🧪 AIシグナル研究日誌 #4
ゴールドはロングだと9割負ける——方向性の罠を解剖する
第3回でメタルグループ(金・銀)の勝率が13.2%と壊滅的に低く、しかもその中でGC=F(ゴールド先物)にロング12.8% vs ショート61.1%という巨大な方向性ギャップがあることが発覚しました。
今回はこの謎を解きます。「なぜロングだと負け続けるのか」「ショートの高勝率はトレンドで説明できるか」「銀(SI=F)でも同じことが起きているか」——事前に宣言した仮説を、65件のデータで検証します。
① GC=F ロング12.8% vs ショート61.1%(47件 vs 18件)の差は本物。期待値はロング -0.7R、ショート +0.4R
② 根本原因は「相場の一方向性」——当期間ほぼ全体が下降トレンドで、逆張りロングが42件も下降中に発火し続けた(11.9%しか勝てない)
③ 事前宣言した「ショートは下降トレンド環境でブレ幅(95%信頼区間)の下限が43%超」→ 57.1%は出たが件数14件でブレ幅が大きく、下限32.6%で未達
④ SI=F(銀)でも同じ方向性。ただしGC=Fより差は小さい(ロング7.7% vs ショート40.0%)
⑤ 今回もまだ採用しません。「相場環境が変わっても再現するか」の検証が必要
① 前回のおさらいと、今回の疑問
第3回では「銘柄グループ別の成績差」を検証し、2つのことがわかりました。
- 指数グループ・他FXグループの逆張りは「継続観察」レベルの有望株(52%・54%台)
- メタルグループ(金・銀)の逆張りは13.2%という壊滅的な成績で、交絡(原因の混入)を疑った
その交絡の正体として浮上したのが「方向性の偏り」です。GC=F だけで見ると、ロング(買い方向)12.8%(6/47件)・ショート(売り方向)61.1%(11/18件)という、ほとんど別の銘柄かと思えるほどの差がありました。
今回の疑問は2つです。
① なぜロングばかりが負けるのか?
② ショートの高勝率は「下降トレンドのおかげ」と言えるのか、それとも本当に有望なのか?
② 事前宣言した仮説と検証条件
第3回の台帳に、今回の仮説を先に書きました。——「GC=Fのショートは下降トレンド環境でブレ幅(95%信頼区間)の下限が43%(損益分岐)を超える」。採用・不採用の決断はデータを見る前に宣言しておかないと、どんな結果でも「合格」にできてしまうからです。
「ブレ幅(95%信頼区間)」——観測した勝率が「たまたま」のバラつきでどの範囲にあるか、を示す目安です。たとえば N=14 で57%でも、真の値は32%〜79%のどこかかもしれない、という「不確かさの幅」です。勝率の数字が良くてもブレ幅が大きい=件数が少ないうちは判断を急がない、というのがこの連載のルールです。
③ 検証方法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| データ | GC=F の決済済みシグナル全 65件(tp1/tp2=勝ち、sl=負け) |
| 期間 | 2026年5月20日〜6月12日(約3週間半) |
| 方法 | 「もしも検証」——過去データをそのまま使い、条件別に勝率を集計 |
| 合格ライン | 勝率43%(損益分岐点。これを下回るとトータルで赤字) |
| 方向の分類 | シグナルの direction フィールド(ロング/ショート)と、trend_alignment.higher_tf_trend(上位足トレンド)を使用 |
④ 結果その1:ロング vs ショートの差を確認
まず第3回の数字を今回の全データで再確認します。
| 方向 | 件数 | 勝率 | ブレ幅(95%CI) | 期待値 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| ロング(買い) | 47 | 12.8% | [6.0%〜25.2%] | -0.7R | ❌ 壊滅的 |
| ショート(売り) | 18 | 61.1% | [38.6%〜79.7%] | +0.4R | 🟡 有望 |
期待値の計算は「TP1達成=+1.33R、SL損切り=-1.0R(R:Rの比率は実際に同一)」で算出しています。ロングの-0.7Rは「トレードするたびに0.7R失う」という厳しい計算、ショートの+0.4Rは逆に利益期待です。
⑤ 結果その2:謎の正体——下降トレンド中の逆張りロング大量発火
ではなぜロングが勝てないのか。ロング47件を「そのときの上位足トレンド」で分類すると、答えが見えました。
| ロング発火時の上位足トレンド | 件数 | 勝率 | ブレ幅 |
|---|---|---|---|
| ⬇️ 下降トレンド(下げの途中に買い) | 42 | 11.9% | [5.2%〜25.0%] |
| ➡️ もみあい | 3 | 0.0% | —(件数少) |
| ⬆️ 上昇トレンド(押し目買い) | 0 | — | 記録なし |
47件中42件が「下降トレンド中の逆張りロング」でした。研究日誌 #2で「落ちるナイフ」と呼んでいた形です。当期間のGC=Fがほぼ一方的に下落し続けたため、逆張りのロングシグナルが延々と下降の途中に打ち込まれた——これが12.8%という数字の正体です。
逆に、時間足別に見ると小さいが意味のある差が現れました。
| 時間足 | 件数 | 勝率 | ブレ幅 |
|---|---|---|---|
| 1時間足(短期) | 28 | 3.6% | [0.6%〜17.7%] |
| 4時間足(スイング) | 19 | 26.3% | [11.8%〜48.8%] |
4時間足のロングは1時間足の約7倍の勝率ですが、それでも損益分岐43%には届いていません。「下降中でも4hなら少しマシ」ではありますが、採用には程遠い水準です。
⑥ 結果その3:事前宣言仮説の採点
さて、本命の仮説——「GC=Fのショートは下降トレンド環境でブレ幅の下限が43%超」——の答え合わせです。
| ショートの発火環境 | 件数 | 勝率 | ブレ幅(95%CI) | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| ⬇️ 下降トレンド中 | 14 | 57.1% | [32.6%〜78.6%] | ⏳ CI下限32.6%<43% |
| ➡️ もみあい中 | 4 | 75.0% | [30.1%〜95.4%] | (件数少すぎ) |
勝率57.1%は期待値+0.3R超で数字としては申し分ないのですが、N=14ではブレ幅が[32.6%〜78.6%]と広く、「真の値が43%以下の可能性も否定できない」状態です。仮説を合格させるには件数不足——これが今回の正直な結論です。
⑦ 補足:SI=F(銀)でも同じか?
