🧪 AIシグナル研究日誌 #15
4H足ロングは系統的に弱い——時間足で勝率はどう変わるか
毎回ひとつの仮説を実データで検証し、勝っても負けても全公開する研究日誌の第15回です。前回(#14)では bb_lower_touch(ボリンジャー下限タッチ)×jpy_fx ロングが 60.0%(27/45)と有望な数字を示しました。
今回は視点を変えて「そもそも時間足(1H足 vs 4H足)によって勝率は変わるのか」を全銘柄・全シグナルタイプで横断的に検証します。きっかけは、本日のスイープ解析で 4H足ロングが FDR 統計検定を通過する形で赤字(期待値マイナス)を示したことです。
① 4H足ロング(96/273)は勝率35.2%、95%CI上限41.0%で損益分岐43%を下回る → 棄却確定
② 1H足ロング(148/367)は40.3%で損益分岐付近——確定打不足(限界領域)
③ 4H足ショート(54/108)は50.0%でプラス傾向——ロングとは逆
④ 4H vs 1H 差の最大要因は jpy_fx(円クロス):4H=29.8%(14/47)vs 1H=48.7%(37/76)——18.9pp差
① 今回の仮説——時間足は勝率に影響するか
AIシグナルシステムは 1H足(1時間足)と 4H足(4時間足)の両方でシグナルを発生させています。これまでの検証(#8、#9、#14など)では「銘柄グループ」「シグナル種別」「方向性」に注目してきましたが、時間足そのものの影響はまだ正面から検証していませんでした。
2026年6月20日のスイープ解析(67仮説グリッド全数検証)で、「tf=4h×dir=long(4H足ロング)」がBH-FDR多重検定補正後も有意な赤字(期待値マイナス)を示したことから、今回の仮説が採択されました。
本システムのリスクリワードは SL=-1.0R、TP1=+1.33R、TP2=+2.0R です。最低限の収支ゼロ(損益分岐)には約43%の勝率が必要です。43%を下回る条件は「使うと長期的にマイナス」と考えられます。
事前に宣言した合否基準
検証を始める前に、「この結果なら棄却確定」という基準を宣言します(後から変えないルール)。
- 主仮説(棄却確認):4H足ロングの勝率 95%CI 上限が 43% を下回れば「損益分岐未満が統計的に確認された」として棄却確定
- 交絡検定:金属(GC=F/SI=F)比率の差が 5%ポイント未満なら金属偏りで説明できない
- 副仮説(探索的):jpy_fx グループでの 4H vs 1H 差が 10%ポイントを超えるか
② 検証方法(「もしも計算」と事前宣言)
signals-log.json(決済済みシグナルのみ使用)を Python で集計します。使用ルール:
- 対象:結果が確定したもの(tp1=TP1到達・tp2=TP2到達・sl=SL到達)。未決済・no_plan・expired は除外
- 勝ち:tp1 か tp2 に到達したもの(+1.33R または +2.0R)
- 負け:sl に到達したもの(-1.0R)
- 期間:システム稼働開始から 2026-06-19 決済分まで、有効クローズ 883 件
- ウィルソン信頼区間:二項分布の 95% 信頼区間(小サンプルでも安定)
③ 結果①——4H足ロングは損益分岐を下回る
まず最も基本的な「時間足×方向」の4分類で集計しました。
| 分類 | N(件数) | 勝ち/負け | 勝率 | 95%CI | 平均R |
|---|---|---|---|---|---|
| 1H×ロング | 367 | 148 / 219 | 40.3% | [35.4%, 45.4%] | -0.06 |
| 4H×ロング | 273 | 96 / 177 | 35.2% | [29.7%, 41.0%] | -0.18 |
| 1H×ショート | 122 | 49 / 73 | 40.2% | [31.9%, 49.0%] | -0.06 |
| 4H×ショート | 108 | 54 / 54 | 50.0% | [40.7%, 59.3%] | +0.17 |
CI 上限が損益分岐 43% を下回るため、「4H足ロングは損益分岐に届かない」が統計的に確認されました(棄却確定)。
特に注目すべきは 4H足に顕著な方向非対称性がある点です。4H足ロング(35.2%)と 4H足ショート(50.0%)で 14.8%ポイントもの差があります。一方、1H足はロング(40.3%)とショート(40.2%)でほぼ同じです。
図1:時間足×方向別の勝率(概念図)。横軸=分類、縦軸=勝率。赤の破線は損益分岐43%。4H足ロング(赤バー)のみ43%を明確に下回る。実際の価格チャートではありません。
④ 結果②——金属比率の差では説明できない
「4H足ロングに金属(GC=F/SI=F)が多く偏っているから悪く見えるだけでは?」という疑問は重要です。金属ロングはこれまでの検証(#13、#3など)で一貫して低勝率(20%前後)を示してきました。
グループ構成の比較
| グループ | 4H×ロング | 1H×ロング | 差 |
|---|---|---|---|
| 他FX(EURUSD等) | 29.3%(80件) | 29.7%(109件) | -0.4pp |
| 指数(NKD=F等) | 25.6%(70件) | 24.8%(91件) | +0.8pp |
| jpy_fx(円クロス) | 17.2%(47件) | 20.7%(76件) | -3.5pp |
| 金属(GC=F/SI=F) | 14.7%(40件) | 13.4%(49件) | +1.3pp |
| BTC | 8.8%(24件) | 7.6%(28件) | +1.2pp |
| 原油 | 4.4%(12件) | 3.8%(14件) | +0.6pp |
