🧪 AIシグナル研究日誌 #105
RSI売られすぎ×逆張りロング——「値ごろ感」は本物か?
RSI≤30(売られすぎ)で発火した逆張りロング N=407件 を反実仮想検証。
全体勝率 50.4%、期待値 +0.263R、Wilson 95%CI [45.5%〜55.2%] → CI下限が損益分岐43%を上回り ✅通過A。
一方、全逆張りロング参照ベース(N=1,395)の勝率は 45.3%(CI [42.7%〜47.9%])で、RSI売られすぎ条件が勝率を押し上げる傾向がみられる(ただし両者の信頼区間は一部重なる)。
ただし 上昇トレンド中は65.5%(+0.793R) と突出する一方、JPYクロスは37.5%(損益分岐43%を下回る) という非対称性が存在。前向き観測ではCI全区間プラス(蓄積中)。
① 仮説と事前合否基準
「RSI(相対力指数)が30を下回ると、教科書的には売られすぎのサインとされる。このとき発火する逆張りロングは、RSIが売られすぎ圏にない逆張りロングよりも有意に高い勝率・期待値を示すか?」
直感的には「RSI30割れ=底値感」と結びつけやすい。しかし、下落中の銘柄はRSIが30を長期間下回り続けることもある。「売られすぎ」が「反発」を意味するとは限らない。本稿では signals-log の反実仮想検証でこの問いに答える。
主仮説 PASS 条件:
・rsi_band=os × reversal_long=True のWilson 95%CI 下限 > 43%(損益分岐)
・かつ N ≥ 30
失敗基準:上記いずれか未達、または CI が損益分岐43%を跨ぐ
② 発火条件チャート図解
図1 RSI売られすぎ(≤30)での逆張りロング発火の概念チャート。RSIが30ラインを割り込んだ局面で逆張りロングシグナルが発火(オレンジ枠)。発火後の反発は保証されないが、本検証(過去データ)では確率的な優位性がみられた。
図2 各条件での逆張りロング勝率比較。RSI非売られすぎの逆張り(43.2%)はベース(43.1%)とほぼ同等だが、RSI売られすぎ(50.4%)は相対的に高い。上昇トレンドとの組み合わせで65.5%まで上昇する一方、JPYクロスでは37.5%と損益分岐を下回る。
③ 反実仮想検証の結果
対象:signals-log.json の決済済みシグナル(tp1/tp2/sl)4,583件(1d拡張ユニバースを除く)。
rsi_band=os × reversal_long=True(N=407)
勝率 50.4% / 期待値 +0.263R / Wilson 95%CI [45.5%〜55.2%]
CI下限 45.5% > 損益分岐 43% ✅ / N=407 ≥ 30 ✅
| 条件 | N | 勝率 | 期待値(R) | 95%CI(Wilson) | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| ベース(全決済) | 4,583 | 43.1% | +0.010 | — | — |
| 全reversalL(逆張りロング) | 1,395 | 45.3% | +0.086 | [42.7%〜47.9%] | — |
| reversalL × rsi_not_os | 988 | 43.2% | +0.013 | [40.2%〜46.3%] | △ベース並み |
| rsi_os × reversalL(主仮説) | 407 | 50.4% | +0.263 | [45.5%〜55.2%] | ✅通過A |
注目すべきは対照群との差だ。同じ逆張りロングでも、RSIが売られすぎ圏(≤30)にあるケースとそうでないケースでは、勝率・期待値に差がみられる。RSI非売られすぎの逆張りロング(43.2%)はベース(43.1%)とほぼ変わらず、RSIが売られすぎ圏に達していることが逆張り買いの「質」を左右している可能性がある。
④ 交絡解析:トレンド・足・銘柄群
トレンド環境別
| トレンド | N | 勝率 | 期待値(R) | 95%CI |
|---|---|---|---|---|
| 上昇トレンド | 87 | 65.5% | +0.793 | [55.1%〜74.7%] |
| 中立・もみあい | 159 | 46.5% | +0.129 | [39.0%〜54.3%] |
| 下降トレンド | 160 | 45.6% | +0.097 | [38.1%〜53.4%] |
上昇トレンド中の売られすぎ逆張りは際立って高い勝率(65.5%)を示した。上昇トレンドの中で一時的に押された局面(RSI30割れ)は「押し目」として機能しやすい、という一般的な感覚と整合する。期待値+0.793Rは本検証の中では高い部類だが、N=87の探索的知見であり、同水準が今後も再現するとは限らない。
一方、下降トレンド中(45.6%・CI:[38.1%〜53.4%])や中立(46.5%・CI:[39.0%〜54.3%])は、CI下限が損益分岐43%を下回っており、有意な優位性は確認できない。RSI30割れが「底値」ではなく「下落途中の一通過点」に過ぎない場合が多いということかもしれない。
タイムフレーム別
| 足種 | N | 勝率 | 期待値(R) | 95%CI |
|---|---|---|---|---|
| 4時間足 | 140 | 53.6% | +0.375 | [45.3%〜61.6%] |
| 1時間足 | 254 | 46.9% | +0.140 | [40.8%〜53.0%] |
4時間足の方が1時間足より成績が良い傾向がみられた(ただし両者の信頼区間は大きく重なる)(53.6%対46.9%、EV+0.375対+0.140)。4時間足のCI下限は45.3%と損益分岐を上回るのに対し、1時間足はCI下限40.8%と損益分岐を下回る。ノイズの多い短期足では、RSI30割れが「本当の売られすぎ」を捉えにくい可能性がある。
銘柄グループ別
| グループ | N | 勝率 | 期待値(R) | 95%CI | 注目点 |