金と銀は似たような動きをすることが多いため、GC=Fの方向性ギャップがSI=F(銀先物)でも再現するかを確認しました。
| 銘柄・方向 | 件数 | 勝率 | ブレ幅 |
|---|---|---|---|
| SI=F ロング | 26 | 7.7% | [2.1%〜24.1%] |
| SI=F ショート | 15 | 40.0% | [19.8%〜64.3%] |
同じ方向性がありますが、GC=Fほど極端ではありませんでした(ロング7.7% vs ショート40.0%、差32pp)。GC=Fのショートが61.1%だったのに対し、SI=Fのショートは40.0%で損益分岐を下回っています。「金と銀は似ているが、金のほうがトレンドに素直」という印象です。
⑧ 今回の決定事項
| 項目 | 決定 | 理由 |
|---|---|---|
| GC=F ロングのシグナル | 引き続き記録のみ | 下降トレンド中は12%の勝率。採用条件には到達していない |
| GC=F ショートの有望性 | 継続観察(まだ採用しない) | CI下限43%未達(N=14)。件数が増えれば答えが変わる可能性あり |
| 方向性フィルタの検討 | バックログに追加 | 「下降トレンド中のGC=Fロングを抑制する門番」は有望な方向性だが、追試が必要 |
| SI=F の扱い | 引き続き記録のみ | ショートも損益分岐未達(40%)。件数も少ない |
⑨ 前向きトラッカー定点観測
毎回、事前宣言した観測指標の現在値を報告します。
| ID | 仮説 | 宣言基準 | 今回の値 | 状態 |
|---|---|---|---|---|
| a | 押し目買い4h(上位足上昇×逆張りロング) | 2026-06-11以降の新規決済N≥30かつ勝率50%超 | N≈5(upper_tf_trend未記録のため近似) | ⏳ 蓄積中 |
| f | 全逆張りL(RSI過売り+BB下限タッチ) | N積み重ねで「34.3%より改善 or 悪化」確認 | 41.9%(N=284)CI[36.3%〜47.7%] | ⏳ 蓄積中(前回40.8% N=277から微改善) |
| g | 指数×逆張りL | 累計N≥80かつCI下限43%超を維持 | 51.5%(N=66)CI[39.7%〜63.2%](下限39.7%<43%) | ⏳ 蓄積中(N+1、勝率ほぼ横ばい) |
| h | 他FX×逆張りL | 累計N≥80かつCI下限43%超を維持 | 55.0%(N=60)CI[42.5%〜66.9%](下限42.5%<43%) | ⏳ 蓄積中(CI下限が43%に迫ってきた) |
特筆点:トラッカー [h] 他FX×逆張りLのCI下限が42.5%となり、宣言基準の43%まであと0.5ppに迫っています。N=80達成と合わせて、次の2〜3回で答えが出そうです。
⑩ この検証から学べること
1. 方向性の交絡は成績を大きく歪める
「メタルの逆張りが弱い」と一言で片付けるのは早計でした。正確には「下降トレンド中の逆張りロングが弱い」でした。相場が上昇トレンドに転換すれば、まったく違う数字が出る可能性があります。「何の数字か」だけでなく、「どんな環境の数字か」を常に確認することが大切です。
2. 件数が少ないと「いい数字」は信用できない
ショートの57.1%はとても魅力的です。でも N=14 ではブレ幅が[32.6%〜78.6%]——下限が損益分岐を下回る可能性が十分あります。「勝率の数字が良い」と「統計的に有望と言える」の間には、件数という壁があります。
3. 「覚えやすいシンプルなルール」の落とし穴
「GC=Fはショートだけやれ」という結論を出したくなりますが、それは現在の相場環境が一方向(下降)だった結果かもしれません。相場がレンジや上昇に転じたとき、同じルールが有効かどうかはデータが足りません。シンプルなルールほど、相場環境の変化で壊れやすいことを忘れずに。
⑪ 次回に向けて
- GC=F ショートの追試:ショート×下降のN=14が積み重なってCI下限43%を超えるか、引き続き追跡します
- sr_runway(S/R近傍)効果の再検証:バックログにある「S/R近傍ロング≤1ATR」の6/3時点59.6%は再現するか(2項目目の優先候補)
- blocked=True効果(差+12pp / N=37):件数少ないが注目の発見として継続観察
- 最新のシグナル成績はシグナル成績ページでいつでも確認できます(毎日自動更新・全件公開)
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