🧪 指標の組み合わせ大全——死んだ指標は場所で蘇り、弱い逆張りは静かに死ぬ
「RSIが30を切ったら買い」「MACDがゴールデンクロスしたら買い」——テクニカルの教科書ルールを単体で過去データに当てると、多くは期待値ゼロかマイナス。これが当ラボ(AIシグナル研究日誌)の検証で繰り返し出てきた正直な現実です。では、指標はもう役に立たないのでしょうか。
今回、当サイトのシグナル検証基盤を使って「指標×指標の組み合わせ」を体系的に総当たりしました。素材は約20年(2006年11月〜2026年7月)×監視18銘柄×クローズ済み18,099回の日足シグナルです。見えてきた結論を一言でいうと——指標は単体では死んでいても「場所」(他の指標が示す文脈)とセットにすると蘇るものがあり、逆に一見無難な組み合わせが静かに期待値を削っている。この記事は、その「蘇る組み合わせ」と「静かに死ぬ組み合わせ」の大全です。
📌 この記事の結論(3 行サマリ)
- 単体では期待値マイナスのMACDゴールデンクロスが、「価格が移動平均2本の下=底値圏」という場所に限ると訓練・検証の両期間でプラスに転じた(+0.140R→+0.167R)。指標の価値は「どこで使うか」で別物になる。
- RSI70以上の「買われすぎ」は、上昇トレンド中ならむしろ買い側に有利だった(+0.176R→+0.151R)。「買われすぎ=売り」という単純化は約20年のデータでは支持されない。
- 最悪だったのは「RSIがどっちつかず(45〜55)のときの逆張り買い」。ボリンジャーバンド下限タッチ×RSI中立は訓練期間で-0.260R(統計的に有意)。同じBB下限タッチでもRSI30以下の「極値」の裏付けがあるライブ実測では勝率56.9%・+0.33R——弱い根拠の逆張りだけが静かに死ぬ。
1️⃣ どう調べたか——約20年×18銘柄×18,099回+ライブ2,400回
先に検証の枠組みを簡単に。当サイトは金・銀・原油・日経CME・S&P500・ナスダック・ダウ・FTSE・ビットコイン・主要FX9ペアの18銘柄を実際のシグナルエンジンで監視しています。今回はそのエンジンと同じ発火条件を約20年の日足に遡って適用し、決着(利確または損切り)がついた18,099回のシグナルを分析しました。
- 期間の分割:2020年末までの訓練期間13,044回で仮説を探し、2021年以降の検証期間5,055回で「その後も通用したか」を確認する二段構え。訓練期間だけで良く見える組み合わせは偶然の可能性が高いため、両期間で通ったものだけを「合格」と数えます。
- 多重検定の補正:たくさんの組み合わせを試すと偶然の当たりが必ず混ざるため、FDR補正(偽発見率10%)で統計的にふるいにかけました。
- 成績の単位:勝率のほかに平均R(1回の損切り幅を1としたときの平均損益。+0.10Rなら「1回あたり損切り幅の10%分のプラス」)を使います。
- 「場所」の定義:発火した瞬間のRSIの水準(5段階の帯)と、価格と移動平均MA25/MA75の位置関係(4象限)を機械的に記録し、「シグナル×場所」のクロスを総当たりしました。判定条件は検証前に固定し、後から動かしていません。
- ライブ実測との突き合わせ:バックテストとは別に、2026年に実際に配信・記録してきたライブシグナル2,417回(うち決着分)でも同じ組み合わせを照合しました。
2️⃣ 発見① 死んだ指標は「場所」で蘇る——MACDゴールデン×底値圏
最初の主役はMACDのゴールデンクロス(買い転換のサインとされる定番シグナル)です。実はこのシグナル、当サイトのライブ実測では単体だと勝率39.0%・平均-0.09R(282回)と、期待値マイナスの「要注意リスト」に入っていました。教科書の定番が実データでは働かない——よくある残念な結末に見えます。
ところが「場所」で切ると景色が変わりました。価格がMA25とMA75の両方より下=下げ切った底値圏で出たゴールデンクロスに限ると:
