MarketWatch AI
日本人投資家のためのマーケット情報サイト
📚 解説記事
⚠️ 本記事は東京証券取引所などの制度・手続きを一般的に解説する「情報提供」であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。制度は変更されることがあるため、実際の取引前に必ずご自身で一次情報をご確認ください。

⚠️ 上場廃止と監理・整理銘柄とは|「終わり」にも決まった手順がある

公開日:2026 年 9 月 13 日 / 読了時間:約 9 分 / カテゴリ:東証のしくみ(第12回)

「上場廃止」と聞くと、多くの人は業績が悪化した会社が突然、市場から姿を消すようなイメージを持つかもしれません。しかし実際には、上場廃止に至る事由は業績不振だけではなく、東京証券取引所(東証)の自主規制ルールである有価証券上場規程が定める20項目にわたります。しかも、そのほとんどは「今日決まって明日消える」ものではなく、投資者への周知を経る決まった手順を踏みます。

この「東証のしくみ」シリーズは、日本の株式市場の制度・手続きだけを扱い、個別銘柄の評価や売買判断には踏み込みません。第12回のテーマは上場廃止基準の全体像と、監理銘柄・整理銘柄に指定されてから実際に何が起きるかです。日本取引所グループ(JPX)の一次情報を実際に確認したうえで解説します(確認日は本文中に記載)。なお、上場維持基準を満たせなくなった場合の改善期間の具体的な数値は、本シリーズ第5回「東証の市場区分」で詳しく扱っているため、本記事では要点の復習にとどめ、上場廃止事由の全体像監理・整理銘柄という段階で具体的に何が起きるかに焦点を当てます。

📌 この記事の結論(30秒まとめ)

1️⃣ 上場廃止基準の全体像——事由は20項目にわたる

上場廃止基準は、投資者保護と市場の信頼性を維持するために設けられた制度です。JPXは「上場廃止基準の概要」のページで、上場廃止となる事由を次のように説明しています。

💡 一次情報(JPX「上場廃止基準の概要」より):「以下のいずれかに該当した場合、上場廃止となります(有価証券上場規程第601条第1項第1号~20号)。」

この20項目は、大きく次のようなカテゴリーに分けられます。

カテゴリー内容の要旨
上場維持基準への不適合各市場区分が求める株主数・流通株式・売買高などの基準を、改善期間内に満たせなかった場合
有価証券報告書等の提出遅延監査報告書等を添付した有価証券報告書・半期報告書を、法定提出期限から1か月以内(延長承認がある場合はその期間+8日目まで)に提出しない場合
虚偽記載又は不適正意見等有価証券報告書等に虚偽記載があり市場の秩序維持が困難と認められる場合、または監査報告書等に「不適正意見」等が付された場合
特別注意銘柄等内部管理体制等の整備・運用に問題があると認められ、改善の見込みがない場合
上場契約違反等上場契約の重大な違反、新規上場時の宣誓事項への重大な違反があった場合
その他銀行取引の停止、破産・再生・更生手続、事業活動の停止、不適当な合併等、完全子会社化、株式併合、全部取得、株式等売渡請求による取得、反社会的勢力の関与 など

この一覧からわかるとおり、「業績不振」は上場廃止事由の一部にすぎません。表の最後の「その他」には、TOB(株式公開買付け)が成立して完全子会社化される場合や、株式併合によって少数株主の株式が処理される場合なども含まれています。これは本シリーズ第4回「株式公開買付け(TOB)」で扱った、TOBが成立したあとに起こりうる手続きとつながっています。また、新規上場時に提出した宣誓書に違反していた場合(宣誓書違反による再審査)や、非上場会社との合併等で実質的な存続会社が上場会社でなくなる、いわゆる「裏口上場」を防ぐための基準(合併等による実質的存続性喪失)といった、個別性の強い基準も用意されています。

2️⃣ 具体例:代表的なパターン「上場維持基準への不適合」の場合

数ある上場廃止事由のうち、手順が定型化されていて流れを追いやすいのが「上場維持基準への不適合」のルートです。ここでは代表例として、このルートを取り上げます。JPXは、2025年3月1日以降の取り扱いを次のように説明しています。

💡 一次情報(JPX「上場維持基準に関する経過措置の終了」より):「上場維持基準に適合しない状態となった場合には、原則として1年間(売買高基準に関しては6か月間)の改善期間に入り、改善期間内に基準に適合しない場合は監理銘柄・整理銘柄(原則として6か月間)に指定後、上場廃止となります。上場廃止後は、東証市場における株式の売買が出来なくなりますのでご留意ください。」

各市場区分が求める上場維持基準の主な項目(本来の基準、2025年3月1日以後の基準日から適用)は次のとおりです。詳しい経過措置の経緯や、ここに含まれない項目(流通株式時価総額・純資産の額など)は第5回「東証の市場区分」で扱っているため、ここでは主な項目のみを再掲します。

