億円(前期比6.5%減)で、会社はその中身を「ポストセールスの売上やDRAM向けの装置売上が増加した一方で、ファウンドリー向けの装置売上が減少しました。」と説明しています(出典:有価証券報告書 第85期「研究開発活動」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「経営者による分析」、2026-10-11確認)。
工程の前後とのつながりも、文章や数字で開示されています。
- 装置を使う側とのつながり:会社はリスクの項で、国内外の主要な半導体メーカーに製造装置を納めていて、業界では巨額の投資を背景に顧客の集約が進み、「当社グループの売上が特定顧客に集中する傾向があります。」と書いています。第85期は1社への売上が連結の売上高の14.6%でした(出典:同有報「事業等のリスク」「関連情報」)。
- 最後の使い道とのつながり:会社は第85期の環境について、生成AIの活用の広がりを支える半導体の微細化や、先端パッケージなどの開発の重要性が高まり、先端ロジック(計算用の半導体)やメモリー向けの投資が堅調だったと書いています(出典:同有報「経営者による分析」)。
- 売ったあとのつながり:SPEの売上のうち、保守のための部品や消耗品の販売、修理や改造のサービス、中古の装置の販売などの「ポストセールス他」は約991億円(前期 約860億円)で、新しい装置の販売などの「新規装置」は約3,863億円(前期 約4,336億円)でした(出典:同有報「収益認識関係」)。
- 前後の工程にいる会社の種類:前には、ウエハや薬液、ガス、装置の部品をつくる素材・部品のメーカーがあります。後ろには、装置を買って半導体をつくる受託製造の会社やメモリーのメーカー、さらにその先に、サーバーや電子機器、自動車の部品をつくる会社、データセンターを運営する会社がいます。ほかの事業では、画面(ディスプレー)のメーカー、印刷会社、プリント基板のメーカーが装置の買い手です。
このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報で挙げています。市場の動向の項では、半導体・ディスプレーの市場は急速な技術の進歩で大きく伸びる一方で、「需給バランスの悪化から市況が低迷するという好不況の波に晒されてきました。」と書いています。政治状況の項では、米中の関係の悪化がさらに進み、輸出入に関する規制の強化などで中国への製品の出荷が制約を受ける場合に、売上が減り利益などに悪い影響が出る可能性を挙げています(出典:有価証券報告書「事業等のリスク」、2026-10-11確認)。
3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事
各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。有価証券報告書の「沿革」に無い事実(創業の年と前身の会社)は、Wikipedia(二次情報)から年表に限って使っています。
| 年月 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1868年 | 前身の「石田旭山印刷所」が京都で創業(有報の「沿革」は1943年の会社設立から始まるため、創業の年と前身の会社はWikipediaによる。有報の「経営方針」には「SCREENグループ創業157年の歴史」という記載がある) | Wikipedia「SCREENホールディングス」(2026-10-11確認)・有価証券報告書 第85期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-11確認) |
| 1943年10月 | 京都市に大日本スクリーン製造株式会社を設立(資本金130,000円) | 有価証券報告書 第85期「沿革」(2026-10-11確認)・Wikipedia「SCREENホールディングス」(2026-10-11確認) |
| 1946年3月 | カメラ、アーク灯、焼付機などの写真製版機械の生産を始め、写真製版設備のメーカーとして事業を始める | 有価証券報告書 第85期「沿革」(2026-10-11確認) |
| 1962年5月 | 大阪証券取引所市場第二部に上場(1967年10月に東京証券取引所市場第二部、1970年8月に東京・大阪の市場第一部) | 有価証券報告書 第85期「沿革」(2026-10-11確認) |
| 1975年2月 | 化工機工場を発足し、電子工業界向けの機械装置の製造を広げる | 有価証券報告書 第85期「沿革」(2026-10-11確認) |
| 1985年8月 | 京都市伏見区に洛西工場(現・洛西事業所)を新築し、半導体製造装置の増産の体制を整える | 有価証券報告書 第85期「沿革」(2026-10-11確認) |
| 1998年10月 | 滋賀県多賀町に、半導体製造装置の生産拠点として多賀事業所を開設 | 有価証券報告書 第85期「沿革」(2026-10-11確認) |
| 2001年3月 | 彦根事業所に工場を新築し、300ミリのウエハに対応した洗浄装置の量産の体制を整える | 有価証券報告書 第85期「沿革」(2026-10-11確認) |
| 2014年10月・11月 | 持株会社の体制へ移り、社名を株式会社SCREENホールディングスに変更。半導体製造装置の事業、印刷関連機器とプリント基板関連機器の事業、ディスプレー(FPD)機器の事業などを、それぞれ事業会社に引き継ぐ | 有価証券報告書 第85期「沿革」(2026-10-11確認) |
