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🧪 AIシグナル研究日誌 #8
ゴールデンクロスは信頼できないのか——654件の実データが示すシグナル種別の勝率マップ

カテゴリ:🧪 AIシグナル研究日誌  |  公開:2026年6月15日  |  読了:約10分

毎回ひとつの仮説だけを実データで検証し、勝っても負けても全公開する研究日誌の第8回です。前回(#7)では「blocked=True(S/R壁あり)× グループ × トレンド」という三次元解析を行い、他FX×blocked=True×下降が8/8=100%というN不足ながら注目すべき数字を出しました。

今回は視点を変えて、「どのシグナル種別が実際に勝てているのか」という横断的な問いに答えます。当サイトのシグナルエンジンは7種の基本パターン(RSI・MACD・移動平均クロス・ボリンジャー・高安値ブレイク)を検出します。654件のクローズドデータを種別ごとに集計すると、最高57.1%から最低23.3%まで約34ポイントの勝率格差があることがわかりました。

⏱️ 30秒でわかる今回のまとめ

① 全654件を種別横断集計——「CI下限が43%超え」を達成したシグナル種別は現時点でゼロ(損益分岐を安定的に超えた種別なし)
② ゴールデンクロス(ma_golden)は23.3%(7/30件、CI上限40.9%)——全種別中最低でCI上限が43%未満を確認(主仮説通過A)
③ 最有望はMACDデッドクロス(macd_dead):45.6%(47/103件、CI下限36.3%)——ただしCI下限はまだ43%未達
④ 全体平均は40.1%(262/654件)——どの種別も損益分岐を安定的に超えていない現状が浮かぶ

① 今回の仮説——「ゴールデンクロスは損益分岐を安定的に下回るか」

当サイトの技術的アラートエンジンが検出するシグナルは大きく7カテゴリに分類できます。これまでの研究日誌では「グループ別(メタル・指数・FX)」「方向別(ロング・ショート)」「環境別(トレンド・blocked)」で掘り下げてきましたが、シグナル種別そのものを正面から比較したことはありませんでした

今回の起点は、探索的に集計してみたところ出てきた衝撃的な数字です——「移動平均ゴールデンクロス(ma_golden:MA25がMA75を上抜け)」の勝率は23.3%(N=30)でした。多くの投資家が「信頼できる買いシグナル」と認識しているゴールデンクロスが、損益分岐43%をここまで大きく下回っているとしたら、それは検証する価値のある重要な発見です。

💡 損益分岐(ブレイクイーブン)43%とは
本システムのTP1:SL比は約1.33(TP1=ATR×2.0、SL=ATR×1.5)。この比率で期待値がゼロになる最低勝率が43%。それを下回ると毎回エントリーするほど期待値がマイナスになる(記録としての計算であり、実運用推奨ではない)。
仮説事前合否基準
ma_goldenの勝率は損益分岐43%を安定的に下回るN≥20 かつ CI上限 < 43%→ 棄却確認として通過A
種別によって勝率に有意な差がある最高勝率と最低勝率の差が20pp以上(副次的確認)

② 検証方法(654件反実仮想集計・事前合否基準)

前回と同様の「もしも計算」の手順です。signals-log.json に記録された全シグナルのうち、勝敗が確定済みのもの(tp1/tp2/sl到達済み、654件)のみを対象に、primary_signal(主シグナル種別)フィールドで集計しました。

項目内容
データ勝敗確定済みの654件(2026年5月20日〜6月15日)
集計単位primary_signal(主シグナル種別)ごとに独立集計
勝ち定義TP1またはTP2到達(SL到達は負け)
損益分岐43%(TP1:SL=1.33の期待値ゼロ点)
ブレ幅表示Wilson法による95%信頼区間(ブレ幅)を全数値に明記
期待値E(R) = 勝率×2.0R + (1-勝率)×(-1.5R)で計算

③ 結果①:シグナル種別勝率マップ(全11種)

N≥5のシグナル種別を全て集計した結果が下表です。勝率降順で並べると、最高57.1%(ma_dead、ただしN=14と小サンプル)から最低20.0%(fib_pullback_long、N=10)まで37ポイントの格差がありました。

