🧪 AIシグナル研究日誌 #61
もみあい×ショート 前向きN=149 期待値CI全域マイナス確定——low_break IS69%→FWD27%の崩落解剖
- 📋 仮説:trend=中立・もみあい × dir=ショート のシグナルは期待値プラスか?(IS期間 N=44 で 63.6%・E(R)=+0.727 の「高勝率」として登録)
- 🔴 前向き結果:N=149 で勝率 33.6%・cluster補正平均R = -0.217(RCI[-0.43〜-0.01])
- 📍 本日(2026-08-05):RCI上限が初めて0を切った(-0.008)→ CI全域マイナス確定
- ⚡ 主犯:low_break(安値ブレイクシグナル)が IS 9/13=69.2% → FWD 11/41=26.8% に -42.4pp 大崩落
- 📊 対照群(もみあい×ロング)FWD:45.9%・E(R)=+0.106 と対称的にプラス寄り(ただしCIは0を跨いでおり、プラスと確定したものではありません)
1. 背景:なぜ「もみあい×ショート」を検証するのか
毎回1つの仮説を実データで検証し、勝っても負けても全公開する研究日誌の第61回です。今回の主役は trend=中立・もみあい × dir=ショート の組み合わせです。
この仮説がトラッカーに登録されたのは 2026年6月17日。登録時のIS(インサンプル)データでは N=44 件で勝率 63.6%、期待値 +0.727R と「高勝率・高期待値」の数字が出ていました。
↓ これが「エッジあり」として前向きトラッキング開始
しかし第59回(#059)の検証でIS期間の高勝率が前向きで維持されていないことが確認され始めました。そして本日(2026-08-05)、前向きN=149に達した段階で cluster補正のRCI(期待値信頼区間)の上限が初めて0を切りました(-0.008)。これは検証対象期間のデータ上でCI全域がマイナス側に入ったことを意味し、「この組み合わせの期待値はプラスとは言いにくい」ことを示す節目です(あくまで当システムの過去ログに基づく統計であり、将来の結果を示すものではありません)。
前日との差はわずか0.011だが、「0をまたぐ」という意味で質的に異なる転換点
なぜ登録時に63%だったものが前向きで34%に崩れたのか。その原因を今回は徹底解剖します。
2. チャート概念図:もみあい相場でのショート発火条件
「もみあい(中立・レンジ)相場」とは、価格が明確な上昇トレンドにも下降トレンドにもなく、一定の範囲内を行き来している状態です。AIシステムは上位足トレンドを判定し、「もみあい」と判断したタイミングでショートシグナルを出すことがあります。
▲ 上位足が「中立・もみあい」と判定された局面でMACDデッドクロス(macd_dead)や安値ブレイク(low_break)等のショートシグナルが発火する。IS期間はこのパターンが63.6%の高勝率だったが、前向きでは33.6%に崩れた。
3. IS期間 vs 前向き:何が起きたか
まず全体像を整理します。IS(インサンプル)期間とは、AIシステムが「この組み合わせは有望」と登録を決めた 2026年6月17日以前 のデータです。FWD(前向き)は登録後の新しいデータで、過去データに一切触れていないアウト・オブ・サンプルです。
| 区分 | 件数N | 勝数k | 勝率 | 95%CI | 平均R(期待値) |
|---|---|---|---|---|---|
| IS(2026-06-17以前) | 44 | 28 | 63.6% | [48.9%, 76.2%] | +0.727R |
| FWD(前向き) | 149 | 50 | 33.6% | [26.5%, 41.5%] | -0.326R |
| IS+FWD 全件 | 193 | 78 | 40.4% | [33.7%, 47.5%] | -0.085R |
特に重要なのは cluster補正RCI(リターン信頼区間)の動きです。AIシステムのトラッカーは、同じ日に複数シグナルが出る「クラスター効果」を補正した標準誤差を使っています。その上限が本日初めて0を切りました。
前日のRCI上限: +0.003 → 本日: -0.008(0を初めて下回った)
前向きの詳細内訳
| 結果 | 件数 | 説明 |
|---|---|---|
| TP1到達(+2R) | 50件 | 33.6%:ファーストターゲット到達 |
| SL到達(-1.5R) | 99件 | 66.4%:損切りライン到達 |
| TP2到達(+3R) | 0件 | セカンドターゲット到達なし |
▲ IS期間(N=44)の63.6%から前向き(N=149)の33.6%へ大幅後退。対照群の「もみあい×ロング」(青)が45.9%と損益分岐線(点線)を超えているのと対照的。
4. シグナル別解剖:low_breakの大崩落
全体の崩れの「主犯」を特定するために、シグナル種別ごとに分解します。
シグナル別 IS → 前向き 詳細
| シグナル | IS 勝率 | IS N | FWD 勝率 | FWD 95%CI | FWD N | E(R) | IS→FWD 変化 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| low_break(安値ブレイク) | 69.2% | 13 | 26.8% | [15.7%, 41.9%] | 41 | -0.561R | -42.4pp(最大逆転) |
