🧪 AIシグナル研究日誌 #104
逆張り買い×トレンド3区分の前向き比較——上昇昇格維持・下降「回避」仮説は反証済み
毎回ひとつの仮説を実データで検証し、勝っても負けても全公開する研究日誌の第104回です。前回(#103)では上昇環境の逆張り買いを型別(RSI型 vs BB型)で分解しました。今回はさらに視点を引いて、逆張り買いシグナル全体をトレンド3環境(上昇・下降・中立)で横断比較します。
今日の優先ケース:①昇格確認(trend=上昇×reversalL が promoted 維持)。加えて、tracker上で「下降環境では逆張り買いを避けるべき」という gate 仮説が前向きデータで⛔反証されていることを整理します。
① 逆張り買い(rsi_oversold_bounce・bb_lower_touch)をトレンド3環境で前向き比較(N各 312〜322)
② 前向き勝率:上昇 46.8%(148/316)・下降 51.3%(160/312)・中立 46.6%(150/322)——全3環境が損益分岐43%超
③ IS期の上昇優位(54.4%、56/103)が前向きでは46.8%に縮小、下降が逆転——IS期の過剰フィッティング示唆
④ 「下降中の逆張り買いは避けるべき」gate仮説は⛔反証確定、上昇×逆張り買いは✅昇格維持(demote_strikes=1)
§1 背景:逆張り買いとは何か
本研究日誌では、以下の2つのシグナルをまとめて「逆張り買い(reversalL)」と呼びます。
- rsi_oversold_bounce(RSI過売り反発):RSI が過売り水準(RSI≤30付近)から反発する局面
- bb_lower_touch(ボリンジャー下限タッチ):価格がボリンジャーバンド下限(−2σ)に接触・反発する局面
どちらも「下がりすぎた価格の反発」を狙う逆張り買い戦略です。これらのシグナルを、シグナル発火時点の上位時間足トレンド(上昇・下降・中立・もみあい)で3区分し、前向き検証データで比較します。
tracker上では3つの仮説が登録されています:「上昇×reversalL」(2026-06-22登録)、「下降×reversalL」(2026-06-25登録)、「中立×reversalL」(2026-06-19登録)。
§2 チャート風図解:上昇環境での逆張り買い
上昇トレンドの中で価格が一時的に押し目を作り、RSIが過売り域に入ったタイミングや、ボリンジャー下限に触れたタイミングで逆張り買いシグナルが発火します。
【概念図】上昇トレンド(右肩上がりMA)の中での押し目局面。価格がボリンジャー下限に接触し、RSIが過売り域から反発するタイミング(オレンジ点)で逆張り買いシグナルが発火する。実際の価格・水準ではなく概念を示したもの。
§3 IS vs 前向き比較の全結果
各仮説の登録日を境界として、IS(登録日前)と前向き(FWD:登録日以降)に分割して集計します。
・損益分岐43%:勝率が何%を超えれば損益がプラス側になるかの目安(SL=1.5ATR/TP1=2ATR のR:R比から算出)。
・95% CI(ウィルソン信頼区間):サンプルのばらつきを考慮したとき、勝率が収まりやすい範囲。Nが小さいほど幅が広くなります。
・ER/RCI:E(R)=1トレードの損益をリスク1単位(R)で測った期待値、RCI はその95%信頼区間。本研究日誌では、この下限がプラスかマイナスかを昇格・反証の判定に使っています。
いずれも過去に発火したシグナルの集計に基づく指標であり、将来の成果を示すものではありません。
IS(登録日前、in-sample)期間
| 環境 | N | 勝数 | 勝率 | 95% CI |
|---|---|---|---|---|
| 上昇×reversalL | 103 | 56 | 54.4% | [44.8%, 63.7%] |
| 下降×reversalL | 186 | 63 | 33.9% | [27.5%, 40.9%] |
| 中立×reversalL | 152 | 54 | 35.5% | [28.4%, 43.4%] |
前向き(FWD:登録日以降)期間
| 環境 | N | 勝数 | 勝率 | 95% CI |
|---|---|---|---|---|
| 上昇×reversalL | 316 | 148 | 46.8% | [41.4%, 52.3%] |
| 下降×reversalL | 312 | 160 | 51.3% | [45.8%, 56.8%] |
| 中立×reversalL | 322 | 150 | 46.6% | [41.2%, 52.0%] |
IS vs FWD 視覚比較
