🧪 AIシグナル研究日誌 #30
ロング全般gateの前向き反証——金属レジーム転換が"買い禁"の法則を覆す
毎回ひとつの仮説を実データで検証し、勝っても負けても全公開する研究日誌の第30回です。前回(#29)は「もみあい×ショート」が前向きデータで 31.5%(17/54)まで崩落し、low_break の期待値 CI が全域マイナスという厳しい結果でした。
今回は視点を変えて「そもそも ロング全般(dir=long)は不利か」という根本命題を前向きデータで再検証します。ことの発端は本日の前向きトラッカー更新で dir=long gate が ⛔反証 に変わったことです。
① dir=long gate(前向き N=194)が前向き反証 — 期待値+0.15R、95%CI[+0.01〜+0.30](CI全域プラス)
② 主因は金属ロングのレジーム転換(全期間合計 25.0%=35/140 が最大の足かせ→前向きで劇的に改善)
③ 構成シフトはほぼゼロ(最大Δ4pp)——「グループ比率の変化」ではなく「各グループの中身」が変わった性能シフト
④ 円クロス(jpy_fx)ロングは全期間 40.0%(78/195) と依然損益分岐割れ——「ロング全般OK」への早合点は禁物
① 今回の仮説——「ロング不利」ゲートはなぜ作られたか
2026年6月25日、前向きトラッカーに「dir=long」という gate(回避候補)が登録されました。gate とは「この条件は避けるべき」という仮説を前向きデータで確認するための旗印です。
当時の根拠は過去の全シグナルデータ(in-sample)でした。
- ロング全件(in-sample):38.1%(301/789)、期待値 E(R)=−0.161R
- 95%CI:[−0.280 〜 −0.042](CIが全域マイナス——確定的な損失傾向)
最大の犯人は金属ロングでした。金(GC=F)と銀(SI=F)を合わせた金属グループのロングが全ロングの約14%を占めながら、勝率わずか 15.3%(17/111)・期待値 −0.964R という壊滅的な数字だったのです。
本システムのリスクリワードは SL=−1.0R、TP1=+1.33R です。長期的にゼロ(損益分岐)にするには約43%の勝率が最低限必要です。43%を大きく下回る条件は「長期的に使うとマイナス」と考えられます。
研究日誌 #13 でも記録したように、金属ロングは過去20年の長期バックテストでは有効だったものの、直近のライブ成績では符号が反転していました。この「レジーム反転」を受け、gate が設定されたのです。
② 検証方法(前向きトラッカーと事前宣言)
gate の 反証条件(事前宣言)は次の通りです:
- 前向き N ≥ 80(gate 登録後に決済が完了した件数)
- 平均R(期待値)の95%CI の上限が 0 を下回ること(損失傾向の統計的確定)
反証条件とは「gate が間違っていた(ロング不利は成立しなかった)」と示される条件です。CI 上限が 0 を超えた時点で、gate が想定していた「損失傾向」は否定されます。
③ 結果①:ゲートは前向き反証された
gate 登録後(2026年6月25日以降)に決済完了したロングシグナルは N=194。宣言した N≥80 を大幅に上回りました。
| 期間 | 件数 (N) | 勝率 | 期待値 (R) | 95%CI (期待値) | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 過去(in-sample) | 789 | 38.1% | −0.161R | [−0.280 〜 −0.042] | ❌ gate 根拠 |
| 前向き(gate 登録後) | 194 | 49.2% | +0.15R | [+0.01 〜 +0.30] | ⛔ 反証成立 |
前向き期待値 +0.15R、CI 下限 +0.01——わずかながら CI が全域プラスに転換しました。gate の宣言条件「CI 上限 < 0」は満たされず、反証が成立します。
▲ in-sample の期待値 −0.161R(CI 全域マイナス)が、前向き期間では +0.15R(CI 全域プラス)へ転換。gate 反証成立のイメージ図(実価格ではなく期待値の概念図)。
④ 結果②:主因は構成シフトではなく性能シフト
「過去と前向きで構成(グループの比率)が変わった結果、見かけ上よくなっただけでは?」という交絡仮説を検討します。
| グループ | IS 比率 | FWD 比率 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 指数(NKD/ES/NQ等) | 25.2% | 23.1% | −2.1pp |
| 金属(GC/SI) | 14.1% | 14.9% | +0.8pp |
| 円クロスFX | 19.8% | 20.0% | +0.2pp |
| ドル建てFX | 29.7% | 25.6% | −4.0pp |
| BTC | 7.6% | 10.8% | +3.2pp |
| 原油 | 3.7% | 5.6% | +2.0pp |
構成比の変化は最大でも 4pp 程度と小さく、高成績グループへの大幅シフトは起きていません。
反実仮想で確認します。「もし前向き期間でも IS と同じ構成比だったら、期待値はいくらか」を計算すると:
- 反実仮想(IS 構成比 × FWD 各グループ実績):+0.257R
- 実際の FWD 期待値:+0.231R
