🔬 ディスコ(6146)を数字で見る|ウエハを切る・削る・磨く装置と消耗品の会社を有価証券報告書で確認
「数字で見る、話題の企業」シリーズ第16回は、半導体などの材料になる薄い板(ウエハ)を「切る」「削る」「磨く」ための精密加工装置と、その装置に取り付けて使う刃や砥石などの消耗品をつくる株式会社ディスコ(証券コード6146、以下「ディスコ」)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を、自分で見積もれる状態」を作ることで、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が金融庁の開示システム(EDINET)に提出した有価証券報告書(上場会社が決算期ごとに金融庁へ出す、事業や決算をくわしく書いた報告書。第87期・2025年4月〜2026年3月)と、2026年10月6日の適時開示(上場会社が、株価に影響しうる情報を証券取引所を通じてすぐに公表する仕組み)の速報値(決算が確定する前に、会社が先に出す概算の数字)をもとに、①事業の中身 ②半導体の製造工程の中での位置 ③歴史 ④直近の決算の数字 ⑤会社自身が挙げるリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、⑦次に何を見ればよいかを整理します。
- ディスコの第87期(2025年4月〜2026年3月)の売上高は約4,368億円(前期比+11.1%)、営業利益は約1,849億円(同+10.9%)、親会社株主に帰属する当期純利益は約1,355億円(同+9.4%)でした(日本の会計基準・連結)。売上高の約63%が「精密加工装置」、約22%が装置で使う消耗品の「精密加工ツール」です。会社は、出荷額(工場から製品を出荷した金額)と売上高がどちらも6期続けて過去最高になったと書いています
- 顧客の所在地で見ると、中国が約31%、台湾が約27%で、日本以外の顧客向けが約9割(89.6%)でした。1社への売上が全体の11.0%を占めています。会社自身は、半導体の市況の波(シリコンサイクル:半導体の需要と供給のバランスで景気が良くなったり悪くなったりをくり返すこと)、新しい加工技術の登場、災害、為替などをリスクに挙げています
- 2026年10月6日の速報値(ディスコ1社だけの「単体」の数字・監査(会社の外の監査法人が、決算の数字が正しいかを確かめること)が終わる前の値)では、2026年7〜9月の出荷額は1,239億円(前年同期比+60.0%)でした。前年同期比(前の年の同じ期間と比べた増減の割合)の伸び率は、比べる元になる前年の四半期の水準によっても大きく変わります。また速報値は、連結の決算(10月22日に発表予定と会社が記載)の中身を先取りするものではありません。「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
edinet-yuho.json の candidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、ランキング基準日2026-10-13時点で20銘柄)は、ディスコの登場を2026年10月5日と10月7日の2回と数えています。当サイトのランキングデータ jp-rankings.json の更新履歴で確かめると、10月5日は値上がりランキング、10月7日は値下がりランキングと出来高急増ランキングに入っていました(その前の9月29日にも値上がり・出来高急増のランキングに入っていましたが、候補データが数える範囲の外です)。ランキングに最後に登場した日から中3営業日以上あいていること(「熱が残っているうちは書かない」ルール。同データの cooled: true)と、有価証券報告書の本文が取得できていることを満たす候補の中から、時価総額の大きい順に選びました(時価総額の金額や順位は本文に書きません)。ディスコより時価総額の大きい候補が1社ありましたが、当サイトの10月1日のニュース記事で株価の動きを取り上げていたため、ニュースと重ならないよう見送りました。ディスコについては、本レーンでの既刊記事・この会社が主役の解説記事の既刊はありません(ls guide-*.html と guides.html を社名・証券コードで確認)。当サイトのニュース記事では、2026年6月24日の半導体株の記事の用語の説明の中で社名が出てくるだけで、主役として扱った記事はなく、直近14日のニュース記事には登場していません。ランキングに登場した理由(なぜ値上がりや値下がりがあったか)は、一次情報で確かめられないため書きません。1️⃣ ディスコはどんな会社か