項目プライム市場スタンダード市場グロース市場
株主数800人以上400人以上150人以上
流通株式数2万単位以上2,000単位以上1,000単位以上
流通株式比率35%以上25%以上25%以上
売買代金/売買高1日平均売買代金0.2億円以上月平均売買高10単位以上月平均売買高10単位以上
時価総額40億円以上(上場10年経過後から適用)
以下のスケジュールは「考え方を説明するための仮の例」です。実際の日程は決算期・個々の会社の状況によって異なります。

JPXは、決算期に応じた具体的なスケジュール例も公表しています。

💡 一次情報(同上):「3月末決算会社の場合、4月1日から監理銘柄(確認中)に指定され、4月中旬~6月中旬頃に基準への適合状況を確認後、基準に適合した場合は監理銘柄(確認中)指定の解除、基準に適合しない場合は上場廃止が決定され、整理銘柄に指定されます。」

つまり、3月末決算の会社であれば、4月1日から監理銘柄(確認中)に指定され、そこからおよそ2〜3か月かけて基準への適合状況が確認される、という流れです。監理銘柄に指定された時点では、まだ「基準に適合するかどうかを確認している段階」であり、上場廃止が確定したわけではありません。

3️⃣ 図解:監理銘柄・整理銘柄に指定されてから何が起きるか

上場廃止に至るプロセスの中でも、投資家として特に押さえておきたいのは「監理銘柄」と「整理銘柄」の違いです。JPXの用語集は、それぞれを次のように定義しています。

💡 一次情報(JPX用語集「監理銘柄」より):「上場有価証券が上場廃止基準に該当するおそれがある場合には、その事実を投資者に周知させ、投資者がこれに対応する措置がとれるよう、当該株券を『監理銘柄』に指定します。当該上場株券の上場廃止が決定された場合には、整理銘柄に指定します。」
💡 一次情報(JPX用語集「整理銘柄」より):「上場有価証券の上場廃止が決定された場合には、所定の期間、整理銘柄に指定し、その事実を投資者に周知させ、投資者が整理売買を行うことができるようにしています(一定の場合には、整理銘柄へ指定することなく上場廃止となる場合もあります)。」

つまり、監理銘柄=「廃止になる"おそれ"の段階」、整理銘柄=「廃止が"決定した"段階」という違いがあります。この2つの段階を、上場維持基準への不適合を例に時系列で示すと次のようになります。

監理銘柄への指定から整理銘柄を経て上場廃止に至るまで、各段階で何が起きるかを示す概念図(仮の例) 監理銘柄・整理銘柄に指定されてから起きること(仮の例) ① 監理銘柄(確認中/審査中)=廃止の"おそれ"を周知 基準に適合するかどうかを確認・審査している段階 取引所での売買は継続。適合すれば指定は解除される 上場維持基準不適合の場合、確認・審査はおよそ数か月 ② 整理銘柄=上場廃止が"決定した"ことを周知 上場廃止の期日までの間、投資者が売却できる機会を確保 指定期間・値幅の扱いは事由や状況によって個別に決まる 一定の場合は整理銘柄を経ずに廃止となることもある ③ 上場廃止=取引所での売買ができなくなる 保有株がその後どうなるかは事由により異なる (TOB・合併等の対価を受け取る/破産等で価値を失う 等) → 詳しくは4章「個人投資家にどこで効いてくるか」
▲ 監理銘柄→整理銘柄→上場廃止という段階を、投資家目線で「何が起きるか」に絞って示した仮の流れ。実際の期間・扱いは廃止事由・個社の状況によって異なる。※ 概念を示すイメージ図です。

4️⃣ 個人投資家にどこで効いてくるか

① 監理・整理銘柄の間も、取引所での売買は続けられる

監理銘柄・整理銘柄に指定されても、その期間中は東証での売買が禁止されるわけではありません。整理銘柄の用語集定義にあるとおり、「投資者が整理売買を行うことができるように」という目的で、あえて一定期間の売買機会が確保されています。慌てて理解しないまま行動する前に、まずは指定の意味(おそれの段階か、決定した段階か)を確認することが大切です。

② 値幅制限が撤廃されることがある

整理銘柄は取引可能な期間が限られているため、需給の偏りが大きい場合には、通常の値幅制限(本シリーズ第2回で扱った制度)が一時的に撤廃されることがあります。JPXは実際に、整理銘柄に指定された銘柄について「売買可能期間が限定的であることを踏まえ、需給合致値段への移行を速やかに行う」との考えから、呼値の制限値幅の下限を撤廃し基準値段を変更した措置を、マーケットニュースとして公表した実例(2019年1月公表分)があります(本記事では個別銘柄の評価はしないため、事例の詳細は次章の一次情報リンクから各自ご確認ください)。値幅制限が外れると、通常では起きない価格での売買が成立する可能性があるため、JPXは取引参加者(証券会社)に対して顧客への周知を呼びかけています。

