🧪 AIシグナル研究日誌 #88
RSI売られすぎ逆張り買い FWD N=276——4H足65%が1H足46%を引き離す時間足二極化の継続追跡
毎回ひとつの仮説を実データで検証し、勝っても負けても全公開する研究日誌の第88回です。前回(#87)に続き、今回も前向き(FWD)データが積み上がりつつある重点仮説を深堀りします。
今回の主役は rsi_oversold_bounce(RSI売られすぎ逆張り買い)。#69・#74・#82 と追い続けてきたこの仮説が、FWD N=276 に達しました。「4H足が明らかに良く、1H足は損益分岐ギリギリ」という時間足二極化の構図は変わっていないのか——最新データで3次元の切り口から確認します。
① IS期間(登録前)は39.1%(52/133)と損益分岐を割っていたのに、FWD期間(登録後)は53.6%(148/276)・E(R)=+0.251に逆転
② FWD 4H足は65.4%(53/81)・CI[54.6%, 74.9%]、FWD 1H足は46.4%(85/183)・CI[39.4%, 53.7%]——CI非重複で19ポイント差を確認
③ FWD jpy_fx(円クロス)は66.7%(32/48)・4H足に絞ると更に高い(詳細は本文§⑤)
④ トレンドフィルタ:上昇トレンドで65.7%・下降トレンドで43.5%——逆張りなのに上昇局面が強い
① rsi_oversold_bounce とは何か
rsi_oversold_bounce は、RSI(相対力指数)が 30以下の売られすぎ領域に入った後、再び30を上抜けた瞬間に発火するシグナルです。市場の過剰な悲観が一服し、反発局面の入口を捉えようとする逆張り型のシグナルになります。
図1: rsi_oversold_bounce の発火メカニズム。RSIが30以下(売られすぎ)から回復した瞬間(🔔)に買いエントリーシグナルを発火。TP1は+1.33R、SLは−1.0R(ATRベース)。
損益分岐は 43%(SL=−1.0R、TP1=+1.33R のリスクリワード比率から導出)。43%を超えれば長期的にプラス方向、下回れば期待値はマイナスになります。
② このシリーズのこれまで(#69・#74・#82)
rsi_oversold_bounce は以前から継続観察してきた仮説です。過去の主な発見は次のとおりです。
| 回 | 主な発見 | 当時のFWD N |
|---|---|---|
| #69 | FWD全体で53%台の兆候。時間足分解では4H優位の初期パターンを確認 | 約140 |
| #74 | 4H vs 1H の差が明確化。jpy_fx での4H強さが浮上 | 約200 |
| #82 | トラッカーのpromote_strikes=1を達成→その後CIが揺り戻し、再び蓄積中に | 約250 |
| #88(今回) | FWD N=276。4H=65.4%・1H=46.4%のCI非重複を確認。トレンドフィルタも検証 | 276 |
#82 から N が約26件増えました。時間足二極化の構図が維持されているか、3つの切り口(時間足・グループ・トレンド)で確認します。
③ IS vs FWD の逆転現象
rsi_oversold_bounce の最も興味深い点のひとつは、IS期間(登録前の履歴データ)とFWD期間(登録後の前向きデータ)で勝率が逆転していることです。
| 期間 | N | k(勝ち) | 勝率 | 95% CI | E(R) |
|---|---|---|---|---|---|
| IS(2026-06-16以前) | 133 | 52 | 39.1% | [31.2%, 47.6%] | −0.088 |
| FWD(2026-06-16以降) | 276 | 148 | 53.6% | [47.7%, 59.4%] | +0.251 |
④ 4H vs 1H——時間足二極化の確認
今回の最重要論点は「時間足による二極化が継続しているか」です。FWD データを 4H・1H 別に集計します。
図2: rsi_oversold_bounce の FWD 勝率比較(IS期間除外)。赤破線=損益分岐43%。4H足(緑)はCIが43%を大きく上回り、1H足(赤)は43%付近で不安定。
| 時間足 | N | k | 勝率 | 95% CI | E(R) | R-CI |
|---|---|---|---|---|---|---|
| FWD 4H | 81 | 53 | 65.4% | [54.6%, 74.9%] | +0.527 | [+0.283, +0.770] |
| FWD 1H | 183 | 85 | 46.4% | [39.4%, 53.7%] | +0.084 | [−0.085, +0.253] |
4H足のCI下限(54.6%)が1H足のCI上限(53.7%)をわずかに上回っており、CI非重複が成立しています。これは「時間足二極化が偶然ではなく構造的な差である可能性が高い」ことを示します。
⑤ グループ別:jpy_fx が突出する理由
銘柄グループ別に FWD 成績を確認します。rsi_oversold_bounce は円クロス(jpy_fx)での成績が際立っています。
| グループ | FWD N | FWD 勝率 | FWD CI | FWD E(R) |
|---|---|---|---|---|
| jpy_fx(円クロス) | 48 | 66.7% | [52.5%, 78.3%] | +0.555 |
| metal(金・銀) | 40 | 60.0% | [44.7%, 73.6%] | +0.356 |
| index(株価指数) | 63 | 57.1% | [44.7%, 68.7%] | +0.245 |
| other_fx | 52 | 50.0% | [36.8%, 63.2%] | +0.126 |
jpy_fx での際立った強さ(66.7%)をさらに分解すると、4H足 jpy_fx に限定した場合に 94.1%(16/17)という極端な数字が現れます。ただし N=17 は非常に少なく、統計的信頼性は限定的です。
| 条件 | N | k | 勝率 | CI | 注記 |
|---|---|---|---|---|---|
| FWD 4H × jpy_fx | 17 | 16 | 94.1% | [73.0%, 99.0%] | ⚠️ N=17(小サンプル) |
円クロスでの逆張り買いが4H足で特に機能しやすい背景として考えられるのは、円安・円高の中期的トレンド転換タイミングと4H足の発火条件の親和性です。ただしこれは事後の解釈であり、因果的証明にはなりません。
⑥ トレンドフィルタ:上昇局面で強い逆張り