ディスコは、有報の「沿革」によると、1937年5月に工業用の砥石(といし:ものを削ったり磨いたりするための、硬い粒を固めた道具)を製造・販売する目的で「第一製砥所」(個人営業)として創業し、1977年4月に今の「株式会社ディスコ」に社名を変えました。本社は東京都大田区にあり、グループは会社本体と子会社23社、関連会社2社(子会社=ディスコが議決権の過半数を持つなどして経営を支配している会社、関連会社=支配まではしないが経営に大きな影響を与えている会社)でできています。連結の従業員数は5,547人(2026年3月31日現在)です(出典:有価証券報告書 第87期「沿革」「事業の内容」「主要な経営指標等の推移」、2026-10-14確認)。
会社は経営方針で、自分たちの事業の範囲を「「切る」、「削る」、「磨く」という3つの技術領域」と書き、この3つから外れずに技術を提供し続けることを社会的な使命としています。事業は、装置(精密加工装置)と消耗品(精密加工ツール)の製造・販売、それに付随する保守・サービスです。会社は、装置と消耗品を組み合わせて最適な加工の条件を導く技術(アプリケーション技術)を事業の特徴に挙げ、顧客から加工する材料を預かって試しに加工してみる「テストカットと呼ぶ無償の加工検証」を、ビジネスモデルの入り口と説明しています(出典:同有報「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業の内容」)。主な製品は次のとおりです。
- 精密加工装置:ダイシングソー、レーザソー、グラインダ、ポリッシャなど
- 精密加工ツール(消耗品):ダイシングブレード、グラインディングホイール、ドライポリッシングホイール、砥石を応用した製品
ディスコの事業の区分(セグメント:会社が業績を管理・開示するときの事業の区分)は「精密加工システム事業」の1つだけです。そこで、製品の種類ごとの売上は、有報の注記「顧客との契約から生じる収益を分解した情報」から見ます。売上を顧客の所在地で分けた数字も、有報の「関連情報」に載っています(出典:同有報「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」〔以下「経営者による分析」と略します〕、連結財務諸表注記「セグメント情報等」「収益認識関係」)。
製品の種類ごとに前期と比べると、精密加工装置は約2,494億円から約2,739億円(+9.8%)、精密加工ツールは約859億円から約949億円(+10.6%)、その他は約579億円から約679億円(+17.3%)でした(増減の率は当サイトの計算)。「その他」の中身は、有報の注記には書かれていません。
顧客の所在地ごとに前期と比べると、台湾は約744億円から約1,173億円(+57.8%)、中国は約1,253億円から約1,349億円(+7.7%)、日本は約410億円から約456億円(+11.1%)、アジア(有報の区分)は約338億円から約441億円(+30.2%)に増えました。一方で、米州は約483億円から約349億円(−27.9%)、韓国は約423億円から約330億円(−21.9%)、欧州は約278億円から約268億円(−3.7%)に減りました(増減の率は当サイトの計算)。日本以外の顧客向けは全体の約89.6%です。また、1社(同じ企業グループに属する会社への売上を含む)への売上高が約482億円で、連結の売上高の11.0%を占めました。有報には相手先の社名が書かれていますが、この記事では社名を書きません(台湾の半導体メーカーです)。前期は、この相手先への売上が全体の10%未満だったため、有報に記載がありません(出典:同有報「経営者による分析」「関連情報」)。
2️⃣ 半導体の製造工程の中のどこにいるか
次にどれが来る・上がる・下がるという話ではなく、ディスコの装置と消耗品が、半導体をつくる工程のどこで使われているかを地図にして示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。ディスコは「半導体をつくる会社」ではなく、半導体や電子部品をつくる会社が工場で使う装置と、その装置で使う消耗品をつくる会社です。
ディスコが「削る・磨く・切る」の箱に立っている根拠は、会社自身の開示にあります。会社はリスクの項で、主に「半導体シリコンウェーハ加工用の半導体切断・研削装置や精密ダイヤモンド砥石」を製造・販売していると書いています。第87期の売上高のうち、装置(精密加工装置)は約62.7%、装置で使う消耗品(精密加工ツール)は約21.7%でした(当サイトの計算)。会社は第87期について、装置の出荷は高性能半導体向けの付加価値の高い製品を中心に好調で、「消耗品である精密加工ツールの出荷も顧客の設備稼働率等に連動して高水準の推移となりました。」と書いています(出典:有価証券報告書 第87期「事業等のリスク」「経営者による分析」・連結財務諸表注記「収益認識関係」、2026-10-14確認)。
