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⚠️ 本記事はエントリー(買う・売るタイミング)の決め方についての考え方や、公開されている研究の紹介を目的とした「情報提供」であり、特定の手法・銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

💱 少しずつ勝ち、たまに大きく負ける? キャリートレードで研究でわかっていること【エントリー方法の研究 #08】

公開:2026年10月2日 / 読了時間:約 10 分 / カテゴリ:🚪 エントリー方法の研究

シリーズ第7回(#07)で扱った「短期の逆張り」は、短い期間の値動きそのものに注目する方法でした。この記事で扱う「キャリートレード(金利の差をねらう方法)」は、値動きではなく、通貨ごとの金利の違いに注目する方法です。円を使ったキャリートレードのしくみや規模そのものは、別記事「円キャリートレード徹底解説」で詳しく説明しているので、この記事では、金利の差をねらう方法が研究でどこまで確かめられているか、そして「少しずつ勝ち、ときどき大きく負ける」という、この方法に特有の崩れ方に絞って整理します。

📌 この記事の結論(30秒まとめ)

1️⃣ どんな方法か

キャリートレードは、金利の低い国の通貨でお金を借りて、金利の高い国の通貨にかえてもっておく方法です。為替の値段が変わらなければ、両国の金利の差の分だけ、毎日少しずつ利息のようなものを受け取れるという考え方にもとづいています。これまでの回で見た「値動きの向き」や「値動きの行き過ぎ」に注目する方法とは違い、キャリートレードが見ているのは金利そのものの差です。

仮の例(考え方を説明するための仮の例です): ある国の金利が1年あたり5%、別の国の金利が1年あたり1%だとします。金利の低い国の通貨でお金を借り、金利の高い国の通貨にかえてもっておくと、為替の値段が変わらないかぎり、1年あたり4%にあたる金利の差を、少しずつ受け取れる計算になります。ただし為替の値段が大きく動けば、受け取った金利の差を打ち消すほどの損が、短い間に出ることもあります。

金利の差を少しずつ受け取って積み上げた利益が、ある時点で一度に大きく失われる様子を示す図 キャリートレードの崩れ方の考え方(イメージ図・実際の値動きではありません) 開始時点 ふだん:少しずつ金利の差を受け取る ときどき:一度に大きく失う
図:金利の差を少しずつ積み上げる期間が続いたあと、ある時点で一度に大きな損が出て、積み上げた分を失う、というキャリートレードの崩れ方の考え方です。※概念を示すイメージ図です(実際の値動きではありません)。

2️⃣ 研究でわかっていること

通貨のキャリートレードは、ときどき大きく崩れる(ブルンネルマイヤー氏・ナーゲル氏・ペダーセン氏、2008年)

ブルンネルマイヤー氏・ナーゲル氏・ペダーセン氏の研究は、1992年から2006年までの週ごとのデータ(一部は1986年からの3か月ごとのデータ)を使い、金利の高い通貨をもち、金利の低い通貨を売る、という組み合わせを複数の通貨で試しました。その結果、シャープレシオは週ごとで0.704、3か月ごとで0.654と、良い成績を示しました。ところが同時に、値動きの片寄り(歪み。小さな勝ちが多く重なり、ときどき大きく負ける片寄りを表す数値)は週ごとでマイナス0.717、3か月ごとでマイナス0.700と、はっきり負の値でした。比較のため、同じ研究は米国の株式市場全体の指数についても同じ数値を計算しており、片寄りは週ごとでマイナス0.41、3か月ごとでマイナス0.88だったと報告しています。キャリートレードの片寄りの大きさは、株式市場全体の片寄りとおおむね同じくらいだった、ということです。

