🧪 AIシグナル研究日誌 #7
他FX×blocked=True の高勝率は「下降偏り」という交絡だった——グループ×トレンド×blocked 三次元解析
毎回ひとつの仮説だけを実データで検証し、勝っても負けても全公開する研究日誌の第7回です。前回(#6)では「blocked=True(TP1前に壁がある)シグナルは、トレンド相場でのみ高勝率を発揮し、もみあいでは逆効果になる」という構造を解明しました。また、検証の途中で他FX(EURUSD・GBPUSDなど)× blocked=True が66.7%(10/15)という高い数字が浮上していました。
今回はこの66.7%の正体に迫ります。これは本当に「他FXグループに固有のエッジ」なのか、それとも「たまたま下降トレンドのシグナルが多かっただけ」という見かけ上の数字(交絡)なのか——652件の実データを用いた三次元解析で調べます。
① 前回再確認: blocked=True全体 53.7%(22/41)vs blocked=False 38.9%(111/285)
② グループ別では: 指数 75.0%(6/8) / 他FX 66.7%(10/15) / メタル 50.0%(4/8)と差がある
③ 他FX×blocked=Trueの66.7%を分解すると: 下降トレンド時 100.0%(8/8)CI下限67.6%、もみあい時 0.0%(0/4)——極端な二極化
④ 結論: 他FX×blocked=Trueの高勝率は下降トレンドへの偏り(15件中8件が下降)によるトレンド交絡。事前宣言3条件クリアで通過A
① 3視点会議——今回の仮説と事前宣言
研究日誌では毎回「3視点(テクニカル・ファンダメンタル・リスク管理)の会議」で仮説を1本に絞り込んでいます。今回の会議の要点は以下のとおりです。
テクニカル担当: 前回(#6)で他FX×blocked=True=66.7%が出た。グループによってblocked効果の大小があるなら、どのグループが主導しているかを明確化したい。指数も8件で6勝(75.0%)と高い。
ファンダメンタル担当: グループ差はファンダ感応度の違いと無関係でない可能性。ただし「なぜグループ差があるか」の因果は探索的——まず「差が実在するか」を確認するのが先。
リスク管理担当(採択): 「他FX×blocked=Trueが高い」と思って他FXに偏ったエントリーをするリスクがある。その前に「本当にグループ差があるか、それとも単にトレンド偏りの交絡か」を検証すべき。事前宣言の基準を設けて検証する。
「他FX(EURUSD・GBPUSD等)×blocked=True の66.7%という高勝率は、下降トレンドシグナルへの偏り(トレンド交絡)によって説明される。グループ固有のエッジではなく、トレンド環境が主因である」
事前宣言の合否基準(データ確認前に宣言):
① 他FX×blocked=True×下降 のWilson CI下限 ≥ 43% かつ N ≥ 5(下降環境での効果が実在する)
② 他FX×blocked=True×中立 の勝率 < 43%(もみあいでは効果が消失する——#6と整合)
③ 指数×blocked=True の勝率 > メタル×blocked=True(グループ間の差が存在する)
← 3条件すべてクリアで「通過A」
② 検証方法(「もしも計算」)
今回も反実仮想の「もしも検証」です。過去データに対して「もしこの条件(グループ・トレンド・blocked)で絞り込んでいたら、成績はどうだったか」を計算します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| データ全体 | 勝敗確定済み(tp1/tp2/slのいずれかに到達)の652件 |
| うちsr_runway記録あり | 326件(blockedフィールドはこの中にのみ存在) |
| うちblocked=True | 41件(前回同様) |
| うちblocked=False | 285件(前回同様) |
| グループ定義 | メタル(GC/SI)、指数(NKD/ES/NQ/YM/FTSE)、円クロス(USD/EUR/GBP/AUD/JPY)、他FX(EUR/GBP/AUD/USD・非JPY) |
| トレンド判定 | signals-logの trend_alignment.higher_tf_trend(上昇/下降/中立・もみあい) |
| 損益分岐 | 43%(TP1 R:R=1.33でプラス期待値の下限) |
| ブレ幅 | Wilson法による95%信頼区間をすべての数字に併記 |
③ 結果①:グループ別 blocked=True の比較
まず「グループによってblocked=Trueの成績に差があるか」を確認します。
blocked=True × グループ別(全体)
| グループ | blocked=True件数 | 勝率 | 95%信頼区間 | 損益分岐43%比較 |
|---|---|---|---|---|
| 指数(NKD/ES/NQ等) | 8 | 75.0%(6/8) | [40.9%~92.9%] | ✅ 超過(CI下限40.9%) |