- 構成シフトの寄与:−0.027R(ほぼゼロ、むしろわずかにマイナス)
⑤ 結果③:金属ロングの劇的なレジーム転換
グループ別に IS vs FWD を比較すると、変化の主役が明らかになります。
| グループ | IS 勝率(N) | IS 期待値 | FWD 勝率(N) | FWD 期待値 | 変化 |
|---|---|---|---|---|---|
| 金属(GC/SI) | 15.3%(111件) | −0.964R | 62.1%(29件) | +0.672R | 🔄 逆転 |
| ドル建てFX | 35.0%(234件) | −0.274R | 56.0%(50件) | +0.460R | 📈 改善 |
| 指数 | 53.3%(199件) | +0.379R | 51.1%(45件) | +0.289R | ➡️ 安定 |
| 円クロスFX | 40.4%(156件) | −0.087R | 38.5%(39件) | −0.154R | 🔴 変化なし |
| BTC | 30.0%(60件) | −0.450R | 38.1%(21件) | −0.167R | 🟡 小幅改善 |
金属ロングの変化が特に際立っています。過去期間の IS 15.3%(期待値 −0.964R)が、前向きでは 62.1%(期待値 +0.672R)へ。銘柄別にも同じ方向の変化が見られます。
| 銘柄 | IS 勝率(N) | IS 期待値 | FWD 勝率(N) | FWD 期待値 |
|---|---|---|---|---|
| 金(GC=F) | 19.1%(68件) | −0.831R | 66.7%(15件) | +0.833R |
| 銀(SI=F) | 9.3%(43件) | −1.174R | 57.1%(14件) | +0.500R |
▲ GC=F(金)は IS 19% → FWD 67%、SI=F(銀)は IS 9% → FWD 57% へ。いずれも損益分岐43%を大幅に超える転換(前向き N は各15件・14件・小サンプル注意)。
この金属レジーム転換は研究日誌 #13 の「20年バックテスト +0.30R → 直近ライブ −0.55R」という発見の続報です。#13 では「金属ロングは一律 veto せず、metal-regime monitor で正常化を監視」という方針を立てていましたが、この前向きデータはそのシナリオと整合する動きです。
⑥ 結果④:グループ別に違う「回復の温度差」
「ロング全般が回復した」とは言っても、グループによって状況は大きく異なります。
ドル建てFXロングも改善(ただし CI は 0 をまたぐ)
ドル建て FX(EURUSD・GBPUSD・AUDUSD・EURAUD・GBPAUD)のロングは、IS では 35.0%・期待値 −0.274R でしたが、FWD では 56.0%(28/50)・期待値 +0.460R まで改善しました。ただし 95%CI は [−0.039〜+0.959] と 0 をまたいでいるため、統計的な確定打にはなっていません。
指数ロングは安定継続
指数グループ(NKD=F・ES=F・NQ=F・YM=F・^FTSE)のロングは IS 53.3% → FWD 51.1%(23/45)と大きく変わっていません。IS では CI が全域プラス [+0.136〜+0.623] でしたが、FWD は N=45 とまだ少なく CI 幅が広い [−0.243〜+0.820] 状況です。指数ロング専用の前向きトラッカー(別途 ✅昇格済み、N=121・期待値 +0.35R)と合わせて継続観察中です。
グループ別 全期間合計(IS+FWD)サマリー
参考として、IS・FWD を合わせた全期間の勝率を示します(verify.py 独立再計算値)。
| グループ | 全期間勝率(k/n) | 勝率 | メモ |
|---|---|---|---|
| 指数(index) | 129/242 | 53.3% | IS・FWD ともに安定(損益分岐43%超) |
| 他FXクロス(other_fx) | 110/284 | 38.7% | FWD 56%と改善も全期間ではまだ43%未満 |
| 円クロスFX(jpy_fx) | 78/195 | 40.0% | IS・FWD とも 43%割れ・変化なし |
| BTC(btc) | 26/81 | 32.1% | FWD 38%と小幅改善も全期間は依然低位 |
| 金属(metal) | 35/140 | 25.0% | IS 期間の壊滅的な低さを FWD が引き上げ途中 |
| 全ロング | 397/981 | 40.5% | 損益分岐43%未満だが FWD では 49.2%→反証 |
⑦ 結果⑤:変わらなかったもの——jpy_fx ロングは依然不振
「ロング全般が改善した」という結論を急がせる交絡として重要なのが、jpy_fx(円クロス)ロングです。
| グループ | IS 勝率(N) | FWD 勝率(N) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 円クロス(jpy_fx)ロング | 40.4%(156件) | 38.5%(39件) | 変化なし(43%割れ) |
IS 40.4%、FWD 38.5%——ほぼ変わらず、損益分岐 43% を下回ったままです。研究日誌 #9 で「jpy_fx ショートの損益分岐割れを正式検証」し、#24 で「jpy_fx × RSI の壊滅的な低さ(19.4%)」を確認しましたが、ロング側も依然として厳しい状況です。