工程の前後とのつながりも、開示に書かれています。
- 装置を使う側とのつながり:会社はリスクの項で、世界中の半導体メーカーや電子部品メーカー向けに製品を製造・販売しているため、顧客の設備投資や生産の動きの影響を受けると書いています。第87期は、1社への売上が連結の売上高の11.0%でした(出典:同有報「事業等のリスク」「関連情報」)。
- 最後の使い道とのつながり:会社は第87期の半導体の市場について、生成AIの需要の広がりを背景にデータセンター向けの投資が続いて広がり、先端ロジック(計算用の半導体)やHBMなどの高性能半導体向けの需要が高い水準だった一方、パソコン・スマートフォン向けは緩やかな回復、パワー半導体向けは電気自動車の需要の鈍化で低調だったと、用途ごとに違いがあったことを書いています(出典:同有報「経営者による分析」)。
- 支える側とのつながり:会社は、装置などの製品について主要な部品を戦略的に自社でつくっていると書き、原材料・部材の需給のひっ迫や災害による調達の難しさが生産に影響する可能性をリスクに挙げています(出典:同有報「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業等のリスク」)。
- 前後の工程にいる会社の種類:前(支える側)には、ウエハや砥石の原材料、装置の部材をつくる素材・部品のメーカーがあります。後ろには、装置と消耗品を使って半導体や電子部品をつくるメーカー、さらにその先に、サーバーやパソコン、スマートフォン、自動車の部品をつくる会社や、データセンターを運営する会社がいます。
このつながりが変わる・弱まる条件も、会社自身が有報で挙げています。半導体の市況については、「ダウンサイクルや予期せぬ市場変動によってお客さまが設備投資凍結や減産などを行った場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。」と書いています(ダウンサイクル=市況が悪くなる局面)。技術については、「精密ダイヤモンド砥石に替わる加工技術が誕生した場合、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。」と書き、砥石では切るのが難しい素材向けなどに、レーザやプラズマ(電気でガスを高いエネルギーの状態にしたもの)を使う加工技術の開発を進めているとしています(出典:有価証券報告書「事業等のリスク」、2026-10-14確認)。
3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事
各行に、クリックして確かめられる出典を付けた事実の年表です。原因を決めつけたり物語にしたりはせず、確認できる出来事だけを並べています。この年表は、有価証券報告書の「沿革」などと、TDnetの適時開示だけで作っています(Wikipediaなどの二次情報は使っていません)。
| 年月 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1937年5月 | 工業用砥石を製造、販売する目的で、第一製砥所(個人営業)を創業 | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 1940年3月・1958年11月 | 有限会社第一製砥所に組織を変更(1940年)。株式会社第一製砥所に改組(1958年) | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 1969年12月 | 米国の販売拠点を設立 | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 1970年9月 | 精密切断装置を開発、販売を開始 | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 1975年2月 | 半導体用のダイシングソーを開発、販売を開始。精密ダイヤモンド工具へ進出 | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 1977年4月 | 「株式会社ディスコ」に商号を変更 | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 1980年1月 | 精密平面研削装置を開発、販売を開始 | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 1989年10月 | 日本証券業協会から店頭売買銘柄としての登録の承認を受け、株式を公開 | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 