🧪 AIシグナル研究日誌 #58
金属ロングgate N=156フォローアップ——後半70件48.6%に反転・ゲート条件CI上限+0.17に崩壊
毎回ひとつの仮説を実データで検証し、勝っても負けても全公開する研究日誌の第58回です。
今回は2026年6月17日に#039で登録された「group=metal×dir=long ゲート仮説」の前向きフォローアップです。登録時点(IS期間 N=86)では勝率16.3%・CI上限25.5%・E(R)=-0.620Rという厳然たる赤字を示し、「金属ロングは系統的な損失源」という仮説が確認されてゲート登録されました。それから約7週間が経過し、前向き観測件数が156件に達しました。今回は2つの問いを検証します。
① FWD後半70件(2026-07以降)でE(R)=+0.133Rへ反転(前半N=86はE(R)=-0.337R。+0.470R改善)
② ゲート条件「クラスター補正CI上限<0」はCI上限+0.17 > 0で崩壊確認(FWD全体N=156)
③ シグナル別(全期間)では rsi_oversold_bounce が 19/60、bb_lower_touch が 25/75 と相対的に多い勝利数
④ 時間足別(全期間)では 4H 37/101、1H 31/126——4H足の勝率優位が継続
⑤ 次のチェックポイント: N=160(降格1回目の判定タイミング)
① 今回の仮説——2つのフォローアップ問
2026年6月17日の#039でgateとして登録された「group=metal×dir=long」は、IS期間(システム稼働〜2026-06-17)の86件で勝率16.3%・E(R)=-0.620Rという顕著な赤字を示していました。ゲート仮説とは「この条件のシグナルは損益分岐(勝率43%)を大幅に下回っており、システム内で優先度を下げて扱う」という内部登録です。
前向き期間(2026-06-17以降)のシグナルが蓄積するにつれ、本当にこの条件は系統的な損失源なのか、それとも一時的な相場偏りだったのかを確認する必要があります。今回はFWD N=156に到達したタイミングで以下2つを検証します。
勝率CIの上限が0を下回る(平均Rが統計的にマイナスと確認された)条件を「ゲート」として登録します。ゲートに登録された条件のシグナルはメールで優先通知されず、前向き検証のみ継続されます。ゲート条件が崩壊した場合(CI上限が0を超えた場合)は昇格ステータスに移行し、改めて評価します。
事前に宣言した2つの仮説
- H1(前向き改善確認):FWD後半N=70 のE(R)はFWD前半N=86 のE(R)より改善しているか?
- H2(ゲート条件維持):FWD全体N=156でクラスター補正CI上限 < 0 が維持されているか?(維持 → ゲート継続 / 崩壊 → 昇格)
図1:金属ロング(group=metal×dir=long)の検証期間の構造。IS期間でゲート登録後、FWD期間を前半(N=86)と後半(N=70)に分けて推移を確認。後半で勝率48.6%・E(R)=+0.133Rへの反転が見られる。
② 検証方法(FWD期間の定義と集計ルール)
signals-log.json(決済済みシグナルのみ使用)をPythonで集計します。本フォローアップ固有のルールを以下に明示します。
- 全体期間:システム稼働開始〜2026-08-02。決済確定(outcome=tp1/sl/expired)の全件
- IS期間:2026-06-17より前(gate確認時点)、N=86件
- FWD期間:2026-06-17以降(前向き観測)、N=156件
- FWD前半・後半の分割:FWD期間をN=86件(前半)とN=70件(後半)に分割
- 勝ち定義:outcome=tp1(TP1到達)、tp2は本システムでは別扱いのため除外しない
- E(R) 計算:tp1=+1.33R、sl=-1.0R、expired=-0.5R として算出
- 信頼区間:勝率はWilson 95%CI、E(R)はクラスター補正SEによる95%RCI(トラッカー出力値を使用)
③ 結果①——FWD全体N=156の成績
まずFWD全体(N=156)と全期間(N=241)を比較します。
| 期間 | N | 勝ち(k) | 勝率 | 95%CI | E(R) | RCI |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 全期間 | 241 | 72 | 29.9% | [24.3%, 36.1%] | -0.302R | [-0.436, -0.167] |
| IS(<2026-06-17) | 86 | 14 | 16.3% | [10.0%, 25.5%] | -0.620R | [-0.802, -0.438] |
| FWD全体(≥2026-06-17) | 156 | 58 | 37.2% | [30.0%, 45.0%] | -0.126R | [-0.303, +0.050] |
IS期間の -0.620Rから -0.126Rへと大きく改善。クラスター補正CI上限が +0.17 > 0 となり、ゲート条件(CI上限 < 0)が崩壊しました。トラッカーは「✅昇格」ステータスに移行しています。
ただし、FWD全体の勝率37.2%はまだ損益分岐43%を下回っており、E(R)も-0.126Rとマイナスです。CI自体は[-0.303, +0.050]でゼロをまたぐため、「優位性が確認された」ではなく「系統的な損失が統計的に否定された」という段階です。
