🧭 トレンドフォローは本当に効くの? 研究でわかっていること【エントリー方法の研究 #01】
「上がっているものを買い、下がっているものを売る」——トレンドフォロー(順張り)は、いちばんなじみのある入り方かもしれません。この記事では、その考え方が学術研究でどこまで確かめられているのかを、実際に研究の要旨を確認しながら整理します。「効く・効かない」の結論を押しつけるのではなく、どんな市場で・どんな期間で・何がわかっていて・何がわかっていないのかを、読者が自分で判断できる材料として渡すことが目的です。
📌 この記事の結論(30秒まとめ)
- 株価指数・通貨・商品・国債の先物など58種類の市場を調べた研究で、過去1年ほどの値動きの向きに乗る方法に、偶然とは言いにくいプラスの効果が、調べたすべての市場で報告されました。効果は1か月から12か月ほど続きやすいとされています。
- 別の研究では、1880年までさかのぼっても、10年ごとの区切りのすべてでこの方法の平均はプラスで、株と債券を組み合わせた運用が大きく値下がりした10回の場面のうち8回で、良い成績だったと報告されています。
- 一方で、銘柄を1つずつ調べ直すと、この効果ははっきりしなかった、という反論もあります。向きがはっきりしない「もみ合い」の相場では、損が続きやすいともされています。
1️⃣ どんな方法か
トレンドフォローは、会社の業績や割安・割高を見るのではなく、その銘柄自身の「過去の値動き」だけを見て、値上がりが続いていれば買い、値下がりが続いていれば売る方法です。値動きの勢いに乗る、という意味で「モメンタム(勢い)」と呼ばれる考え方の一種でもあります。
仮の例(考え方を説明するための仮の例です): ある銘柄が、今日から数えて過去1年のあいだ、値上がりを続けてきたとします。トレンドフォローの考え方では、この「過去1年の向き」をそのまま材料にして、これから先も同じ向きに動きやすいと考え、買いを検討します。反対に、過去1年のあいだ値下がりを続けてきた銘柄については、売りを検討します。値動きの向きが変わるまで、その持ち方を続けるのが基本の考え方です。
2️⃣ 研究でわかっていること
先物・為替など58の市場を調べた研究(モスコウィッツ氏らの研究、2012年)
モスコウィッツ氏・ウー氏・ピーダーセン氏による研究は、株価指数・通貨・商品・国債の先物やそれに準じる契約58種類(流動性の高いものを選んだもの)を対象に、25年を超えるデータを使って調べました。その結果、過去1年ほどの値動きの向きに乗る方法に、調べた58種類のすべての市場で、偶然とは言いにくいプラスの効果があったと報告しています。この効果は1か月から12か月ほど続きやすく、12か月を超えると、一部は反対向きに戻る傾向も見られたとしています。
1880年までさかのぼった研究(ハースト氏らの研究、2017年)
ハースト氏・ウー氏・ピーダーセン氏による別の研究は、対象期間を1880年から2016年までにのばし、世界の67の市場(商品・株価指数・国債・通貨のペア)でこの方法の成績を調べ直しました。その結果、1880年代から2016年までの10年ごとの区切りのすべてで、この方法の平均の成績はプラスだったと報告しています。また、株を60%・債券を40%持つ組み合わせの運用が大きく値下がりした場面を10回選び、そのうち8回で、この方法は良い成績だったとしています。景気の良い時期・悪い時期、戦争のある時期・ない時期、金利の高い時期・低い時期など、さまざまな状況をまたいで調べても、同じように良い成績だったとも報告しています。なお、これらの成績は、多くの市場に分けて持ち、値動きの大きさに合わせて持つ量を調整した組み合わせ全体としてのものです。1つの市場だけで同じ結果になるとは限りません。
3️⃣ 反論・限界
ホアン氏・リー氏・ワン氏・チョウ氏による研究(2020年)は、モスコウィッツ氏らの研究と同じような対象を、契約1つずつ個別に調べ直すと、過去1年ほどの値動きの向きが次の1か月の値動きを予測する力は、データの範囲の中でも、その外でも、はっきりしなかったと報告しています。多くの契約をまとめて計算すると効果が大きく見えることについても、統計的な基準(ブートストラップと呼ばれる方法で作った基準)と比べると、確かなものとは言いにくいとしています。
また、値動きの向きがはっきりしない「もみ合い」の相場では、この方法は損が続きやすいとよく言われます。ただし、その損の大きさを示す具体的な数字は、今回確認できませんでした。数字がないぶん、「もみ合いでは損が続きやすい」という傾向として読んでいただくのが安全です。
4️⃣ 株・為替・コモディティでは?