1999年12月 | 東京証券取引所の市場第一部に株式を上場 | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 2002年8月 | 精密切断装置として、レーザソーを開発、販売を開始 | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 2003年11月 | 全自動のグラインダ/ポリッシャ装置を開発、販売を開始 | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 2004年11月 | 本社と研究開発の拠点として、東京都大田区大森北に本社・R&Dセンターを新設し、移転 | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 2010年〜2021年 | 広島事業所(呉工場・桑畑工場)と長野県茅野市の茅野工場で、生産の建物を順に建設。2018年4月に長野事業所を開設 | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 2022年3月・4月 | 羽田R&Dセンターを開設(3月)。東京証券取引所の市場区分の見直しで、市場第一部からプライム市場に移行(4月) | 有価証券報告書 第87期「沿革」(2026-10-14確認) |
| 2023年4月 | 普通株式1株を3株に分ける株式分割を実施(4月1日付) | 有価証券報告書 第87期「主要な経営指標等の推移」の注記(2026-10-14確認) |
| 2025年9月・2026年2月 | 羽田R&Dセンターの研究開発設備などの新設に着手(2025年9月・完了予定2027年12月)。広島県呉市の郷原工場で、精密加工装置・精密加工ツールの生産設備の新設に着手(2026年2月・完了予定2028年4月) | 有価証券報告書 第87期「設備の新設、除却等の計画」(2026-10-14確認) |
| 2026年6月 | 有価証券報告書 第87期を提出(6月16日) | EDINET 有価証券報告書 第87期(2026-10-14確認) |
| 2026年10月 | 2027年3月期 第2四半期(2026年7〜9月)の単体の売上高と出荷額の速報値を開示(10月6日) | 適時開示「2027年3月期 第2四半期 個別売上高および出荷額の速報値に関するお知らせ」(2026-10-06開示、2026-10-14確認) |
※TDnet(適時開示)のPDFは保管期間(約1か月〜1か月半)を過ぎるとリンクが切れます。その場合は会社のIRサイトの適時開示一覧でご確認ください。店頭売買銘柄(店頭登録)=当時の、証券取引所の外で売り買いされる株の登録の仕組みです。株式分割=1株をいくつかの株に分けて、株数を増やすことです。会社の価値そのものは変わらず、1株当たりの利益や配当の金額は、分けた分だけ小さく見えます。研削・平面研削=砥石でものの面を削って、平らにしたり薄くしたりすることです。
4️⃣ 直近の決算の数字(有価証券報告書 第87期と10月の速報値)
有価証券報告書 第87期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月16日提出)の連結の数字です(日本基準)。ディスコは3月決算で、その後の四半期の決算短信(2026年4〜6月期)は、上の注意書きのとおり当サイトでは取得できていません。確認日は2026-10-14です。
| 指標(連結・日本基準) | 第87期(2025/4〜2026/3) | 第86期(前期・2024/4〜2025/3) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 出荷額(会社の記載) | 約4,428億円 | — | +10.3% |
| 売上高 | 約4,368億円 | 約3,933億円 | +11.1% |
| 売上総利益 | 約3,064億円 | 約2,775億円 | +10.4% |
| 販売費及び一般管理費 | 約1,214億円 | 約1,107億円 | +9.7% |
| 営業利益 | 約1,849億円 | 約1,668億円 | +10.9% |
| 営業利益率 | 42.3% | 42.4% | — |
| 経常利益 | 約1,849億円 | 約1,689億円 | +9.5% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 約1,355億円 | 約1,238億円 | +9.4% |
| 1株当たり当期純利益(EPS) | 1,249.84円 | 1,143.26円 | — |