| 他FX(EUR/GBP/AUD) | 15 | 66.7%(10/15) | [41.7%~84.8%] | ✅ 超過(CI下限41.7%) |
| メタル(金/銀) | 8 | 50.0%(4/8) | [21.5%~78.5%] | △ わずかに超過(CI下限21.5%) |
| 円クロス(JPY系) | 5 | 20.0%(1/5) | [3.6%~62.4%] | ❌ 43%大幅未達 |
| BTC | 3 | — | — | N=3 小サンプル・対象外 |
| 原油 | 2 | — | — | N=2 小サンプル・対象外 |
| 全体 | 41 | 53.7%(22/41) | [38.7%~67.9%] | 🟡 超過・CI下限未達 |
グループによって成績に大きな差があることが確認できます。事前宣言③「指数 > メタル」についても、75.0% vs 50.0%と差が出ており条件をクリアしています。
ここで「なぜグループ差があるのか」を考える前に、もう一段掘り下げます。前回(#6)の発見から、トレンド環境がblocked=Trueの効果を大きく左右することがわかっています。グループ内のトレンド構成(下降・中立・上昇の比率)が異なれば、グループ差の多くはトレンド差に帰着する可能性があります。
④ 結果②(核心):他FX×blocked=True を三次元で分解
他FXグループ15件を「トレンド環境」でさらに分割します。これが今回の分析の核心です。
他FX × blocked=True × トレンド環境(三次元分解)
| トレンド環境 | 件数 | 勝率 | 95%信頼区間 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 下降トレンド | 8 | 100.0%(8/8) | [67.6%~100.0%] | ✅ CI下限67.6%≥43% かつ N=8≥5(事前宣言①通過) |
| 上昇トレンド | 3 | 66.7%(2/3) | [20.8%~93.9%] | 🟡 N=3 小サンプル・参考のみ |
| 中立・もみあい | 4 | 0.0%(0/4) | [0.0%~49.0%] | ❌ 0.0%<43%(事前宣言②通過) |
| 合計 | 15 | 66.7%(10/15) | [41.7%~84.8%] | 🟡 交絡で見かけ上高い(実態は下降偏り) |
① 他FX×blocked=True×下降:100.0%(8/8)、CI下限67.6%≥43%、N=8≥5 ✅
② 他FX×blocked=True×中立:0.0%(0/4)、43%未達 ✅
③ 指数blocked=True(75.0%)> メタルblocked=True(50.0%)✅
⑤ 交絡の構造——なぜ66.7%が生まれるのか
「交絡」という言葉は少しわかりにくいですが、要するに「本当の原因(トレンド方向)が別にあるのに、見かけ上は他の要因(グループ)が原因に見える」という現象です。
66.7%という数字の内訳
| 内訳 | 件数 | 勝敗 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 下降トレンド | 8件(全体の53%) | 8勝0敗 | ← ここが勝率を引き上げている |
| 上昇トレンド | 3件(全体の20%) | 2勝1敗 | N=3 参考のみ |
| 中立・もみあい | 4件(全体の27%) | 0勝4敗 | ← ここが足を引っ張っている |
| 合計 | 15件 | 10勝5敗(66.7%) | 下降8件が全勝している結果 |
他FX×blocked=Trueの15件のうち8件(53%)が下降トレンドであり、その8件がすべて勝利しています。これが66.7%という数字を作り出しています。
正確には「他FX×blocked=True×下降トレンド」が高勝率なのであり、グループが「他FX」であること自体が主因ではないことが示唆されます。他FXのデータに下降トレンドが多かっただけ、という交絡が発生しています。
比較:他FX×blocked=False との対照
| 条件 | 件数 | 勝率 | 95%信頼区間 |
|---|---|---|---|
| 他FX × blocked=True | 15 | 66.7%(10/15) | [41.7%~84.8%] |
| 他FX × blocked=False | 64 | 46.9%(30/64) | [35.2%~58.9%] |
| 差 | — | +19.8pp | — |
他FX内でblocked=Trueがblocked=Falseより約20ポイント高い差は確かに存在します。ただしこれも、blocked=True内の下降偏りが影響している可能性が高いです。
⑥ 今回の決定事項と考察
事前宣言の総合判定
| 条件 | 事前宣言の基準 | 実績値 | 判定 |
|---|---|---|---|
| ① 他FX×blocked=T×下降 | CI下限≥43% かつ N≥5 | 100.0%(8/8)CI下限67.6%, N=8 | ✅ 通過 |
| ② 他FX×blocked=T×中立 | 勝率 < 43% | 0.0%(0/4) | ✅ 通過 |