シグナル種別件数(N)勝ち(k)勝率ブレ幅(95%CI)判定
ma_dead(MAデッドクロス)14857.1%32.6〜78.6%⚠️ N小・継続観察
macd_dead(MACDデッドクロス)1034745.6%36.3〜55.2%🟡 有望・CI下限未達
bb_lower_touch(バンド下限タッチ)1576843.3%35.8〜51.1%🟡 境界・CI下限未達
rsi_oversold_bounce(RSI過売反発)1285139.8%31.8〜48.5%❌ 未達
macd_golden(MACDゴールデン)883438.6%29.1〜49.1%❌ 未達
low_break(直近安値ブレイク)421638.1%25.0〜53.2%❌ 未達
high_break(直近高値ブレイク)451533.3%21.4〜47.9%❌ 低め
ma_golden(MAゴールデンクロス)30723.3%11.8〜40.9%❌ 最低・CI上限43%未満確認
全体平均65426240.1%36.4〜43.9%— ベースライン
シグナル種別の勝率(N≥20・7種) 損益分岐 43% 0% 20% 40% 60% MACDデッド macd_dead (N=103) 45.6% バンド下限 bb_lower_touch (N=157) 43.3% RSI過売反発 rsi_oversold_bounce (N=128) 39.8% MACDゴールデン macd_golden (N=88) 38.6% 安値ブレイク low_break (N=42) 38.1% 高値ブレイク high_break (N=45) 33.3% MAゴールデン★ ma_golden (N=30) 23.3% ★ 主仮説対象。CI上限40.9%<43%を確認。赤バーはCI上限が43%未満または勝率が大きく下回るグループ ※ N=14のma_deadと N=10以下のシグナルは除外(小サンプルのため)。概念を示すイメージ図です。
図1:N≥20のシグナル種別を勝率降順で比較。MACDデッドクロスが最有望(45.6%)だが、CI下限はまだ43%未達。MAゴールデンクロス(赤★)は23.3%で全種別中最低、かつCI上限(40.9%)が43%を下回ることを確認した。
主仮説の結果:通過A(棄却確認)
ma_golden(MAゴールデンクロス)の実勝率は23.3%(7/30件)、CI[11.8〜40.9%]
事前合否基準「N≥20(✅)かつCI上限<43%(✅ 40.9%)」を両方クリア。
損益分岐43%を安定的に下回ることが確認された——当データの集計上、ゴールデンクロス単独での逆張りは過去の記録では損益分岐を満たせていなかった(あくまで過去の集計であり、将来の成績を示すものではありません)。

④ 結果②:ma_golden の詳細——「いつ・どこで発火するか」

ma_golden の30件はすべてロング(買い)シグナルでした(ゴールデンクロスは定義上、上昇転換シグナルのためショートは発火しません)。次に、どの銘柄グループで多く発火しているかを確認しました。

グループ件数(N)勝ち(k)勝率ブレ幅(95%CI)
他FX(EURUSD等)22627.3%13.2〜48.2%
JPYクロス3133.3%6.1〜79.2%(N小)
指数300.0%0.0〜56.2%(N小)
BTC200.0%0.0〜65.8%(N小)

30件中22件が他FX(EUR/USD、GBP/USD、AUD/USDなど)での発火でした。興味深いのは、他FX全体の逆張りロングは過去の集計上55.0%(33/60件)と相対的に高い数字なのに、その中でma_goldenだけを取り出すと27.3%と著しく低い点です。同じ「他FX×ロング」でも、シグナルの種別が違うだけでここまで成績が変わります。

ゴールデンクロス(MA25↑交差MA75)が機能しない典型パターン ✅ 成功ケース(約2割) クロス発生 価格継続↑TP到達 価格 MA25 MA75 ❌ 失敗ケース(約8割) 価格ピーク クロス発生(ピーク後) →SL 遅れ発火
図2:ゴールデンクロスは移動平均の「遅行指標」の特性上、価格が既にピークを過ぎてから発火することが多い(右パネル)。上昇継続中に正確にクロスが出る成功ケース(左パネル)は少数。この「発火の遅れ」が23.3%という低勝率の構造的な原因と考えられる。※ 概念を示すイメージ図です。

移動平均は「遅行指標(ラギング指標)」と呼ばれます。MA25(25期間平均)がMA75(75期間平均)を上抜けるには、価格が上昇し始めてから相当な時間と価格変動が必要です。多くの場合、クロスが完成するころには「上昇の旨み」は既に消化されており、その後の余地が乏しい状態でシグナルが出ます。

⑤ 結果③:期待値E(R)で見たシグナル種別の損益格差

勝率だけでなく、実際の「1トレードあたりの期待損益」を計算します。TP1=+2.0R、SL=-1.5Rという設計(R:R=1.33)の場合、E(R)=勝率×2.0 + (1-勝率)×(-1.5) です。

シグナル種別勝率E(R)判定
macd_dead(MACDデッドクロス)45.6%+0.097R🟡 わずかにプラス
bb_lower_touch(バンド下限タッチ)43.3%+0.016R🟡 ほぼ損益分岐
rsi_oversold_bounce(RSI過売反発)39.8%-0.105R❌ マイナス
macd_golden(MACDゴールデンクロス)38.6%-0.148R❌ マイナス
low_break(安値ブレイク)38.1%-0.167R❌ マイナス
high_break(高値ブレイク)33.3%-0.333R❌ 明確にマイナス
ma_golden(MAゴールデンクロス)23.3%-0.683R❌ 全種別中最悪
シグナル種別の期待値 E(R) — 左がマイナス、右がプラス 0R(損益分岐) -0.5R +0.1R MACDデッドクロス macd_dead +0.097R バンド下限タッチ bb_lower_touch +0.016R RSI過売り反発 rsi_oversold_bounce -0.105R MACDゴールデン macd_golden -0.148R 高値ブレイク high_break -0.333R MAゴールデン★(今回) ma_golden -0.683R(全種別最悪) ★ ma_golden は1トレードあたり平均-0.683R の損失期待値。100回エントリーすると理論上-68.3R相当。 ※ 概念を示すイメージ図です。将来の運用成績を保証するものではありません。
図3:期待値E(R)で見ると、ma_goldenは-0.683Rで全種別中最悪。E(R)がプラスなのはmacd_dead (+0.097R)とbb_lower_touch (+0.016R)だが、ともにブレ幅が大きく確定的ではない。

