💬 LINEヤフー(4689)を数字で見る|広告・買い物・決済の3つの事業を有価証券報告書で確認
「数字で見る、話題の企業」シリーズ第15回は、メッセージアプリ「LINE」、ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」、スマートフォン決済「PayPay」などを運営するLINEヤフー株式会社(証券コード4689、以下「LINEヤフー」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が金融庁の開示システム(EDINET)に提出した有価証券報告書(第31期・2025年4月〜2026年3月)を中心に、①事業の中身 ②産業のつながりの中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。
- LINEヤフーの売上は、ネットの買い物などの「コマース事業」が約42%、広告を中心とする「メディア事業」が約36%、PayPayなどの決済・金融の「戦略事業」が約22%です(外部の顧客への売上収益を当サイトが割合にしたもの)。第31期(2025年4月〜2026年3月)の売上収益は約2兆363億円(前期比+6.2%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は約1,936億円(前期は約1,534億円)でした(どちらも国際会計基準〈IFRS〉の連結の数字)
- 伸びたのは戦略事業(売上収益 前期比+30.6%)と、LINEの企業向けアカウントの広告(同+15.3%)でした。一方で、検索広告の売上収益は前期より約10%減りました。営業利益の増益(+8.3%)について、会社は子会社化に伴う再測定益(それまで一部だけ持っていた会社を子会社にしたとき、もともと持っていた株を時価で計算し直して出る利益。お金の出入りは伴いません)の計上を主な要因に挙げています
- 会社は2023年に公表した不正アクセスによる情報漏えいで国の行政指導などを受け、再発防止策の主要な対応を2026年3月末までに終えたと書いています。「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-09時点で20銘柄)のうち、LINEヤフーは2026年9月30日と10月5日の2日、どちらも値下がりランキングに登場しています(登場日とランキングの種類は、当サイトのランキングデータ jp-rankings.json の更新履歴で確認)。ランキングに最後に登場した日から中3営業日以上あいていること(「熱が残っているうちは書かない」ルール。同データの cooled: true)と、有価証券報告書の本文が取得できていることを満たす候補の中から、時価総額の大きい順に選びました(時価総額の金額は本文に書きません)。LINEヤフーより時価総額の大きい候補が3社ありましたが、2社は当サイトの10月1日のニュース記事で株価の動きを取り上げていたため、ニュースと重ならないよう見送りました。残る1社は、最新の通期の有価証券報告書が当サイトのデータにまだ入っていないため見送りました。LINEヤフーについては、本レーンでの既刊記事・この会社が主役の解説記事の既刊はなく(ls guide-*.html と guides.html を社名・証券コードで確認)、当サイトのニュース記事(guide-news-*.html・NEWS_LEDGER.md)にも全期間で登場していません。ランキングに登場した理由(なぜ値下がりしたか)は、一次情報で確かめられないため書きません。1️⃣ LINEヤフーはどんな会社か
LINEヤフーは、有報の「事業の内容」で自社の始まりを「当社は、1996年1月にインターネット上の情報検索サービスの提供を日本で行うことを目的として設立されました。」と書いています(出典:有価証券報告書 第31期「事業の内容」、2026-10-13確認)。社名はヤフー株式会社、Zホールディングス株式会社を経て、2023年10月のグループ内の再編で今のLINEヤフー株式会社になりました。経営方針では、自社のグループについて「オンラインからオフラインまで一気通貫でサービスを提供する」と説明しています(出典:同有報「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」)。連結の従業員数は29,863人(2026年3月31日現在)です。
会社は事業を3つの報告セグメントに分けています。有報の説明を短くまとめると、次のとおりです(出典:同有報「事業の内容」「セグメント情報」)。
- メディア事業:広告の商品の企画・販売・掲載。Yahoo! JAPANの検索広告やディスプレイ広告、「LINE公式アカウント」などのアカウント広告、そのほかスタンプ・マンガ・有料会員の「LYPプレミアム」など
- コマース事業:「Yahoo!ショッピング」「Yahoo!オークション」「一休.com」などのeコマースと、子会社のZOZO(ファッション通販)、アスクル(オフィス用品などの通販)など
- 戦略事業:主に決済・金融のサービス。キャッシュレス決済の「PayPay」、クレジットカード、銀行など(会社の区分では「Fintech」)
