🧪 AIシグナル研究日誌 #66
下降トレンド gate FWD N=519 でCI下限プラス到達——IS→FWD 転換の全解剖
毎回ひとつの仮説を実データで検証し、勝っても負けても全公開する研究日誌の第66回です。
今回は「trend=下降 gate仮説」の前向き(FWD)N=519到達時点での中間解剖です。この仮説は「上位足トレンドが下降している局面でのシグナル発火を避けるべき」という回避ルールです。IS(in-sample)期間では勝率35.8%と明確に損失圏にあり、ゲートとして強力に機能していました。しかし前向き期間に入って以降、劇的な変化が起きています——FWD勝率は47.8%まで上昇し、期待値の95%CI下限が初めてプラス圏(+0.023R)に到達しました。ゲートは崩れつつあるのでしょうか。
結論:FWD期間単独では期待値がプラス転換したが、全期間では±0(42.7%、−0.004R)。トラッカー(cluster調整済み)はまだ🟡蓄積中。⛔反証確定には連続2本の条件ヒットが必要。金属グループの IS 22.8%→FWD 53.4% レジーム転換が主因。
① 「trend=下降 gate」とは何か
このシステムでは、シグナル発火のたびに上位足トレンド(trend_alignment.higher_tf_trend)を記録します。値は「上昇」「下降」「中立・もみあい」「unknown」の4種です。
過去の研究日誌では「IS期間において下降トレンド中のシグナルは全体平均を大幅に下回る」ことが繰り返し確認され、「trend=下降のシグナルは回避する」というgate仮説として登録されました。gateとは「取引を避けるべき条件」であり、CI全域がマイナス(CI_upper < 0)であれば回避が統計的に確定します。
図1:trend=下降 gate の発火構造。上位足トレンドが下降中に下位足シグナルが発火した場合に「取引回避」ルールが発動する。IS期間はゲートが有効だったが、FWD期間で崩壊の兆候が現れている。
② IS期間 vs FWD期間:全体比較
下表は trend=下降 gate仮説の全体成績をIS(学習期間)とFWD(前向き期間:2026-06-25以降)に分けて示したものです。
| 期間 | N(決済済み) | 勝数 | 勝率 | 期待値 E(R) | 95%CI(R) |
|---|---|---|---|---|---|
| IS期間 | 377 | 135 | 35.8% | −0.247R | [−0.412, −0.072] |
| FWD期間 | 519 | 248 | 47.8% | +0.172R | [+0.023, +0.324] |
| 全期間(IS+FWD) | 896 | 383 | 42.7% | −0.004R | [−0.117, +0.110] |
IS→FWD での改善量は +0.419R(−0.247R → +0.172R)に及びます。IS期間はN=377で95%CI全域がマイナス(−0.412〜−0.072)であり、ゲートとして非常に強力でした。FWD期間は異質な様相を見せています——これが構造変化なのか、一時的なレジーム変化なのかを次節以降で分解します。
③ IS vs FWD 比較グラフ
図2:IS期間 vs FWD期間の勝率比較。全体・metal・逆張り(reversal)・bb_lower は FWD で大幅改善(青→緑)。high_break だけが FWD でさらに悪化(赤)。損益分岐43%ラインを黄色の点線で示す。
④ グループ別分解:主因は金属の反転
IS→FWD で最も劇的な変化を見せたのは 金属グループ(GC=F 金・SI=F 銀) です。
| グループ | IS k/N | IS勝率 | FWD k/N | FWD勝率 | 全期間 N | 全期間勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| metal(金・銀) | 31/136 | 22.8% | 55/103 | 53.4% | 239 | 36.0%(86/239) |
| index(株価指数) | — | — | 49/95 | 51.6% | 120 | 52.5%(63/120) |
| other_fx(FX USD系) | — | — | 73/156 | 46.8% | 274 | 44.5% |
| jpy_fx(JPY系) | — | — | — | — | 92 | 37.0%(34/92) |
| oil(原油) | — | — | — | — | 65 | 55.4%(36/65) |
金属の反転幅(+30.6pp)は全グループ中最大です。IS期間の22.8%は「下降トレンド中の金属シグナルは圧倒的に損失」を示していましたが、FWD期間(2026-06-25以降)に入ると53.4%まで急騰しています。
このレジーム転換の主な理由として考えられるのは:
- 金(GC=F)の長期上昇トレンド転換:IS期間は金価格が下落局面にあり、下降トレンド中のシグナル(主に売り)が有効だった。しかしFWD期間に入ってから金は上昇トレンドへ移行し、下降トレンドの「下げ」を期待したシグナルが逆方向に動いた可能性。
- ATRの収縮・拡大サイクル:FWD期間には金属のボラティリティが変化し、SL/TP比率に有利な動きが増えた可能性。
重要な注意点として:全期間での金属は 36.0%(86/239)、E(R)=−0.241R(RCI[−0.443, −0.023])とまだ統計的に有意な損失圏にあります。IS期間の重いマイナスが全期間を引っ張っているためで、FWD単独の改善だけでは「metal×下降は取引してよい」とは言えません。
⑤ シグナル別分解:high_break は FWD でも悪化
下降トレンド中に発火するシグナルを種別で比較すると、IS→FWD の改善は均一ではないことが分かります。
| シグナル名 | IS k/N | IS勝率 | FWD k/N | FWD勝率 | 全期間(k/N) | 全期間勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| rsi_oversold_bounce RSI過売り反発 |
29/87 | 33.3% | 28/47 | 59.6% | 57/134 | 42.5% |
| bb_lower_touch −2σタッチ |