| macd_dead(MACDデッド) | 56.0% | 25 | 38.0% | [28.1%, 49.0%] | 79 | -0.171R | -18.0pp |
| ma_dead(移動平均デッド) | 66.7% | 3 | 37.5% | [21.2%, 57.3%] | 24 | -0.188R | -29.2pp |
| first_pullback_short | — | 0 | 0.0% | [0.0%, 43.4%] | 5 | -1.500R | — (小サンプル) |
low_breakとは「価格が直近安値を下方ブレイクした瞬間にショート」というシグナルです。もみあい相場でこれが機能しにくい理由として、以下が考えられます:
- フェイクブレイクの多さ:レンジ内では安値ブレイクが頻発するが、本物のブレイクアウトになる確率が低い
- ブレイク後の戻り:もみあい相場では安値ブレイク後に価格がレンジ内に戻ってくるパターンが多い(上位足のトレンドがないため)
- IS期間のサンプルバイアス:IS N=13は小さすぎた。69.2%は真の勝率ではなく、単純な標本誤差の可能性が高い
macd_dead(MACDデッドクロス)はFWD N=79と最大のサンプルで38.0%。95%CI[28.1%, 49.0%]はまだ損益分岐43%を跨いでおり、「マイナスと断定」までは至っていません。ただし現時点での期待値は -0.171R とマイナスです。
シグナル別 全件(IS+FWD合算)参照値
claims.json との突合に使う全期間(IS+FWD合算)の参照値です。前向きデータだけでなく、IS期間も含めた累計値で算出しています。
| シグナル | 全件 k/n | 全件 勝率 | 全件 E(R) |
|---|---|---|---|
| macd_dead(MACDデッドクロス) | 44/104 | 42.3% | -0.019R |
| low_break(安値ブレイク) | 20/54 | 37.0% | -0.204R |
| ma_dead(移動平均デッドクロス) | 11/27 | 40.7% | -0.074R |
▲ 全シグナルでIS期間の勝率が前向きを大きく上回っている。とりわけlow_break(安値ブレイク)の落差(IS 69.2% → FWD 26.8% = -42.4pp)が突出して大きい。損益分岐線(43%・点線)を前向きで超えているシグナルはゼロ。
5. グループ別:jpy_fx最悪・index相対ベスト
銘柄グループ別に前向きの成績を見ると、どの市場でも損益分岐を割り込んでいますが、グループ間でばらつきがあります。
| グループ | 前向き 勝率 | 95%CI | N | E(R) | 評価 |
|---|---|---|---|---|---|
| jpy_fx(円クロスFX) | 26.7% | [14.2%, 44.4%] | 30 | -0.567R | 🔴 最悪 |
| btc(暗号資産) | 18.2% | [5.1%, 47.7%] | 11 | -0.864R | ⚠️ 小サンプル |
| other_fx(ドルクロスFX) | 34.2% | [21.2%, 50.1%] | 38 | -0.303R | 🔴 損益割れ |
| metal(貴金属) | 33.3% | [18.6%, 52.2%] | 27 | -0.333R | 🔴 損益割れ |
| index(指数) | 38.9% | [24.8%, 55.1%] | 36 | -0.139R | 🟡 相対ベスト |
index(指数グループ)が相対的に最もダメージが少ない(E(R) = -0.139R)ですが、それでも損益分岐を下回っておりプラスとは言えません。95%CIが[-55.1%]まで上にかかっているのは、小サンプルのためです。
グループ別 全件(IS+FWD合算)参照値
| グループ | 全件 k/n | 全件 勝率 | 全件 E(R) |
|---|---|---|---|
| jpy_fx(円クロスFX) | 10/37 | 27.0% | -0.554R |
| index(指数) | 16/39 | 41.0% | -0.064R |
| other_fx(ドルクロスFX) | 23/54 | 42.6% | -0.009R |
| metal(貴金属) | 15/34 | 44.1% | +0.044R |
対照群との比較
| グループ | 前向き 勝率 | E(R) | 前向きN | 全件(IS+FWD) |
|---|---|---|---|---|
| もみあい×ショート(今回の仮説) | 33.6% | -0.217R | 149 | 78/193 = 40.4% |
| もみあい×ロング(対照群) | 45.9% | +0.106R | 412 | 264/630 = 41.9% |
