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📚 解説記事
⚠️ 本記事はエントリー(買う・売るタイミング)の決め方についての考え方や、公開されている研究の紹介を目的とした「情報提供」であり、特定の手法・銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

🔢 キリのいい値段に注文が集まるのはなぜ? 利益確定・損切りの注文を調べた研究でわかっていること【エントリー方法の研究 #21】

公開:2026年10月15日 / 読了時間:約 9 分 / カテゴリ:🚪 エントリー方法の研究

1ドル=150.00円のような「00」で終わる値段の近くで、値動きが止まったり、逆に勢いづいたりする、という話をよく見かけます。前回(#20)で取り上げた支持線・抵抗線も、こうしたキリのいい値段に引かれることが多い節目でした。では、そもそも「なぜ」キリのいい値段のあたりに注文が集まりやすいのでしょうか。この回では、実際の銀行の注文データを使って、その理由そのものを確かめた研究を取り上げます。

📌 この記事の結論(30秒まとめ)

1️⃣ どんな方法か

どんな方法? 値段が「00」や「50」で終わるような、覚えやすく切りのいい値段を目安にして入る方法です。前回の支持線・抵抗線と同じく、その値段に近づいたら反発を期待して入る、あるいはその値段を抜けたら勢いがついたとみて入る、という2つの使い方があります。※以下は考え方を説明するための仮の例です。ある通貨が、1ドル=150.00円に近づくたびに下げ止まっていたとします。もう一度その値段に近づいたとき、「また止まるかもしれない」とみて買う、という使い方が一般的に紹介されています。

支持線・抵抗線は人によって線の引き方が変わりやすいのに対し、キリのいい値段は誰が見ても同じ値段になります。この回で取り上げる研究は、「なぜこの値段のあたりに注文が集まりやすいのか」を、見た目の値動きではなく、実際に受け付けられた注文そのもののデータで確かめたものです。

2️⃣ 研究でわかっていること

オスラー氏の研究(2003年、為替)

オスラー氏の研究(2003年発表、学術誌に掲載。ワーキングペーパー版はニューヨーク連邦準備銀行のスタッフレポートとして先に公開)は、為替を取り扱う大手銀行一社が実際に受け付けた、利益確定・損切りの注文のデータを使いました。論文によると、個々の注文そのものを使ったこの種のデータは、当時はじめて学術研究に使われたものだったと報告されています。

結果として、利益確定の注文はキリのいい値段(00で終わる値段)そのものに集まりやすいことがわかりました。一方、損切りの注文は、キリのいい値段を少し超えたところに集まりやすく、買いの損切り注文はキリのいい値段のすぐ上に、売りの損切り注文はキリのいい値段のすぐ下に、集まる傾向がありました。さらに、利益確定の注文のほうが、損切りの注文よりも、キリのいい値段そのものへの集まり方が強いことも示されました。

論文は、この注文の集まり方の違いが、テクニカル分析でよく言われる2つの経験則を説明する手がかりになると述べています。1つは「値段がキリのいい値段(支持線・抵抗線)に近づくと反発しやすい」ことです。利益確定の注文がその値段に集まっているため、値段が近づくとその注文の執行が増え、値段を押し返す力が働きやすくなると説明されています。もう1つは「値段がキリのいい値段を抜けると勢いが増す」ことです。キリのいい値段を抜けると、そのすぐ先に集まっていた損切りの注文の執行が始まり、同じ方向への新たな注文が増えることで、値段の動きが加速しやすくなると説明されています。

損切りの注文と値動きの速さ(2005年の別の研究)

同じ著者の別の研究(2005年発表、学術誌に掲載。ワーキングペーパー版は2002年にニューヨーク連邦準備銀行のスタッフレポートとして先に公開)は、損切りの注文が集まっている値段のあたりに値段が近づいたとき、値動きがふだんより速くなる傾向があったと報告しています。損切りの注文が実行されると、それが新たな売り・買いの注文を呼び、値段の動きをさらに進める、という自分で強め合うような動きにつながりうると説明されています。

