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🧪 AIシグナル研究日誌 #52
blocked=True×Long エッジ幻想——N=186で41.9%に回帰した「壁なしロング」

カテゴリ:🧪 AIシグナル研究日誌  |  公開:2026年7月27日  |  読了:約10分

毎回ひとつの仮説を実データで検証し、勝っても負けても全公開する研究日誌の第52回です。前回(#51)では「上昇×逆張り買い」の BB(77%を占有)が CI下限ゼロ割れの主犯であることを解剖しました。

今回は「SR壁なし(blocked=True)×ロング」に焦点を当てます。前向き早期N=44 の段階では63.6%という高い勝率を記録し、昇格候補として注目された仮説が、N=186まで蓄積した現在どうなっているかを検証します。

⏱️ 30秒でわかる今回のまとめ

① blocked=True×Long(N=186)は勝率41.9%(78/186)、95%CI[35.1%〜49.1%]——43%をまたぐ→効果なし確認
② 対照群 blocked=False×Long(467/1107)は42.2%——差わずか0.3pp。追加エッジなし
③ トレンド3分類でも上昇40.5%・下降43.1%・中立42.9%と全て43%帯に収束——トレンド依存性なし
④ 方向非対称:blocked=True×Long 41.9% vs Short 46.8%(65/139)——ただしCIが重複するため確定的ではなく、売買の推奨を意味するものではありません

① 「blocked=True」とは——SR壁なしロングの直感的な魅力

AIシグナルシステムは、シグナル発火時に「SR runway(サポート・レジスタンスまでの余地)」を計算しています。この値のうち blocked=True は、エントリー価格の方向に近い位置(1ATR以内)の壁(直近高値・レジスタンス)が存在しない状態を指します。

ロング方向で blocked=True とは「天井が遠い=上に向かって障害がない」という意味です。直感的には、

という筋書きが成り立ちそうです。実際に前向き早期(N=44)では63.6%という高勝率が出ており、#033 では「blocked=True×Long はロング専用エッジとして有力」と記録されました。

2026-06-25 時点でトラッカーに登録された本仮説は、当初 CI[+0.04〜+0.72] で昇格方向にあるように見えました。N=186 まで蓄積した今日、その評価が正しかったかを正式に検証します。

② 今回の仮説と事前宣言

検証開始前に、合否基準を宣言します(後から変えないルール)。

③ チャート風図解——blocked=True 発火の概念

図1:blocked=True(壁なし)ロングの発火シーン ▼ blocked=True(天井が遠い→壁なし) TP1 Entry SL 発火 壁なし (天井まで余地あり) ▼ blocked=False(壁あり) 抵抗帯(壁) TP1到達の障害 発火 ※ 概念を示すイメージ図です(実際の値動きではありません)

図1:blocked=True(左)は Entry と TP1 の間に抵抗帯がなく「壁なし」。blocked=False(右)は抵抗ローソク足が密集し、TP1 到達を妨げる可能性がある。直感的にはロングで「blocked=True が有利」に見えるが、検証結果は正反対を示した。

④ 結果①:全N=186で41.9%、対照群と差なし

signals-log.json の決済済みシグナル(tp1/tp2/sl のみ)を集計しました。sr_runway フィールドが存在するレコードを対象に、blocked=True と blocked=False を分類します。

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条件 勝ち/全体 勝率 95%CI E(R)
blocked=True × Long 【主仮説】 78/186 41.9% [35.1%, 49.1%] -0.022
blocked=False × Long 【対照群】 467/1107 42.2% [39.3%, 45.1%] -0.016
blocked=True × Short 【参照】 65/139 46.8% [38.7%, 55.0%] +0.091
blocked=False × Short 【参照】 90/214 42.1% [35.9%, 48.6%] -0.020
H1 ✅ 通過:blocked=True×Long の CI[35.1%,49.1%] は43%をまたぐ → 損益分岐を上回る確信も下回る確信もない→追加エッジなしの方向で確認
H2 ✅ 通過:blocked=True×Long(41.9%) vs blocked=False×Long(42.2%) = 差わずか0.3pp → blocked 条件は Long 勝率に追加効果をもたらさない

「天井が遠い=TP1 到達が有利」という直感に反し、blocked=True と blocked=False はロング方向でほぼ同じ勝率を示しました。壁の有無がロング成否に系統的な影響を与えている様子は、N=186 の本集計では確認できませんでした(この集計範囲での結果であり、将来も同様とは限りません)。

