🔬 Applied Materials(AMAT)を数字で見る|半導体製造装置世界最大手をSEC開示資料で確認
「数字で見る、話題の企業」シリーズ第6回は、半導体製造装置の世界最大手Applied Materials, Inc.(ティッカー:AMAT)を取り上げます。このシリーズの狙いは「この会社の将来性を自分で見積もれる状態」を作ることであり、上がるか下がるかの結論は書きません。会社が米証券取引委員会(SEC)に提出した一次情報——年次報告書(Form 10-K)・四半期報告書(Form 10-Q)・臨時報告書(Form 8-K)——から、①事業の中身 ②産業のつながり ③歴史 ④直近決算の数字 ⑤会社自身が認めているリスク ⑥上がる材料・下がる材料を対で並べ、最後に⑦次に何を見ればよいかを整理します。
- Applied Materialsは半導体チップを作るための製造装置(半導体製造の工程を担う機械)を開発・製造・販売する会社。2026年度第3四半期(2026年4月27日〜7月26日)の売上高は91.15億ドル(前年同期比+25%)で、会社は「記録的な売上」と説明している
- 半導体製造装置の中でもDRAM(記憶用半導体の一種)向け売上の比率が、Semiconductor Systems(半導体製造装置)事業の中で前年同期の22%から26%に上昇した
- 2026年2月、対中国の輸出管理コンプライアンス(輸出の際に守るべき規則を守っているかどうか)に関する調査について米商務省の部局(BIS)と和解し、2億5,300万ドルを支払ったことを会社自身が開示している
- 「上がる材料」「下がる材料」を各5件ずつ、出典付きで対に並べます。買い時かどうかの結論は書きません
edinet-yuho.jsonのcandidates[]=直近14日の日本株ランキング〈値上がり・値下がり・出来高急増〉に2回以上登場した銘柄、2026-10-02時点で15銘柄)を確認したところ、最終登場日がいずれも2026年9月30日〜10月2日と直近すぎ、「ランキング入りの直近日から中3営業日あいていない銘柄を外す」規定(熱が残っているうちは書かない)を満たす銘柄が1社もありませんでした(最も古い最終登場は近鉄グループホールディングスの9月30日で、2026年10月3日時点の経過営業日数は2日のみ)。日本株側に候補が無い週のみ海外へ回してよいという規定に従い、今週は海外株としました。海外株は①earnings-calendar.jsonのusで決算発表日が2営業日前〜14日前の企業を確認しましたが該当なし(直近はBroadcomの9月上旬発表で期間外)、②直近15〜60日(2026年8月4日〜9月18日)のguide-news-*.htmlで単独の主役として扱われた海外企業を確認したところ、Applied Materials(8月14日公開記事)とModerna(8月26日公開記事、Merckとの共同開発)が候補になりました。本レーンでの90日以内の既刊・個別deep-dive記事の既刊はいずれもなし(ls guide-*.htmlとguides.htmlを社名・ティッカーでgrepして確認)。時価総額はWebSearchで確認(2026-10-03時点)し、候補の中で時価総額が最大だったApplied Materialsを選定しました(本文には時価総額の金額を書きません)。data.sec.gov・www.sec.gov)には当サイトのクラウド実行環境から安定して到達できました。本記事の数字は、年次報告書(Form 10-K、2025年12月12日提出、対象は2025年10月26日に終了した2025年度)、四半期報告書(Form 10-Q、2026年8月20日提出、対象は2026年7月26日に終了した2026年度第3四半期)、臨時報告書(Form 8-K・決算発表資料、2026年8月13日提出)の原文に基づきます。確認日はいずれも2026-10-03です。1️⃣ Applied Materialsはどんな会社か
Applied Materials, Inc.は「半導体を作るうえで必要な、重要なウエハー製造装置の設計・開発・生産・保守の専門会社」であり、会社自身は「世界のほぼすべての半導体を作るために使われている材料工学ソリューションのリーダー」と説明しています(出典:Form 10-K「Item 1: Business」、2025年12月12日提出、2026-10-03確認)。1967年に設立されたデラウェア州法人で、会計年度は10月末に近い日曜日に終わります(同出典)。会社は2つの報告セグメントを開示しています:Semiconductor Systems(半導体製造装置本体の開発・製造・販売)とApplied Global Services(AGS)(装置の保守・部品供給・アップグレード等のサービス事業)。かつて独立区分だったディスプレイ関連事業は、2026年度第1四半期以降「Other」区分に含められています(出典:同10-Kおよび後述8-K)。
2026年度第3四半期(2026年4月27日〜7月26日)のセグメント別売上高は次のとおりです(出典:Form 8-K Exhibit 99.1「決算発表資料」)。
主力のSemiconductor Systems事業(売上の77.2%)の内訳は、用途別にFoundry, logic and other(受託生産・ロジック半導体向け等)67%・DRAM(記憶用半導体の一種)26%・Flash memory(NAND型の記憶用半導体)7%でした。前年同期はFoundry等69%・DRAM22%・Flash9%だったため、DRAM向けの比率が22%から26%に上昇しています(出典:同Form 8-K Exhibit 99.1)。会社は、AI(人工知能)関連の需要が「業界にとって重要な需要の押し上げ要因」になっていると説明しています(出典:同10-K「Item 1A: Risk Factors」)。