26/83 | 31.3% | 62/109 | 56.9% | 88/192 | 45.8% |
| macd_golden MACD GC |
— | — | 38/90 | 42.2% | 56/130 | 43.1% |
| macd_dead MACD DC |
— | — | 35/75 | 46.7% | 55/137 | 40.1% |
| high_break 高値ブレイク |
5/14 | 35.7% | 12/41 | 29.3% | 17/55 | 30.9% |
| low_break 安値ブレイク |
— | — | 9/26 | 34.6% | 25/68 | 36.8% |
| ma_golden MA GC(順張り) |
— | — | 8/27 | 29.6% | 14/35 | 40.0% |
逆張り系(rsi_oversold_bounce・bb_lower_touch)はFWD期間で59.6%・56.9%まで急改善。一方、high_break(高値ブレイクアウト)はIS 35.7%→FWD 29.3%(30.9%全期間)とむしろ悪化しています。全期間でも 17/55=30.9%(RCI[−0.789, +0.040])と95%CI上限がほぼゼロ接触。
これは重要な示唆です——「下降トレンド中の full gate」よりも、「下降トレンド中でも逆張り系は許容し、high_break系は回避継続」という細分化された判断の方が精度が高い可能性があります。ただしこれ自体が新たな仮説であり、IS overfittingに注意が必要です(別回の検証課題)。
⑥ 逆張り vs 順張り:reversal_long の改善分析
trend=下降 × reversal_long(逆張り買い)は別仮説(⛔反証済み: 「下降×逆張りは回避する」が覆された)として既に確定していますが、今回の trend=下降 gate 全体の改善への寄与を確認しました。
| セグメント | IS k/N | IS勝率 | FWD k/N | FWD勝率 | 全期間(k/N) | 全期間勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| reversal_long=True 逆張り買い |
55/170 | 32.4% | 90/156 | 57.7% | 145/326 | 44.5% |
| 非reversal(それ以外) | 80/207 | 38.6% | 158/363 | 43.5% | 238/570 | 41.8% |
| 方向=ロング(全て) | 92/260 | 35.4% | 194/401 | 48.4% | 286/661 | 43.3% |
| 方向=ショート(全て) | 43/117 | 36.8% | 54/118 | 45.8% | 97/235 | 41.3% |
reversal_long(IS 32.4% → FWD 57.7%)の改善幅は +25.3pp で最大ですが、非reversal セグメントも IS 38.6% → FWD 43.5% と +4.9pp 改善しています。つまり、FWD期間の改善は逆張りだけでなく全方位的です——ただし、非reversal のFWD 43.5%は損益分岐43%をわずかに上回る程度であり、全期間(41.8%)では損失圏です。
⑦ 前向きトラッカー現在状態(2026-08-10)
トラッカーはcluster調整済みSE(同一日付の複数発火を1件に圧縮してSEを算出)を使用するため、raw の signal_lab_verify.py 計算値より保守的なCIになります。
| 仮説 | 状態 | FWD N(cluster調整) | E(R) | RCI(cluster調整) | 次のマイルストーン |
|---|---|---|---|---|---|
| trend=下降 gate | 🟡 蓄積中 | N≈517 | +0.12R | [+0.01, +0.23] | ⛔反証には連続2本ヒット要 |
| group=metal × long gate(参考) | ✅ 昇格 | N≈176 | −0.006R | [−0.29, +0.28] | 昇格確定(別仮説) |
trend=下降 gate のcluster調整後 RCI は [+0.01, +0.23] です。下限が +0.01 > 0 に到達しており、理論上は⛔反証の条件(CI_lower > 0)を満たしつつあります。しかし昇格ルール上、⛔反証確定には連続2本の条件ヒットが必要です。本日(2026-08-10)が1本目です。次回の日次sweep(2026-08-11)でもCI_lower > 0 を維持できれば、⛔反証への移行が検討されます。
⑧ 結論と今後の監視ポイント
本日の検証結果を整理します:
- ✅ FWD N=519で期待値CI下限がプラス確定(raw RCI[+0.023, +0.324]):trend=下降 gate は初の「⛔反証候補」条件を満たした
- ✅ IS→FWD の改善は全方位的:reversal_long(+25.3pp)だけでなく非逆張り、ロング、ショートともに改善
- ✅ 金属グループのIS 22.8%→FWD 53.4%が最大の改善要因(+30.6pp)
- ⚠️ 全期間では42.7%(−0.004R):統計的には中立。gate廃止の根拠としては不十分
- ⚠️ high_break はFWDでも悪化(29.3%):このシグナルについては下降トレンド中の回避が引き続き有効である可能性が示唆されます(小標本のため確定的ではありません)
- ⚠️ トラッカーはまだ🟡蓄積中:cluster調整後のCI_lower = +0.01(辛うじてゼロ超え)。連続2本確認が必要
今後の監視ポイント:翌日(2026-08-11)のsweep で trend=下降 gate がCI_lower > 0 を連続して維持できるかが最大の焦点です。市場環境が変わり、金属のFWD改善が一服すれば全期間CIがマイナスに戻ることも考えられます。
本研究は反実仮想分析(過去データへの仮説適用)です。実際の取引には多くの追加リスク要因(スリッページ、資金管理、心理的バイアス等)があります。本記事は情報提供のみを目的としており、特定の売買を推奨するものではありません。
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