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📚 解説記事
⚠️ 本記事はエントリー(買う・売るタイミング)の決め方についての考え方や、公開されている研究の紹介を目的とした「情報提供」であり、特定の手法・銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

↩️ 直前に大きく動いたものは、逆に動きやすい? 短期の逆張りで研究でわかっていること【エントリー方法の研究 #07】

公開:2026年10月1日 / 読了時間:約 9 分 / カテゴリ:🚪 エントリー方法の研究

シリーズ第5回(#05)と第6回(#06)で扱った「相対的な強さ」は、ほかの銘柄と比べて強いものを買い、弱いものを売る方法でした。この記事で扱う「短期の逆張り」は、考え方がちょうど逆です。直前の短い期間に大きく動いた銘柄に逆らって入る方法です。この記事では、ジェガディーシュ氏の研究(1990年)とリーマン氏の研究(1990年)をもとに、週単位・月単位の短期の逆張りについて、研究でわかっていることと、取引コストをめぐる反論まで、出典つきで整理します。

📌 この記事の結論(30秒まとめ)

1️⃣ どんな方法か

短期の逆張りは、直前の1週間や1か月で大きく上がった銘柄を売り、大きく下がった銘柄を買う方法です。「値動きは短い間に行き過ぎやすく、そのあとで戻る」という考え方にもとづいています。#05・#06で扱った「相対的な強さ(モメンタム)」が3〜12か月という長めの期間を見るのに対し、短期の逆張りは1週間から1か月という短い期間を見る点が違います。

仮の例(考え方を説明するための仮の例です): 多数の銘柄を直近1か月の値動きで並べ、もっとも下がった1割のグループを買い建て、もっとも上がった1割のグループを売り建てたとします。「行き過ぎた動きは戻りやすい」という考え方が正しければ、次の1か月で、買い建てたグループのほうが、売り建てたグループより値上がりしやすいはずです。

直近1か月で大きく動いた2つのグループが、次の1か月で逆向きに動きやすいという考え方を示す図 短期の逆張りの考え方(イメージ図・実際の値動きではありません) 0 直近1か月 大きく上昇 大きく下落 次の1か月(同じ2グループ) 伸び悩み・下落 戻り(反発) 下がっていた側を買う 上がっていた側を売る
図:直近1か月で大きく上がったグループと大きく下がったグループが、次の1か月で逆向きに動きやすい、という短期の逆張りの考え方です。※概念を示すイメージ図です(実際の値動きではありません)。

2️⃣ 研究でわかっていること

月単位の逆張り(ジェガディーシュ氏、1990年)

ジェガディーシュ氏の研究は、米国の個別株(1934〜1987年)の月ごとの値動きを調べ、ある月に上がった銘柄は、その翌月は下がりやすく、逆に下がった銘柄は翌月上がりやすいという、向きが反対になる傾向を報告しました。銘柄を直近の値動きで10等分したグループ(デシルと呼ばれます)を作り、もっとも下がったグループを買い、もっとも上がったグループを売る方法を試したところ、その差は1か月あたり平均2.49%になりました。一方で、1年(12か月)ほど離れた値動きとの間には、同じ向きに動きやすい傾向も見られたと報告されています。

週単位の逆張り(リーマン氏、1990年)

リーマン氏の研究は、1週間を単位にして同じような調べ方をしました。ある週に「勝ち組」だった銘柄と「負け組」だった銘柄が、次の週には大きく向きを変えて逆向きに動く、はっきりした傾向を報告しています。この研究が重視したのは、こうした逆向きの動きが「見かけ上の利益」ではなく、実際に捕まえられる利益かどうかという点です。株の売買では、売る値段と買う値段にもともと差があること(売値と買値の差)や、取引の少ない銘柄特有の値段のずれが、見かけの利益を大きく見せることがあります。リーマン氏の研究は、こうしたずれを補正したうえでも、また妥当な範囲の取引コストを引いたあとでも、逆張りの利益が残ったと報告しました。

3️⃣ 反論・限界

利益の中身は「行き過ぎ」だけではない(ダ氏・リュー氏・ショーンバーグ氏、2014年)

ダ氏・リュー氏・ショーンバーグ氏の研究(2014年)は、短期の逆張りの利益をさらに細かく調べ直しました。大きく下がった銘柄の中には、会社の業績の見通し(アナリストによる業績予想の見直し)が悪化したという、根拠のある理由で下がったものも混ざっています。研究は、業績の見通しの変化で説明できる値動きを取り除き、根拠のない値動き(行き過ぎ)だけを拾うように方法を改良したところ、リスクを調整したもうけの大きさが、改良前の方法のおよそ4倍になったと報告しています。これは裏を返せば、ふつうの短期の逆張りが拾っている利益の中には、根拠のある値動きまで混ざっており、それが利益を薄めていたことを意味します。