第31期の、セグメントの中のサービスごとの売上収益(外部の顧客への売上収益)は次のとおりです(出典:同有報の連結財務諸表注記「売上収益の分解」)。
セグメントの合計(外部の顧客への売上収益)では、コマース事業が約8,548億円(42.0%)、メディア事業が約7,293億円(35.8%)、戦略事業が約4,422億円(21.7%)でした(構成比は当サイトの計算)。会社の「経営者による分析」の説明は、セグメントの間の取引を含めた売上収益で書かれていて、メディア事業7,351億円(前期比0.4%増)、コマース事業8,576億円(同1.1%増)、戦略事業4,457億円(同30.6%増)です。なお会社は、第31期の途中で一部のサービスをセグメントの間で移し、前期の数字もそれに合わせて直しています(出典:同有報「経営者による分析」「セグメント情報」)。
2️⃣ どのつながりの中にいるか
次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、LINEヤフーが「使う人」と「お金を払う会社」のあいだのどこに立っているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。
LINEヤフーが「使う人」と「お金を払う事業者」のあいだに立っている根拠は、会社自身の開示にあります。第31期の外部の顧客への売上収益のうち、広告を中心とするメディア事業は約35.8%、ネットの買い物の場を中心とするコマース事業は約42.0%、決済・金融の戦略事業は約21.7%でした(当サイトの計算)。会社によると、eコマースの取扱高(会社が定めたグループのサービスで売り買いされた金額の合計)は約4兆6,729億円(前期比7.1%増)、PayPayの連結の取扱高(決済などで扱った金額)は19.4兆円(同23.4%増)でした。会社は戦略事業の説明で、PayPayを「国内のコード決済(スマートフォンでQRコードなどを読み取って支払う方法)におけるシェア約3分の2を占める」サービスと書いています(出典:有価証券報告書 第31期「経営者による分析」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、2026-10-13確認)。
工程の前後とのつながりも、開示に書かれています。
- 設備とのつながり:第31期の設備投資は総額 約1,737億円で、主なものはサーバーとネットワーク関連の設備の購入、物流センターの拡充、ソフトウェアの取得だったと書いています。研究開発費は約481億円で、主にAIとFintechの研究開発だとしています(出典:同有報「設備投資等の概要」「研究開発活動」)。
- 外部の技術とのつながり:検索のサービスでは、外部の会社から検索技術と検索連動型広告の配信技術の提供を受ける契約を結んでいて、有報の「重要な契約等」では契約期間を2027年3月31日までと書いています。また、AIのコスト(推論・学習・運用などの費用)について、モデルを提供する会社と契約の条件を見直しながら管理すると書いています(出典:同有報「重要な契約等」「事業等のリスク」)。
- 前後の工程にいる会社の種類:前(支える側)には、データセンターやサーバー・通信網を提供する会社、AIのモデルを提供する会社、配送・物流の会社、カードの決済網や銀行の送金のしくみを担う会社があります。後ろ(お金を払う側)には、広告を出す企業と広告の代理店、ネットに店を出す小売やメーカー、ホテル・旅館・飲食店、PayPayを受け付ける店などがあります。
このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報のリスクで挙げています。事業戦略のリスクでは、生成AIの広がりで利用者の行動が急速に変わっていることを挙げ、新しい利用者との接点や収益の形づくりが計画どおりに進まない場合、「将来的な売上・利益目標の達成が困難になる可能性があります。」と書いています。規制のリスクでは、国内でも「当社事業を取り巻く規制は強化される傾向です。」と書いています(出典:有価証券報告書「事業等のリスク」、2026-10-13確認)。
3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事
各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。この年表は、有価証券報告書の「沿革」などと、TDnetの適時開示だけで作っています(Wikipediaなどの二次情報は使っていません)。
| 年月 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1996年1月 | インターネット上の情報検索サービスの提供を目的に、東京都中央区でヤフー株式会社を設立 | 有価証券報告書 第31期「沿革」(2026-10-13確認) |
| 1996年4月 | 日本語での情報検索サービス「Yahoo! JAPAN」を開始 | 有価証券報告書 第31期「沿革」(2026-10-13確認) |