| MACDゴールデンクロス | 件数 | 勝率 | 平均R | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 単体(ライブ実測) | 282回 | 39.0% | -0.09R | 期待値マイナスの要注意シグナル |
| ×両MA下(訓練 2006-2020) | 655回 | 47.6% | +0.140R | FDR補正を通過(q=0.063) |
| ×両MA下(検証 2021-2026) | 254回 | 49.2% | +0.167R | 信頼区間の下限もプラス=両期間合格 |
| ×両MA下(ライブ実測・参考) | 108回 | 41.7% | -0.03R | 直近窓ではまだ横ばい。前向き検証で追跡中 |
解釈はシンプルです。ゴールデンクロスは「勢いの転換」を示す道具なので、すでに上がり切った場所で出るクロスはただの騒音になりやすい。一方、売られ切った底値圏で出るクロスだけが「転換の初動」を捉えている可能性がある——約20年のデータはそう示唆しています。移動平均線の解説記事で紹介した「位置関係で相場の局面を読む」考え方が、別の指標の生死を分けた形です。
3️⃣ 発見② 「買われすぎ」は売りではない——強さは続く
次はRSIの「買われすぎ」の常識について。RSI70以上は買われすぎ=そろそろ下がる、と説明されることが多い水準です。ところが約20年のデータでは逆でした。
| 組み合わせ | 訓練(〜2020) | 検証(2021〜) | 判定 |
|---|---|---|---|
| RSI70以上 × 上昇トレンド | +0.176R(753回・q=0.007) | +0.151R(405回・CI下限+0.02) | ✅ 両期間合格 |
| 上昇配置(価格>MA25&75)× 買いシグナル | +0.081R(4,321回・q=0.007) | +0.092R(1,747回・CI下限+0.03) | ✅ 両期間合格 |
| RSI70以上(単体・条件なし) | +0.136R(1,365回) | +0.111R(549回・CI下限-0.003) | △ 検証期間はわずかに基準未達 |
ポイントは2つあります。第一に、「買われすぎ」サインが出るほど強い相場は、少なくとも数日〜数週間の時間軸では続きやすかったこと。モメンタム(勢い)の持続と呼ばれる現象で、世界中の市場研究で繰り返し報告されてきた傾向と整合します。第二に、RSI70以上「単体」では検証期間の信頼区間下限がわずかにゼロを割り込んだのに対し、「上昇トレンド中」という文脈を重ねると両期間で基準を通過したこと。ここでも「指標×場所」の掛け算が効いています。
4️⃣ 発見③ 弱い逆張りは静かに死ぬ——RSI極値の裏付けという分水嶺
今回の検証でもっとも実用価値が高いのは、たぶんこの「避けるべき組み合わせ」です。ボリンジャーバンド下限タッチやサポートライン反発は、逆張り買いの定番サインとして人気があります。しかし「そのときRSIがどっちつかず(45〜55の中立帯)だったら」という条件を重ねると:
| 組み合わせ | 訓練(〜2020) | 検証(2021〜) | 判定 |
|---|---|---|---|
| BB下限タッチ × RSI中立(45-55) | -0.260R(370回・勝率31.1%・q=0.001) | -0.134R(181回・勝率36.5%) | 🚫 危険。両期間ともマイナス方向 |
| サポート反発 × RSI中立(45-55) | -0.194R(465回・勝率34.2%・q=0.007) | -0.096R(215回・勝率37.7%) | 🚫 危険。両期間ともマイナス方向 |
| 【対照】BB下限タッチ × RSI30以下(ライブ実測) | 勝率56.9%・+0.33R(65回・勝率CI 44.8〜68.2%) | ✅ 極値の裏付けがあれば生きる | |