⑤ 結果②:トレンド3分類で全て43%帯に収束

「特定のトレンド環境下でのみ blocked=True が効く」という可能性を検証します。

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トレンド(上位足) 勝ち/全体 勝率 95%CI
上昇トレンド 32/79 40.5% [30.4%, 51.5%]
下降トレンド 28/65 43.1% [31.8%, 55.2%]
中立・もみあい 18/42 42.9% [29.1%, 57.8%]
H3 ✅ 通過:上昇40.5%・下降43.1%・中立42.9%——3つのトレンド環境で全て40〜44% 帯に収束。トレンドに依存せず、blocked=True×Long に優位性はない

どのトレンド方向においても、「壁なしロング」の勝率は損益分岐の43%付近に留まります。「上昇トレンド中に壁なしロングを打てばより有利」という考えは、このデータでは支持されません。

⑥ 結果③:方向非対称——ショートの46.8%が示唆的

図2:blocked=True の方向別勝率比較 43% 損益分岐ライン 55% 50% 43% 35% 30% 41.9% T×Long N=186 42.2% F×Long N=1107 46.8% T×Short N=139 +4.9pp差

図2:blocked=True 条件での方向比較。ロング(41.9%)と対照群(42.2%)はほぼ同値だが、blocked=True×Short(46.8%)は+4.9pp 高い。CI は重複するため確定的ではないが、「壁なしショート」の方向に示唆がある。

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グループ blocked=True×Long N
金属(GC=F/SI=F) 22.2%(4/18) 18
指数(NKD=F/ES=F 等) 46.2%(18/39) 39
BTC-USD 20.0%(3/15) 15

グループ別では金属22.2%・BTC20.0%と低い一方で、指数は46.2%と標準的な水準を維持しています。ただし各 N は小さく(最大39件)、確定的な結論には至りません。

H4 ✅ 通過:blocked=True×Short(46.8%) > Long(41.9%) = 差4.9pp。CI は重複するため確定打不足だが、「壁なし」の方向効果はロングよりショート方向に示唆がある

⑦ 前向き時系列——早期63.6%からの大崩落

図3:blocked=True×Long の勝率推移(IS→前向き早期→前向き後期) 43% 70% 60% 50% 43% 35% 20% IS期間 (N=59) 前向き早期 (N=44) 前向き後期 (N=83) 42.4% 63.6%(小サンプル峰) 30.1% 全期間 41.9% ※ 概念を示すイメージ図です(実際の値動きではありません)

図3:IS期間42.4%→前向き早期63.6%(N=44)という高い出だしが「昇格候補」と映ったが、前向き後期(N=83)で30.1%に急落。全期間を通じた平均は41.9%(青点線)に収束し、IS期間の42.4%とほぼ一致する。早期の高勝率は小サンプル変動に過ぎなかった。

前向き追跡の時系列を振り返ると、典型的な「小サンプルバイアス」のパターンが見えます。

💡 なぜ早期N=44で63.6%が出たのか
N=44 の 95%CI を計算すると [50.8%〜74.9%] ですが、たまたま勝ちが連続する期間に計測が始まった可能性が高いです。期待値の真値が42%だとすると、N=44 でランダムに63.6%以上が出る確率は約1〜2%程度。めったに起きないことも1/50回程度は起きる、という統計の基本です。
→ これが「N≥80 かつCI下限>0」という昇格ハードルが必要な理由

⑧ 事前基準の評価——H1〜H4全クリア(通過A:効果消失確認)

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仮説 事前基準 結果 判定
H1(効果なし確認) CI が43%をまたぐ CI[35.1%, 49.1%]→43%をまたぐ ✅ 通過
H2(追加効果の有無) T vs F 差 ≤ 5pp 差0.3pp(41.9% vs 42.2%) ✅ 通過
H3(トレンド依存性なし) 3トレンドで40〜45%帯 上昇40.5% / 下降43.1% / 中立42.9% ✅ 通過
H4(方向非対称) Long vs Short 差の確認 Short 46.8% vs Long 41.9%(差4.9pp) ✅ 確認(確定打不足)
📋 判定:通過A(効果消失確認)
blocked=True × Long は N=186 において 43%付近(41.9%)に回帰した。対照群(42.2%)との差はわずか 0.3pp で、「SR 壁なし」条件はロング方向に追加エッジをもたらさないことが確認された。ただし blocked=True×Short(46.8%)にはわずかな方向示唆があり、こちらは引き続き蓄積を継続する(N=139)。

📡 前向きトラッカー定点観測

基準日 2026-07-27/昇格=前向きN≥80(🏁ホールドアウト合格はN≥30)・平均R(期待値)の95%CIが0を跨がない・基準合格2回連続で確定(2026-07-19〜)/降格=昇格後の再判定で基準割れ2回連続→🟡へ(2026-07-18〜・再昇格可)