| 1997年11月 | 店頭登録銘柄(当時の、証券取引所の外で売り買いされる株の登録の仕組み)として株式を公開 | 有価証券報告書 第31期「沿革」(2026-10-13確認) |
| 1999年9月 | 「Yahoo!オークション」「Yahoo!ショッピング」を開始 | 有価証券報告書 第31期「沿革」(2026-10-13確認) |
| 2003年10月 | 東京証券取引所の市場第一部に上場 | 有価証券報告書 第31期「沿革」(2026-10-13確認) |
| 2010年7月 | 「Yahoo! JAPAN」の検索サービスに、グーグルの検索エンジンと検索連動型広告の配信システムを採用することなどを決定 | 有価証券報告書 第31期「沿革」「重要な契約等」(2026-10-13確認) |
| 2018年10月 | キャッシュレス決済サービス「PayPay」の提供を開始 | 有価証券報告書 第31期「沿革」(2026-10-13確認) |
| 2019年10月・11月 | ヤフー株式会社をZホールディングス株式会社に商号変更し、持株会社の体制に移行(10月)。ZOZOの株式を取得して子会社にする(11月) | 有価証券報告書 第31期「沿革」(2026-10-13確認) |
| 2021年2月・3月 | 主要株主である筆頭株主が、Aホールディングス株式会社に変わる(2月)。LINE株式会社との経営統合が完了し、同社を子会社にする(3月) | 有価証券報告書 第31期「沿革」(2026-10-13確認) |
| 2022年4月 | 東京証券取引所の市場区分の見直しで、プライム市場に移行 | 有価証券報告書 第31期「沿革」(2026-10-13確認) |
| 2022年10月 | PayPay株式会社を子会社にする | 有価証券報告書 第31期「沿革」(2026-10-13確認) |
| 2023年10月 | Zホールディングス、LINE、ヤフーを中心としたグループ内の再編で「LINEヤフー株式会社」が発足。「LINE」と「Yahoo! JAPAN」のアカウントの連携を開始 | 有価証券報告書 第31期「沿革」(2026-10-13確認) |
| 2023年11月〜2024年度 | 不正アクセスによる情報漏えいを公表(2023年11月)。この件で2023年度に総務省から行政指導、個人情報保護委員会から勧告などを受け、2024年度に総務省から追加の行政指導を受ける | 有価証券報告書 第31期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-13確認) |
| 2025年5月〜9月 | 公開買付けなどで自己株式を取得(5月に決議)。BEENOS株式会社(5月)、台湾のLINE Bank Taiwan Limited(6月)、タイのフードデリバリーの事業などを傘下に持つシンガポールのLINE MAN CORPORATION PTE. LTD.(9月)を子会社にする | 有価証券報告書 第31期「事業の内容」「自己株式の取得等の状況」(2026-10-13確認) |
| 2025年10月 | 連結子会社のアスクル株式会社で、ランサムウェア攻撃によるシステム障害が発生し、一部の事業活動に影響が出る | 有価証券報告書 第31期「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業等のリスク」(2026-10-13確認) |
| 2026年3月 | PayPay株式会社の普通株式を対象とした米国預託株式(ADS)が、米国のナスダック・グローバルセレクトマーケットに上場。不正アクセスの件の再発防止策として策定した主要な対応を、3月末までに完了したと会社が記載 | 有価証券報告書 第31期「沿革」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-10-13確認) |
| 2026年6月 | 有価証券報告書 第31期を提出(6月18日) | EDINET 有価証券報告書 第31期(2026-10-13確認) |
| 2026年7月・9月 | 投資ファンドが組成した組合(リミテッド・パートナーシップ)に間接的に共同出資する予定と、その組合が上場する別の会社の株式などに公開買付けを行う予定を公表(7月29日)。9月16日に、その公開買付けの条件の一部変更と、実施に必要な手続き上の承認などの取得が完了したことを開示(開始の時期は未定と記載) | 適時開示(2026年9月16日の経過開示。公開買付けの開始予定の一部変更についてのお知らせ)(2026-09-16開示、2026-10-13確認。7月29日の公表は、この開示の中の記載で確認) |
※TDnet(適時開示)のPDFは保管期間(約1か月〜1か月半)を過ぎるとリンクが切れます。その場合は会社のIRサイトの適時開示一覧でご確認ください。持株会社=自分では事業をせず、グループの会社の株を持って全体を経営する会社です。公開買付け=買う株数・値段・期間を公告して、株主から株をまとめて買い取る方法です。自己株式(の取得)=会社が自分の会社の株を買い戻すことです。ランサムウェア=コンピューターのデータを使えなくして、元に戻すことと引き換えにお金を要求する不正なプログラムです。米国預託株式(ADS)=米国以外の会社の株を、米国の市場で売り買いできる形にしたものです。行政指導=役所が会社などに、法律にもとづく強制ではない形で、改善を求めることです。勧告=ここでは、個人情報保護委員会が、個人情報の扱いの改善などを求めることです。