| ③ 指数 > メタル | 指数の方が高い | 75.0% vs 50.0% | ✅ 通過 |
他FXグループ固有のエッジとして数字を受け取るのではなく、「下降トレンド×blocked=True」という条件が主因であることを認識する。他FX×blocked=True×下降(8/8=100%)は過去データ上は目立つ数字だが、N=8の小サンプルにすぎず、将来の再現を示すものではないため過信は禁物。これは特定の売買を推奨するものではなく、あくまで過去統計の傾向観察である。
交絡点検(今回注意した交絡要因)
- トレンド偏り: 他FX×blocked=Trueの15件に占める下降割合が53%(8件)と高かった。これが主要な交絡要因
- 小サンプル問題: 各セルN=3〜8。Wilson CIのブレ幅が大きく、100.0%(8/8)でもCI下限67.6%と相当な不確実性がある
- グループ定義の曖昧さ: 「他FX」はEUR/GBP/AUD系の非JPYクロス。経済圏が異なる複数ペアが混在しており、グループとして均質ではない
- 選択バイアス: blocked=Trueはsr_runway記録がある326件にしか存在しない。sr_runway未記録の326件との差がある可能性を排除できない
期待値Rの整理
| 条件 | 勝率 | 期待値(過去データ集計値、将来を示さない) |
|---|---|---|
| blocked=True全体 | 53.7%(22/41) | +0.25R |
| 他FX×blocked=True | 66.7%(10/15) | +0.56R |
| 他FX×blocked=True×下降 | 100.0%(8/8) | +1.33R |
| 他FX×blocked=True×中立 | 0.0%(0/4) | −1.00R |
| 他FX×blocked=False | 46.9%(30/64) | +0.09R |
| blocked=False全体 | 38.9%(111/285) | −0.09R |
📡 前向きトラッカー定点観測
「事前に宣言した基準が、今後のデータで再現されるか」を追跡する前向きトラッカーです。
| ID | 仮説・指標 | 宣言基準 | 現在値(2026-06-14) | 状態 |
|---|---|---|---|---|
| a | 押し目買い4h(上位足上昇×逆張りL×4h) | N≥30かつ勝率50%超 | N=0(upper_tf_trend未記録のため追跡開始待ち) | ⏳ 追跡中 |
| b | regime=RISK_ON の勝率 | N≥20かつ勝率55%超 | N=0(フィールド未記録) | ⏳ 追跡中 |
| f | もみあい中の逆張りL(#2基準: 34.3%) | 新規データで改善 or 悪化を確認 | 41.9% N=284 CI[36.3%~47.7%](前回同値) | ⏳ 追跡中 |
| g | 指数×逆張りL(rsi/bb×ロング) | N≥80かつCI下限43%超 | 51.5% N=66 CI[39.7%~63.2%](前回同値) | ⏳ 蓄積中 |
| h | 他FX×逆張りL(rsi/bb×ロング) | N≥80かつCI下限43%超 | 55.0% N=60 CI[42.5%~66.9%](前回同値) | ⏳ 蓄積中 |
| i | 他FX×blocked=True(#6新設) | N≥30かつCI下限43%超 | 66.7% N=15 CI[41.7%~84.8%](前回同値・今回交絡確認) | ⏳ 蓄積中 |
| j | 中立×blocked=True(#6新設) | N≥20での実績で20%が継続するか | 20.0% N=10 CI[5.7%~51.0%](前回同値) | ⏳ 蓄積中 |
| k | 他FX×blocked=True×下降(#7新設) | N≥15かつCI下限50%超を維持 | 100.0% N=8 CI[67.6%~100.0%](N不足・過信禁止) | ⏳ 蓄積中 |
⑧ 次回に向けて
今回で「blocked=True × グループ × トレンド」の三次元解析が一段落しました。主な発見のまとめ:
- グループ差が存在する: 指数(75.0%)・他FX(66.7%)はblocked=Trueと相性が良く、円クロス(20.0%)は相性が悪い傾向がある(N小のため要継続)
- 他FXの66.7%は下降トレンド交絡: 「他FX固有のエッジ」ではなく「下降トレンド×blocked=True」という条件が主因の可能性が高い
- 中立環境では一貫して失速: グループを問わず、blocked=True×もみあいは低勝率の傾向(#6と一致)
次のバックログ候補として、これまで保留にしていた「S/R近接距離(d_sup_atr < 1.0)の効果」の再検証が挙がっています。sr_runwayには近傍距離を示すフィールドがあり、「支持線から近いほど反発が起きやすいか」という仮説を同じ反実仮想枠組みで検証できます。
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