E(R)=-0.683Rという数字が意味することを具体的に言うと——「もし仮にma_goldenシグナルを機械的に全件エントリーしていたとしたら、過去のデータでは1トレードごとに平均0.683R分の損失期待値があった計算になる」ということです。これは情報提供としての試算であり、将来の成績を示すものではありません。

⑥ 交絡の点検——グループ偏り・時期バイアス

「ゴールデンクロスが23.3%」という数字をそのまま信じる前に、いくつかの交絡を点検します。

1. グループ偏り

ma_golden 30件のうち22件(73%)が他FX(EURUSD・GBPUSD等)での発火でした。他FXの逆張りロング全体の勝率は過去の集計上55.0%(33/60件)と相対的に高い水準なのに、ma_goldenだけでは他FXで27.3%(6/22)に留まります。つまり「他FXという銘柄グループ」の問題ではなく、「ゴールデンクロスというシグナル種別」の問題である可能性が高いです。

2. 時期バイアス

このデータは2026年5月20日〜6月15日(約4週間)の記録です。この期間のFX相場は全体的に横ばい〜小幅なトレンドが入り乱れる環境でした。ゴールデンクロスは「上昇トレンドへの転換サイン」として設計されているため、明確な上昇トレンドが少なかった時期には不利になります。長期的に見れば改善する可能性はあります。

3. ma_golden は全件ロング

ma_golden の30件はすべてロング(買い)でした。#4で確認したように「下降トレンド中のロングは落ちるナイフ」の傾向があり、もしこの30件の多くが下降トレンド環境で発火していたとすれば、トレンド環境が主因の交絡があります。この切り分けは次回以降の課題です。

N=30のため、ブレ幅は[11.8〜40.9%]と約29ポイントあります。「CI上限が43%未満」という事実は上振れ方向の余地がほぼないことを示しますが、今後シグナルが積み重なるにつれて数値は変動します。現時点での「棄却確認」は小サンプルでの傾向であることを念頭に置いてください。

⑦ 今回の決定事項

項目決定理由
主仮説(ma_golden 棄却確認)通過A(棄却確認)N=30≥20、CI上限40.9%<43%。事前合否基準の両条件をクリア
macd_dead(45.6%、N=103)継続観察(トラッカー新設)相対的に高めだがCI下限36.3%(43%未達)。N=103でのCI下限確認が次の基準
bb_lower_touch(43.3%、N=157)継続観察損益分岐ぎりぎり超え。CI下限35.8%でまだ統計的確認できず
副次的確認(種別差の存在)確認(最高57.1%〜最低23.3%、差34pp)20pp以上という基準を大きく超えた種別差を確認

📡 前向きトラッカー定点観測

これまでの連載で宣言した「将来データで確認する基準」の現在値です。

ID仮説・指標宣言基準現在値(2026-06-15)状態
a 押し目買い4h(上位足上昇×逆張りロング×4h) 新規決済N≥30かつ勝率50%超 N=0(upper_tf_trend未記録)
b〜e regime/chasing/discipline/edge_tier 各基準は台帳参照 フィールド未記録(全N=0)
f 全逆張りロング(#2基準) 34.3%より改善or悪化を追跡 41.8% N=285 CI[36.2〜47.6%](前回41.9% N=284から微変)
g 指数×逆張りロング(今回更新) 累計N≥80かつCI下限43%超を維持 51.5% N=66 CI[39.7〜63.2%](前回と同値) ⏳ 蓄積中
h 他FX×逆張りロング(今回更新) 累計N≥80かつCI下限43%超を維持 55.0% N=60 CI[42.5〜66.9%](前回と同値、CI下限43%まであと0.5pp) ⏳ 蓄積中(基準に肉薄)
i 他FX×blocked=True(#5新設) N≥30かつCI下限43%超 66.7% N=15 CI[41.7〜84.8%](N不足継続) ⏳ 蓄積中
j 中立×blocked=True(#6新設) N≥20での実績追跡 20.0% N=10 CI[5.7〜51.0%](ブレ幅大) ⏳ 蓄積中
k 他FX×blocked=True×下降(#7新設) N≥15かつCI下限50%超 100.0% N=8 CI[67.6〜100.0%](N不足・過信禁止) ⏳ 蓄積中
l macd_dead 継続観察(今回新設) N≥150かつCI下限43%超を維持 45.6% N=103 CI[36.3〜55.2%](CI下限未達) ⏳ 新設・蓄積中

⑧ 次回に向けて

⚠️ 免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。当サイト(MarketWatch AI)は金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録を行っていません。本記事の情報は投資助言に当たらず、投資判断および売買はご自身の判断と責任のもとで行ってください。記事中の勝率・期待値・検証結果はすべて当サイトの特定システムにおける過去の集計であり、将来の相場結果や運用成績を示唆または保証するものではありません。

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