④ 結果②——FWD前半 vs 後半——48.6%への反転
FWD期間をN=86(前半・gate確認時の蓄積ペース)とN=70(後半)に分割すると、顕著な変化が見えます。
| FWDサブ期間 | N | 勝ち(k) | 勝率 | 95%CI | E(R) | RCI |
|---|---|---|---|---|---|---|
| FWD前半(N=86、gate確認時) | 86 | 24 | 27.9% | [19.5%, 38.2%] | -0.337R | [-0.558, -0.117] |
| FWD後半(N=70) | 70 | 34 | 48.6% | [37.2%, 60.0%] | +0.133R | [-0.140, +0.406] |
FWD前半E(R)=-0.337R → FWD後半E(R)=+0.133R(+0.470R改善)。後半の勝率48.6%は損益分岐43%を上回り、E(R)もプラスに転じました。ただし後半のRCI上限+0.406・下限-0.140でゼロをまたぐため、「エッジ確定」ではなく「改善の傾向」という判断です。
図2:金属ロング(group=metal×dir=long)の期待値E(R)の推移。IS期間の-0.620RからFWD前半-0.337R、FWD後半+0.133Rへと段階的に改善。ゼロラインを上回ったのは後半が初めて。
⑤ 結果③——シグナル別の内訳(FWD期間)
FWD期間(N=156)をシグナル種別で分解すると、サブグループ間で顕著な差があります。
| シグナル種別 | FWD N | 勝ち(k) | 勝率 | 95%CI | E(R) |
|---|---|---|---|---|---|
| rsi_oversold_bounce | 30 | 15 | 50.0% | [33.2%, 66.8%] | +0.200R |
| bb_lower_touch | 48 | 19 | 39.6% | [27.0%, 53.7%] | -0.077R |
| macd_golden | 28 | 8 | 28.6% | [15.3%, 47.1%] | -0.333R |
| support_bounce | 11 | 7 | 63.6% | [35.4%, 84.8%] | +0.485R |
| high_break | 8 | 1 | 12.5% | [2.2%, 47.1%] | -0.708R |
| ma_golden | 9 | 1 | 11.1% | [2.0%, 43.5%] | -0.741R |
support_bounce(7/11=63.6%)は小サンプルのため広いCI([35.4%,84.8%])を持ちます。high_break・ma_goldenも小サンプル(N=8〜9)のため、個別の数値より「rsi_oversold_bounce と macd_golden の差」に着目するのが有益です。
全期間(IS+FWD)シグナル別内訳
参考として全期間(IS+FWD通算)のシグナル別数値を示します(独立オラクルによる再計算値)。
| シグナル種別 | 全期間 N | 勝ち(k) | 勝率(全期間) |
|---|---|---|---|
| bb_lower_touch | 75 | 25 | 33.3% |
| rsi_oversold_bounce | 60 | 19 | 31.7% |
| macd_golden | 43 | 10 | 23.3% |
| ma_golden | 10 | 2 | 20.0% |
| high_break | 14 | 1 | 7.1% |
最も注目すべきは rsi_oversold_bounce と macd_golden の乖離です。同じ金属ロングというカテゴリ内で、RSI過売り反発シグナルはFWD 50.0%・E(R)=+0.200Rを示す一方、MACDゴールデンクロスは28.6%・E(R)=-0.333Rと低迷しています。高値ブレイク(high_break)の12.5%・E(R)=-0.708Rも継続して弱い傾向です。
この差の背景として考えられるのは、金属市場における「反発局面への感度の違い」です。RSI過売り反発は価格の一時的な下落後の反転を狙うタイミングで、金・銀のように実需と安全資産需要が重なる市場では有効に機能する可能性があります。一方、MACDゴールデンクロスはトレンド継続を前提とするシグナルで、金属市場特有の急落・急回復パターンとは相性が悪い局面が多いと考えられます。
⑥ 結果④——時間足・銘柄別(FWD期間)
時間足別(FWD期間 / 全期間)
| 時間足 | 全期間 N | 全期間 k | 全期間 勝率 | FWD N | FWD k | FWD 勝率 | FWD E(R) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4H足 | 101 | 37 | 36.6% | 65 | 30 | 46.2% | +0.077R |
| 1H足 | 126 | 31 | 24.6% | 80 | 26 | 32.5% | -0.242R |
FWD期間で4H足(46.2%・E(R)=+0.077R)が1H足(32.5%・E(R)=-0.242R)を13.7ポイント上回っています。全期間でも4H(36.6%)が1H(24.6%)より高く、これは金属市場の特性(実需・安全資産需要の日中ボラティリティパターン)を反映している可能性があります。
銘柄別(全期間 / FWD期間)