なぜこうなるのか。バンド下限やサポートに触れたのにRSIが中立のまま、というのは「値段は下がったが、勢いとしては売られ切っていない」状態です。つまり反発の根拠が価格の位置だけで、勢いの面の裏付けがない。こうした「弱い根拠の逆張り」は、派手に崩れるというよりジワジワと期待値を削る形で静かに死んでいく——訓練期間で統計的に有意なマイナス、検証期間・ライブでも同じ向き、という三面一致がそれを物語ります。
当ラボはこの2つの組み合わせを、実運用では「回避ゲート」(該当したら見送りを検討する条件)として前向き検証に登録しました。ボリンジャーバンドの解説記事にも書いたとおり、バンドタッチは「自動で買うサイン」ではなく「注目する場所」——その注目に値するかどうかを、RSIの極値が仕分けてくれるわけです。
5️⃣ 発見④ シグナルの同時発火(コンボ)は「まだ証明中」
「複数のサインが同時に出たら強いのでは?」——直感的にはそう思えます。当ラボは7月19日に「同時発火コンボ」を体系的に洗い、有望そうな3本を前向き検証に登録しました。現時点の成績は次のとおり、期待は持てるがまだ証明されていない段階です。
| 同時発火コンボ | 訓練(〜2020) | 検証(2021〜) | 現状 |
|---|---|---|---|
| 高値ブレイク × RSI買われすぎ | +0.19R(553回・q=0.01) | +0.107R(234回・CI下限-0.05) | 📊 検証期間単独では基準未達=前向き検証中 |
| +2σ突破 × RSI買われすぎ | +0.205R(294回) | +0.131R(142回・CI下限-0.07) | 📊 同上 |
| ダブルボトム × 高値ブレイク | 検証31回・+0.097R(件数不足) | 📊 同上 | |
3本とも方向はプラスで、特に「順張りブレイク×勢いの確認」という組み合わせの筋は発見②と整合的です。ただし検証期間単独で信頼区間の下限がプラスに届いたものはゼロ。さらに正直に書くと、高値ブレイク×RSI買われすぎのライブ実測は45回・勝率31.1%・-0.27Rと、直近の窓ではむしろ逆向きに出ています。当ラボの規律では、この状態で「使える」とは言いません。結論はこれからのライブデータが出します(進捗は日次の研究日誌とシグナル成績ページで自動更新されます)。
6️⃣ 発見⑤ 「失敗の逆」も対称ではない——売り失敗だけが強さの示唆
おまけとして、オーナー発案のユニークな仮説も検証しました。「行くはずが行かないのは、逆に強い」——つまりシグナルが損切りで失敗したら、その瞬間に反対方向へ入れば勝てるのでは?という発想です(ストップ・アンド・リバース)。約20年の日足で転換イベント10,497件を機械的に評価しました。
| 失敗からの転換 | 訓練(〜2020) | 検証(2021〜) | 判定 |
|---|---|---|---|
| 買い失敗 → ショート転換 | -0.020R(5,180回) | -0.015R(1,960回) | ❌ 完全にヌル(期待値ほぼゼロ) |
| 売り失敗 → ロング転換 | +0.066R(1,512回・CI下限-0.003) | +0.149R(590回・CI[+0.03, +0.27]) | △ 惜しい。ただし採用基準には未達 |
面白いのは綺麗な非対称性です。「上がるはずが上がらない→売り」は完全なノイズ。「下がるはずが下がらない→買い」だけがプラス方向——「売り物をこなして下がらない相場は強い」という古い相場観と符合します。ただし、プラスが立った検証期間はほぼ上昇相場だったため、時代の追い風と区別がつかないというのが統計的に正直な評価です。当ラボはこの仮説を採用せず、「気づき」として台帳に記録するに留めました。
7️⃣ 正直な注意——20年で本物でも「いま」効くとは限らない
ここまで「合格」と書いてきた3本の組み合わせにも、隠さず書いておくべきことがあります。2026年のライブ実測の直近窓では、3本とも未確認またはむしろ逆向きなのです。
