🧪 AIシグナル研究日誌 #2
「上げトレンド中の下げは押し目では?」を検証したら、今回は希望が見えた
自動シグナルシステムを毎週ガチで検証して、勝ち負け関係なくすべて公開する研究日誌。第1回では、「相場のムードと同じ方向だけに絞る門番フィルタ」が実データに完敗して不採用になるまでをお見せしました。
今回はその改良案です。第1回の検証を眺めていて、ひとつの疑問が出ました——「ムード判定は、上げトレンドの途中の下げ(=押し目)まで『弱気』と読んでいたのでは?」。だったら、ムードではなく上位足のトレンドで判断したらどうなるのか。さっそく確かめました。
① 前回の門番は「押し目」と「本物の崩れ」を区別できずに失敗した
② そこで門番を「上位足のトレンド」に交代させて、過去523件で「もしも検証」した
③ 結果:全シグナル一律にかけるとまた逆効果。でも「押し目買い」に絞ると勝率54.7%、4時間足では76.5%と合格ライン超え
④ それでもまだ採用しません。件数が少なく、銘柄の偏りも見つかったから。記録を続けて追試します
① 前回のおさらいと、今回の疑問
前回(研究日誌 #1)の要点はこうでした。
- 「相場のムード(強気/弱気)と同じ方向だけ通す門番」を作って検証した
- 結果は真逆——門番が通すはずだった側の勝率11.8%、弾くはずだった側が56.6%
- 原因:このシステムの勝ちパターンは「パニック売りの反発を拾う」型なのに、ムード判定はちょうどその場面で「弱気」と叫ぶため、一番おいしい買い場を弾いていた
ここで疑問が湧きます。ムード判定(VIXや資金の逃避先を見る)は、上昇トレンドの途中の健全な押し目でも「弱気」と読んでしまいます。VIXは跳ね、資金は一時的に金や円へ逃げるからです。つまり前回の門番は、「押し目」と「本物の崩れ」の区別がつかない判定を使っていました。
でも、このシステムは実はトレンドを判断する部品をもともと持っています。それを門番にしたらどうなるか——это今回のテーマです。
② 新しい門番:「ムード」ではなく「上位足トレンド」
今回の門番は、シグナルが出た時間足のひとつ上の時間足を見ます。1時間足のシグナルなら4時間足を、4時間足のシグナルなら日足を。そこで移動平均線の並びと傾きから「上昇トレンド/下降トレンド/もみあい」を判定します。
狙いはこうです。同じ「急な下げ」でも、上位足の文脈で意味がまったく違う:
移動平均線(過去25本の平均と75本の平均)を使います。短い方の線が長い方の線より上にあり、かつ上向きなら「上昇トレンド」。逆なら「下降トレンド」。どちらでもなければ「もみあい」。くわしくは移動平均線の解説記事をどうぞ。
③ 検証方法(前回と同じ「もしも検証」)
方法は前回とまったく同じです。過去のシグナル全件に「勝ったか負けたか」と「発火した瞬間の上位足トレンド」が記録されているので、「もしこの門番を使っていたら勝率は何%だったか」を答え合わせします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| データ | 勝敗確定済みの534件のうち、上位足トレンドの記録がある523件 |
| 期間 | 2026年5月20日〜6月10日(前回と同じ約3週間) |
| 合格ライン | 勝率43%(これを下回るとトータルで赤字になる損益分岐点) |
| 注目ポイント | 「逆張り買い」(バンド下限タッチ・RSI売られすぎ反発のロング、計248件)を上位足トレンド別に分けたら成績は変わるか? |
④ 結果その1:一律にかけると、また逆効果だった
まず「全シグナルに一律で、上位足トレンドと同じ向きだけ通す」というシンプル版から。
| 区分 | 件数 | 勝率 | ブレ幅 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| トレンドと同じ向き(通すはず) | 159 | 37.1% | 30〜45% | ❌ 未達 |
| トレンドと逆向き(弾くはず) | 167 | 44.3% | 37〜52% | 🟡 43%超え |
……はい、またしても逆転です。前回ほど極端ではありませんが、一律の門番は今回もダメでした。理由は前回と同じ構造です。このシステムのシグナルは約半分が「行き過ぎの反発を狙う逆張り型」なので、トレンドと同じ向きを強制すると、得意技を弾いてしまうのです。