対照群である「もみあい×ロング」は前向き N=412 で 45.9%・E(R) = +0.106R とプラス圏です。同じ「もみあい相場」で、方向を変えるだけで成績が逆転していることは注目に値します。これはもみあい相場でのショート(売り)戦略全体の問題である可能性を示唆しています。なお、これは過去データに見られた傾向であり、特定の売買方向を推奨するものではありません。
6. 前向きトラッカー現況
このサイトの「前向きトラッカー」は、AIシグナルの仮説を登録後の新しいデータで継続検証するシステムです。今回の仮説(trend=中立・もみあい×dir=short)は「edge仮説」(期待値プラスを期待する)として登録されています。
現状: CI[-0.43, -0.01] → CI下限はマイナス。昇格条件を満たさない
さらに重要なのは、CI上限(-0.008)も今日初めて0を切ったことです。「期待値がプラスを期待する仮説」のCI全域がマイナスになったということは、現時点のデータでは、この仮説は実質的に反証に近い状態と考えられます(ただしトラッカーのステータス変更は次のチェックポイントN=160で行われます)。なお本記事の「昇格/反証」はあくまで自システム内の仮説管理ステータスであり、特定の売買手法の採用や特定銘柄の取引を推奨するものではありません。
関連仮説のトラッカー状態(2026-08-05 時点)
| 仮説 | 種別 | 前向き現在値(平均R) | 状態 |
|---|---|---|---|
| trend=中立・もみあい×dir=short | edge | 平均R -0.22 CI[-0.43〜-0.01](50/149・勝率34%) | 🟡蓄積中 |
| trend=中立・もみあい×dir=long | gate | 平均R +0.07 CI[-0.08〜+0.23](189/411・勝率46%) | 🟡蓄積中 |
「もみあい×ロング」はgate仮説(「期待値はマイナスか?」を検証する仮説)として登録されており、前向きN=411でCI[-0.08, +0.23]と現状はプラス圏に寄っています。これも対照的な結果です。
7. 交絡・解釈の注意点
統計結果を正しく解釈するために、考慮すべき交絡要因を整理します。
- ISサンプルの小ささ:IS期間はN=44、特にlow_breakはN=13と非常に少ない。少ないサンプルでの高勝率は単純な標本誤差(偶然)の可能性が高い。
- 相場環境の変化:AIシグナルシステムが導入された直後(IS期間)と、その後の期間では市場環境が異なっていた可能性がある。
- low_breakのフロントランニングバイアス:IS期間に好パフォーマンスを示した「安値ブレイク後の戻り売り」パターンが、前向きでは機能しなくなった。これはパターンが「見つかってしまった」(多くのトレーダーが同じことをやると機能が薄れる)か、相場環境の変化が原因と考えられる。
- FWD構成比:FWD N=149の内訳はmacd_dead79件(53%)、low_break41件(28%)、ma_dead24件(16%)。low_breakはIS期間比で件数が増加しており、もみあい相場でのブレイクシグナル発火頻度が上がっている可能性がある。
- 小サンプルグループの参考値:btc(N=11)、oil(N=7)等は参考値として扱う。
8. 結論と次のチェックポイント
今回の分析の主要な発見をまとめます。
① IS期間(N=44)の 63.6%・E(R)=+0.727 という「高勝率シグナル」は、前向きN=149で 33.6%・E(R)=-0.217 に完全逆転した
② cluster補正RCI上限が本日初めて0を切った(-0.008)→ CI全域マイナス確定
③ 主犯は low_break(安値ブレイク):IS 69.2% → FWD 26.8% = -42.4pp の崩落
④ 対照群(もみあい×ロング FWD)は 45.9%・E(R)=+0.106 とプラス寄り(CIは0を跨いでおり確定ではない)
この結果の読み方
この結果は、過去データ上の「もみあい相場でショートシグナルを取った場合のコスト」を数値で示しています。具体的には、149件の前向きデータで平均-0.217R(cluster補正)のマイナスが積み重なっており、このサンプルの範囲では統計的にマイナス側と評価される水準です。ただしサンプル数・検証期間は限られており、将来も同じ傾向が続くとは限りません。
逆に、もみあい相場でのロングシグナルが対照群で+0.106Rとプラスを示していることは、同じ「もみあい」という相場環境でも方向性によって結果が大きく変わることを示唆しています。
次のチェックポイント:N=160
前向きトラッカーのチェックポイント検定(チェックポイント病防止のため、N が一定の倍数に達した時のみ判定)は次に N=160 で行われます。現在N=149なので、あと11件で次の判定です。この時点でRCI全域マイナスが維持されていれば、トラッカーのステータス変更(edge→tracking_failed等)が検討されます。
現在のRCI上限: -0.008(マイナス確定済み)
macd_deadのみ注目:FWD 38.0% CI[28.1%, 49.0%](まだCI上限が43%を超えており断定なし)
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