IS期は上昇環境だけが突出して高かった(54.4%)が、前向きでは3環境が46.6〜51.3%に収束。「上昇環境のみが有利」というIS期の発見は大きく縮小し、トレンド環境フィルターの信頼性は限定的であることが示唆される。
全期間合算
| 環境 | N | 勝数 | 勝率 | 95% CI |
|---|---|---|---|---|
| 上昇×reversalL | 419 | 204 | 48.7% | [43.9%, 53.5%] |
| 下降×reversalL | 498 | 223 | 44.8% | [40.5%, 49.2%] |
| 中立×reversalL | 474 | 204 | 43.0% | [38.7%, 47.5%] |
| reversalL 全体 | 1,395 | 632 | 45.3% | [42.7%, 47.9%] |
§4 トラッカー状態(2026-09-20)
2026-09-20 時点のトラッカー状態です。
| 仮説 | 状態 | N(前向き) | 勝率 | ER CI下限 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 上昇×reversalL | ✅ 昇格(promoted) | 315 | 47.6% | RCI −0.04 | demote_strikes=1(降格まで1回) |
| 下降×reversalL | ⛔ 反証(rejected/gate) | 327 | 51.4% | RCI +0.039 | 「回避」gate仮説が反証確定 |
| 中立×reversalL | 🟡 追跡中(tracking) | 326 | 47.5% | RCI −0.023 | CI下限まだマイナス圏 |
※ 上表は基準日時点のトラッカー集計のため、件数(N)が本文§3の集計とわずかに異なります。
§5 考察:IS優位がなぜ消えたか
小サンプルによる過剰フィッティング
IS期に上昇×reversalLが54.4%という高い勝率を示した最大の要因は、サンプルの小ささ(N=103)です。N=103では偶然の偏りが勝率を数ポイント以上動かせます。下降のN=186・中立のN=152と比べても、上昇のIS期は最も小さいサンプルで最高勝率を記録していました。
前向きでは各N=312〜322と十分な数が積み上がり、3環境の幅は4.7pp(上昇46.8% vs 下降51.3% vs 中立46.6%)にまで縮小しました。これは過剰フィッティングが前向き検証で洗い落とされた典型的なパターンと考えられます。
トレンド環境フィルターの限界
逆張り買いは「下がったから買い」という発想なので、トレンド環境(上昇か下降か)よりも、その時の RSI 水準やボリンジャー帯域との位置関係の方が勝率に効く可能性があります。前回(#103)でもシグナル型別(RSI型 vs BB型)で有意な差が観察されており、型の違いがトレンド環境よりも重要な交絡因子かもしれません。
「下降では逆張りをするな」は正しかったか
IS期の観察(下降33.9%)から「下降環境では逆張り買いは避けるべき」という gate 仮説が設定されました。しかし前向きN=327で51.4%・ER CI下限+0.039とプラス圏となり、この仮説は前向きデータでは支持されませんでした。下降トレンド中の「底打ちの反発」という逆張りの本質的な機会を、トレンドラベルだけで遮断することの限界を示しています。
§6 結論と今後の注目点
- 逆張り買い(reversalL)の前向き勝率はトレンド3環境で 46.6〜51.3% に収束し、全3環境が損益分岐43%を超えています
- IS期の上昇優位(54.4%)は小サンプル(N=103)由来の過剰フィッティングであり、前向きでは大幅縮小しています
- 「下降×逆張り買いは回避すべき」gate 仮説は⛔反証扱い——前向き期間のデータ上は下降環境でも損益分岐を上回って推移
- 上昇×reversalL は✅昇格維持中ですが demote_strikes=1 で降格の危機もあり、今後の評価期間を注視します
- 今後の検証候補:「逆張り買いの勝率はトレンドよりも型(RSI型 vs BB型)のほうが効く」という仮説の体系的検証
【免責事項】本記事は過去のシグナルデータに基づく統計的分析の情報提供を目的としています。将来の投資成果を保証するものではなく、個別の投資助言に該当しません。当サイトは金融商品取引業の登録を受けておらず、投資助言・代理業を行っていません。記載された勝率・期待値等は過去のデータに基づくものであり、市場環境の変化により将来は異なる可能性があります。投資の最終判断はご自身の責任において行ってください。