| 自己資本利益率(ROE) | 25.1% | 27.6% | — |
| 自己資本比率 | 78.9% | 75.1% | — |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 約1,335億円 | 約1,203億円 | +10.9% |
| 研究開発費 | 約341億円 | 約316億円 | +7.8% |
| 1株当たり配当額(ディスコ単体の数字) | 505円 | 413円 | +92円 |
| 配当性向(ディスコ単体の数字) | 41.6% | 38.6% | — |
出典:有価証券報告書 第87期「主要な経営指標等の推移」「経営者による分析」「連結損益及び包括利益計算書」「研究開発活動」(2026-06-16提出)。億円の数字は有報の百万円から当サイトが計算したもの(億円未満切り捨て)。出荷額・売上高・営業利益・経常利益・当期純利益・営業活動によるキャッシュ・フローの増減の率と、第87期の営業利益率は、有報の「経営者による分析」の記載。そのほかの増減の率と第86期の営業利益率は、当サイトが有報の数字から計算したもの。出荷額は会社の記載の数字で、前期の金額は記載の増減率だけを載せています。第87期の1株当たり配当額505円は、(中間配当=期の途中で払う配当、期末配当=期末の後に払う配当)中間配当129円と、定時株主総会(有報の提出時点で2026年6月24日に開催予定と記載)の決議事項とされた期末配当376円の合計です。確認日:2026-10-14。
会社は第87期について、「通期の出荷額、売上高ともに6期連続で過去最高を更新しました。」と書いています。利益については、「製品および用途構成の変化に伴う僅かなGP率低下や人件費・研究開発費の増加があったものの」、売上高の増加と付加価値の高い製品の収益への寄与で増収増益になったと説明しています。売上総利益の売上高に対する割合は、前期の約70.6%から約70.1%になりました(当サイトの計算)。経常利益の伸び(+9.5%)が営業利益の伸び(+10.9%)より小さいのは、本業以外の損益で、前期は為替差益 約8億円(為替差益・差損=外貨建ての取引やお金を円に直したときに出る、もうけや損)だったのが、第87期は為替差損 約12億円になったことなどが、損益計算書の項目から読み取れます(当サイトが同有報「連結損益及び包括利益計算書」の項目を比べたもので、会社がこの差の理由として書いているものではありません)。
5期の数字では、売上高は約2,537億円(第83期)から約4,368億円(第87期)まで毎期増えました。親会社株主に帰属する当期純利益も、約662億円、約828億円、約842億円、約1,238億円、約1,355億円と毎期増えています。ただし増え方は年によって違い、第85期(2024年3月期)は前の期より約13億円の増加、第86期(2025年3月期)は約396億円の増加でした(出典:同有報「主要な経営指標等の推移」、増加の額は当サイトの計算)。この記事で読んだ範囲の有報には、第86期より前の年ごとの増減の理由の説明はないため、理由は書きません。
株主への還元について、会社は「配当による還元」を基本方針としています。有報の「配当政策」では、配当の基本を「連結半期純利益の25%」とし、年度末の時点で、配当と税金を払ったあとの現預金が、技術の購入や設備の拡張などに必要な予定の資金を上回った場合は、余った資金の3分の1をめどに配当として上乗せすると書いています(一度に全部を返すと、翌年に大きな減配になるのを防ぐため、と説明しています)。第87期の自己株式の取得は、単元未満株式の買取りによる26株だけでした(出典:同有報「配当政策」「経営者による分析」「自己株式の取得等の状況」)。
お金の使い方では、第87期の設備投資の総額は約327億円で、主なものは郷原工場の建設の着手金 約103億円と、羽田R&Dセンターの建設の着手金 約36億円でした。有報の設備の新設計画には、郷原工場(投資予定の総額 約359億円・完了予定2028年4月)と羽田R&Dセンター(同 約128億円・完了予定2027年12月)が載っていて、会社は主な目的を事業継続の対応力の強化と合理化の投資とし、完成後は研究開発の能力と生産の能力が増強されると書いています。投資活動によるキャッシュ・フローは約1,357億円の支出で、会社は主な理由に定期預金の預け入れと工場用の土地・建物などの取得を挙げています。この結果、営業活動と投資活動のキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは約22億円のマイナスになり、会社はこれに定期預金の預け入れ1,000億円などが影響したと書いています(出典:同有報「設備投資等の概要」「設備の新設、除却等の計画」「経営者による分析」)。