この研究は、通貨の組み合わせを1組から3組に増やしても、負の片寄りは小さくならなかったとも報告しています。つまり、複数の通貨に分けてキャリートレードをしても、ときどき大きく負ける崩れ方そのものは消えなかった、ということです。研究は、この崩れ方の理由を、資金の出し手の事情で説明しています。市場全体のリスクを取りたい気持ちや、お金を借りやすさ(資金の出しやすさ)が急に落ちると、キャリートレードを一斉にやめる動きが起こりやすく、それが為替の急な動きにつながる、という説明です。資金の出しやすさを表す指標が、その後の為替の動きを予測する力をもっていたことも、あわせて報告されています。

1998年10月の例(同じ研究の紹介より)

同じ研究は、1998年10月7日と8日に、米ドルが円に対して急に値下がりした例を紹介しています。この動きは、わかりやすいニュースが無いまま起きたとされ、研究は、資金の出し手が円を使ったキャリートレードを一斉にやめたことが関係していると考えています。

金利の高さは、別のリスクを負っていることの見返り(ラスティグ氏・ルサノフ氏・ヴェルデルアン氏、2011年)

ラスティグ氏・ルサノフ氏・ヴェルデルアン氏の研究は、多くの国の通貨を調べ、金利の高い通貨ほど、ある共通の動き(研究は「傾き」の要因と呼んでいます)に強く影響されやすいことを見つけました。この共通の動きへの影響の受けやすさが、金利の高い通貨と低い通貨のもうけの差の、多くを説明できると報告されています。研究はこれを、キャリートレードのもうけが、ただの見落とし(誰も気づいていない得な話)ではなく、何らかの共通のリスクを負っていることへの見返りだ、という見方と合う結果として示しています(その研究が調べた期間・通貨での結果です)。

通貨だけでなく、幅広い資産に共通する崩れ方(コーイエン氏・モスコウィッツ氏・ペダーセン氏・フルフト氏、2013年・2018年)

コーイエン氏らの研究は、キャリートレードの考え方を通貨だけでなく、株価指数・国の国債・コモディティ(商品)・米国の国債・企業の借金(クレジット)・株価指数のオプションにも広げ、合わせて7つの資産の種類で「利回りの差を取る」方法を試しました。種類ごとに試した場合のシャープレシオは平均0.7でしたが、7つの種類を組み合わせた場合は1.1まで上がったと報告されています。一方で、こうした利回りの差を取る方法が、複数の資産の種類でそろって悪い成績になりやすい時期があり、その時期は世界的な不景気と重なっていたとも報告されています。研究があげている3つの大きな不調の時期は、1972年8月から1975年9月、1980年3月から1982年6月、2008年8月から2009年2月です。

3️⃣ 反論・限界

キャリートレードにもうけの差があること自体に反対する研究は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。ただし、そのもうけの理由については、研究者の間でも見方が分かれています。

「崩れるリスクの見返り」では説明しきれない結果(コーイエン氏らの研究より)

通貨だけのキャリートレードは、ときどき大きく負ける片寄り(負の歪み)が、はっきり見られました。ところが、7つの資産の種類を組み合わせたキャリートレードでは、この片寄りがほぼゼロに近づき、何もしないで資産を持ち続けた場合よりも、極端な値動きが少なかったと報告されています。それにもかかわらず、組み合わせたキャリートレードのシャープレシオは1.1と、通貨だけの場合より高い数値でした。コーイエン氏らは、これは「キャリートレードのもうけは、崩れるリスクの見返りだ」という説明だけでは、うまく説明しきれない結果だと述べています。

分散しても崩れ方は消えない(ブルンネルマイヤー氏らの研究より)

通貨を複数組み合わせても、ときどき大きく負ける片寄りは小さくならなかったという結果は、「分散すれば崩れを避けられる」という期待に対する反論になります。

データの時期に注意

ここで紹介した研究は、いずれも論文が書かれた時点より前のデータを使っています(たとえばブルンネルマイヤー氏らの研究の週ごとのデータは2006年まで)。世界の金利は、その後の時期に大きく変わった国が多く(長い間ほぼゼロに近い金利だった国や、その後に大きく金利を上げた国もあります)、同じ組み合わせが今の金利の状況でも同じ結果になるとは、この記事で紹介した研究からはわかりません。

4️⃣ 株・FX・コモディティでは?