さらに同じ研究は、買い建てる側(大きく下がった銘柄)の戻りは、資金繰りに迫られた投資家の投げ売りのあとの戻りに結びつきやすく、売り建てる側(大きく上がった銘柄)の伸び悩みは、空売り(株を借りて先に売る取引)がしにくいために、高すぎる値段がすぐには直らないことに結びつきやすい、と説明しています。つまり、逆張りの利益は「値動きが行き過ぎて、あとで正しい値段に戻る」というだけでなく、こうした市場の仕組み上の事情からも生まれている、ということです。

反対の結果の研究

短期の逆張りの傾向そのもの(下がったものが戻り、上がったものが伸び悩む)があること自体に反対する研究は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。ただし、上で紹介したとおり、その利益の中身や、利益がどこまで取引コスト抜きに実現できるかについては、研究者のあいだでも見方が分かれています。

当サイトとの関係: 当サイトのシグナルのうち、RSI(相対力指数:値上がりと値下がりの勢いの強さを0〜100で表す指標)が低い水準(売られすぎ)で買う考え方は、「直前に大きく下がったものに逆らって入る」という点で、この記事の短期の逆張りと近い発想です。ただし、ここで紹介した研究が調べたのは米国の個別株を使った週単位・月単位の保有期間で、当サイトの監視18銘柄(為替・金・原油・株価指数など)とは、市場も期間も異なります。この研究が、当サイトのシグナルの成績を裏づけるものではありません。また、研究は多数の銘柄を並べて比べたグループどうしの平均の差を見ており、1つの銘柄の売られすぎを見るRSIとは調べ方も異なります。

4️⃣ 株・FX・コモディティでは?

紹介した3つの研究が、どの市場を対象にしているかを表に整理します。

市場研究はあるか内容
個別株あり3つの研究はいずれも米国の個別株が対象です。ジェガディーシュ氏の研究は1934〜1987年の月単位、リーマン氏の研究は週単位、ダ氏らの研究も米国の個別株です。株価指数そのものを対象にした研究は、今回確かめられませんでした。
為替(FX)この研究からはわからない今回調べた3つの研究はいずれも株が対象で、為替の週単位・月単位の逆張りを扱った研究は見つかりませんでした。株と為替では値動きの性質が違うため、同じ傾向が起きるかはこの研究からはわかりません。
コモディティ(金・原油など)この研究からはわからない同様に、商品(コモディティ)の先物を対象にした短期の逆張りの研究は、今回は見つかりませんでした。

まとめると、短期の逆張りの研究は米国の個別株を対象にしたものが中心で、為替やコモディティで同じ傾向があるかどうかは、この記事で紹介した研究からはわかりません。

5️⃣ よくある誤解

誤解1:「下がったら買い、上がったら売れば必ずもうかる」と思われがち

研究が示しているのは、多数の銘柄を組み合わせたグループどうしの平均の差です。1つの銘柄だけを見て、下がったから買う、上がったから売る、という判断がいつも正しいことを示しているわけではありません。

誤解2:「取引コストのせいで机上の空論」と思われがち

リーマン氏の研究は、売値と買値の差や取引コストを差し引いても利益が残ったと報告しています。ただし、これは1980年代までの米国市場のデータにもとづく結果です。取引のしくみや参加者の数は、当時といまとで大きく変わっており、同じ利益がいまの市場でそのまま得られるとは限りません。

誤解3:逆張りの利益は「行き過ぎた値動きが正しい値段に戻るだけ」と思われがち

ダ氏らの研究が示すとおり、逆張りの利益には、業績の見通しが変わったことによる根拠のある値動きや、投げ売り・空売りのしにくさといった市場の仕組み上の事情も混ざっています。「行き過ぎたから戻る」という単純な説明だけでは、利益の全体を説明できません。

この記事は、公開されている学術研究を当サイトが要約したものです。研究の数字は、それぞれの研究が使った期間・市場・条件のもとでの結果であり、将来も同じになるとは限りません。特定の手法・銘柄の売買を勧めるものではありません。

6️⃣ まとめ

次回は、短期の逆張りとは別の切り口である、金利の差をねらう「キャリートレード」の研究を見ていきます。

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📚 出典・参考文献

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