2026年10月6日の速報値(ディスコ単体・監査前)
ディスコは、四半期ごとに単体の売上高と出荷額がわかった時点で、速報値を任意に開示しています。2026年10月6日の開示によると、2027年3月期(2026年度)の単体の数字は次のとおりです。これはディスコ1社だけの単体の数字で、ここまでの表の連結の数字とは範囲が違います。また会社は、監査が終わる前の数字で、実際の業績は速報値と異なる可能性があると書いています(出典:適時開示「2027年3月期 第2四半期 個別売上高および出荷額の速報値に関するお知らせ」、2026-10-06開示、2026-10-14確認)。
| 単体の数字(億円・会社の記載) | 4〜6月(第1四半期) | 7〜9月(第2四半期) | 4〜9月(上期) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 950(前年同期比+26.0%) | 1,185(同+38.9%) | 2,136(同+32.8%) |
| 出荷額 | 1,165(同+25.3%) | 1,239(同+60.0%) | 2,405(同+41.1%) |
| (参考)前年の売上高 | 754 | 853 | 1,608 |
| (参考)前年の出荷額 | 930 | 774 | 1,705 |
会社は7〜9月の出荷額について、「生成AI向けを中心に、精密加工装置、精密加工ツールともに出荷が高水準で推移したことから、四半期最高の出荷額となりました。」と書いています。上期の単体の売上高2,136億円は、会社が直近に公表していた上期の単体の業績予想(売上高2,011億円)に対して106.2%だったとも記しています(会社の記載の紹介で、当サイトの予測ではありません)。会社はこの開示で、第2四半期の決算の発表を10月22日に行う予定と書いています。なお、前年の7〜9月の出荷額(774億円)は前年の4〜6月(930億円)より少ない水準で、前年同期比の伸び率(+60.0%)は、この比べる元の水準にも左右されます(上の表の参考の行)。速報値は単体・監査前の数字で、連結の決算の数字や、会社がこれから示す見通しを先取りするものではありません。当サイトは次の決算の数字を予想しません。
5️⃣ 会社自身が挙げているリスク
以下は有価証券報告書(第87期)の「事業等のリスク」から、会社自身が挙げているものの要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も大事にしている情報です。会社は8つの項目を挙げていて、ここではそのうち5つを紹介します。原文はEDINET掲載の有価証券報告書でご確認ください。
- ①半導体市場などの変動:世界中の半導体メーカーや電子部品メーカー向けに製品を売っているため、顧客の設備投資や生産の動きの影響を受け、とくに半導体はシリコンサイクルの影響を受けると書いています。そのうえで「ダウンサイクルや予期せぬ市場変動によってお客さまが設備投資凍結や減産などを行った場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。」としています。対策として、独自の管理会計(外部への報告ではなく、会社の中で経営の判断に使うための会計の仕組み)と、PIMと呼ぶ全社的な業務の改善活動の取り組みを挙げています。
- ②新しい技術の登場:主にウエハを加工する切断・研削の装置や精密ダイヤモンド砥石を売っているため、「精密ダイヤモンド砥石に替わる加工技術が誕生した場合、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。」と書いています。砥石では切るのが難しい素材向けなどに、レーザやプラズマを使う加工技術の開発を進めているとしています。
- ③災害などの発生:東京都大田区に本社・R&Dセンターと羽田R&Dセンター、広島県と長野県に生産拠点があり、これらの地区で大規模な災害や感染症の流行が起きた場合、本社の機能や製品の生産に影響が出る可能性を挙げています。対策として、事業の継続の管理を専門に扱う部署を置き、本社や各生産拠点で免震構造(地震の揺れを建物に伝えにくくするつくり)を採用し、すべての精密加工ツール・精密加工装置を免震構造の建物で生産できる体制を整えていると書いています。
- ④為替の変動:国内で製造し、世界中の半導体メーカー・電子部品メーカーへ輸出していて、地域や顧客によっては米ドルなどの外貨建ての支払いを求められるため、「為替変動は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。」と書いています。為替の動きが業績に与える影響(為替感応度)を分析していると説明しています。