2️⃣ どのつながりの中にいるか
次にこれが来る・上がる・下がるという話ではなく、Applied Materialsが半導体の産業全体のどの工程に立っているかを地図として示します。答え(次はどれか)は渡しません。地図だけを渡します。
Applied Materialsが「半導体製造装置メーカー」の箱に立っている根拠は、会社自身の事業内容の開示にあります。会社は「半導体チップを製造するために使われる幅広い装置を設計・開発・製造・販売している」と説明しており(出典:Form 10-K「Item 1: Business」)、川上のシリコンウエハー・特殊ガス・薬液等の材料・部材メーカーから技術・部材の供給を受けて装置を作り、川下の半導体メーカー(受託生産を専門に行う会社・記憶用半導体を作る会社等)に装置を販売する立場にあります。さらに川下には、その半導体を使ってAIサーバーやデータセンター機器、スマートフォン等を作る完成品メーカーが続きます(出典:同10-K「Item 1: Business」の顧客説明部分)。
このつながりが切れる(弱まる)条件も、会社自身が四半期報告書(Form 10-Q)のリスク開示で明記しています。「AI(人工知能)に関連する投資のタイミングと金額は大きく変化する可能性があり、それに関連する製品・サービスの需要を予測することは困難である」(出典:Form 10-Q「Item 1A: Risk Factors」、2026-10-03確認)。つまり、川下の半導体メーカーがAI投資のペースを変えれば、この工程間のつながりの強さそのものが変わり得るということです。
3️⃣ 歴史年表——事実で確認できる出来事
各行に出典を付した事実の年表です。原因の断定や物語化は避け、確認できる出来事のみを並べています。会社自身のSEC提出資料に記載のない創業年・製品史等は、出典欄に明記のうえWikipedia(英語版)を使用しています(本シリーズの運用ルールにより、歴史の年表のみに限定。数字・リスクには使用していません)。
| 年月 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1967年11月 | Michael A. McNeillyらにより設立。デラウェア州法人として登記 | Form 10-K「Item 1: Business」(設立年。設立日11月10日と創業者名はen.wikipedia.org「Applied Materials」、2026-10-03確認) |
| 1972年 | NASDAQに株式を上場 | en.wikipedia.org「Applied Materials」(2026-10-03確認) |
| 1987年 | 複数の処理チャンバーを1台に統合した化学気相成長(CVD)装置「Precision 5000」を発表。1993年にスミソニアン博物館の常設コレクションに収蔵された | 同上 |
| 1996年11月 | イスラエルの半導体検査装置会社2社(Opal Technologies・Orbot Instruments)を合計2.85億ドルで買収 | 同上 |
| 2011年5月 | イオン注入装置メーカーVarian Semiconductorの買収を発表 | 同上 |
| 2013年9月〜2015年4月 | 東京エレクトロンとの経営統合計画(新会社名「Eteris」)を発表したが、独占禁止法上の懸念により2015年4月に計画を撤回 | 同上 |
| 2019年〜2021年3月 | 国際電気(Kokusai Electric、旧日立グループ系の半導体製造装置メーカー)をKKRから22億ドルで買収する計画を発表したが、中国当局の承認遅延を理由に2021年3月に計画を終了 | 同上 |
| 2025年12月 | 2025年10月26日に終了した会計年度(2025年度)の年次報告書(Form 10-K)をSECに提出 | Form 10-K(2025-12-12提出、2026-10-03確認) |
| 2026年2月11日 | 対中国の輸出管理コンプライアンス(中国向け顧客への出荷に関する輸出規制の順守状況)に関する調査について、米商務省産業安全保障局(BIS)と和解。2億5,300万ドルを支払うことに合意し、2026年度第2四半期中に全額を支払った | Form 10-Q「Note: Legal Matters」(2026-08-20提出、2026-10-03確認) |
| 2026年8月13日 | 2026年度第3四半期(2026年4月27日〜7月26日)決算を発表。売上高・非GAAP基準EPSとも記録的な水準と説明 | Form 8-K Exhibit 99.1(2026-08-13提出、2026-10-03確認) |
4️⃣ 直近決算の数字(2026年度第3四半期)
2026年度第3四半期(自2026年4月27日至2026年7月26日、2026年8月13日発表)の数字です。数値はすべて同資料に基づき、確認日は2026-10-03です。
| 指標 | 2026年度Q3 | 2025年度Q3(前年同期) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 91.15億ドル | 73.02億ドル | +25% |
| GAAP基準 粗利率 | 50.3% | 48.8% | +1.5ポイント |
| GAAP基準 営業利益率 | 33.7% | 30.6% | +3.1ポイント |
| GAAP基準 純利益 | 25.38億ドル | 17.79億ドル | +43% |
| GAAP基準 希薄化後EPS(1株あたり利益) | 3.17ドル | 2.22ドル | +43% |