③ 保有株がその後どうなるかは、廃止の事由によって異なる

上場廃止後は東証市場での売買ができなくなりますが、保有していた株式そのものがどうなるかは廃止の事由によって大きく異なります。例えば、TOBが成立して完全子会社化される場合は、株式併合(少数株主の株式をまとめて処理しやすい単位に統合する手続き)や株式等売渡請求(一定以上の株式を持つ株主が残りの少数株主の株式を強制的に取得する手続き)などを経て、株主は金銭等の対価を受け取ることが一般的です(詳しくは第4回「株式公開買付け(TOB)」を参照)。一方、破産手続・再生手続などが事由の場合は、保有株式の価値が大きく損なわれる、あるいは失われるリスクがあります。「上場廃止=一律に価値がなくなる」わけではない点は、誤解しやすいポイントです。

④ 監理銘柄には「確認中」と「審査中」がある

監理銘柄への指定には、上場維持基準への適合状況を確認する「確認中」と、市場区分の変更審査などに対応した「審査中」の区別があります。どちらも「廃止のおそれがあり、確認・審査をしている段階」である点は共通しますが、何を確認・審査しているかが異なるため、個別の指定情報を確認する際はこの違いも意識すると理解しやすくなります。

5️⃣ 自分で一次情報を確かめる手順

このシリーズの立場として、制度の仕組みは必ず一次情報で確認します。上場廃止基準・監理銘柄・整理銘柄については、以下の手順で確かめられます。

  1. JPXサイトの「株式・ETF・REIT等」→「上場制度(内国株)」から「上場廃止基準(各市場共通)」のページを開く(20項目の根拠条文と各カテゴリーの詳細を確認できる)。
  2. 同メニューの「上場維持基準に関する経過措置の終了」のページで、改善期間・監理銘柄・整理銘柄の期間の考え方と、決算期別のスケジュール例を確認する。
  3. 用語の定義は、JPX用語集の「監理銘柄」「整理銘柄」のページで確認できる。
  4. 現在どの銘柄が監理・整理銘柄に指定されているかは、「監理・整理銘柄一覧」で常時公開されている(指定年月日・市場区分などが確認できる)。
  5. 整理銘柄の値幅制限撤廃の実例は、JPXの「マーケットニュース」で個別に公表されることがある。
本記事で引用した制度・数値はJPXの一次情報の要旨・抜粋を含みます。上場廃止基準・上場維持基準は改正されることがあるため、実際の投資判断にあたっては必ず最新の一次情報をご確認ください。

6️⃣ よくある誤解

誤解一次情報にもとづく整理
上場廃止基準に該当したら、その日のうちに売買できなくなる誤り。多くの場合は監理銘柄・整理銘柄という周知の段階を経る。ただし一定の場合は、これらの指定を経ずに廃止となることもある
上場廃止の事由は「業績不振(上場維持基準への不適合)」だけ誤り。有価証券報告書等の提出遅延、虚偽記載、破産手続、完全子会社化、宣誓書違反など20項目にわたる
監理銘柄に指定された時点で、上場廃止は確定している誤り。監理銘柄は「基準に適合するかどうかを確認・審査している段階」であり、適合が確認されれば指定は解除される
上場廃止になった株式は、事由にかかわらず一律に無価値になる誤り。TOBによる完全子会社化などでは対価を受け取れるのが一般的で、破産手続等とは扱いが異なる

7️⃣ まとめ

東証のしくみシリーズ第12回「上場廃止と監理・整理銘柄」を整理します。

本記事の制度の説明は、2026年9月13日時点でJPX公式サイト「上場廃止基準の概要」(2024年7月1日更新)、「上場維持基準に関する経過措置の終了」(2026年3月18日更新)、JPX用語集「監理銘柄」「整理銘柄」の該当ページを実際に確認したうえで記載しています。制度は変更されることがあるため、実際の取引にあたっては、その時点の一次情報をご自身で確認してください。

📚 関連シリーズで市場のルールをさらに深く
上場維持基準の具体的な数値と経過措置の経緯は、市場区分の記事で詳しく扱っています。あわせて読むと、東証の市場ルール全体の見取り図がつかめます。
東証の市場区分の記事を見る →

🔗 関連記事

⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事は東京証券取引所などの制度・手続きに関する一般的な情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。制度の内容は変更されることがあるため、実際の取引にあたっては必ずご自身で最新の一次情報をご確認ください。投資には元本割れのリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。