⑧ 今回の発見が示すもの
今回の検証で得られた洞察を整理します。
「ロング不利」は一枚岩の法則ではなかった
gate が設定された当時の根拠(IS 38.1%・E(R)=−0.161R)は、主に金属ロングの壊滅的な成績(IS 15.3%・111件)によって全体平均が引き下げられていたものでした。つまり「ロング全般が不利」ではなく、「金属ロングが特定の時期に極端に不振だった」という、より限定的な現象だったわけです。
構成比ではなく「中身の変化」を見る
今回の反実仮想計算で、構成シフトの寄与はほぼゼロ(−0.027R)でした。表面上の平均値が変わったとき、まず疑うべきは「どのグループが増えたか」ではなく「各グループの成績そのものが変わったか」です。この「構成の罠」は過去の研究日誌(#18 全体 42.2% vs 指数 59.1%)でも記録した重要な落とし穴です。
gate 反証は「ロング有利の証明」ではない
前向き期待値 +0.15R の CI 下限は +0.01——ぎりぎり 0 を超えているにすぎません。また、jpy_fx ロングは依然不振です。「ロング全般が有利になった」とは断言できず、グループと文脈による選別の必要性は変わりません。
dir=long gate の反証成立 → 「ロング全般回避」という一律ルールは前向きデータで支持されなかった。ただし、指数ロング(✅昇格済み)を軸に据え、jpy_fx ロングは引き続き慎重に、金属ロングの転換は小サンプルとして継続監視——という判断が現時点での整理です。
📡 前向きトラッカー定点観測
本日(2026-07-05)時点での全仮説の前向き成績です。
📡 前向きトラッカー定点観測(期待値ベース)
| 仮説 | 種別 | 宣言基準 | 前向き現在値(平均R) | 状態 |
|---|---|---|---|---|
| 指数×ロング(全足ライブ) | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.35 CI[+0.06~+0.65](70/121・勝率58%) | ✅昇格 |
| group=all | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.06 CI[-0.07~+0.18](119/263・勝率45%) | 🟡蓄積中 |
| blocked=False | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.06 CI[-0.09~+0.21](97/213・勝率46%) | 🟡蓄積中 |
| blocked=False×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.10 CI[-0.09~+0.28](76/162・勝率47%) | 🟡蓄積中 |
| tier=neutral | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -0.10 CI[-0.33~+0.14](50/129・勝率39%) | 🟡蓄積中 |
| trend=中立・もみあい×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.18 CI[-0.08~+0.43](59/117・勝率50%) | 🟡蓄積中 |
| tf=4h×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.14 CI[-0.07~+0.34](57/117・勝率49%) | 🟡蓄積中 |
| trend=下降 | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.06 CI[-0.22~+0.34](49/108・勝率45%) | 🟡蓄積中 |
| group=other_fx×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.17 CI[-0.00~+0.34](49/98・勝率50%) | 🟡蓄積中 |
| group=metal | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -0.11 CI[-0.41~+0.20](34/89・勝率38%) | 🟡蓄積中 |
| group=index | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R -0.09 CI[-0.30~+0.11](33/85・勝率39%) | 🟡蓄積中 |
| trend=下降×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.11 CI[-0.12~+0.34](40/84・勝率48%) | 🟡蓄積中 |
| blocked=False×dir=short | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.04 CI[-0.35~+0.44](33/74・勝率45%) | 🟡蓄積中 |
| 売られすぎ逆張り買い(rsi_oversold_bounce・全足) | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R -0.07 CI[-0.40~+0.26](29/73・勝率40%) | 🟡蓄積中 |