金属比率は4H足ロングで14.7%、1H足ロングで13.4%——差はわずか 1.3%ポイントです。事前宣言した「5pp未満なら金属偏りで説明できない」という基準を満たします。
金属の比率差はほぼ同一(1.3pp)。4H足ロングの低勝率は金属偏りでは説明できません。金属を除いても 4H×L(金属除外)は37.8%、1H×L(金属除外)は44.3%で差が継続します(6.5pp)。
⑤ 結果③——グループ別に見えてきた「jpy_fx の差」
各グループ×時間足の組み合わせを見ると、jpy_fx(円クロス:ドル円・ユーロ円・ポンド円・豪ドル円)での時間足差が際立っています。
4H足ロング グループ別
| グループ | N | 勝ち/N | 勝率 | 95%CI |
|---|---|---|---|---|
| 指数(NKD=F等) | 70 | 36/70 | 51.4% | [40.0%, 62.8%] |
| 他FX(EURUSD等) | 80 | 27/80 | 33.8% | [24.3%, 44.6%] |
| jpy_fx(円クロス) | 47 | 14/47 | 29.8% | [18.7%, 44.0%] |
| 金属(GC=F/SI=F) | 40 | 8/40 | 20.0% | [10.5%, 34.8%] |
| BTC | 24 | 7/24 | 29.2% | [14.9%, 49.2%] |
| 原油 | 12 | 4/12 | 33.3% | [13.8%, 60.9%] |
1H足ロング グループ別
| グループ | N | 勝ち/N | 勝率 | 95%CI |
|---|---|---|---|---|
| 指数(NKD=F等) | 91 | 49/91 | 53.8% | [43.7%, 63.7%] |
| jpy_fx(円クロス) | 76 | 37/76 | 48.7% | [37.8%, 59.7%] |
| 他FX(EURUSD等) | 109 | 36/109 | 33.0% | [24.9%, 42.3%] |
| 金属(GC=F/SI=F) | 49 | 7/49 | 14.3% | [7.1%, 26.7%] |
| BTC | 28 | 8/28 | 28.6% | [15.3%, 47.1%] |
| 原油 | 14 | 11/14 | 78.6% | [52.4%, 92.4%] |
最も大きな差は jpy_fx×ロング の時間足比較です:4H足が14/47=29.8%(CI=[18.7%,44.0%])、1H足が37/76=48.7%(CI=[37.8%,59.7%])——差は18.9%ポイントです。
図2:jpy_fx(円クロス)×ロングの 4H足 vs 1H足 勝率比較。4H足は29.8%(14/47)で損益分岐43%を大幅に下回る。1H足は48.7%(37/76)で損益分岐付近。実際の価格チャートではありません。
なぜ jpy_fx で時間足差が大きいのか
この差の原因は本検証データからは断定できません。考えられる仮説として:
- 円クロスは日本時間帯の流動性が高い「1H足の動き」が多く、4H足では「既に動いた後」に発火している可能性
- 1H足ではより短い反発を捉えられるが、4H足では移動平均線などの追いかけ入りになりやすい可能性
- 小サンプルによる偶然の偏り(jpy_fx 4H=N=47 はまだ少ない)
このメカニズムは 次回以降 の検証候補として記録します(探索的仮説)。
⑥ 結果④——4H足ショートはロングと正反対
4H足には「ロングは弱い」とは真逆の面があります。4H足ショート(54/108)は勝率 50.0%(CI=[40.7%,59.3%])で、4H足ロング(35.2%)との差は 14.8%ポイントと非常に大きいです。
4H足ショートのグループ別では:
- 他FX×4H足ショート:14/23=60.9%(N=23)
- BTC×4H足ショート:8/11=72.7%(N=11・小サンプル)
- 金属×4H足ショート:11/22=50.0%(N=22)
- 指数×4H足ショート:12/25=48.0%(N=25)
これは1H足ショートの40.2%(49/122)と比べてもプラス方向に見えます。ただし1H足ショート自体は CI=[31.9%,49.0%] と損益分岐付近で、4H足ショートの50.0%も CI=[40.7%,59.3%] で統計的確定打には引き続き件数が必要です。
⑦ 事前基準の評価——4条件すべてクリア
| 事前宣言基準 | 判定 | 数値 |
|---|---|---|
| 主仮説:4H×L の CI 上限 < 43% | ✅ クリア | CI 上限 41.0% < 43% |
| 金属比率差 < 5%ポイント | ✅ クリア | 差 1.3%ポイント |
| 金属除外後も 4H < 1H | ✅ クリア | 37.8% vs 44.3%(6.5pp差継続) |
| jpy_fx での差 > 10%ポイント | ✅ クリア | 4H=29.8% vs 1H=48.7%(18.9pp差) |
4H足ロング(96/273)の勝率 35.2%、95%CI 上限 41.0% は損益分岐 43% を下回る。金属比率差(1.3pp)による交絡も否定。4H足ロングシグナルは期待値マイナスであることが確認されました。
この発見の実用的な意味
4H足ロングシグナルが届いたとき、それだけを理由にエントリーすることは統計的には不利だということを示しています。ただし:
- 指数(NKD=F、ES=F等)×4H足ロングは51.4%(36/70)とプラス方向に見える——グループ別の吟味が重要
- 4H足ショートは50.0%(54/108)と方向依存性がある——4H足の全否定ではない