| 2022年4月 | 東京証券取引所の市場区分の見直しで、プライム市場(東証の3つの市場区分のうち、最も上の区分)へ移行 | 有価証券報告書 第85期「沿革」(2026-10-11確認) |
| 2023年1月・2024年1月 | 彦根事業所に、半導体製造装置事業の工場を続けて新築 | 有価証券報告書 第85期「沿革」(2026-10-11確認) |
| 2023年10月1日 | 普通株式1株を2株に分割 | 有価証券報告書 第85期「主要な経営指標等の推移」の注記(2026-10-11確認) |
| 2025年2月 | 彦根事業所に、水素関連事業の生産スペースと半導体製造装置事業の事務所の機能などを備えた工場を新築 | 有価証券報告書 第85期「沿革」(2026-10-11確認) |
| 2025年9月 | ウエハー接合技術(ウエハどうしを貼り合わせる技術)に関する研究開発事業を、他社から譲り受ける | 有価証券報告書 第85期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「研究開発活動」(2026-10-11確認) |
| 2025年12月 | 米国(ニューヨーク州)に研究開発拠点「SCREEN Advanced Technology Center of America, LLC」を設立 | 有価証券報告書 第85期「沿革」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-11確認) |
| 2026年4月1日 | 普通株式1株を2株に分割(1月30日の取締役会で決議。分割後の発行済株式総数は190,759,972株) | 有価証券報告書 第85期「重要な後発事象」(2026-10-11確認) |
| 2026年6月25日 | 有価証券報告書 第85期を提出 | EDINET 有価証券報告書(2026-10-11確認) |
※持株会社=自分では製品をつくらず、グループの会社の株を持って全体を経営する会社です。株式分割=1株を複数の株に分けることで、株主の持ち分の割合は変わらず、1株当たりの数字(利益や純資産)が小さくなります。会社は2026年4月の分割の目的を「投資単位当たりの金額を引き下げることにより、より投資しやすい環境を整え、投資家層の拡大を図ること」と書いています(出典:同有報「重要な後発事象」)。重要な後発事象=決算期末のあとに起きた、次の期以降に大きく影響しうる出来事として、有報に書くことになっている事項です。
4️⃣ 直近の決算の数字(有価証券報告書 第85期)
有価証券報告書 第85期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月25日提出)の連結の数字です(日本基準)。SCREENは3月決算で、その後の四半期の数字(2026年4〜6月期の決算短信)は、上の注意書きのとおり当サイトでは取得できていません。確認日は2026-10-11です。
| 指標(連結・日本基準) | 第85期(2025/4〜2026/3) | 第84期(前期・2024/4〜2025/3) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 約6,057億円 | 約6,253億円 | −3.1% |
| 営業利益 | 約1,225億円 | 約1,357億円 | −9.7% |
| 経常利益 | 約1,243億円 | 約1,383億円 | −10.1% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 約920億円 | 約995億円 | −7.5% |
| 1株当たり当期純利益(EPS・2回の株式分割後の株数で計算) | 486.63円 | 511.77円 | — |
| 自己資本利益率(ROE) | 20.3% | 25.1% | — |
| 自己資本比率 | 67.4% | 62.7% | — |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 約927億円 | 約712億円 | — |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 約2,257億円 | 約1,985億円 | — |
| 1株当たり配当額(SCREEN単体・2026年4月の株式分割前の株数) | 293円 | 308円 | −15円 |
| 研究開発費 | 約378億円 | — | — |
| 設備投資(無形固定資産を含む) | 約277億円 | — | — |
出典:有価証券報告書 第85期「主要な経営指標等の推移」「経営者による分析」「セグメント情報」「研究開発活動」「設備投資等の概要」(2026-06-25提出)。億円の数字は有報の百万円から当サイトが計算したもの(億円未満四捨五入)。増減の率は有報の「経営者による分析」の記載と一致することを確かめた値。前期の営業利益はセグメント情報の表の値。確認日:2026-10-11。
1株当たりの数字の読み方の注意:SCREENは2023年10月1日と2026年4月1日の2回、普通株式1株を2株に分割しました。有報の「主要な経営指標等の推移」では、EPSと1株当たり純資産額は、第81期の期首に2回の分割をしたと仮定して計算されています。一方で、第85期の1株当たり配当額(293円)と発行済株式総数(2026年3月末 95,379千株)は、2026年4月の分割の前の数字で書かれています。293円の内訳は、中間配当123円と期末配当170円で、期末配当は有報の提出時点では2026年6月26日の定時株主総会で決める予定とされていました。前期の308円も、2026年4月の分割の前の株数の配当額です(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」の注記)。このため、上の表のEPS(2回の分割後の株数で計算)と1株当たり配当額(2026年4月の分割前の株数)は、同じ物差しではありません。また、2026年4月1日以降の株価は分割後の株数に対応した値なので、分割前の配当額293円をそのまま今の株価と比べることはできません(比べるときは、分割の割合〈1株→2株〉で直す必要があります)。