| 非GAAP基準 希薄化後EPS | 3.50ドル | 2.48ドル | +41% |
出典:Form 8-K Exhibit 99.1「Applied Materials Announces Third Quarter 2026 Results」(2026-08-13発表)。非GAAP(会社独自の調整後)基準は、M&Aや構造改革費用等を除いた会社独自の集計方法で、GAAP(米国で一般に認められた会計基準)との対比として会社自身が開示しているものです。確認日:2026-10-03。
会社の説明では、事業からのキャッシュフローは記録的な30.4億ドルとなり、株主還元として自社株買い4.40億ドル・配当4.20億ドルの合計8.6億ドルを実施しました。CFOのBrice Hill氏は「13期連続で前年比の粗利率改善を達成した」とコメントしています(出典:同Form 8-K Exhibit 99.1)。
5️⃣ 会社自身が挙げているリスク
以下は会社がSECに提出した四半期報告書(Form 10-Q)および年次報告書(Form 10-K)の「Item 1A: Risk Factors」で会社自身が開示しているリスク要因の要旨です。書き手の推測ではなく会社の自己申告である点が、このシリーズで最も重視する情報です。原文はSEC EDGARのApplied Materials提出資料一覧でご確認いただけます。
- ①AI関連需要の予測の難しさ:半導体業界は歴史的に周期的(好不況の波がある)で需要の変動が大きく、AI関連の投資のタイミングと金額は大きく変化する可能性があり、関連需要の予測は困難であると明記。需要の変化に効果的に対応できない場合、業績に悪影響が及ぶ可能性があるとしています。
- ②顧客基盤の高い集中:限られた数の顧客が売上の大部分を占め、顧客基盤は地理的にも中国・台湾・韓国に集中していると明記。単一の顧客の行動や、特定国向けの輸出規制が、業績の変動性を高める可能性があるとしています。
- ③対中国の輸出管理・政府の調査に関するリスク:2026年2月11日、対中国の輸出管理コンプライアンスに関する調査について米商務省産業安全保障局(BIS)と和解し、2億5,300万ドルを支払い、内部監査の実施や輸出コンプライアンス研修の継続等が和解条件として課されたと明記。和解条件を遵守できない場合、一時停止されている「denial order(輸出禁止命令)」の停止が取り消され、米国外への一部製品の輸出が禁止される可能性があるとしています。
- ④グローバル事業に伴うリスク:2026年度第3四半期の売上高の約85%が米国外の顧客向けであり、各国の政治・社会情勢、関税・貿易政策の変更、地政学的混乱等の影響を受ける可能性があると明記。
- ⑤業界の競争の激しさ:半導体製造装置業界は競争が激しく技術変化が速いため、新技術への対応が遅れれば事業・業績に重大な悪影響が及ぶ可能性があると明記。
出典:Form 10-Q「Item 1A: Risk Factors」(2026-08-20提出)・Form 10-K「Item 1A: Risk Factors」(2025-12-12提出)。確認日:2026-10-03。上記はリスク要因の一部を要約したもので、原文にはこの他にも多数の項目(サイバーセキュリティ・知的財産・人材確保・環境規制等)が記載されています。
6️⃣ 上がる材料/下がる材料
ここがこの記事の主役です。会社の開示で確認できる事実だけを左右に対で並べます。重み付けはしません。「以上が、いま公開情報から拾える材料です。どう見るかはご自身で」という位置づけです。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。
※ 各材料の件数は左右5件ずつで揃えています。上記は開示情報の要約であり、どちらが重要かの判断や将来予測は行っていません。投資の判断は、かならずご自身の責任で行ってください。
7️⃣ これから何を見れば分かるか
次の決算発表(2026年度第4四半期・通期)は、過去の発表パターン(2025年度第4四半期・通期決算は2025年11月13日発表、出典:2025-11-13提出のForm 8-K)から2026年11月中旬ごろになると見込まれます(あくまで過去の発表時期のパターンであり、2026-10-03時点で会社が正式発表した日程ではありません)。この記事で挙げた材料がその後どう推移したかは、次のように確認できます。
- 会社公表の2026年度第4四半期見通し(売上高102.5億ドル・非GAAP EPS 4.02ドル)に対する実績→次回のForm 8-K決算発表資料
- DRAM向け売上比率(26%)がどう変化するか→同上「セグメント情報」
- BISとの和解条件(内部監査等)の遵守状況→次回Form 10-K・10-Qの「Legal Matters」
- 「Other」区分の営業損益の推移→次回決算のセグメント情報
- CFOが「13期連続」と説明した前年比の粗利率改善が、次回も続いたかどうか→次回決算発表資料
いずれもSEC EDGAR(米証券取引委員会の開示システム)および会社のIRサイトで無料で確認できます。
8️⃣ まとめ
結論は出しません。この記事で確認した公開情報を踏まえ、次の決算・開示で見るべき指標はこの3つです。①会社公表の2026年度第4四半期見通し(売上高102.5億ドル・非GAAP EPS 4.02ドル)に対する進捗、②Semiconductor Systems事業内のDRAM向け売上比率がどう変化するか、③対中国の輸出管理コンプライアンス(BISとの和解条件)の遵守状況がどうなるか。どう評価するかは、読者ご自身の投資判断に委ねられます。
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