4️⃣ 直近の決算の数字(有価証券報告書 第31期)
有価証券報告書 第31期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月18日提出)の連結の数字です(IFRS)。LINEヤフーは3月決算で、その後の四半期の数字(2026年4〜6月期の決算短信)は、上の注意書きのとおり当サイトでは取得できていません。確認日は2026-10-13です。
| 指標(連結・IFRS) | 第31期(2025/4〜2026/3) | 第30期(前期・2024/4〜2025/3) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 約2兆363億円 | 約1兆9,174億円 | +6.2% |
| 調整後EBITDA(会社の独自の物差し) | 4,966億円 | — | +5.5% |
| 営業利益 | 約3,413億円 | 約3,150億円 | +8.3% |
| うち 企業結合に伴う再測定益 | 約614億円 | — | — |
| 税引前利益 | 約2,942億円 | 約2,748億円 | +7.0% |
| 法人所得税 | 約111億円 | 約724億円 | — |
| 当期利益 | 約2,830億円 | 約2,024億円 | +39.9% |
| うち 親会社の所有者に帰属 | 約1,936億円 | 約1,534億円 | +26.2% |
| うち 非支配持分に帰属 | 約893億円 | 約489億円 | +82.7% |
| 基本的1株当たり当期利益(基本的EPS) | 27.97円 | 21.00円 | — |
| 親会社所有者帰属持分利益率(ROE) | 6.5% | 5.1% | — |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 26.8% | 32.7% | — |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 約6,628億円 | 約5,195億円 | — |
| 1株当たり配当額(LINEヤフー単体の数字・円) | 7.30円 | 7.00円 | +0.30円 |
出典:有価証券報告書 第31期「主要な経営指標等の推移」「経営者による分析」「連結損益計算書」(2026-06-18提出)。億円の数字は有報の百万円から当サイトが計算したもの(億円未満切り捨て)。売上収益・調整後EBITDA・営業利益の増減の率は有報の「経営者による分析」の記載。そのほかの増減の率は当サイトが有報の数字から計算したもの。調整後EBITDAは会社の記載の数字で、前期の金額は会社の記載の増減率だけを載せています。確認日:2026-10-13。
会社は営業利益の増益について「これは2026年3月期第2四半期においてLINE MAN CORPORATION PTE. LTD.を連結子会社化したことに伴い、企業結合に伴う再測定益を計上したことが主な要因です。」と説明しています。連結損益計算書では、再測定益 約614億円と、アスクルのシステム障害の対応費用 約54億円が営業利益に含まれています。法人所得税は約724億円から約111億円に減りました。有報の注記は、子会社のPayPay株式会社の繰延税金資産(将来の税金を減らせる分を資産として計上したもの)の回収可能性を見直し、繰延税金資産が約575億円増えたと書いています。実際の税の負担率(税引前利益に対する法人所得税の割合)は前期の26.37%から3.79%になり、法定実効税率(法律で決まっている税率をもとにした率・31.46%)との差の内訳では、繰延税金資産の回収可能性の評価による影響がマイナス26.10ポイントと最も大きくなっています(出典:同有報「経営者による分析」「連結損益計算書」連結財務諸表注記「法人所得税」)。
セグメントごとに見ると、会社の説明は次のとおりです(出典:同有報「経営者による分析」)。
- メディア事業:売上収益7,351億円(前期比0.4%増)。調整後EBITDAは、販促費や生成AI関連の費用などが増えて2,806億円(同2.2%減)。アカウント広告の売上収益は前期比15.3%増で、会社は「LINE公式アカウント」の有償のアカウント数の増加や従量課金の拡大を背景に挙げています。一方、検索広告については「検索広告:LINEヤフー面、パートナーサイト面ともに売上収益は前年同期比で減少しました。」と書いています(パートナーサイト面=提携しているほかのサイトに出す分)
- コマース事業:売上収益8,576億円(同1.1%増)。子会社にしたBEENOSとLINE MANの分や、ZOZOのグループとショッピング事業の増収があった一方、アスクルのシステム障害の影響があったと説明しています。調整後EBITDAは1,299億円(同12.8%減)で、会社はシステム障害の影響、販売促進費や広告宣伝費などの増加、前期(2025年3月期)の第1四半期に、子会社だった会社への支配を失ったことに伴って計上した利益の反動を理由に挙げています
