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🧪 AIシグナル研究日誌 #5
「壁あり」シグナルがなぜか強い——veto_runway_blocked の逆転現象を解明する

カテゴリ:🧪 AIシグナル研究日誌  |  公開:2026年6月13日  |  読了:約10分

前回(#4)ではゴールド(GC=F)のロング vs ショートに約48ポイントの差がある「方向の交絡」を解明しました。今回はもうひとつバックログに積み残されていた謎に向き合います。

AIシグナルシステムには「veto_runway_blocked(TP1手前に抵抗線がある)」という判定があります。TP1(利益確定目標)へ向かう途中にサポート/レジスタンスの壁がある場合、そのシグナルは「avoid(回避)」ランクへ降格されます。直感的には正しいように思えます——壁があればTP1に届かないでしょうから。

ところが台帳のバックログ注記には「blocked=True: 51.4% N=37、blocked=False: 39.2% N=265。差+12.2pp」という逆転を示す数字が残っていました。今回はそれが「まだ証拠不十分な偶然か、本物の現象か」を652件の最新データで追試します。

⏱️ 30秒でわかる今回のまとめ

① 壁あり(blocked=True): 22/41 = 53.7% CI[38.7%〜67.9%]
② 壁なし(blocked=False): 111/285 = 38.9% CI[33.5%〜44.7%]
③ 差は +14.7ポイント——直感(壁なしが有利なはず)と逆。損益分岐43%に対して壁ありが超え、壁なしが下回る
④ ロング側 55.6%(10/18)、ショート側 52.2%(12/23)——方向を問わず壁ありの方が良い
⑤ 「避けろ」と判定されたシグナルが実際には勝率50%超——ただしCI下限38.7%で「43%以上」と統計的確定はできず。継続観察

① 今回の仮説——「TP1前の壁はシグナルを殺す」は正しいか

まず「blocked」という概念を整理します。

💡 veto_runway_blocked とは
シグナル発火時に、エントリー価格からTP1(利益確定目標 = ATR×2.0)までの経路上にサポート/レジスタンスの壁があると判定された状態。壁の強さは「block_frac(0〜1、大きいほど壁が強い)」で示される。この判定が入ると、シグナルは「avoid」ランクへ降格され、メールでの優先通知から外れる。

ロングシグナルでは「TP1の上方に抵抗線がある = 届く前に返されそう」、ショートシグナルでは「TP1の下方に支持線がある = 止まりそう」という発想です。直感では「blocked=True のシグナルは勝率が下がるはず」

仮説合格基準(事前宣言)
通過A:壁ありが43%超blocked=True の勝率 ≥ 43% かつ CI下限 ≥ 30% かつ N ≥ 30
→ 解釈:veto_runway_blocked は過剰フィルタの可能性
通過B:壁なしが優位blocked=False > blocked=True かつ差 ≥ 10pp かつ blocked=F の N ≥ 100
→ 解釈:直感通り、壁なしの方が有利
棄却どちらも達成しない or 差 < 5pp → 効果なし・継続観察

② 検証方法(事前宣言と反実仮想計算)

項目内容
データ決済済み(tp1またはslに到達)652件
期間2026年5月20日〜6月12日(約3週間)
対象sr_runway フィールドが記録されている326件のうち、blocked=True: 41件 / blocked=False: 285件
損益分岐43%(TP1:SL = 1.33 の R:R を前提)
統計Wilson法95%信頼区間を全数字に併記
sr_runway フィールドはシステムの新バージョンで追加されたため、652件中326件(50.0%)にしか記録されていない。残り326件は集計対象外。sr_runway あり/なしでシグナル特性に偏りがある可能性は否定できない。

③ 結果①:壁ありの方が強いという逆転

区分件数勝率95%CI期待値R判定
壁あり(blocked=True)4153.7%38.7%〜67.9%+0.252R🟡 有望(CI下限38.7%)
壁なし(blocked=False)28538.9%33.5%〜44.7%-0.091R❌ 期待値マイナス
veto_runway_blocked の有無で勝率が逆転する 損益分岐 43% 壁あり N=41 53.7% 壁なし N=285 38.9% 壁あり(青)は損益分岐43%超、壁なし(赤)は下回る。CI範囲は重なるため統計的確定はできない
図1:blocked=True(壁あり)vs blocked=False(壁なし)の勝率比較。直感の逆——壁ありの方が勝率が高い。ただしCI範囲が広いため「確定した逆転」とは言えず、継続観察が必要。※ 概念を示すイメージ図です。