自己株式について:自己株式は、会社が市場などから買い戻して自分で持っている自社の株のことです。第85期には自己株式を約124万株買い付けましたが、買い付けただけでは発行済株式総数は減りません。発行済株式総数が期首の101,589千株から期末の95,379千株に減ったのは、持っていた自己株式6,209千株を消却(その株を無くすこと)したためです(いずれも2026年4月の分割の前の株数。出典:同有報「連結株主資本等変動計算書関係」)。
セグメントごとの第85期の数字と、会社の説明は次のとおりです(出典:同有報「経営者による分析」「セグメント情報」。売上高はほかのセグメントへの売上を含む会社の記載、億円未満四捨五入)。
- 半導体製造装置(SPE):売上高 約4,860億円(前期比6.5%減)・営業利益 約1,227億円(同10.4%減)。会社は、ポストセールスの売上が増えるなどで採算性は改善しているものの、売上の減少や固定費の増加などで減益になったと説明しています。地域では「台湾向けの売上が増加しましたが、中国や米国向けの売上が減少しました。」と書いています
- グラフィックアーツ機器(GA):売上高 約575億円(同8.5%増)・営業利益 約36億円(同16.1%減)。会社は、装置の売上と、インクを中心とする継続的な売上(リカーリングビジネス)が増えた一方で、固定費の増加や米国の関税の影響などがあったと説明しています
- ディスプレー製造装置および成膜装置(FT):売上高 約448億円(同24.9%増)・営業利益 約86億円(同181.8%増)。会社は、OLED(有機EL:自分で光る材料を使った画面)向けの装置の売上が増えたことと、採算性の改善を挙げています
- プリント基板関連機器(PE):売上高 約145億円(同2.6%増)・営業利益 約4億円(同64.2%減)。会社は、ポストセールスの売上が増えた一方で、固定費の増加などがあったと説明しています
5期の数字では、売上高は約4,119億円(第81期)から約6,253億円(第84期)まで続けて増え、第85期は約6,057億円でした。親会社株主に帰属する当期純利益は約455億円(第81期)から約995億円(第84期)まで増え、第85期は約920億円でした。会社は第85期の売上の減少を主にSPEの売上の減少によるものとし、営業利益の減少を「成長に向けた研究開発費や人件費などの固定費の増加や売上の減少など」によるものと説明しています。経常利益の段階では、受取利息が増えた一方で、損害賠償金の発生や為替差損(為替の動きによる損)の増加などで、本業以外の損益が前期より約8億円悪くなりました。最終利益の段階では、投資有価証券の売却益が増えたことなどで、特別損益(その期だけの臨時の損益)が前期より約17億円よくなりました(出典:同有報「経営者による分析」)。
お金の面では、第85期末の総資産は約7,224億円、純資産は約4,867億円でした。会社は、負債が減った主な理由に契約負債(主に、装置の代金の前受金)や未払いの法人税などの減少を挙げています。契約負債の残高は、前期末の約1,004億円から約831億円になりました。投資活動によるキャッシュ・フローは研究開発の設備などの取得で約297億円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは配当金の支払いや自己株式の取得などで約402億円の支出でした。会社は、この期に必要な資金は自己資金でまかない、将来の資金の安定のために総額600億円のコミットメントライン(あらかじめ決めた額まで、いつでも借りられる約束)を複数の金融機関と結んでいると書いています(出典:同有報「経営者による分析」「収益認識関係」)。
5️⃣ 会社自身が挙げているリスク
以下は有価証券報告書(第85期)の「事業等のリスク」から、会社自身が挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社は外部の要因、業界の動き、公正な取引、内部統制、事業の継続、品質、人材、環境の8つの分類で項目を挙げており、ここではそのうち5つを紹介します。原文はEDINET掲載の有価証券報告書でご確認ください。
- ①政治の状況(米中の関係・関税・地政学):今のところ米中の貿易摩擦による業績への影響は大きくないとしたうえで、米中の関係の悪化がさらに進み、輸出入に関する規制の強化などで中国への製品の出荷が制約を受ける場合には、売上が減って利益などに悪い影響が出る可能性があるとしています。米国向けに輸出する一部の製品などに追加の関税がかかっていることや、ロシア・ウクライナや中東の情勢による地政学のリスク(国どうしの対立や紛争など、地理と政治の事情から生じるリスク)が長引くことによる世界の景気の後退も挙げています。
- ②半導体・ディスプレーの市場の波:これらの市場は急速な技術の進歩で大きく伸びる一方で、需給のバランスが悪くなって市況が低迷するという好不況の波にさらされてきたと書いています。会社はROICを重視する経営を進めているとしたうえで、「市況が予想と乖離した場合には、当社グループの売上、利益等に悪影響をもたらす可能性があります。」と書いています。