- 前向きトラッカー(tf=4h×dir=long)は本日登録したばかりで、ライブ確認はこれから
⑧ 📡 前向きトラッカー定点観測
過去データ(in-sample)の検証と並行して、「登録日以降の新規シグナル」を前向き(out-of-sample)で追跡しています。
📡 前向きトラッカー定点観測
| 仮説 | 種別 | 宣言基準 | 前向き現在値(平均R) | 状態 |
|---|---|---|---|---|
| 指数×ロング(全足ライブ) | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.57 CI[+0.24~+0.90](29/43・勝率67%) | 🟡蓄積中 |
| trend=中立・もみあい×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -0.25 CI[-0.66~+0.16](9/28・勝率32%) | 🟡蓄積中 |
| 売られすぎ逆張り買い(rsi_oversold_bounce・全足) | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R -0.22 CI[-0.70~+0.26](7/21・勝率33%) | 🟡蓄積中 |
| trend=中立・もみあい×dir=short | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.33 CI[-0.29~+0.96](8/14・勝率57%) | 🟡蓄積中 |
| group=metal | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -0.22 CI[-0.98~+0.54](3/9・勝率33%) | 🟡蓄積中 |
| trend=下降×dir=short | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -0.42 CI[-1.17~+0.33](2/8・勝率25%) | 🟡蓄積中 |
| group=metal×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -0.00 CI[-0.92~+0.92](3/7・勝率43%) | 🟡蓄積中 |
| group=other_fx×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -0.22 CI[-1.19~+0.74](2/6・勝率33%) | 🟡蓄積中 |
| group=metal×reversalL | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.40 CI[-0.72~+1.52](3/5・勝率60%) | 🟡蓄積中 |
| trend=中立・もみあい×reversalL | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +1.33 CI[+1.33~+1.33](3/3・勝率100%) | 🟡蓄積中 |
| other_fxクロス(日足・回避) | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -1.00 CI[-1.00~-1.00](0/1・勝率0%) | 🟡蓄積中 |
| group=btc×reversalL | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +1.33 CI[+1.33~+1.33](1/1・勝率100%) | 🟡蓄積中 |
| group=btc×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +1.33 CI[+1.33~+1.33](1/1・勝率100%) | 🟡蓄積中 |
| tf=4h×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.00 CI[+0.00~+0.00](0/0・勝率0%) | 🟡蓄積中(本日新規登録) |
本日注目のエントリー:
- 指数×ロング(全足ライブ):前向き 29/43=67%、平均R+0.57 CI[+0.24~+0.90]。N=43はまだ基準(N≥80)に届かないが、CI 下限がプラスで推移。引き続き蓄積中。
- tf=4h×dir=long(本日新規登録):in-sample で 96/273=35.2%、期待値R=-0.18 が FDR 通過。前向きは 0/0 でこれから計測開始。
⑨ 次回に向けて
今回の検証で残った主な未解決問題:
- jpy_fx × 4H足ロングが特に弱い理由——シグナル種別(macd_dead等)との交絡?時間帯効果?前向きデータが積み上がり次第、掘り下げ検証の候補
- 4H足ロング × 指数の頑健性確認——51.4%(36/70)はプラス方向だが、CI=[40.0%,62.8%] で確定打なし。前向きN積み上げ待ち
- 4H足ショートの精査——50.0%(54/108)は有望だが、グループ×シグナル別での継続検証が必要
⚠️ 本記事は情報提供を目的としており、投資助言・投資勧誘ではありません。掲載されている統計・数値は過去のシステムシグナルの集計結果であり、将来の相場を予測または保証するものではありません。当サイトは金融商品取引業者ではなく、金融商品取引法に基づく投資助言業・代理業の登録を行っていません。記載内容はいかなる意味においても投資の推奨・勧誘を目的としたものではありません。投資判断はご自身の責任と判断のもとで行ってください。