差は+14.7ポイント。TP1前に壁があるシグナルの方が、壁がないシグナルより約15ポイント勝率が高いという結果になりました。過去集計上の期待値は壁あり +0.252R、壁なし -0.091Rと、プラス側とマイナス側に分かれました。

通過A(事前宣言基準):達成
blocked=True の勝率53.7% ≥ 43% ✅ かつ CI下限38.7% ≥ 30% ✅ かつ N=41 ≥ 30 ✅
ただし CI 下限 38.7% は 43% に届いておらず、「43%以上と統計的に確定」はできない。継続観察が必要。

④ 結果②:「avoid」判定の中身を分解する

ここに重要な構造的発見があります。blocked=True の41件は、全て selection.tier が「avoid(回避)」です。当然といえば当然——blocked=True のシグナルは veto_runway_blocked により自動的に avoid ランクへ降格されます。

では「avoid」ランク全体の中で、blocked=True と blocked=False がどう違うか見てみます。

分類件数勝率判定
avoid × 壁あり(blocked=True)4153.7%🟡 損益分岐超
avoid × 壁なし(blocked=False)2326.1%❌ 大幅未達
neutral(壁なし)12339.0%❌ 未達
good(壁なし)10639.6%❌ 未達
elite(壁なし)3345.5%🟡 辛うじて損益分岐超
「回避(avoid)判定」でも壁ありは53.7%——壁なし26.1%の2倍以上 43% avoid× 壁あり(41) 53.7% elite× 壁なし(33) 45.5% neutral× 壁なし(123) 39.0% good× 壁なし(106) 39.6% avoid× 壁なし(23) 26.1% ※ blocked=Trueのシグナルは全て「avoid×壁あり」に分類される構造
図2:selectionティアとblocked状態別の勝率。「避けろ」と判定された avoid×壁あり(41件)が53.7%で最高、一方で avoid×壁なし(23件)は26.1%で最低。同じ「avoid」でも原因によって成績が真逆になっている。※ 概念を示すイメージ図です。

驚くべき点は、「avoid(回避推奨)」というランク内で、壁ありと壁なしで成績が2倍以上の差があることです。システムが「回避すべき」と判断したシグナルでも、「なぜ回避すべきか」の理由によって成績が真逆になっています。

壁ありの avoid シグナル(53.7%)は「elite」ランクの壁なし(45.5%)より成績が良い——これはシステムの現行 veto_runway_blocked ロジックに見直しの余地があることを示唆します。

これは当サイト内部のフィルタ設計を点検するための検証であり、読者に特定のシグナルやその追随を推奨するものではありません。N=41 と小標本で、なぜこうなるのか(因果)も特定できていないため、売買判断の根拠になるものではありません。

⑤ 結果③:方向(ロング/ショート)を分けても逆転は変わらない

「壁あり」が強いのは特定の方向(買いか売りか)だけに偏っているのではないか——この交絡を確認します。

方向 × 壁あり/なし件数勝率95%CI
ロング(買い) × 壁あり1855.6%33.7%〜75.4%
ロング(買い) × 壁なし22639.8%33.7%〜46.3%
ショート(売り) × 壁あり2352.2%33.0%〜70.8%
ショート(売り) × 壁なし5935.6%24.6%〜48.3%

ロング側: 壁あり 55.6% vs 壁なし 39.8%(差+15.7pp)。ショート側: 壁あり 52.2% vs 壁なし 35.6%(差+16.6pp)。どちらの方向でも同じ逆転が起きており、方向の偏りではないことが確認できます。