紹介した2つの研究がどの市場を調べたものかを、表に整理します。
| 市場 | 研究はあるか | 内容 |
|---|---|---|
| 株価指数(先物) | あり | 58の市場の中に、主要国の株価指数の先物が含まれています。 |
| 個別の株式 | この研究からはわからない | 2つの研究は、いずれも株価指数・通貨・商品・国債の先物が対象で、個別の会社の株式は対象に含まれていません。 |
| 為替(FX) | あり | 58の市場の中に、複数の通貨のペアが含まれています。 |
| コモディティ(商品) | あり | 58の市場の中に、金・原油などの商品先物が含まれています。 |
株価指数・為替・コモディティのいずれも、58市場の研究の対象に含まれています。ただし、それぞれの市場だけを取り出した場合の細かい成績の違いまでは、今回確認できませんでした。個別の会社の株式については、ここで紹介した研究の対象外であり、この記事の研究からはわかりません(ほかの銘柄と比べて強いものを買う、別の型の方法については、このシリーズの別の回で扱います)。
5️⃣ よくある誤解
誤解1:会社の業績や割安・割高を見て入る方法だと思われがち
トレンドフォローは、値動きだけを材料にする方法です。決算や業績の分析にもとづく考え方とは別のものです。
誤解2:昔の研究で確かめられているので、これからも同じように効くと思われがち
紹介した研究の数字は、あくまで過去のデータを使って計算した結果です。将来も同じ結果になることを保証するものではありません。このシリーズの後の回では、研究で見つかった傾向が、発表されたあとに弱まった例も扱う予定です。
誤解3:短い期間の売買でも同じように効くと思われがち
紹介した研究が調べたのは、1か月から12か月という長い期間の値動きです。数日や数週間といった短い期間でも同じ効果があるかどうかは、この研究からはわかりません。
6️⃣ まとめ
- 58の市場を調べた研究では、過去の値動きの向きに乗る方法に、偶然とは言いにくいプラスの効果が報告されています。1880年から2016年までさかのぼった研究でも、10年ごとの区切りのすべてで平均の成績はプラスだったと報告されています。
- 一方で、契約を1つずつ調べ直すと効果がはっきりしなかった、という反論もあります。「もみ合い」の場面では損が続きやすいとも言われますが、その大きさの数字は今回確認できませんでした。
- 紹介した研究は、株価指数・為替・商品の先物が対象で、個別の会社の株式は対象に含まれていません。研究が調べたのは1か月から12か月という長い期間で、数日単位の短い期間で同じ効果があるかはわかりません。
- 当サイトのシグナルの一部も同じ考え方を使っていますが、研究が調べた期間(1か月から12か月)とシグナルが見ている期間(数時間から数日)は大きく違い、判定のルールも同じではないため、研究の結果をシグナルの裏づけとして読むことはできません。
次回は、一定期間の高値・安値を抜けたら入る「ブレイク」の方法について、研究でわかっていることを見ていきます。
🔗 関連記事
📚 出典・参考文献
- Moskowitz, Ooi & Pedersen (2012) "Time Series Momentum", Journal of Financial Economics 104(2)(出版社ページの要旨で確認)
- Hurst, Ooi & Pedersen (2017) "A Century of Evidence on Trend-Following Investing", The Journal of Portfolio Management 44(1)(出版社ページの要旨で確認)
- Huang, Li, Wang & Zhou (2020) "Time series momentum: Is it there?", Journal of Financial Economics 135(3)(出版社ページの要旨で確認)
⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事はエントリー(買う・売るタイミング)の決め方についての考え方と、公開されている学術研究の紹介を情報提供として整理したものであり、特定銘柄・特定手法の売買推奨や投資助言ではありません。研究の内容は当サイトによる要約です。正確な内容は各原文をご確認ください。記載の数値・方法による利益を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。