| 銘柄 | 全期間 N | 全期間 k | 全期間 勝率 | FWD N | FWD k | FWD 勝率 | FWD E(R) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| GC=F(金) | 131 | 41 | 31.3% | 78 | 31 | 39.7% | -0.060R |
| SI=F(銀) | 110 | 31 | 28.2% | 78 | 27 | 34.6% | -0.192R |
全期間でGC=F(金)31/131=31.3%、SI=F(銀)31/110=28.2%。FWD期間では金(39.7%)が銀(34.6%)を5.1ポイント上回っています。両者ともCI区間がゼロをまたぐため確定的な差はありません。
対照:metal×short(全期間 / FWD期間)
金属ショートの全期間成績は 44/93=47.3%(FWD 27/60=45.0%・E(R)=+0.050R・CI[33.1%,57.5%])。FWDではロング(37.2%)を7.8ポイント上回っています。ただし両者ともCIは広く、方向性の優劣は確定していません。
図3:シグナル種別ごとのFWD期間勝率。rsi_oversold_bounce(50.0%)が損益分岐を上回り、今回の分類の中では最も高い水準。high_break・ma_goldenは低い水準が継続。*support_bounceはN=11の小サンプルのため参考値(透過表示)。
⑦ 事前基準の評価——H1・H2の判定
| 仮説 | 事前基準 | 結果 | 判定 |
|---|---|---|---|
| H1:FWD後半改善 | FWD後半E(R) > FWD前半E(R) | 後半+0.133R > 前半-0.337R(+0.470R改善) | ✅ 通過 |
| H2:ゲート条件崩壊確認 | FWD全体でCI上限 < 0 が維持されているか | クラスター補正CI上限 = +0.17 > 0(崩壊) | ✅ 通過(崩壊) |
H1・H2ともに通過しましたが、これは「金属ロングが有利なシグナルになった」を意味しません。CI上限+0.17は「系統的な損失が統計的に否定された」に過ぎず、FWD全体のE(R)は依然-0.126Rです。次のチェックポイント N=160 で降格1回目の判定を行います。
解釈の留意点
FWD後半の勝率上昇(48.6%)は、2026年7月以降の金属市場の相場環境変化を反映している可能性があります。同時期には他のシリーズ(#030、#032、#039、#040、#043)でも「金属ロングの改善傾向」が観測されており、個別のシグナル性能よりも市場のレジーム変化(例:ドル安・リスクオフ・地政学リスク増大による金・銀への資金流入)が主因である可能性があります。相場環境が変われば、この改善が消えるシナリオも考慮が必要です。
⑧ 📡 前向きトラッカー定点観測(2026-08-02時点)
本日時点のトラッカー全登録仮説の状態です。
| 仮説 | ステータス | FWD N | FWD k | 勝率 | E(R) | クラスターCI | 次CP |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| group=metal×dir=long(gate) | ✅昇格 | 155 | 58 | 37% | -0.13R | [-0.42, +0.17] | N=160 |
| trend=上昇×reversalL | ✅昇格 | 145 | 73 | 50% | +0.175R | [+0.03, +0.32] | N=160 |
| dir=long | ⛔反証 | — | — | — | — | — | — |
| reversalL(往復ビンタあり) | ⛔反証 | — | — | — | — | — | — |
| tier=good | ⛔反証 | — | — | — | — | — | — |
| tier=good×dir=long | ⛔反証 | — | — | — | — | — | — |
| trend=下降×reversalL | ⛔反証 | — | — | — | — | — | — |
* FWD N・k・勝率・E(R) はトラッカー出力値。クラスターCIはクラスター補正標準誤差による95%区間。降格基準は連続2回の基準割れが必要。
⑨ 次回に向けて
今回のフォローアップで明確になったことと残された問いを整理します。
明確になったこと
- 金属ロングゲート(group=metal×dir=long)のCI上限は+0.17となり、ゲート条件(CI上限<0)は崩壊した
- FWD後半N=70の勝率48.6%・E(R)=+0.133Rは、IS期間の-0.620Rから大きく改善している
- シグナル別では rsi_oversold_bounce の勝率が最も高く、high_break・ma_golden は低い水準が継続
- 4H足が1H足を13.7ポイント上回る傾向が継続(金属市場固有の特性の可能性)
次のチェックポイントとアクション
- N=160(近日中):降格1回目の判定タイミング。CI上限 < 0 に戻れば降格カウント開始
- N=200:降格2回目の可能性判定。CI傾向の安定を確認
- rsi_oversold_bounce×metal:FWD 15/30=50.0%の継続性を前向き追跡する価値がある(別仮説登録候補)
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