⑥ なぜ壁ありが強いのか——3つの仮説

直感に反する結果の「理由」を、3つの仮説で考えます。

仮説A:「壁を突破する場所にシグナルが集中している」

blocked=True のシグナルは、TP1の手前にS/Rが存在する状況で発火しています。しかし、そもそもシグナルが発火するのは価格が勢いよく動いているタイミングが多い。強い勢い(モメンタム)があれば、壁を突き破ってTP1に到達できます。「壁がある」ということは「その壁を意識した価格帯でシグナルが出た」ということでもあり、こうした状況はむしろモメンタムが強い証拠かもしれません。

仮説B:「壁の計算が現実のS/Rの強さを過大評価している」

block_frac(壁の強さ)は0.088〜0.990(中央値0.499)とばらつきが大きく、ルール上「blocked=True」になっても弱い壁(block_frac 0.1程度)も含まれます。弱い壁は実際には価格に影響を与えにくいため、blocked=True でもTP1に到達できるケースが増えます。事実、壁が弱い(block_frac<0.5)グループは 12/21=57.1%、壁が強い(block_frac≥0.5)グループは 10/20=50.0% とほぼ同等です。

仮説C:「blocked=True と相関するテクニカル要因が本当の原因」

blocked=True シグナルが発火する状況は、「S/R密集帯で価格が動いているとき」です。このような状況は、トレンドが加速している局面に重なりやすい。トレンドが強いから壁を突き破り、かつTP1に届く——blocked はその代理変数(プロキシ)として機能しているかもしれません。trend_alignment × blocked でも順張り64.3%・逆張り64.7%と「aligned に関係なく壁ありが強い」傾向が見られます。

上記3仮説のどれが正しいかを特定するには、blocked=True シグナルのモメンタム指標(ADX、ATR水準、ma_dir)との相関分析が必要です。現時点では「壁あり=強い」という観察事実のみが確認できており、因果の特定は次回以降の課題です。

⑦ 今回の決定事項

項目決定理由
veto_runway_blocked の主判定継続観察(通過A判定)53.7%(N=41)はCI下限38.7%で43%超を統計的確定できず。ただしpoint estimateは損益分岐を大幅超え
veto_runway_blocked の即時廃止時期尚早N=41では因果解明に不足。壁ありがなぜ強いか(仮説A/B/C)の確認が先
avoid × 壁なし(26.1%)の注目「本当のavoid」の把握へblocked=Falseでavoidのシグナル(26.1%・N=23)が本来回避すべき対象かもしれない
次回検証テーマblocked=True × モメンタム指標ADX・ATR水準・ma_dirとの交絡を確認し、「なぜ壁ありが強いのか」を特定する

📡 前向きトラッカー定点観測

これまでの連載で宣言した「将来のデータで確認する基準」の現在値です。今回の検証期間中、新規決済データが追加されず、前回(2026-06-12)と同値です。

ID仮説・指標宣言基準現在値(2026-06-13)状態
a〜e 押し目買い4h、regime、chasing_downgrade 等 各基準は台帳参照 フィールド未記録(全N=0)
f 全逆張りL(rsi_oversold_bounce/bb_lower_touch) 新規データで34.3%から改善/悪化を確認 119/284 = 41.9% CI[36.3%〜47.7%](前回比 変化なし) ⏳ 追跡中
g 指数×逆張りL(今回の主仮説と別軸) 累計N≥80かつCI下限43%超を維持 34/66 = 51.5% CI[39.7%〜63.2%]
CI下限39.7%(43%未達)
🟡 蓄積中
h 他FX×逆張りL 累計N≥80かつCI下限43%超を維持 33/60 = 55.0% CI[42.5%〜66.9%]
CI下限42.5%(43%まであと0.5pp)
🟡 蓄積中(基準に肉薄)
📝 トラッカー[h](他FX×逆張りL)の注目点
CI下限42.5%は43%の基準まであと0.5ポイント。新たな決済データが積み重なれば、次回更新時に基準到達・超過の判定ができる可能性があります。新規シグナルが増えるのを待ちながら、定点観測を続けます。

⑧ 次回に向けて

⚠️ 免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。当サイト(MarketWatch AI)は金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録を行っていません。本記事の情報は投資助言に当たらず、投資判断および売買はご自身の判断と責任のもとで行ってください。記事中の勝率・期待値・検証結果はすべて当サイトの特定システムにおける過去の集計であり、将来の相場結果や運用成績を示唆または保証するものではありません。

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