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仮説種別宣言基準前向き現在値(平均R)状態
group=metal×dir=longgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R -0.17 CI[-0.48~+0.15](46/129・勝率36%)✅昇格
trend=上昇×reversalLedge前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0平均R +0.19 CI[-0.01~+0.38](58/114・勝率51%)✅昇格
group=allgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.01 CI[-0.08~+0.10](442/1023・勝率43%)🟡蓄積中
blocked=Falsegate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.02 CI[-0.09~+0.13](355/810・勝率44%)🟡蓄積中
blocked=False×dir=longgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.04 CI[-0.11~+0.19](277/620・勝率45%)🟡蓄積中
trend=下降gate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.09 CI[-0.07~+0.23](159/342・勝率46%)🟡蓄積中
tier=neutralgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R -0.08 CI[-0.21~+0.04](124/316・勝率39%)🟡蓄積中
tf=4h×dir=longgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.05 CI[-0.11~+0.21](141/314・勝率45%)🟡蓄積中
group=indexedge前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0平均R -0.11 CI[-0.25~+0.02](109/286・勝率38%)🟡蓄積中
指数×ロング(全足ライブ)edge前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0平均R +0.03 CI[-0.20~+0.25](115/261・勝率44%)🟡蓄積中
trend=中立・もみあい×dir=longgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.05 CI[-0.14~+0.23](117/261・勝率45%)🟡蓄積中
trend=下降×dir=longgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.07 CI[-0.14~+0.28](117/255・勝率46%)🟡蓄積中
group=other_fx×dir=longgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.02 CI[-0.12~+0.17](109/249・勝率44%)🟡蓄積中
blocked=False×dir=shortgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R -0.02 CI[-0.23~+0.19](90/214・勝率42%)🟡蓄積中
group=metalgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R -0.13 CI[-0.34~+0.08](68/182・勝率37%)🟡蓄積中
売られすぎ逆張り買い(rsi_oversold_bounce・全足)edge前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0平均R +0.18 CI[-0.14~+0.49](66/131・勝率50%)🟡蓄積中
trend=下降×dir=shortgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.17 CI[-0.10~+0.43](64/128・勝率50%)🟡蓄積中
trend=中立・もみあい×dir=shortedge前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0平均R -0.18 CI[-0.44~+0.07](36/103・勝率35%)🟡蓄積中
trend=中立・もみあい×reversalLgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.14 CI[-0.17~+0.46](45/92・勝率49%)🟡蓄積中
blocked=True×dir=shortedge前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0平均R -0.08 CI[-0.33~+0.18](34/86・勝率40%)🟡蓄積中
group=index×reversalLedge前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0平均R -0.04 CI[-0.36~+0.28](35/85・勝率41%)🟡蓄積中
signal=low_breakgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R -0.17 CI[-0.49~+0.15](27/76・勝率36%)🟡蓄積中
group=btc×dir=longgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R -0.06 CI[-0.33~+0.21](29/72・勝率40%)🟡蓄積中
group=index×dir=shortgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.17 CI[-0.13~+0.46](36/72・勝率50%)🟡蓄積中
group=metal×reversalLgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.01 CI[-0.47~+0.50](30/69・勝率44%)🟡蓄積中
other_fx×逆張り買い(回避)gate前向きN≥30かつ平均RのCI上限<0🏁平均R +0.15 CI[-0.21~+0.51](34/69・勝率49%)🟡蓄積中
BTC全方向(日足)edge前向きN≥30かつ平均RのCI下限>0🏁平均R -0.08 CI[-0.36~+0.20](26/66・勝率39%)🟡蓄積中
ステート 上昇配置(>MA25&75)×ロングedge前向きN≥30かつ平均RのCI下限>0🏁平均R +0.09 CI[-0.27~+0.44](27/58・勝率47%)🟡蓄積中
signal=ma_deadedge前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0平均R -0.26 CI[-0.68~+0.15](12/38・勝率32%)🟡蓄積中
group=btc×reversalLgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.24 CI[-0.28~+0.76](17/32・勝率53%)🟡蓄積中
dir=longgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.03 CI[-0.10~+0.17](330/747・勝率44%)⛔反証
reversalL(逆張り買い)gate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.24 CI[+0.04~+0.44](156/293・勝率53%)⛔反証
tier=goodgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.40 CI[+0.14~+0.65](104/174・勝率60%)⛔反証
tier=good×dir=longgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.39 CI[+0.11~+0.66](97/163・勝率60%)⛔反証
trend=下降×reversalLgate前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0平均R +0.42 CI[+0.10~+0.75](69/113・勝率61%)⛔反証

⑨ 次回に向けて

今回の検証から得られた主な教訓は次のとおりです。

📌 関連研究・参考記事

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