上位足のトレンド方向(higher_tf_trend)でFWDデータを切り分けます。「逆張り買い」なので直感的には下降トレンド時が強いように思えますが、結果は異なります。
| トレンド | FWD N | k | 勝率 | CI | E(R) |
|---|---|---|---|---|---|
| 上昇 | 70 | 46 | 65.7% | [54.0%, 75.8%] | +0.533 |
| 中立・もみあい | 98 | 55 | 56.1% | [46.3%, 65.5%] | +0.309 |
| 下降 | 108 | 47 | 43.5% | [34.5%, 52.9%] | +0.015 |
rsi_oversold_bounce が「上昇トレンド中の一時的な押し目(RSI売られすぎ)からの反発」を捉えている場合、上位足の上昇トレンドが「大局バイアス」として機能し、逆張りを支える構造が生まれます。一方、下降トレンド中の逆張りは上位足の力に逆らうため、継続が難しい——この解釈が数字と整合しています。ただしこれは相関であり因果ではありません。
下降トレンドでのE(R)はほぼゼロ(+0.015)。下降トレンド×rsi_oversold_bounce の組み合わせは、過去データ上は損益分岐付近にとどまっています。
⑦ 期間別:中期フェーズ(7月〜8月)の突出
FWD 期間(2026年6月17日〜9月2日)をほぼ均等に3分割して時系列の安定性を確認します。
| 期間 | N | 勝率 | CI | E(R) | R-CI |
|---|---|---|---|---|---|
| 前期(6/17〜7/8) | 92 | 48.9% | [38.8%, 59.2%] | +0.141 | [−0.098, +0.381] |
| 中期(7/8〜8/14) | 92 | 62.0% | [51.6%, 71.4%] | +0.445 | [+0.213, +0.678] |
| 後期(8/14〜9/2) | 92 | 50.0% | [39.8%, 60.2%] | +0.167 | [−0.073, +0.406] |
⑧ 総評と昇格条件の現状
トラッカーの昇格条件は「前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0・2回連続達成」です。現在の状況を整理します。
| 条件 | 現状 | 評価 |
|---|---|---|
| FWD N≥80 | N=276 | ✅ 達成 |
| FWD E(R) CI下限 > 0 | CI下限 +0.04(トラッカー値) | 🟡 達成しているが低め |
| 2回連続達成 | promote_strikes=1(蓄積中) | 🟡 まだ1回 |
全体としては「有望だが、まだ昇格確定には至っていない」状態です。特に期間別分析で中期への集中が見られたため、後期(8/14〜)の成績が今後の鍵になります。後期が前期・中期並みの水準を維持できれば、次の更新で promote_strikes=2 を達成できる可能性があります。
📡 前向きトラッカー定点観測(期待値ベース)
| 仮説 | 種別 | 宣言基準 | 前向き現在値(平均R) | 状態 |
|---|---|---|---|---|
| trend=上昇×reversalL | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.10 CI[-0.06~+0.26](129/274・勝率47%) | ✅昇格 |
| group=all | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.03 CI[-0.03~+0.09](1285/2918・勝率44%) | 🟡蓄積中 |
| blocked=False | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.03 CI[-0.03~+0.10](1020/2307・勝率44%) | 🟡蓄積中 |
| blocked=False×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.05 CI[-0.04~+0.14](812/1805・勝率45%) | 🟡蓄積中 |
| group=index | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R -0.04 CI[-0.14~+0.06](331/806・勝率41%) | 🟡蓄積中 |
| tf=4h×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.08 CI[-0.04~+0.20](364/789・勝率46%) | 🟡蓄積中 |
| 売られすぎ逆張り買い(rsi_oversold_bounce・全足) | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.25 CI[+0.04~+0.46](148/276・勝率54%) | 🟡蓄積中 |
| dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.05 CI[-0.03~+0.14](993/2199・勝率45%) | ⛔反証 |
| reversalL(逆張り買い) | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.14 CI[+0.02~+0.25](369/757・勝率49%) | ⛔反証 |
| tier=good×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.19 CI[+0.05~+0.34](254/497・勝率51%) | ⛔反証 |
※ 表はトラッカー主要仮説の抜粋です。完全版は シグナル成績ページ でご覧いただけます。
⑨ 次回に向けて
今回の観察で新たに浮かび上がった論点が2つあります。
- 後期フェーズ(8/14〜)の継続観察:中期の突出が一時的なものか、後期以降に引き継がれるかが昇格の分水嶺。
- 4H × jpy_fx × 上昇トレンドのコンボ検証:3条件を組み合わせた場合の前向きNが十分に積み上がったタイミングで単独記事を設ける価値がある。
次回は別の仮説または FDR スイープ候補を追います。最新号は 解説記事一覧 からご確認ください。
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