|---|---|---|---|---|---|
| その他FX | 103 | 57.3% | +0.505 | [47.6%〜66.4%] | ✅CI下限>43% |
| 株価指数 | 108 | 55.6% | +0.444 | [46.2%〜64.6%] | ✅CI下限>43% |
| メタル(金・銀) | 51 | 54.9% | +0.422 | [41.4%〜67.7%] | 🟡CI幅広い |
| 原油 | 16 | 62.5% | +0.688 | [38.6%〜81.5%] | N少・参考値 |
| JPYクロス | 104 | 37.5% | −0.188 | [28.8%〜47.1%] | ❌損益分岐以下 |
| BTC | 25 | 36.0% | −0.240 | [20.2%〜55.5%] | N少・参考値 |
N=104, 勝率37.5%(損益分岐43%を大きく下回る)、期待値−0.188R。円クロスペアでのRSI売られすぎ逆張り買いはシステム的に不利な可能性がある。日銀・介入リスクといったJPY固有の動きがRSIの「逆張りシグナル」を無効化している可能性が考えられる(探索的)。
その他FX(EURUSD・GBPUSD等)や株価指数では CI下限が損益分岐43%を上回っており、銘柄グループによって効果の強さが異なる可能性がある。JPYクロスとBTC(N=25で小サンプル)は例外的に逆効果を示しており、グループ別の扱い分けが重要だ。
⑤ 前向きトラッカー観察
図3 「売られすぎ逆張り買い」仮説の前向き期待値(平均R)推移の概念図。登録以来、CI帯が徐々に0から離れ、現在はCI全区間プラス(+0.04〜+0.39)に達している。昇格基準(N≥80かつCI下限>0・2回連続)の判定待ち。
前向きトラッカーに登録されている「売られすぎ逆張り買い(rsi_oversold_bounce・全足)」仮説の現在値:
FWD k=187 / N=359 / 勝率52% / 平均R +0.215 / CI [+0.04〜+0.39]
状態:🟡蓄積中(CI全区間プラスに到達・昇格基準N≥80・2回連続判定待ち)
前向きCI全区間がプラスに達しているという事実は、in-sample の知見がout-of-sampleでも一定程度再現されていることを示唆する。ただし昇格には2回連続でのチェックポイント通過が必要(恣意的な覗き見バイアスを防ぐ設計)。
⑥ 解釈と限界
なぜRSI売られすぎ逆張りは優位なのか(探索的な考察):RSI≤30は過去14本の中で相対的に強く売られた状態を意味する。上昇トレンド環境では、こうした局面が「一時的な押し目」として機能し、反発を捕らえやすい可能性がある。また、機械的にRSI30を売られすぎと判断するシステムが多いため、その水準付近で潜在的な買い手が集まりやすいという需給的な効果も考えられる。
JPYクロスでなぜ逆効果なのか(探索的):日本円は日銀の金融政策や為替介入によって急激な動きが生じやすい。RSIが30を割れるような局面は、介入や政策転換への恐怖心が強まった局面であることが多く、さらなる円安(USDJPY上昇)が続きやすいのかもしれない。あるいは、JPYクロスにおけるRSI計算の時間軸と実際の相場転換タイミングがずれている可能性もある。いずれも推測であり、今後の検証課題だ。
限界・交絡の可能性
- 複数のシグナルタイプ(rsi_oversold_bounce / bb_lower_touch)が混在している。シグナルタイプ別の分析は今後の課題
- 上昇トレンド中の優位性(65.5%)はN=87と比較的小さく、探索的知見として扱うべき
- JPYクロスの不振(N=104)は比較的大きなサンプルだが、期間・市場環境の変化による影響を排除できていない
- 4H足の優位性はサンプル数(N=140)に注意
⑦ 前向きトラッカー定点観測(2026-09-21)
前向き観測中の全仮説の現在値(抜粋):
| 仮説 | 種別 | 宣言基準 | 前向き現在値(平均R) | 状態 |
|---|---|---|---|---|
| trend=上昇×reversalL | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.11 CI[-0.04~+0.26](150/315・勝率48%) | ✅昇格 |
| 売られすぎ逆張り買い(rsi_oversold_bounce・全足) | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.21 CI[+0.04~+0.39](187/359・勝率52%) | 🟡蓄積中 |
| group=all(基準線) | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.04 CI[-0.02~+0.09](1526/3441・勝率44%) | 🟡蓄積中 |
| dir=long(ロング全般) | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.06 CI[-0.02~+0.13](1178/2600・勝率45%) | ⛔反証 |
| trend=下降(回避仮説) | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.11 CI[+0.04~+0.19](472/989・勝率48%) | ⛔反証 |
※ 昇格=ライブ配信フィルタ/信頼度へ反映する候補の旗立てのみ。発火エンジンには自動で触れない(人間が最終反映)。昇格後の観測で基準を下回る場合があり(降格判定の対象)、表の現在値と状態が一致しないことがある。
「売られすぎ逆張り買い」仮説はトラッカー全体の中でも CI全区間プラスという点で現時点の注目仮説。ただし昇格基準の「2回連続通過」がまだ未達。引き続き前向き観測を継続する。
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