紹介した3つの研究が、どの市場を対象にしているかを表に整理します。

市場研究はあるか内容
為替(FX)あり(研究の中心)ブルンネルマイヤー氏らの研究とラスティグ氏らの研究は、いずれも複数の国の通貨を組み合わせた考え方です。1つの通貨の組み合わせだけを売買する考え方とは異なります。
株価指数あり(ただし考え方が違う)コーイエン氏らの研究は株価指数も対象にしていますが、使う「利回りの差」は通貨の金利差とは別の計算方法です。株価指数だけを取り出した結果の細かい内容は、この記事では確認できませんでした。
コモディティ(金・原油など)あり(ただし考え方が違う)コーイエン氏らの研究は、商品の先物(将来の価格を決めて売買する取引)の値段のつき方を使った「利回りの差」を調べています。通貨の金利差とは別の計算方法のため、商品だけを取り出した詳しい結果は、この記事では確認できませんでした。

まとめると、キャリートレードの研究の中心は為替で、株価指数やコモディティにも「利回りの差を取る」という同じ考え方を当てはめた研究(コーイエン氏らの研究)がありますが、計算方法が為替とは異なるため、そのまま当てはめられるわけではありません。

当サイトとの関係: 当サイトの監視18銘柄には、豪ドル/円やポンド/円のように、金利の高い国の通貨と、金利の低い円を組み合わせた通貨ペア(円クロス)が含まれています。しかし当サイトのシグナルは、RSI(相対力指数:買われすぎ・売られすぎを0から100の数字で表す指標)・MACD(移動平均線を使って、流れの変わり目をとらえる指標)・移動平均・ボリンジャーバンド(値動きの広がりを統計的な幅で示す線)・高値安値のブレイクといった値動きの型を見るもので、金利の差そのものを判定材料にしていません。この記事で紹介した研究は、金利の差を使った別の考え方であり、当サイトのシグナルの成績を裏づけるものではありません。また、研究が調べたのは過去の期間の、複数の通貨を組み合わせた結果で、当サイトのシグナルが記録している期間・1つずつの銘柄とは、期間も市場の範囲も違います。

5️⃣ よくある誤解

誤解1:「複数の通貨に分けておけば、急な崩れは避けられる」と思われがち

ブルンネルマイヤー氏らの研究では、通貨の組み合わせを1組から3組に増やしても、ときどき大きく負ける片寄りは小さくなりませんでした。分散すれば崩れそのものが消える、というわけではありません。

誤解2:「金利の差を受け取るだけの、リスクの少ない方法」と思われがち

金利の差を受け取れる期間が続くため、そう見えがちですが、研究が報告しているのは「小さな勝ちが積み重なり、ときどき大きく負ける」という崩れ方です。ラスティグ氏らの研究は、金利の高さを、何らかの共通のリスクを負っていることの見返りとして説明しています。

誤解3:「急な崩れには、必ずわかりやすいニュースがある」と思われがち

ブルンネルマイヤー氏らの研究は、1998年10月7日と8日に米ドルが円に対して急に値下がりした例を紹介していますが、この動きには目立ったニュースが無かったとされています。資金の出し手の事情だけで、大きな値動きが起きることもある、という例です。

この記事は、公開されている学術研究を当サイトが要約したものです。研究の数字は、それぞれの研究が使った期間・市場・条件のもとでの結果であり、将来も同じになるとは限りません。特定の手法・銘柄の売買を勧めるものではありません。

6️⃣ まとめ

次回は、金利の差とは別の切り口である、重要な経済指標の発表の直前に値動きが集まりやすいかどうかの研究を見ていきます。

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📚 出典・参考文献

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