| reversalL(逆張り買い) | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.35 CI[-0.01~+0.71](41/71・勝率58%) | 🟡蓄積中 |
| trend=下降×dir=short | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.11 CI[-0.32~+0.55](31/65・勝率48%) | 🟡蓄積中 |
| trend=中立・もみあい×dir=short | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R -0.24 CI[-0.66~+0.19](18/55・勝率33%) | 🟡蓄積中 |
| group=metal×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -0.09 CI[-0.58~+0.40](21/54・勝率39%) | 🟡蓄積中 |
| trend=下降×reversalL | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.29 CI[-0.26~+0.84](21/38・勝率55%) | 🟡蓄積中 |
| group=metal×reversalL | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -0.09 CI[-0.76~+0.57](14/36・勝率39%) | 🟡蓄積中 |
| tier=good | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.69 CI[+0.30~+1.07](26/36・勝率72%) | 🟡蓄積中 |
| trend=中立・もみあい×reversalL | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.53 CI[+0.04~+1.02](23/35・勝率66%) | 🟡蓄積中 |
| tier=good×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.70 CI[+0.25~+1.14](24/33・勝率73%) | 🟡蓄積中 |
| signal=low_break | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.09 CI[-0.37~+0.56](15/32・勝率47%) | 🟡蓄積中 |
| group=btc×dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -0.00 CI[-0.44~+0.44](12/28・勝率43%) | 🟡蓄積中 |
| trend=上昇×reversalL | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.26 CI[-0.24~+0.77](13/24・勝率54%) | 🟡蓄積中 |
| group=index×reversalL | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R +0.28 CI[-0.23~+0.80](11/20・勝率55%) | 🟡蓄積中 |
| blocked=True×dir=short | edge | 前向きN≥80かつ平均RのCI下限>0 | 平均R -0.74 CI[-0.93~-0.55](2/18・勝率11%) | 🟡蓄積中 |
| group=btc×reversalL | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R -0.17 CI[-0.80~+0.47](5/14・勝率36%) | 🟡蓄積中 |
| group=index×dir=short | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.06 CI[-0.67~+0.79](5/11・勝率46%) | 🟡蓄積中 |
| dir=long | gate | 前向きN≥80かつ平均RのCI上限<0 | 平均R +0.15 CI[+0.01~+0.30](96/194・勝率50%) | ⛔反証 |
本日の主な変化:
- dir=long(⛔反証):本稿で検証したとおり、前向き N=194 で期待値 +0.15R・CI[+0.01〜+0.30] → gate 反証確認
🔭 次回に向けて
今回の発見を踏まえ、次回の研究候補として以下が考えられます。
- 金属ロングの定点観測:group=metal×dir=long トラッカーでさらなる N 蓄積(現在 N=54)。小サンプルの転換が維持されるかを観察
- jpy_fx ロングの交絡解析:依然 38〜40% と不振。シグナル別・トレンド別で何が足を引っ張っているか分解
- other_fx ロングの確定打検証:FWD 56.0%(N=50)と有望だが CI は 0 をまたぐ。N=80 達成後に正式判定
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