さらに追い打ちのデータも。順張り系シグナル(ブレイクやゴールデンクロスなど「勢いに乗る」型)をトレンドと同じ向きに限定しても勝率27.5%でした。「トレンド方向に勢いに乗る」という教科書どおりの組み合わせが、この期間は最悪だったのです(高値づかみになりやすいため)。
⑤ 結果その2(本命):「押し目買い」に絞ると景色が変わった
ここからが本命です。一律ではなく、このシステムの得意技「逆張り買い」だけを取り出して、上位足トレンド別に3つに分けてみます。図1のコンセプトどおり、「上昇トレンド中の逆張り買い」=押し目買い、「下降トレンド中の逆張り買い」=落ちるナイフ、です。
| 逆張り買いの内訳 | 件数 | 勝率 | ブレ幅 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 上位足が上昇=押し目買い | 53 | 54.7% | 41〜67% | 🟡 43%超え |
| 上位足がもみあい | 108 | 34.3% | 26〜44% | ❌ 最低 |
| 上位足が下降=落ちるナイフ | 83 | 42.2% | 32〜53% | ❌ 未達 |
そして、メール配信と同じ土俵である4時間足だけに絞ると——
もうひとつ面白い数字があります。この「押し目買い」53件を前回のムード門番に見せたら、16件を「弱気だから」と弾いていました。第1回で立てた疑問——「ムード判定は押し目を弱気と読み間違えているのでは」——が、データで裏付けられた形です。
⑥ それでも即採用しない理由:データの「偏り」を見つけた
ここまで読むと「もう採用すればいいのに」と思うかもしれません。でも、いい結果が出たときほど疑うのがこの連載の流儀です。チェックすると、実際に気になる偏りが見つかりました。
| グループ | 中身の銘柄(上位) |
|---|---|
| 押し目買い(上昇中)53件 | S&P500・ダウ・日経・ナスダック・ドル円など株価指数系に集中 |
| 落ちるナイフ(下降中)83件 | 金29件・銀13件・BTC12件に集中 |
つまりこの3週間は「株は上昇トレンド・金銀は下降トレンド」だったため、「押し目買いが勝った」のか「株の買いが勝っただけ」なのか、まだ完全には切り分けられないのです。これを切り分けるには、別の相場環境(株が下げトレンドの時期など)のデータが必要です。
⑦ 今回の決定事項
| 項目 | 決定 | 理由 |
|---|---|---|
| 上位足トレンド門番(一律版) | 不採用 | 一律にかけると逆効果(37.1% vs 44.3%)。前回と同じ構造 |
| 「押し目買い」絞り込み版 | 有望株として継続観察(まだ採用しない) | 54.7%/4hで76.5%と有望。ただし件数少・銘柄の偏り・単一の相場環境 |
| 判断材料の記録 | 継続 | 上位足トレンドは全シグナルに記録済み。データが貯まる仕組みは稼働中 |
| 採用の条件(事前に宣言) | 今後の新しいデータで押し目買い4hが30件以上たまり、勝率50%超を維持していたら、配信メールの信頼度表示に反映することを検討 | 「あとから都合よく基準を変える」のを防ぐため、先に書いておきます |
⑧ この検証から学べる3つのこと
1. フィルタは「一律」ではなく「どこに効くか」を絞る
同じトレンド門番でも、全シグナル一律なら逆効果、「逆張り買い」限定なら有望——効く場所を絞って初めて見える改善があります。「この改良は、どのタイプのトレードに効くはずか?」を先に言語化するのが大事でした。
2. 「いい結果」が出たときこそ、中身の偏りを見る
勝率76.5%という数字だけ見れば飛びつきたくなります。でも中身を開けると「株高・金安の3週間」という偏りが見つかりました。数字の良し悪しより、その数字が「何でできているか」。これは個人の手法検証でもそのまま使える習慣です。
3. 採用基準は「結果を見る前」に決めておく
今回は「新しいデータで30件・勝率50%超を維持なら反映を検討」と先に宣言しました。結果を見てから基準を動かすと、どんな手法でも「合格」にできてしまうからです。
⑨ 次回に向けて
- 押し目買い仮説の前向き検証:今後たまる新しいシグナルで、今回の数字が再現するかを追いかけます(結果は本連載で報告)
- シグナルの質タグの検証:シグナルを質で4段階に分類するタグを記録中。事前の格付けどおりに成績が並ぶかを確認します
- 最新のシグナル成績はシグナル成績ページでいつでも確認できます(毎日自動更新・全件公開)
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