- ⑤情報セキュリティ:サイバー攻撃や情報漏えいが起きた場合、「競争力や技術的優位性の毀損、製品の生産・出荷を含む業務の停止、社会的信用の低下、損害賠償の発生等により、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。」と書いています。取締役会に常設の情報セキュリティ委員会を置いているとしています。
出典:有価証券報告書 第87期「事業等のリスク」(2026-06-16提出、2026-10-14確認)。原文のリスクには、このほか、原材料・部材の調達、環境規制、その他(世界や各地域の経済情勢、戦争・テロ、金融・資本市場、法令や政府による規制、製品の欠陥、知的財産権など)が並んでいます。なお会社は、受注の実績を有報に載せていません。その理由として、短い期間の受注の動きは顧客の投資の動きで大きく変わる傾向があり、中長期の業績を見通す指標としてふさわしいとは限らないため、と説明しています(出典:同有報「経営者による分析」)。受注=顧客から注文を受けることです。
6️⃣ 上がる材料/下がる材料
ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。どちらが重いかという重み付けはしません。
以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で。投資の判断はご自身の責任で行ってください。
※ 材料の数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来の予測は行っていません。棚卸資産=売るために持っている商品や製品、つくりかけの品物、材料などのことです。
7️⃣ これから何を見れば分かるか
次の決算(2027年3月期 第2四半期)の発表は、2026年10月22日の予定と会社は10月6日の開示に書いています(当サイトの決算予定データ earnings-calendar.json には載っていません)。日程が変わることもあるので、会社のIRサイトでもご確認ください。この記事で挙げた材料がその後どうなったかは、次の開示で確かめられます。
- 連結の出荷額と売上高:第87期は出荷額 約4,428億円・売上高 約4,368億円。10月6日の速報値は単体の数字なので、連結の決算短信で、連結の数字に同じ動きが表れているかを確かめられます
- 装置と消耗品の売上の内訳:第87期は精密加工装置 約2,739億円・精密加工ツール 約949億円。装置の動きと、顧客の工場の稼働に連動すると会社が書く消耗品の動きの違い
- 顧客の所在地と、1社への売上の割合:第87期は中国 約30.9%・台湾 約26.9%・1社が11.0%。所在地ごとの数字は有報や会社の決算の資料で確かめられます
- 利益率:第87期は営業利益率42.3%・売上総利益の割合 約70.1%。会社が挙げた「GP率低下」や人件費・研究開発費の増加がその後どうなっているか
- 設備の新設計画の進み方と、配当:郷原工場(完了予定2028年4月)・羽田R&Dセンター(同2027年12月)の進み方と、配当政策(連結半期純利益の25%+余った資金の3分の1をめど)にもとづく配当の金額
有価証券報告書はEDINET(金融庁の開示システム)、適時開示はTDnetで、どちらも無料で見られます。決算短信と有価証券報告書の違いはこちらの解説にまとめています。
8️⃣ まとめ
結論は出しません。この記事で確かめた公開情報をふまえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①出荷額と売上高(10月6日の単体の速報値の動きが、連結の数字にどう表れるか)、②装置と消耗品の内訳と、顧客の所在地の偏り(中国・台湾の割合と、1社への売上の割合)、③利益率(売上総利益の割合と営業利益率、費用の伸び)。どう評価するかは、読者ご自身の判断に委ねられます。
🔗 関連記事
⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事は金融庁の開示システム(EDINET)に提出された有価証券報告書と、東京証券取引所の適時開示(TDnet)などの一次情報に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。目標株価の提示、将来の業績・株価の予測、株価水準に関する評価的な断定は行っていません。会社の方針・目標・計画・見方として引用した内容は、あくまで「会社がそのように公表している」という事実の紹介です。文中に出てくる会社の種類は、産業の構造を説明するための一般名で、特定の会社の株式をおすすめするものではありません。投資には元本割れのリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。