- 戦略事業:売上収益4,457億円(同30.6%増)。PayPayの連結の成長と、LINE Bank Taiwanを子会社にしたことによる増収と説明しています。調整後EBITDAは939億円(同85.0%増)で、会社は販売促進費や支払手数料が増えた一方、「前年同期におけるLINE Payの国内サービス撤退費用の計上の反動により」増えたと書いています。子会社のPayPay銀行の貸出金の残高は1兆2,386億円(同33.6%増)でした
5期の数字では、売上収益は約1兆5,674億円(第27期)から約2兆363億円(第31期)まで毎期増えました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、約773億円(第27期)、約1,788億円(第28期)、約1,131億円(第29期)、約1,534億円(第30期)、約1,936億円(第31期)と、年によって増えたり減ったりしています(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」)。この記事で読んだ範囲の有報には、第30期より前の年ごとの増減の理由の説明はないため、理由は書きません。
株主への還元について、会社は第31期に、公開買付けで218,064,491株(約1,162億円)、市場での買付けで63,400,000株(約322億円)の自己株式を取得し、そのうち276,664,491株を消却しました。この消却で、発行済株式総数(LINEヤフー単体)は前期末の7,154,182,647株から6,884,244,856株になりました(新株予約権の行使などによる増加を含む)。配当については、「2025年度からの5年間で累計総還元性向70%以上を目指す還元方針」を掲げていると書いています(出典:同有報「自己株式の取得等の状況」「発行済株式総数、資本金等の推移」「配当政策」)。
また、LINEヤフーの議決権の62.4%は、Aホールディングス株式会社が持っています(2026年3月31日現在)。有報の「沿革」は、Aホールディングスを、ソフトバンク株式会社とNAVER Corporationが半数ずつ出資する会社と書き、「関係会社の状況」はソフトバンクグループ株式会社などを親会社として載せています。LINEヤフーはAホールディングスと資本提携契約を結んでいて、Aホールディングスは社内取締役を2名以上4名以下指名する権利と、定款(会社の基本のルール)の変更などについての事前承諾の権利を持つと記載しています。これについて会社は、独立社外取締役(会社から独立した立場の社外の取締役)が取締役の過半数を占めることなどから、企業統治(経営を監督するしくみ)への影響は限定的だと考えていると書いています(出典:同有報「沿革」「関係会社の状況」「大株主の状況」「重要な契約等」)。ここで扱う数字や方針はすべて会社の開示の紹介で、当サイトによる業績予測ではありません。
5️⃣ 会社自身が挙げているリスク
以下は有価証券報告書(第31期)の「事業等のリスク」から、会社自身が挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社はリスクを多くの種類に分けたうえで、特に重要度が高いものを「グループトップリスク」として4つ挙げています。ここではその4つを紹介します。原文はEDINET掲載の有価証券報告書でご確認ください。
- ①事業戦略のリスク(生成AIへの対応):会社は、生成AIを中心にした事業の変革を進めているとしたうえで、生成AIの広がりで利用者の行動が急速に変わる中、新しい利用者との接点づくりや、AIを使った広告・AIの機能への課金などの収益の形づくりが計画どおりに進まない場合、「将来的な売上・利益目標の達成が困難になる可能性があります。」と書いています。また、大規模言語モデル(大量の文章で学習した、文章を作るAIのしくみ)の利用が広がるとAIのコストが増える可能性があり、管理が進まなければ「利益率の悪化や将来の投資余力の低下を招くリスクがあります。」としています。
- ②情報セキュリティのリスク:人のミスや不正、サイバー攻撃などで情報漏えいやサービスの停止が起きた場合、業績への影響だけでなく「当社グループの信用失墜につながる可能性があります。」と書いています。2023年11月に公表した不正アクセスの件では、行政指導と勧告を踏まえた再発防止策について、2026年3月末までに「システム基盤を共有していた関係会社等とのシステム・ネットワークの分離」、全体的な多要素認証の導入、業務委託先の管理の高度化などの主要な対策の実装を終えたとしています。一方で、2025年10月のアスクルのランサムウェア攻撃と、2026年2月のBEENOSの連結子会社での不正アクセスの事案も挙げ、想定を超える攻撃があった場合の追加の費用にも触れています。