キリのいい値段に近づくと反発しやすく、抜けると加速しやすい、という考え方の概念図 キリのいい値段(150.00円)に近づくと反発、抜けると加速(概念図) 150.00円 ①利益確定の注文で反発 ②利益確定の注文で反発 ③損切りの連鎖で加速 時間の経過(左から右)
図:キリのいい値段に近づくと反発しやすく、抜けると加速しやすい、という考え方の概念図。※概念を示すイメージ図です(実際の値動きではありません)。
当サイトとの関係: 当サイトのシグナルは、RSI(相対力指数:買われすぎ・売られすぎを0から100の数字で表す指標)・MACD(移動平均を使った売買のタイミングを示す指標)・移動平均・ボリンジャーバンド(値動きの幅から「広がりすぎ・狭まりすぎ」を見る指標)といった数値条件や、直近20本の高値安値のブレイクで判定しており、キリのいい値段のような節目を検出するしくみは使っていません。また、ここで紹介した研究の期間・市場(為替、1990年代後半〜2000年代前半ごろ)と、当サイトのシグナルが対象とする期間・市場は異なります。この記事で紹介した研究結果は、当サイトのシグナルの有効性を裏づけるものではありません。

3️⃣ 反論・限界

この研究にはいくつか気をつけたい点があります。まず、使われたのは1つの銀行が受け付けた注文データで、調べた期間・通貨の組み合わせも限られています。別の銀行や、別の期間・通貨の組み合わせで同じ結果になるかは、この研究だけからはわかりません。

また、「利益確定・損切りの注文がキリのいい値段に集まりやすい」ことと、「その値段を目安に新しく売買を始めれば、成績が良くなる」ことは別の話です。この研究が調べたのは、すでにポジションを持っている人の注文がどこに集まるかであり、その値段を目安にした売買そのものの成績を検証したものではありません。節目に注文が集まっていることと、その節目を新しく取引を始める目安として使うことが同じように効くかどうかは、別に確かめる必要があります。

4️⃣ 株・FX・コモディティでは?

ここで紹介した研究が、どの市場のデータを使ったかを一覧にします。研究がない市場については、推測で埋めず「この記事からはわかりません」としています。

市場研究はあるか何がわかっているか
為替(FX)ありオスラー氏(2003年・2005年):大手銀行一社の注文データで検証(利益確定の注文はキリのいい値段に、損切りの注文はその少し先に集まりやすい。節目付近で値動きが速くなる傾向も)
コモディティ(金)ありアガーワル氏とルーシー氏の研究(2007年):金の値段(日次・日中)で検証(キリのいい値段の近くで、値段の変化の大きさや荒れ方が変わる傾向があったと報告)
コモディティ(原油)ありダウリング氏・カミンズ氏・ルーシー氏の研究(学術誌掲載2016年):原油の先物2種類で検証(ロンドンで取引される指標の原油では10ドル単位の節目で値動きの傾向が見られたが、米国の指標の原油では見られなかった。効果は1990〜2006年に限られ、金融危機のあとは弱まったと報告)
株価指数・個別株今回は見当たらずこの記事からはわかりません
暗号資産(ビットコインなど)今回は見当たらずこの記事からはわかりません

日本株・日本市場のデータを使った検証についても、今回の調査では見当たりませんでした。

5️⃣ よくある誤解

誤解1:キリのいい値段に近づけば必ず止まる

オスラー氏の研究が示したのは、利益確定・損切りの注文が集まりやすいという「傾向」です。1回ごとに必ず止まる、あるいは必ず抜けて加速する、という意味ではありません。

誤解2:どの市場・どの指標でも同じように節目が効く

原油の研究が示したように、同じ「原油」でも、ロンドンで取引される指標の原油では節目の傾向が見られても、米国の指標の原油では見られませんでした。どの市場・どの指標を使うかによって、結果が違うことがあります。

誤解3:注文が集まりやすいこと=そこで売買すれば成績が良くなること

この回で紹介した研究は、注文がどこに集まるかを調べたものであり、その値段を目安にした新しい売買の成績そのものを検証したものではありません。

この記事は、公開されている学術研究を当サイトが要約したものです。研究の数字は、それぞれの研究が使った期間・市場・条件のもとでの結果で、将来も同じになるとは限りません。多くの研究は取引コストや税金を十分にふくんでいないか、ふくみ方が研究ごとに違います。特定の方法を勧めるものではありません。
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6️⃣ まとめ

最後に、この記事の内容を整理します。

前回(#20)で見た支持線・抵抗線と同じく、キリのいい値段も「多くの人が同じ値段を見ている」ことの一例と考えられますが、それがどれだけ値動きを止め、どれだけ成績につながるかは、研究や市場によって結果が分かれる、という点を知っておくことが手がかりになります。

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📚 出典・参考文献

⚠️ 当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録もしていません。本記事はエントリー(買う・売るタイミング)の決め方についての考え方と、公開されている学術研究の紹介を情報提供として整理したものであり、特定銘柄・特定手法の売買推奨や投資助言ではありません。研究の内容は当サイトによる要約です。正確な内容は各原文をご確認ください。記載の数値・方法による利益を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。