- ③特定の顧客への取引の集中:国内外の主要な半導体メーカーに装置を納めていて、業界では巨額の投資を背景に顧客の集約が進み、売上が特定の顧客に集中する傾向があるため、「これら特定顧客の設備投資動向や特定顧客からの受注動向によっては、当社グループの売上、利益等に悪影響をもたらす可能性があります。」と書いています。
- ④為替の変動:海外への売上の割合が高く、輸出の売上では為替のリスクを避けるために円建ての取引を積極的に行っているものの、外貨建ての取引もあるとしています。為替予約などで影響を小さくするよう努めているが、急激な為替の変動が起きた場合には利益などに悪い影響が出る可能性があると書いています。
- ⑤生産の拠点の集中と災害:「当社グループの国内生産拠点は京滋地区に集中しており」、この地区で大きな地震などの自然災害が起きた場合に、生産設備などに大きな損害を受ける可能性があるとしています(京滋=京都府と滋賀県)。感染症の大流行(パンデミック)による営業・生産・調達・物流への影響も挙げています。
出典:有価証券報告書 第85期「事業等のリスク」(2026-06-25提出、2026-10-11確認)。原文にはこのほか、技術・製品の開発の遅れ、サプライチェーン(部品の調達から製造・販売までのつながり)、法令の順守、内部統制、資金の調達、情報セキュリティ、製品の品質と安全、人材の確保、環境への対応が挙げられています。為替予約=将来の決まった日に、決まったレートで通貨を交換する約束をして、為替の動きによる影響を小さくする取引のことです。
6️⃣ 上がる材料/下がる材料
ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。
以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。
※ 材料の数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来の予測は行っていません。
7️⃣ これから何を見れば分かるか
次の決算発表日は、当サイトの決算予定データ(earnings-calendar.json)に載っておらず、会社の公式な日程も確認できていないため、ここには書きません。会社のIRサイトの決算発表予定でご確認ください。この記事で挙げた材料がその後どうなったかは、次の開示で確かめられます。
- SPEの売上高と営業利益、その中の「新規装置」と「ポストセールス」の分かれ方:第85期は売上高 約4,860億円(ほかのセグメントへの売上を含む)・営業利益 約1,227億円、新規装置 約3,863億円・ポストセールス他 約991億円。決算短信のセグメント情報と、次の有価証券報告書で確かめられます
- 顧客の所在地ごとの売上の割合:第85期は中国38.4%・台湾22.4%。次の有価証券報告書の「関連情報」で確かめられます
- セグメントの区分の変更:会社は2026年4月に、先端パッケージの事業の機能をFTへ移したと書いています(出典:同有報「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」)。この記事の部門ごとの数字と、次の決算の数字を比べるときは、区分が同じかどうかを確かめる必要があります
- 中期経営計画「Value Up Further 2026」の最終年度(2027年3月期)の実績:売上高の累計1.8兆円以上・営業利益率の通算19%以上・ROICの最終年度15%以上という、会社が掲げた目標に対する結果
- 設備投資と研究開発の進み具合:1年間の設備投資の計画430億円、野洲市の用地、米国の研究開発拠点。次の有価証券報告書の「設備投資等の概要」「研究開発活動」で確かめられます
有価証券報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説にまとめています。
8️⃣ まとめ
結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①SPEの売上高と営業利益(売上の約80%を占める部門の動き)と、その中の新規装置とポストセールスの分かれ方、②顧客の所在地と顧客の集中(中国38.4%・台湾22.4%・1社で14.6%)が、輸出入の規制や顧客の投資計画とあわせてどう変わるか、③中期経営計画の最終年度(2027年3月期)の目標に対する実績。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。
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⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事は金融庁の開示システム(EDINET)に提出された有価証券報告書などの一次情報に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示、将来の業績・株価の予測、株価水準に関する評価的な断定は行っていません。会社の方針・目標・計画・見方として引用した内容は、あくまで「会社がそのように公表している」という事実の紹介です。文中に出てくる会社の名前は、会社の開示に書かれた事実を説明するためのもので、その会社の株式をおすすめするものではありません。歴史年表の一部はWikipedia(二次情報)を出典としています。投資には元本割れのリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。