- ③規制・政策のリスク:欧州やアジアの国々で利用者の情報の提供や保全などを義務づける法律の整備が進んでいること、国内でも個人情報保護法の改正の検討などが続いていることを挙げています。また、経済安全保障推進法(経済の面から国の安全を守るための法律)にもとづく「特定社会基盤事業者(国が、止まると国民生活に大きな影響が出る重要なサービスを担うとして指定した事業者)の指定を受けている」ため、重要な設備の導入などに事前の審査や報告の義務があり、対応が適切でない場合は行政の措置や追加の費用などが生じうるとしています。中東・ウクライナ・台湾をめぐる国際情勢にも触れています。
- ④人的リスク:採用の環境の変化や、生成AIをはじめとする急な技術の進化などで、人の配置の計画が計画どおりに進まない場合、「事業戦略と人材との間に乖離が生じる可能性があります。」と書いています。
出典:有価証券報告書 第31期「事業等のリスク」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(2026-06-18提出、2026-10-13確認)。原文のリスクの分類には、このほか、市場・信用・流動性・投資、システムの運用、品質、法令・契約、マネー・ローンダリング(犯罪で得たお金の出どころを隠すこと)の対策、データやAIのガバナンス(管理の体制)、委託先の管理、評判などが並んでいます。なお会社は、リスクを不利益をもたらす「脅威」と、収益の機会になりうる「機会」の両面を含むものと定義しています。多要素認証=パスワードに加えて、スマートフォンへの確認など別の手段も使って本人を確かめるしくみです。
6️⃣ 上がる材料/下がる材料
ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。
以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。
※ 材料の数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来の予測は行っていません。
7️⃣ これから何を見れば分かるか
次の決算発表日は、当サイトの決算予定データ(earnings-calendar.json)に載っておらず、会社の公式な日程も確認できていないため、ここには書きません。会社のIRサイトの決算発表予定でご確認ください。この記事で挙げた材料がその後どうなったかは、次の開示で確かめられます。
- 検索広告とアカウント広告の売上収益:第31期は検索広告 約1,790億円(前期比 約10.4%減)、アカウント広告 約1,457億円(同15.3%増)。決算短信や会社の決算説明の資料で、広告の種類ごとの数字を確かめられます
- PayPayの連結の取扱高と、戦略事業の利益:第31期は取扱高19.4兆円・戦略事業の調整後EBITDA 939億円。会社が主要な経営指標に挙げている「PayPay」の決済回数や、PayPay銀行の口座数とあわせて確かめられます
- コマース事業の調整後EBITDAと、アスクルのシステム障害の影響:第31期は1,299億円(前期比12.8%減)。障害の影響がその後の数字にどう表れているか
- 自己株式の取得と消却、配当:「2025年度からの5年間で累計総還元性向70%以上を目指す還元方針」に対する進み方は、決算短信や適時開示で確かめられます
- 検索技術の提供の契約と、共同出資の計画の続報:有報の「重要な契約等」では、検索技術の提供の契約期間は2027年3月31日まで。2026年7月に公表した、投資ファンドとの共同出資の計画のその後は、TDnetの続報の開示で確かめられます(当サイトが確かめた2026-10-13時点で、9月16日より後のLINEヤフーの開示は見当たりませんでした)
有価証券報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説にまとめています。
8️⃣ まとめ
結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①広告の中身(売上が減った検索広告と、伸びたアカウント広告の差)、②戦略事業の伸びと利益(PayPayの取扱高と、戦略事業の調整後EBITDA)、③利益の中身(再測定益や税金の減少のような項目を除いた、調整後EBITDAと営業利益の動き)。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。
🔗 関連記事
⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事は金融庁の開示システム(EDINET)に提出された有価証券報告書と、東京証券取引所の適時開示(TDnet)などの一次情報に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示、将来の業績・株価の予測、株価水準に関する評価的な断定は行っていません。会社の方針・目標・計画・見方として引用した内容は、あくまで「会社がそのように公表している」という事実の紹介です。文中に出てくる他社の名前は、会社の開示に書かれた事実を説明するためのもので、その会社の株式をおすすめするものではありません。投資には元本割れのリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。