| 両期間合格の3本 | 約20年のバックテスト | ライブ実測(直近窓) |
|---|---|---|
| MACDゴールデン × 両MA下 | +0.140R → +0.167R | -0.03R(108回)=ほぼ横ばい |
| RSI70以上 × 上昇トレンド | +0.176R → +0.151R | -0.34R(60回)=逆向き |
| 上昇配置 × 買いシグナル | +0.081R → +0.092R | -0.16R(479回)=逆向き |
これをどう読むか。可能性は2つあります。(a)直近の相場が高値圏の乱高下でモメンタム系に逆風だっただけで、いずれ20年の平均に回帰する。(b)市場の構造が変わり、20年で本物だった優位性が本当に消えた。どちらかは現時点で誰にも分かりません。当ラボは過去にも「20年のデータでは本物、直近では機能不全」という組み合わせ(金属市場の逆張り系)を観察しており、答え合わせは5本すべてを前向き検証(これから発火するライブデータでの追試)に登録して、データに出させることにしています。
8️⃣ 実務への落とし込み——この大全の使い方
最後に、この検証結果を一般論としてどう活かせるかを整理します(繰り返しですが、特定の売買の推奨ではありません)。
- 単体のサインで飛びつかない:教科書の定番シグナルも、単体では期待値ゼロ〜マイナスのものが多い。サインを見たら「どこで出たか」(トレンド・移動平均との位置・RSIの水準)を必ずセットで確認する習慣が、統計的にはもっとも割に合う一手間でした。
- 逆張りは「極値の裏付け」を要求する:バンド下限・サポート反発だけを根拠にした逆張りのうち、RSIがどっちつかずのものは約20年のデータで一貫して不利。逆張りをするなら「売られ切った証拠」が揃っている場面に絞る、が守りの目安です。
- 「買われすぎ=売り」を疑う:強い相場に安易に逆らう売りは、データ上は分の悪い賭けでした。ただし高値圏の追撃買いにも高値掴みのリスクがあり、どちらにしてもポジションサイズ(1回の損失を口座の1〜2%程度に)と損切りルールが前提です。
- 検証されていない直感を実弾で試さない:「サインが重なれば強い」「失敗の逆は強い」——どちらも直感的には魅力的で、どちらもまだ証明されていません。当ラボが実際にやっているように、先に過去データとデモで検証し、基準を決めてから判断する順序をおすすめします。
9️⃣ まとめ
- 指標の価値は「何のサインか」より「どこで出たか」。単体で期待値マイナスのMACDゴールデンクロスは、底値圏(両MA下)という場所に限ると訓練・検証の両期間でプラスに蘇った。
- 「買われすぎ」は約20年のデータでは売りサインではなかった。上昇トレンド×RSI70以上はむしろ買い側に有利で、強さは(数日〜数週間の時間軸では)続きやすい。
- 最も避けるべきはRSI中立のままの逆張り買い。訓練・検証・ライブの三面で一貫してマイナスで、「弱い根拠の逆張りは静かに死ぬ」が今回の検証で最も頑健な知見。
- 同時発火コンボと「失敗の逆」仮説は方向は面白いが未証明。そして両期間合格の3本ですらライブ直近窓では未確認——過去に本物だった優位性が今も生きているかは、前向き検証だけが答えを出せる。当ラボは5本を登録済みで、結果は正直に報告します。
🔗 関連記事
⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事は当サイトの検証基盤による過去データ検証(バックテスト)およびライブ実測の結果に関する情報提供であり、特定の金融商品の売買推奨や投資助言ではありません。掲載した統計値は当サイトが監視する先物・FX・暗号資産18銘柄の特定条件下での過去の集計値であり、あらゆる市場・時期・銘柄で再現することを保証するものではありません。過去の検証成績は将来の成果を保証しません。投資判断はご自身の責任で行ってください。